<第179回国会 2011年10月28日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会>


普天間基地の辺野古移設と、泡瀬干潟の埋立て事業の見直しをもとめる。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず最初に、普天間基地の移設問題について玄葉大臣にお聞きをしたいと思います。
 昨日、沖縄の知事と名護市の市長が参りまして、野田首相と初めて会談をしたと。米軍普天間基地飛行場の辺野古移設に関する日米合意の推進は事実上実行不可能だということは変わりないということで見直しを要請しました。野田首相は、年内に移設に向けた環境影響評価の評価書を提出する方針を伝えたとされています。
 大臣も、先週名護市長から直接、辺野古の海にも陸にも新しい基地は造らせないという市民との約束をどんなことがあろうとも最後まで信念を貫く決意ですので了承をくださいと、沖縄の現状を自分の目でつぶさに見て、県民の声を聞き、辺野古移設を白紙に戻す日米合意見直しを米国に進言してくださいと要請されました。
 それなのに、あくまでもこれは沖縄の願いに背を向けて米側の期待に全面的にこたえるということなんでしょうか。大臣は、この辺野古の移設が本当に受け入れられるというふうに思われているんでしょうか。
○国務大臣(玄葉光一郎君) 今朝も仲井眞知事、そして名護の市長さんともお会いをいたしました。
 とにかく全体として沖縄の負担が減るという、この日米合意、そして日本も米側もお互いに厳しい事情を抱えています。確かに沖縄の皆様には、先ほど申し上げたことも含めておわびを申し上げなければならない。同時に、全体として〇・六%の面積に七四%の米軍専用基地があるわけですから、そのこと自体、日本全体で負担をしなければならないにもかかわらず、それだけ集中しているということについてもおわびを申し上げなきゃいけない。
 ただ、日本のこの厳しい安全保障環境というのは、残念ながらますます厳しくなってきているという状況が一つあるのと、やはり、今日も実は私は申し上げました。島嶼防衛含めて、沖縄のなかなか簡単に代替できない地理的な有利性について、これも含めて丁寧に説明をしていかなきゃいけないというふうに思っていますし、あわせて、パッケージとされた負担軽減を更に深掘りできるようにしたいと。全体として沖縄の負担軽減を更に図っていけるように必死で取り組みたいと、そう考えております。
○紙智子君 私は、やっぱり説得する相手が違うと思いますよ。これだけはっきり県民の皆さんが言っているわけですから、そういう意味では、米国に対してこれは無理ですと言って説得しなければならないということですよ。国内の手続にまで口を挟んで、米国の言われるとおりに付き従っていくというのは、これは本当に民主党政権というのはそういう政権なのかというふうに言わざるを得ません。
 辺野古について言えば、今後もくい一本打たせないし、絶対に移転は受け入れないということになっていくと思います。私は、改めて普天間の即時閉鎖と、そして国外の移設を強く求めて、これは答弁要りません、次の質問に移らせていただきます。
 それで、泡瀬干潟の埋立問題について、これは川端担当大臣にお聞きします。
 国は、十月十四日に工事を二年ぶりに再開をして、本日二十八日から本格工事のしゅんせつ土砂の空気圧送船による埋立地への投げ捨てを始めました。これ本当に許されない事態に踏み切ったということで、私は強く抗議をしたいというふうに思います。
 ここは、住民訴訟で一審、控訴審共に経済的合理性がないとされて、県と沖縄市の公金支出差止めが命じられて工事が中断していたわけです。
 東日本大震災で埋立地が地震による津波や液状化現象に非常に脆弱であるということが明らかになって、泡瀬の埋立事業についても抜本的に見直す必要があるんじゃないかと五月に私質問したわけです。学識経験者は、琉球海溝でマグニチュード八・五の地震が発生すれば、本島東海岸で二十メートルの津波の到達が予想されるということを指摘しているわけです。これに対して、当時枝野大臣でしたけれども、津波と液状化の二つのリスクを考慮して、改めて検証するというふうに答えたんですね。
 振興局として、これ検証がどうなっているのか、これについてお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(川端達夫君) 泡瀬地区の埋立事業については、いわゆる中央防災会議で東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会の報告書が出ました。その中で、二つに分けて、一つは頻度の高い津波、二つ目が最大クラスの津波、この二つのレベルを想定しているということでございまして、これに沿って泡瀬に関しては沖縄県が防災対策を検討してまいりました。
 まず、発生頻度の高い津波については、県内の、これは泡瀬ということだけではなくて、県内の各地域での津波の高さを計算して、そして今回の埋立免許地における埋立て高さの安全性が検証されたところでございます。もう一つの最大クラスの津波については、防災会議の報告で、住民等の生命を守ることを最優先とし、住民の避難を軸に総合的な防災対策を確立することとされておりまして、それに沿って九月には県において最大クラスの津波に対応した地域防災計画の見直しの考え方が取りまとめられ、これからそれの取りまとめに沿って作業が進んでいくと承知をしております。
 国としても、泡瀬地区を含む中城湾港における総合防災対策の在り方についても、民間それから関係行政機関と連携して検討をしているところでございます。
 さらに、液状化対策も問題になっております。これについては、埋立て完了後に調査、地震動の影響分析を行うということにしております。液状化対策は、土の質というんですか、によって影響が随分違うようでありますので、実際の埋立てが終わってからの対策になるということであります。
 地震や津波の備えの重要さは、改めて先般の大震災で明らかになったところでございます。今後とも、沖縄県、沖縄市と連携をして、適切に指導、対応をしてまいりたいと思っております。
○紙智子君 今の答弁で明らかになったと思うんですけれども、要するに、埋め立ててから検証するという話じゃないですか。県や市と連携してなんて言うんですけれども、まともに沖縄振興局として、国としてかかわって検証しているかといったらそうじゃなくて、聞き取りはやっていますよ、市や県がこれから検討するということは、聞き取ってはいるけれども、国としてまともなことなんてやっていないじゃないですか。やってもいないし結論も出ていないのにまず埋め立ててしまってから検証するなんて、本当におかしい話だと思いますよ。
 それで、これ、津波や液状化に弱い埋立地ですけれども、これから一千億円以上掛けてやっていくのかと、これをまず検証することが先なんじゃないのか、大事なんじゃないのかというふうに思うわけですよ。
 それで、この問題でいいますと、防災地質学が御専門の加藤祐三琉球大学名誉教授は、防災の観点から無謀だと指摘されているわけです。津波防災の観点上、埋立地は望ましくない。泡瀬事業のように膨大な公費で新たに埋立地を造成するのは無謀ですらあると。泡瀬埋立ては出島方式で、陸地とつなぐ橋は一本であり、避難の際は車が詰まり、防災上、役に立たない。県は人工島内の避難所をホテルの三棟の屋上とするけれども、屋上に至る階段や建物の入口に人が殺到する可能性を考えていない。巨大な防潮堤、防波堤を造ることになれば更にコストが掛かると。最新の地震研究は、琉球海溝やユーラシアプレート内陸側で津波を伴う地震の可能性を指摘している。いつ起きるか分からない地震に備えるには防災の観点から各事業を評価する必要があるが、泡瀬事業の場合は防災、経済的メリットの点でも進めるべきではないとの結論にしかならないだろうと。非常に厳しい見方を示しておられるわけです。実際にはホテルの誘致もこれ確実じゃないわけですから、防災上も大きな問題になると。
 こういう識者の指摘を大臣はどういうふうに受け止めるのか。結局、十分な検証のないまま、どうしてそんなに急いで工事再開をやるんでしょうか。
○政府参考人(竹澤正明君) 紙先生が今御指摘の点について、沖縄県の動きも含めて状況を御説明申し上げたいと思います。
 沖縄県におきましては、これまでの地震・津波対策等を検証して今後の計画の見直しに反映するために、本年の六月に沖縄県地震・津波想定検討委員会というものを設置いたしました。この議論を踏まえて先般の方向性という取りまとめを行ったんでございますけれども、先ほど大臣が申し上げました二つのレベルの地震・津波の必要性というようなことが示されております。本年度末をめどに県として防災計画を見直すというふうに伺っておりますけれども、その場合においても、先ほどの二つのレベルというその国の中央防災の考え方は踏襲されるというふうに伺っております。
 私どもの埋立事業については、マグニチュード七・八の地震にも遡上の高さが埋立地盤の高さを超えることはないという判断で現在進めているということでございます。
○紙智子君 聞いたことに答えていないですよ。私は、大臣に対してこの専門家の指摘をどういうふうに受け止めるんですかって聞いたんです。
○国務大臣(川端達夫君) 先ほど申しましたように、中央防災会議の専門会議を含めて、いわゆる津波の大きさの程度に分けて二つの対応を取るべきということで、一つは発生頻度の高い津波、これに関しては要件的にはクリアできたというふうに報告を受けております。そして、非常に最大クラスの津波に関しては、避難を含めて最大そういう命を守るということを中心にした対応を取りなさいということで一定の方向を取りまとめられたわけですが、今先生の御指摘もそういう範疇に入るものが多くあるというふうに思います。したがいまして、それはこれから取りまとめる方向の中で基準を決め、それに適合したものに対応していくということになるという流れになるというふうに承知しております。そういう中での専門家の各方面の先生の御意見は大変貴重な御提言として受け止めていきたいと思っております。
○紙智子君 一旦止めて、それで検証してちゃんと結論が出るまで待って進めるというのが本当だと思うんですよ。一方で進めながら、もうどんどんと本格工事入れて、泥を入れていっているわけですから、土砂を、これ、おかしいですよ。
 それで、二つのレベルに分けてという話なんだけれども、やっぱり今回の三月十一日のあの大変な地震とそして津波の被害、これを基にして、そういうレベルのものが起きたらどうするかということでいえば、わざわざ小さい方と大きい方に分けて、それで小さい方はクリアできるからということでもう始めてしまうというのはおかしいですよ。
 今度のこの新計画について言えば、埋立面積を百八十七ヘクタールから九十五ヘクタールに縮小したわけですけれども、費用というのは逆に増えているんですよね。国と県と市と合わせて一千億を超える事業です。うまくいっても年間二・二億円の赤字が出るわけですよ。これ、市が言っているわけですけれどもね。
 埋立てに反対する住民は、この新しい計画も経済的合理性は認められないということで七月に那覇地裁に再び提訴したわけです。このさなかで工事再開ということなわけですけれども、緊急な必要性があるのかと思うわけです。埋め立てて工事の是非が問われる裁判が行われている最中にこの泡瀬の干潟に土砂と国民の税金が投入されるというのは余りにもこれは理不尽だと、地元の各紙も、各新聞社も社説でそのことを書いているわけですよ。
 少なくとも大臣、これ、裁判の判決が出るまでは工事を再中断すべきではありませんか。
○国務大臣(川端達夫君) 埋立事業に関しては、平成十七年に一回目の裁判がありまして、二十一年に高裁判決で、市が新たな土地利用計画を検討している現段階での計画の経済的合理性があるとは認められない等の理由で公金差止め判決が出たことは承知をしております。その後、その判決を受けて市において、これは経済的合理性をしっかり出しなさいということでありましたので、新たな土地計画利用が策定をされまして、昨年八月、政府として沖縄市長から説明を受けたところであります。その際、政府としては四つの観点、すなわち観光客の誘致、投資環境整備、金融スポンサーとオペレーターの連携、行革努力の継続等の検討条項をお伝えをして、沖縄市長からこれについて責任を持って取り組むという表明があって埋立事業を実施することにいたしました。
 沖縄市は、高い失業率や市域の三六%を基地が占めてまとまった開発用地が不足しているという状況もありますので、東部海浜開発計画による地域活性化及び雇用創出の観点からこの事業を極めて重要なプロジェクトと位置付けておるという状況の中で、そういう裁判が出たこと、前の判決で御指摘の部分を受けてしっかりとそれに対応するということで政府として対応しているところでございます。
○委員長(岸信夫君) 紙君、時間が来ておりますので、おまとめください。
○紙智子君 とにかく、これ、裁判で審理が始まろうとしているときに埋立てだけはどんどん進んでいくということが本当に妥当なのかと。私は妥当だとは思いませんよ。そういうことはもう絶対許されないと。私は改めて工事を中止すべきだということを重ねて要求しまして、質問を終わります。