<第179回国会 2011年10月27日 農林水産委員会>


TPP交渉離脱論はごまかしと追及、諫早開門・福岡高裁判決の履行を求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 TPPについてお聞きします。TPPが我が国と国民にどういう影響をもたらすのか、これいまだに国民には正確な情報が伝わらないままです。与党民主党では学習会が行われたり議論されているようですけれども、肝心の国民への説明責任は果たされておりません。当初、是非についてはいろいろありますけれども、国民フォーラムというような形で要するに国民に対する説明とやり取りの場を設けていくということを言われたわけですけれども、これも震災後はほとんどやられていないわけですね。国民の中でもこの理解も納得もない中で、今、野田政権は十一月のAPECに先立ってTPP交渉参加の結論を決めようとしている。これは余りにもやはり拙速ですし、受け入れ難いというふうに私思います。この点で、まず農水大臣の御認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(鹿野道彦君) 先生の言われましたことは、やはりもっとこれだけの重要な問題であるから情報を国民にしっかりと提示することだということでございますが、私も、過般来の関係閣僚会議におきましても、情報をまず提示する、そのことによって初めて議論がなされていくんだと。特に、市場アクセスだけではなしに、その他のいわゆる二十一の分野等々についてもいろいろ議論されておる、交渉されておるというふうなことも聞くわけですから、できるだけ情報を提示すべきであるというふうなことだけは私からも申し上げておるところでございます。
○紙智子君 APECまで期限は切らずに、期限を切るということじゃなくということですよね。
○国務大臣(鹿野道彦君) 期限を切るというふうなことにおいては、言わば我が国の外交交渉を行う上におきましては、足下のことも含めますと決してプラスになることだけではないというふうに私は思っておりまして、そういう意味では、しっかりと議論をするというようなことが大事だということも野田総理自身も申されているわけでありますから、議論をするというふうなことであり、また期限を切るというふうなことは、私自身は基本的には慎重にあるべきだと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 次に、外務省に確認をします。
 TPPの基本点についてなんですけれども、TPPのスタートとなったのは四つの国ですよね。シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、この協定でP4というふうに言っています。あくまでもこのP4協定がベースになって、新たに加盟していくためには、加盟国間の関税撤廃、非関税障壁を撤廃するだけではなくて、サービス貿易、政府調達、競争、知的財産、人の移動などの自由化の項目を含んでいるわけで、それを承認して、新しく入れば入るということで、新たに加わる国がこの原則を変えることができないですよね。変えるわけにはいかないわけですよね。そのベースとなっている最初のそのP4ですか、これを変えるということはできないですよね。
○大臣政務官(加藤敏幸君) 紙議員の御質問にお答えをいたします。
 TPP協定は、御指摘のとおり、現行のP4協定を発展させた広域経済連携協定を目指して交渉が開始されたということは御指摘のとおりであります。P4協定に含まれる内容は、様々な分野で現在のTPP協定交渉の議論の一つのベースになっておりますが、P4協定の全ての原則を受け入れると、そういうことが決まっているわけではないと私どもは承知しております。
 また、P4協定では、極めて限られてはおりますけれども、関税撤廃の例外になっている品目があることも事実でありまして、したがいまして、仮に我が国がTPP協定交渉に参加する場合であっても、我が国として全ての関税を撤廃という原則を受け入れるということにはならないと、外務省としてはこのように承知しております。
○紙智子君 幾つかの例外があると言うんですけれども、即時撤廃ということと、それから十年掛けて外していくとか、そのぐらいの中身ですよね。
○大臣政務官(加藤敏幸君) 具体的な関税品目がどうなるかという議論につきましては、これは現在、九か国が、それぞれに相互に、お互いの中身をその二国間だけで交渉をするということを各国とやっているという、もうこれが現状でございまして、九か国においても、他の国が二か国でどういうふうなやり取りをしているかということは、これは一応クローズしているという状況で、私ども日本が、そういうふうな意味で、現実にどういう関税項目についてどういう議論がされているかということについては知り得る今状況にはないので、今先生が言われましたことについても、例外となっている品目があることは事実ですけれども、現実それはどうなのかということについては、各国間のEPAのいろんな状況の中から類推するということはできますけれども、しかということについてはちょっとお答えが今できないということです。
○紙智子君 そういうやっぱり曖昧なことを言っていたら駄目なんですよ。やっぱりあくまでもP4の原則を、さっき発展させるというふうに言いましたけれども、それを踏まえているわけですよ。だから、最初から、いや、関税撤廃はやめにしますよと、こんな議論にはならないわけでしょう。やっぱりあくまでもP4で決めてある関税撤廃、非関税障壁を撤廃というのは、これを土台にしながらやっていくということは、そこはやっぱり原則になるんじゃないんですか。
 もちろん、その九か国が加わって、そのいろんな条件を議論しているのは分かりますけれども、今現にある協定というのはP4ですから、そこを踏まえてやるということでは間違いないですよね、それは。
○大臣政務官(加藤敏幸君) 原則論としてそういう部分が、御指摘のことはありますけれども、我が国がTPP交渉に参加する場合は、全ての品目を交渉の対象とする意思をまず示す必要がございます。交渉の対象として、各国ともセンシティブ品目を抱えており、極めて限られておりますけれども、一定程度の例外的な扱いが認められる可能性はあると、このように考えております。
○紙智子君 あくまでも原則ということで、P4協定を踏まえるというところが基本にあると思うんですよ。そうでなかったらもうめちゃくちゃになっちゃうわけですからね。もちろんその議論というのはその上に立ってあるわけですけれども、そこを私ははっきり、ごまかしちゃいけない、国民に幻想を与えちゃいけないと思うんですよ。それで、そこのところが一番問題なんですね。何か変わり得るかのようなことをいろいろ議論されているんですけれども、そうじゃないと。あくまでもP4が基本にあって、その上にいろんな条件が付いていくというのが今やられている議論なわけですよ。
 それで、カナダは、ですから、チーズと家禽類の肉を関税撤廃しないと表明したわけですよ。それでもって交渉参加を拒否されたわけですよね。ですから、日本が参加する場合も、これ米の関税撤廃は別扱いできるという保証は、これどこにもないと。それが例外なき関税撤廃のTPPなんですよ。
 経団連の米倉会長が十月の六日に北海道の新篠津村に行って、関税撤廃から米や小麦の除外を念頭に置いて、どうしても譲れないと条件交渉するためにも早く参加しなければならないと述べたことが伝えられているんですけれども、これは全く根拠のない話なんですよ。それで、やっぱりこういう根拠のないことを言って新聞も報道すると。そうすると、何かできるんじゃないかと思うわけですけれども、これは違うと。しかも、九か国が参加をして、原則というのはP4のままで、さらにP4協定にはなかった電子商取引や投資、分野横断的事項などを加えてグレードの高い協定にしようということですよ。
 先ほどから議論になっていたわけですけれども、政府・与党は、まずTPPの交渉に参加をして、日本に不利益ならば抜ければいいというふうなことを言っているわけですけれども、これは実際にはできないんじゃないですか。外務省にお聞きします。
○大臣政務官(加藤敏幸君) 途中でTPP協定交渉参加後離脱できるのかできないのかと、こういうふうな御質問にも類すると思いますけれども、これは午前中もお答えいたしましたけれども、TPP協定については、仮に交渉に参加した場合、協定が我が国の国益に沿ったものになるよう最大限の努力をすることは当然として、交渉の結果、仮に協定が我が国の国益に全くそぐわないものとなる場合に協定に加わらないという判断をすることについては、論理的にあり得ない話ではないと。
 さらに、経済連携協定のような国際約束においては、最終的には国会がその締結を承認しない限り、我が国について発効することはございません。その意味では、我が国がTPP協定に加わるか否かは最終的には国会も含めた政治判断になるものと、このように理解しております。
○紙智子君 理屈の上ではあり得るけれども、しかし実際上どうかと聞いたんですよ。
 もう一つ聞きますけれども、実際に日本がTPPに加わる場合は、これ仕組みとして、米国議会の同意がなければ入れない仕組みですよね。いかがですか。確認します。
○大臣政務官(加藤敏幸君) その点につきましては、TPP協定交渉に新規参加国が加わる場合、米国政府は、新規交渉参加国との交渉開始の少なくとも九十日前に米国連邦議会に交渉開始の意図を通知し、議会との協議を行うことにしております。我が国がTPP協定交渉への参加を表明する場合にも、このような議会への事前通知等が行われるものと見込まれますし、他の国に対しての承認も必要となると、こういうことです。
○紙智子君 ですから、理屈の上では離脱もあり得ると言うんですけれども、実際上、アメリカの議会で承認されて入ったと。それを途中で抜けるなんていうことは、もしそういうことになったら大変な事態になるんじゃないですか。政治的にも、それから国際間の信用という問題でも。これは理屈の上ではそうなると言うんですけれども、できると言うんですけれども、実質的には、実際には、これやるとなったら大変な難しい問題なんじゃないんですか。
○大臣政務官(加藤敏幸君) その点につきましては、玄葉大臣の方も過日答弁の中で、そのような事態が発生したときに起こり得る国益の損害、デメリット、またしかしそれは国益を追求しての判断ということも含めて、どういう状況で起こり得るかは今の段階で想定、予想はできませんけれども、それはそれなりの大きなことであると。
 それともう一つは、米議会との関係におきましては、あくまで今私が御紹介した九十日前ルールというものは、米国の議会と米国の政府との基本的な関係を表している状況であって、米国の議会での中身が我が国の政府との関係でそごを来すということについては、私は、先生御指摘のことについては私どもは少し受け止め方が違うと、このように思っております。
○紙智子君 今の答弁は全然納得できない議論ですよ。
 それで、更に言いますと、TPPの九か国の中で、実はシンガポールもマレーシアもベトナムもチリもブルネイも既に日本とのFTAを結んでいる国ですよね。FTAを結んでいないのはアメリカとオーストラリアとニュージーランドですよ。だから、これまで進まなかった日米のFTA、これを言ってみればTPPで突破していこうという形にもなって、アメリカとの関係でいえば実質的な日米のFTAということになるわけですよね。
 それが今、米国議会の、議会と国との関係というようなことを言ったんですけれども、実際上は、日本が入るに当たっては議会の中で承認されなかったらこれは受け入れられないということになるわけじゃないですか、実際上は。そうですよね。
○大臣政務官(加藤敏幸君) 米国の議会が承認されなければ米国政府はこの交渉に日本が加盟することについて承認をしないと、仮にそうなった場合には、交渉、加盟することはできないと、これはそのとおりであります。
○紙智子君 ということは、アメリカの要求をのまなければ初めから交渉資格も与えられない可能性もあるわけですよね。
 政府の出している想定問答集というのを先ほど山田議員が紹介されて配られていましたけれども、この中身を見ますと、この回答の中で、二番目のぽつのところですけれども、牛肉の輸入規制や遺伝子組換え食品の表示ルールについては、現状は議論されていないが今後提起される可能性も排除されないと説明しているわけです。これは、今議論されていないというのは日本は加わっていないから当たり前で、日本が参加するということになったら議論されて問題になっていくわけですよね。これは九月に、日米首脳会談のときにオバマ大統領から日本に対して牛肉の輸入規制で現在の二十か月齢を三十か月齢に緩和をしてほしいと迫られているわけですけれども、こういう問題もTPPに入るためにはのまざるを得ないということになるんじゃないですか。
○大臣政務官(加藤敏幸君) 日米間の交渉がTPP協定の交渉参加の大きな原因とか要因とかになっているということでは、私どもはそういうふうに受け止めてはいないんです。
 したがいまして、先生の御質問の中で、例えばBSE問題に関して私どもの考え方を申し上げれば、我が国でBSEが発生し対策を開始してからちょうど十年が経過しておりますけれども、国内の検査体制や輸入条件といった対策全般について最新の科学的知見に基づく再評価が必要になっているという、これが私どものベースラインでありまして、その後、九月の日米首脳会談ではオバマ大統領からこの問題につき提起があり、双方が受入れ可能な解決に向けて協議を継続していくことを確認をいたしました。
 米国のみならずカナダ、フランス、オランダ等からも要望を受けておりますけれども、政府といたしましては、我が国独自の問題として検討を行っているということでございます。
○紙智子君 継続していくという話なんですけれども、いずれにしても、はっきりとそういうふうにはならないんだということは言っていないわけですから、本当にそういう意味ではどうなるかということを含めて先が見えない話になっているわけですよ。
 結局、先ほども紹介がありましたけれども、除外品は認めるなというアメリカの国内でも大変強い圧力が出てきている中で、やはり日本にとってメリットになるものは何もないじゃないかと、そういうTPPについては私は断念すべきだということをはっきり申し上げておきたいと思います。
 次に、基本方針、行動計画について農水大臣にお聞きします。
 大臣の所信的挨拶の中でも触れられていたわけですが、菅前政権時代も今の野田政権も、TPPに参加しても農業との両立は可能なんだと、そのために農業の構造改革をする必要があるということを言ってきたわけです。いよいよ十一月に米国にこのTPPの答えを出すということで、基本方針について急がせたというふうにも私たちは受け止めているわけですけれども、この点についての農水大臣の認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 紙先生から、受け止めているということでございますけれども、これは新聞とかテレビでいろんなことを報道しているということもある程度そういう受け止め方をなされておるのではないかなと思っておりますが、私どもは明確に申し上げておるところでございますけれども、この食と農林水産業の再生の基本方針と行動計画というふうなものは、TPPに参加する、しないにかかわらず推進をしていくことだと。私が言っているんじゃないんです、私が言っているんじゃないんです。すなわち、その責任者である戦略担当大臣、そして経済連携のいわゆる会合におきましても、そのことは確認をされているということだけ申させていただきたいと思います。
○紙智子君 野田総理自身が高いレベルの経済連携と両立を図るということを言われ、鹿野大臣も参加をしてこれまできた食と農林漁業の再生実現会議、この中で昨年の閣議決定で、包括的経済連携に関する基本方針、この上に立って、高いレベルの経済連携の推進と我が国の食料自給率の向上や国内農業・農村の振興と両立をさせて持続可能な力強い農業を育てるための対策を講じるということを目的として議論してきたと。
 この高いレベルの経済連携ということをめぐっては、これが一体TPPは入らないということなのか、あるいはその中身というのはいろいろあると思うんですけれども、やっぱり今回私たちの受け止めというのは、いずれそこにつながっていくものだというふうに受け止めざるを得ないわけですよ。
 それで、今回のこの基本方針、行動計画の中では、非常に問題な点が幾つか、連携させていくということでは、両立させていくに当たって言われているところがあるわけです。
 一つは、土地利用型の農業について、規模拡大を平地では二十から三十ヘクタール、中山間地では十から二十ヘクタールの規模が大半を占める構造を目指すというふうになっています。農地の集約化を図っていくと、そのために担い手、農地、生産対策、関連組織に関する仕組みの見直しを挙げているわけですよね。
 これは、現在、水田の稲作農家にしてみますと、約百七十三万戸あるわけですよ、農家戸数が。その全体で面積が二百万ヘクタールあるわけです。百七十三万戸で二百万ヘクタールを担っていると。その稲作農家の平均面積を、じゃ三十ヘクタールにした場合どうなるかというと、これ単純計算ですけれども、農家戸数でいうと六万六千戸ということになるんです。六万六千戸の農家が平均三十ヘクタールの規模で営農して日本の稲作がカバーできるということになると、百七十七万戸引く六万六千ということになると百六十六万戸、九六%の農家というのが必要なくなっていくということになるわけですね。これは十ヘクタールということでやっても八八%はそこから消えていくということになるわけですよ。
 これは、やっぱり農家がなくなるということは農業、農村の振興にはならないし、地域の疲弊につながることなんじゃないでしょうか。いかがですか。
○大臣政務官(森本哲生君) 紙委員の理論的におっしゃることも数字的にはそのような状況になるというふうには、それは同感でございます。
 ただ、中山間地域とか、私は中山間地域と大きい面積を抱えた両面を持っておる地域に選挙区があるわけなんですが、やはり今若い方々が生活をしていこうと思うと、今の体制でもたないことは事実でございます。私も中山間地におりますが、平均大体〇・五ヘクですから、大体、圃場整備をした区画でも十アールから広いところで三十アール、しかしそれと比べて一ヘクタールの圃場、極端な例があるわけなんですが、しかしどうしても若い後継者を育成しようと思えば、やはり二十、三十というものはこの平地ではやっぱり確保しなければなかなか生活できていけない、会社経営もできていかないというような状況が現にあります。
 ですから、そこのところへ近づけていこうという対策と多様性に富んだ農業をどうするか。これは複合経営とも以前は申しておったか分かりませんが、例えばお茶とシイタケ、それと水稲を掛け合わせるとか野菜を掛け合わせるとか、いろんな六次産業化を含めた対応と同時に、やはりどうしても拡大もしていかないと、なかなかこの農業というものが二十一世紀生きていけないというような、そんな現実にあります。
 ですから、そこのところの経営と、これからどのように私どもがその集積を含めて担い手をつくっていくかということも重要な課題でございますので、非常に難しい課題と直面もいたしますが、そこのところはしっかりこれからやっていかないと日本の農業は大変になる。ですから、兼業農家を含めた農業の育成、六次化を含めた育成と大規模化というものは図っていかなければならないと、そのように考えて今回の計画を行ったところでございます。
○紙智子君 ちょっとこれに対するまたあるんですけれども、それはちょっとおいておいて、もう一つ聞きたいのが自給率についてです。
 平成二十二年三月の閣議決定で、食料・農業・農村基本計画に基づく自給率五〇%達成を目指すと、これ書いてあるわけですよね。これ自体は、私たちもちゃんと目標を決めてそこに向かって努力しなきゃいけないというふうに思っているんですけれども、具体的に、じゃどのように五〇%は達成するのかと。特に、もしTPPということになりますと、これ関税撤廃して、自給率というのは向上していかない、両立はしない、必ずこれは下がることになるというのは私もこの当委員会で何度も指摘してきたんですけれども、戦略作物に位置付けている麦や大豆なんかも関税撤廃すると本当に九割これ縮小するということになるわけで、五〇%そのものがお題目になると思うんですね。ここのところはどうするのかというのは、一言でちょっとお願いします。
○大臣政務官(森本哲生君) ただ、TPPに参加ということの中で農業政策を考えた場合に、五〇%の達成は、恐らくこのジャポニカ米、一番最低の価格でもキロ六十円とか、これは、百六十円とか、いろいろな二つの数字が出ておりますけれども、その中間を取ったところで一兆五千億程度の水稲だけで必要になってくる部分がありますから、これは大変なことになるというふうな認識です。
○紙智子君 ですから、先ほどの規模の問題も、いろんな例えば六次産業とかって言ってはおられるんですけれども、大方針がやっぱりこういうふうに二十から三十、あるいは中山間地で十から二十というふうに、大方針としてそういう大規模化の方向に進むということを打ち出しているということは、いやが応でもそういうところに集約されていくということになって、そうすると、さっき言ったように地域の担い手がどんどんと減っていくということにつながっていくわけですから、これは私は、幾ら両立といってもとてもじゃないけどこれはできないということは明らかだと思うんですよ。
 農業の体質強化、競争力強化ということなんだけど、結局、その両立論でという中身はこういう拡大というところに、規模拡大というところにありますし、多くの農家を切り捨てるということにつながっていくという点では、これは私は自民党小泉政権時代の構造改革と変わらないというふうに言わざるを得ません。
 それから、地球規模での飢えと食料危機を打開しなきゃいけないということでは、これ自体が国際的な課題なわけですよね。それとの関係でいっても、やっぱり本当に今食料主権ということで、その方向こそが大事だというふうに思うわけです。
 昨日、集会が、大集会が開かれて、TPP反対ということで、農業団体だけじゃなくていろんな分野からの皆さんが参加をして、やっぱり本当に効率一辺倒じゃなくて本当にその地域隅々まで行き渡っていく、そういう政策にならなきゃいけないということで集会が行われたわけです。そういうものもしっかり受け止めてやっていかなきゃいけないというふうに思うわけです。
 それで、ちょっと済みません、時間の関係で、最後もう一つ質問したいのは、諫早湾の干拓事業についてです。
 昨年の十二月、福岡高裁は国に対して三年以内に諫早湾の干拓排水門の開放を命じる判決を下して確定をしました。この福岡高裁の判決が出てから十二月で一年になろうとしているわけです。
 大臣は、これ、原告の方にお会いになりましたか。
○国務大臣(鹿野道彦君) お会いしておりません。
○紙智子君 なぜお会いにならないんですか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 私が、九月の二十三日でございますけれども、いわゆる諫早問題におきます環境アセスメントの準備書素案につきまして、長崎県に参りましていろいろ具体的な意見交換を行ってまいりました。そして、このことにつきまして当然、今申されたとおりに、高裁判決に関するこの原告弁護団の方々との話合いというふうなことにつきましては筒井副大臣が担当してまいりまして、いわゆる高裁判決に関する法的な考え方につきましても、より詳しい内容を伴うというふうなことも含めて、次の日でございますけれども、私の代理人として農水省の考え方を説明をいたしたと、こういうふうなことでございまして、そのようなことから筒井副大臣がお会いをしたと、こういうことでございます。
○紙智子君 大臣自身がなぜ会わないのかということを私、聞いたんですよ。副大臣が会っていろいろ話をしているのは私も知っていますけれども、やっぱり直接大臣がお会いになるべきだと思いますよ。
 今までだって、例えばC型肝炎とかB型肝炎とかは、訴訟になって、そして判決が出たときには必ず大臣が直接会ってその原告の皆さんから話を聞いてやっぱり真摯に対応するということをやられてきたと思うんです。その勝訴側の権利者である原告は、この福岡高裁の判決を速やかに履行するために大臣との協議を要求しているんですよ。会いたいと、直接。大臣は、権利者が何を求めているかということを真摯に直接聞くべきだと。
 ところが、私が驚いたのは、原告の皆さんの協議に応じることをせずに長崎県に出掛けていって、この間、長崎の方には三回も会って話していますよね。その中で制限開門ということを提案すると。これはちょっとびっくりしたんですよね。どのケースがいいかということをいろいろ議論されている中で、もう大臣の方から制限開門だという形で提案したと。原告の皆さんは、やっぱり干拓地の農家と対立しようなんということを全然考えていないわけですよ。むしろ、そうじゃなくて、漁業も農業も発展する方向を目指したいと、そのためにやっぱり解決のために力尽くしたいというふうに言っているわけで、そういう原告と会う努力をしないで一方的な制限開門ということを提案するというのは、これは裁判で勝利した原告団に対して背を向けるものだというふうに思うんですよ。是非、直接お会いして話をしていただきたいと思いますけれども、最後にそのことを。
○国務大臣(鹿野道彦君) 今後とも真摯に対応してまいりたいと思います。