<第177回国会 2011年8月10日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会>


「根室海峡 日本漁船被害対策を」もとめる

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、北方問題について質問します。
 根室海峡周辺海域でのロシア・トロール船による我が国漁船の漁網そして漁具の破損、紛失、流失などの被害の問題は、これは安全操業協定以降毎年起きております。これまでも度々質問をしてきましたし、政府も対応しているんですけれども、今年の被害がまた昨年の倍になっていると。羅臼町も改めて対策強化を求めています。これまでの被害総額で四千四百万円に上っていて、ロシア側からはどの船がやっているか確認できないとして弁償されないわけですけれども、今後もこういう被害を放置したままでは、漁業者はますます困難になってしまいます。
 政府としてどう対策強化をするのか、水産庁、外務省、それぞれ端的にお答えいただきたいと思います。

○政府参考人(佐藤正典君) 御説明いたします。
 根室海峡におきますロシア連邦の大型トロール漁船の操業につきまして、資源への悪影響の懸念に加えまして我が国漁船に漁具被害が生じておりますことから、枠組み協定の毎年の協議などで累次にわたりロシア側に自粛を申し入れているところでございます。
 こういうことをしておりますけれども、なかなか状況が改善しないということでございまして、この秋に予定されております交渉の場においても、外務省とも連携いたしまして、更なる漁具被害の防止や漁業資源への悪影響を防ぐための仕組みについてロシア政府に対して強く求めていく考えでおります。

○国務大臣(松本剛明君) 今お話がありましたようなトロール漁船の操業によるものと考えられる漁具被害は深刻な問題となっているというふうに私どもも認識をいたしております。
 政府としては、北方四島周辺水域操業枠組み協定の実施に関するロシア政府との協議においてこの問題を取り上げてきているところであります。漁具被害が発生をした場合に、外交ルートを通じてロシア側に対して実効的な措置を講ずるよう求める申入れを行ってきているところでありまして、ロシア側からは、現地関連当局を通じて漁業関係者に伝達する旨、応答があったところであります。
 今後とも働きかけをしっかり継続をしていきたいと、このように考えております。

○紙智子君 今お話あったんですけれども、ロシア側にその都度抗議し、弁償を求めるとか、協定の話合いの際に強く言っているということで、それは当然のことなんですけれども、結果としては、ロシア側からは、確認できないんだといってこれまで一度も弁償されていないんですね。そのために、全ての被害を漁業者が被るということが続いているわけです。
 領土問題がこれ未解決であるということが全ての要因なんですけれども、すぐに解決できないんであれば政府が弁償してくれよというような声も上がっているような事態なわけです。それで、領土問題解決の運動を担っている人たちが本当にその力がそがれることがないように、真剣にこれは対応していただきたいというふうに思います。
 加えてなんですけれども、北方四島でこのロシアの実効支配が強められているということは、私も昨年のビザなし渡航で実感をしていますし、この間、北海道新聞がかなり詳しい報道も明らかにしてきていて、いろいろあるんですけれども、北方四島での例えば農場で中国人労働者が雇われて働いているとか、韓国資本による重機を使った道路工事だとか、そういう外国資本も入ってきているということで、一体どういう実態にあるのかということについて、その実態を外務省は把握をしてきちんと対応しているのかどうか、これについて伺いたいと思います。

○国務大臣(松本剛明君) まず、私どもの北方領土についての立場を改めて申し上げるまでもないと思いますが、その立場に基づきますと、ロシアの管轄権を前提とした第三国国民の北方領土への入域、同地域での活動については、北方領土をめぐる我が国の立場と相入れないものと申し上げなければなりません。
 他方で、北方四島がロシアに法的根拠なく占拠されており、現地における第三国人の活動について把握することには一定の制約があるところではありますが、北方領土をめぐる動きを注視をして必要な情報収集を行ってきているところであります。その上で、第三国の国民の活動が確認をされる場合には、領土問題に関する我が国の法的立場を確保すべく、関係者に対して申入れを行うなど対処をしてきているところであります。

○紙智子君 実態の把握というだけじゃなくて、こうやって止めているんだということをやっているのであれば、現地の根室を始めとした周辺の方々にもそのことが伝わるようにしてほしいと思うんですね。何かもうやられっ放しじゃないかという不安をますます大きくしているということがあって、そのことについてはきちっと伝わるようにしていただきたいと。
 それからもう一つ、この間なんですけど、根室市が求めてきています経済交流について、その内容についてはどのように検討されているのか、外務大臣にお答え願いたいと思います。

○国務大臣(松本剛明君) 御案内のとおり、北方四島における共同経済活動については、二月の外相会談で日本側から提案をさせていただきました。今回、七月の二十七日の日ロ次官級の協議でこれについて議論を行ったところであります。申し上げるまでもないことでありますが、我が国の法的立場を害さないことが確保される必要があることを明確にしつつ、どのような活動が可能なのかということを日ロ間で検討していくことになったということでございます。
 今の直近の現状はこのような状況でございます。

○紙智子君 煮詰めていく作業というのもあるんだと思うんですけれども、やっぱり一市四町、周りの人たち含めてしっかり意見が反映されるようにしていただきたいということを一言申し上げておきたいと思います。
 それと、先日、衆議院の参考人質問で、北対協の融資制度における承継問題についての要望が出されていました。それで、元居住者の事業とその生活安定を図ることを目的とした融資制度なんですけれども、対象は一世と。それを支える二世、三世は一人に限定されているので、これ複数に承継できるようにしてほしいという要求です。
 貸付限度額を残していて実際には使い切っていないということもあるようですけれども、積極的にこれ対応すべきじゃないかと思いますが、これ枝野担当大臣に伺います。

○国務大臣(枝野幸男君) 北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律に基づき実施しております独立行政法人北方領土問題対策協会の低利融資事業は、一世世代の方の事業や生活に対する支援として始められたものと承知をしております。したがって、融資資格の承継についても、一世世代の方々の生計を支えるという観点から、その方々の生計を支える子又は孫のうち一名に限り認めることと現在されているものでございます。
 この承継制度は平成八年に議員立法で導入されたという経緯もございまして、もしこれを改正するとすれば、是非立法府で御議論いただければというふうに思っております。
 なお、政府としては、本年四月から、利用者である元島民の方々等の御要望にこたえ、一部の資金の貸付限度額の引上げや承継に必要な生計維持関係の認定基準の緩和等を行ったところでございます。

○紙智子君 もちろん立法ということでは、議員立法なのでそういうことがあるんだと思うんですが、議員立法だから無関係じゃなくて、やっぱりその担い手をいかに広げていくかという観点で検討していただきたいというふうに思います。
 それから次、沖縄の振興について聞きます。
 次期の沖縄振興の仕組みづくりなんですけれども、沖縄の現状をどう見るのか、多面的に把握していくことが大事なわけです。基本的な指標として、政府や県も、沖縄の完全失業率が本土復帰以降常に全国で最悪の水準にある、一時は全国の三倍以上で、現在七%程度で推移している点、それから、県民所得は全国最低などを挙げています。それから、雇用が増えたといっても非正規が中心と。こういう経済的貧困を背景に、沖縄の子供たちの貧困問題が専門家からも厳しい現状認識が示されています。
 先週、衆議院での山内優子参考人の陳述に改めて衝撃を受けたんですけれども、高い失業率、高い離婚率、それで沖縄の児童福祉対策の立ち遅れで、保育所や学童保育、児童館それから母子福祉施設などが本土に比べても極端に少なくて子供たちにひずみが寄せられていると。それで、少年非行も、徘回、飲酒、怠学などいずれも全国平均の二倍から七倍で全国ワーストと。
 こういう児童福祉の立ち遅れと格差解消の重要性について、今後の沖縄振興において児童福祉の基盤整備、ここに予算も抜本的に振り向ける必要性があるんじゃないのかということで、大臣にこの認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(枝野幸男君) 御指摘のとおり、沖縄県においては、例えば待機児童の割合が全国で最も高い、あるいは養育力の不足している家庭の増加が指摘されているなど、子育て環境について大変大きな課題があると認識をいたしております。特に私は、沖縄のアドバンテージの一つは全国と相対的に見ますと若い県であると、この若い世代の養育の環境が良くない状況にあるということは、沖縄の振興にとっても大変大きな意味でも問題があると思っております。
 このため、内閣府沖縄振興局では、平成二十年度に保育所入所待機児童対策特別事業基金を設置し、認可外保育施設の認可化の促進等の取組を推進しています。また、現在検討中の新たな沖縄振興においても、沖縄県から、これまでの取組を踏まえ、新たな子育て支援制度として、待機児童解消等のため、認可保育所、認可外保育施設、放課後児童クラブ等に対する支援を強化するよう要望が出されております。
 これまでの沖縄振興予算でも子育て環境の支援のための予算の確保を図っておりますが、今後とも、沖縄県の要望等を踏まえ、厚生労働省とも相談しつつ、沖縄における子育て環境の整備など児童福祉の向上に努めてまいりたいと思っておりますし、さらには、その背景にございます、先ほどもお答えをしました失業の問題あるいは働いている方の労働の質の問題、雇用の質の問題等についてもしっかりと取り組むことによって、沖縄における子育ての環境の改善、大きな重要なポイントとして取り組んでまいりたいと思っております。

○紙智子君 一九七二年の本土復帰以降、四十年間にわたって、九兆九千億円を投じて沖縄の開発、沖縄振興を行って、道路や空港や港湾やダムなど社会資本整備は進んだんですけれども、その一方で、児童福祉の本土との格差是正が進んでいないという現実があるわけです。
 山内参考人は、沖縄振興予算のせめて一%を子供たちにというふうに訴えております。新しい振興計画に子供の振興計画をということで、SOS沖縄子ども村建設、それから母子生活支援施設の増設、夜間保育、夜間学童の充実などを要望されているわけですね。是非こういう専門家の声も反映して、厚生労働じゃなくて振興の施策の中にこういった位置付けも抜本的に組み入れてほしいということで、ちょっともう一言、大臣、お願いします。

○国務大臣(枝野幸男君) 私は、日本全体を考えると、いわゆるインフラ整備ということに力を入れる時代はもうとっくに終わっているというふうに思っております。ただ、沖縄においては、この復帰までの様々な経緯等を考えると、これまでは道路等の基盤整備のところにウエートを置いて進めてきたというのは、いろんな客観状況からやむを得なかったのではないかというふうに思っております。
 ただ、今日の委員会の質疑でも複数の先生方から御指摘いただいておりますとおり、いよいよ沖縄も、インフラ整備もまだ必要なところ多々残っているかというふうに思っておりますが、そこに暮らす人たちの生活の質を直接的に向上させる、その中でも特に労働の、雇用の質あるいは雇用の場所の確保、そして、特に次世代を担うお子さんたちの育っていく環境の整備というのは、御指摘のとおり、単なる福祉の問題にとどまらず、沖縄の振興にとっても重要な課題であるというふうに思っております。

○紙智子君 沖縄経済の自立のために農業振興も大きな柱だというふうに思います。サトウキビやゴーヤーなどの生産に力を入れてきたわけですけれども、輸送コストが非常に高いという問題がずっと指摘されているわけです。
 JA沖縄中央会によりますと、ゴーヤーは経営費の四六%が輸送コストだと、非常に経営を圧迫しているということですね。鹿児島並みの輸送コストになるように流通条件の不利益性を解消してほしいという要望も出されているわけですけれども、これについても検討すべきではないでしょうか。

○国務大臣(枝野幸男君) 一般的にこれまで沖縄県は、大消費地から遠く、また島嶼県であることから、農林水産業振興を図る上で流通コストの低減を図っていくことが重要な課題の一つであったというふうに認識をいたしております。今後もこうした側面は残っていくだろうというふうに思っておりますので、沖縄振興計画あるいは沖縄農林水産業振興計画に基づく集出荷施設の整備等の施策あるいは流通コストの低減に向けた施策は、今後の沖縄振興においても重要な課題として取り組んでまいらなければならないと思っておりますが、同時に、東京を軸にして物を考えますと沖縄県は大消費地から遠いということになるわけですけれども、アジア全体のマーケットをこれから展開して考えていくときには、むしろ沖縄は日本の中で最も消費地に近いという有利さを持っています。こうした有利さを生かしていけるような沖縄振興に取り組んでいくことによって、農林水産業においてもアジアの中に消費地を求めて発展していく余地が十分にあるのではないかと私は思っております。

○紙智子君 沖縄振興対策、これ米軍の問題というのもありまして、基地問題を対象にしていないというのは違和感を感じるわけですけれども、最後、沖縄振興の重要な節目の時期であるということは本当にそのとおりであって、幅広い観点からの議論が必要だというふうに思いますので、衆議院に続いて当委員会も是非参考人質疑の機会を持っていただきたいということを最後に委員長にお願いいたしまして、質問を終わります。

○委員長(中川雅治君) 理事会において協議いたします。