<第177回国会 2011年7月26日 農林水産委員会>


○農林水産に関する調査(牛肉・稲わらからの暫定規制値等を超えるセシウムの検出に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 肉牛のセシウム汚染問題についてお聞きします。
 まず、はっきりさせたいのは、この問題の責任がどこにあるのかということです。
 肉牛生産者はよもや給与している稲わらがセシウム汚染しているとは思わなかったわけです。白河で生産された稲わらがセシウムに汚染するなどということは考えもしなかったわけですね。先ほどあったように、三月十九日に農林水産省が出した通知、原子力発電所事故を踏まえた家畜の飼養管理について、これを見ますと、大気中の放射線量が通常よりも高いレベルで検出された地域においては、以下に留意することというふうにして、確かにその中で、干した牧草ですね、サイレージを含む、を給与する場合は、事故の発生前に刈り取り、保管されたもののみを使用することというふうになっています。しかしながら、放射線量が高い地域かどうかということについては官邸のホームページのデータを見てくださいというふうになっているわけですね。これは畜産農家の皆様へという文書の中でも同じなんです。ということは、ホームページを見なければ、畜産農家がパソコンを持っていなければ、自分の地域が放射線量が高い地域なのかどうかも分からないと、そういう通知文書になっているわけですよ。
 それで、農水大臣、こんな通知文書で本当に肉牛のセシウムの汚染を防げるというふうに思われたでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 基本的に、今までの考え方というふうなことからするならば、先ほど来から申し上げております三月十九日の通知、三月二十一日のホームページでのいわゆる周知、そして三月二十五日の福島県のホームページでの周知、四月十八日の適正なる飼養管理のチェックリストでの確認するようなことを福島県に通知をすると、四月二十二日については、放射性の物質の定点調査結果に基づく飼料利用についての通知と、こういうふうなことで具体的な措置を講じさせていただいたわけでありますけれども、これはいわゆる今までの取組からするならば、こういうことで言わば通知、周知が徹底されるんではないかと、こういうような思いの中でやってきたということでありまして、しかし、現実それが徹底していなかったと、周知が徹底していなかったというふうなことならば、このことを真摯に受け止めて今後のこの周知というふうなものの在り方を、これを改めていかなきゃならないと、こういうふうなことだと思っておるところでございます。

○紙智子君 つまりは、あれですよね、事故を起こして放射線を放出させた東京電力という責任があるのと、もう一つは、この稲わらの問題でいうと、周知徹底しなかったという点では、やっぱり農水省、国の責任ということがあるわけですよね。それはそういうことでよろしいんですね。

○国務大臣(鹿野道彦君) 基本的に、いわゆる今までの取組の中でこのような、今申し上げたような通知をやっていけばそれは周知徹底されると、こういうふうな認識で取り組んできたところでございますけれども、それが結果として周知されなかったということでありますから、その反省に立って、今後の飼養管理等々の徹底についてはあらゆる角度から農家の人に行き渡るようにしていくというふうな措置を講じていかなきゃならないと思っているところでございます。

○紙智子君 その責任を認めて、反省してこれからやっていくという話だったと思います。
 それで、生産者団体は全頭検査を求めていて、これ当然な要求だと思います。既に県やJAグループなどが自主的にこれを始めているということでもあるわけですよね。これを進めていく上で、もう議論の中で既に出ておりますけれども、検査機器の早急な整備という問題、これが必要だということ。それから、検査料を生産者に求めれば、これは到底経営が成り立たないということでありまして、政府として生産者に負担のない形で責任を持った全頭検査の実施を行うべきだと、いろいろ対応策というのが出されているんですけど、そこのところはいかがでしょうか。

○副大臣(篠原孝君) 先ほどから答弁しておりますように、ゲルマニウム半導体検出器や簡易スペクトロメーターについては早急に手当てするようにしているところでございます。
 それから、検査費用ですけれども、物によりますけど、大体二万円近く掛かると。これは原発災害にかかわる相当な因果関係がある費用でございますので、当然東電の賠償対象になりまして、農家の負担には一切ならないようにしていくつもりでございます。

○紙智子君 それから、今回の肉牛のセシウム汚染問題というのは、これはBSEによる肉牛生産に与えた打撃を上回るんじゃないかということも指摘されているわけですが、この汚染牛の国の買上げ、それから出荷停止となっている福島県内の肉牛生産者への餌代の支援、それから子牛の価格の暴落に対する支援、肥育農家に対する経営支援など、これも今議論されてきているわけですけれども、BSEのときに行った総合的な経営の支援を早急に実施すべきだと。三つの対応ということで先ほど出されてはいるんですけれども、私も見た瞬間に、国はどうかかわるのだという感想を率直に思ったわけです。
 それで、取りあえずは買い取って、買取りとかは民間でやってもらうけれども、最終的には東電の賠償でという形になるんですけれども、今もそうなんですけれども、東電が責任を持つんだと言いながら、ずっと待たされる状況、こういうことはやっぱり避けなきゃいけないというふうに思うんです。そこのところをやっぱり被害を受けた方が被らないような形で国がどう責任取るのかということが問われているわけで、そういう総合的な対策、支援を含めて、どうするのかということについてお述べいただきたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今先生から御指摘のとおりに、いわゆる農業、農家の人たち等に実質的な負担が掛からないようにというようなこと、そしてやはり安全なものきり出回らないというようなこと、それから、基本的にお金が入らない、動きの取れない、そういうような状況の中で、実質的に現金というふうなものが動き回らない中で、農家の人なりあるいは流通業の方々に対しての施策と、このようなことから今回この具体的な措置を講じさせていただいたものと思っておるわけでございますので、こういう緊急的な措置が現実的な形で実施されるようにしていかなきゃならないと、こういうふうに思っておるところでございます。

○紙智子君 それから、問題は牛の内臓についてなんですね。牛の内臓も筋肉組織と同じようにセシウムに汚染されているわけです。ところが、牛の肉はトレーサビリティーの対象になっているんだけれども、内臓についてはその対象からは外れているわけです。
 これ厚生労働省ということになるんですけれども、今回もその回収対象になっていませんね。それでは国民の健康を守れないんですけれども、厚生労働省が七月十八日付けの社団法人日本食品衛生協会、日本食肉加工協会にあてた事務連絡の中で、汚染肉の流通留め置き保管、保健所への報告というのを求めている文書が出されていますけれども、この中に内臓というのは対象になっていませんよね。なぜ、これ内臓は放置しているんですか。

○政府参考人(梅田勝君) 屠畜場段階の検査において暫定規制値を超える放射性物質が検出された牛の内臓については廃棄措置がとられ、流通しておりません。一方、流通段階において暫定規制値を超える放射性物質が検出された牛肉と同一個体に由来する内臓につきましては、これはもう議員も御指摘のとおり、牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法において表示義務の対象とされていないため個体識別番号が表示されておらず個体の特定が困難であることから、調査の対象とすることは物理的に不可能でございます。
 厚生労働省としては、追跡可能な牛肉について、全頭の個体識別番号の公表、都道府県における流通調査等を行い、放射性物質濃度の検査を実施しているところであり、引き続き関係者の協力を得ながら調査を進めることとしております。

○紙智子君 これ、ずっと分からないまま流れていっていて、それで知らないで食べてしまったら内部被曝ということになるわけですよね。
 それで、今お話があったんですけれども、農水省としてもこの流通の内臓のトレーサビリティーを早急に取り組むべきじゃないのかというふうに思うんですけれども、農水大臣、これ国民の健康にかかわる問題だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(篠原孝君) 今、梅田食品安全部長から答弁したとおりでございます。
 今のところ、個体識別番号の対象にはなっておりません。肉についてはずっと付いて回るわけですけど、内臓肉や牛脂、それからゼラチン等は対象になっておりません。そういう点では、紙委員御指摘のとおり、BSEのことを考えた場合はそれでよかったのかもしれませんけれども、放射能汚染ということを考えた場合、一緒でございますので、ちょっとまずいのではないかと私自身思っております。
 これにつきましては、米トレーサビリティー制度もこの七月一日から完全施行になりました。昨年三月に策定されました食料・農業・農村基本計画におきましては、米トレーサビリティー制度の施行に伴って全体のトレーサビリティー制度を見直すことになっておりますので、その過程におきまして、米のトレーサビリティー制度それから牛肉のトレーサビリティー制度、この両方の実施状況を踏まえて、検討する過程でどうすべきかということを考えてまいりたいと思っております。

○紙智子君 今、考えていくということなんですけれども、時期的に言うと、じゃ、どの時期でやるのかということなんですけれども、そこまでちょっと。(発言する者あり)そう、急がなきゃ駄目です。

○副大臣(篠原孝君) 次から次にいろいろな問題が生じておりまして、きちんと速やかに対応し切れていない面も多々あるのではないかと思っておりますけれども、可及的速やかに検討してまいりたいと思っております。

○紙智子君 とにかく国民の健康にかかわる問題ですから、知らないうちにもう食べていたら内部被曝になるわけですから、大急ぎでやっていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。