<第177回国会 2011年7月26日 農林水産委員会>


○農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、法案の質問に入る前に、米の先物取引の市場試験上場についてお聞きをします。
 六月にこの問題で我が党として申入れを要請していたんですけれども、大臣からの返事がないまま、七月一日になっていきなり米の先物取引の市場試験上場を認可するということが発表されました。これは非常に遺憾に思っております。
 米に対する政府の管理はなくなっているとはいうものの、先物取引の導入というのは米を言わば投機の対象とすることなんです。ですから、価格の不安定化だけでなくて生産をも不安定にすることになり、我が党としてはこれは反対だと。しかも、JAなどの関係者の意見も十分聞かずにこれ強行したということは問題だと思います。
 大臣は米を投機の対象にしてもいいというふうに思っているのか、なぜこういうふうに拙速に、十分意見も聞かずに決めたのか、お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) まず、今、先生からの面会申入れ等々につきましては、なかなか日程等々が合わず、八日の日にお会いをするということでございましたけれども、これも衆議院の本会議が入ったということでお目にかかることができませんでした。大変失礼をいたしたということを申し上げたいと思います。
 また、お米の先物における取引におけるところの試験上場ということにつきまして今御指摘をいただいたわけでありますけれども、このことにつきまして申し上げさせていただきますならば、この米の試験上場というふうなものにつきましては、東京の穀物商品取引所、そして関西の商品取引所から、今年の三月八日、申請がありました。そして、六月の二十五日までの三か月間、周知を図ったわけでございます。この間、食糧部会、あるいはまたお米の有識者懇談会、あるいはその他米の関係者の方々からも御議論をいただいたわけでございますけれども、私も、自民党さんを始め関係の方々からも直接お話を伺い、生産者団体等の皆様方からもお会いをいたしまして御意見を伺ったところでございます。
 こういう中で、それじゃ、この法律上の認可基準というふうなものを考えたときにどうなのかということでございましたが、今回のこの試験上場に対する判断といたしまして、十分な取引量が見込まれない、あるいはまた生産、流通に著しい支障を及ぼすというようなことを具体的な形で立証するというふうなことはなかなか難しいと、このようなことから認可をするという判断に至ったわけでございます。
 そして、なぜこんなに急いだかということでございますけれども、縦覧期間というふうなものが六月の二十五日に終わったわけでございまして、そういう中で、関係者の方々の関心も高いというようなことから私ども判断をさせていただいたということでございます。

○紙智子君 今、細々と理由を述べられたんですけれども、震災に遭って、本当に必死の思いでみんな復興に向けてそこに集中していて、縦覧期間があったというんですけれども、本当に十分なそういう意味では意見交換とか納得できるような話合いができていたわけじゃないと思いますよ。
 それから、試験上場だからいろいろ、二年間の期間があるという話も大臣されているようですけれども、そもそも国民の主食である米を投機の対象にしていいのかということが、そのことが本当に問われているというふうに思うんですよ。本来、国は、国民の、安定供給、本当に安全な食料のために責任を持っているわけで、そういう観点からいってもそうだし、それから今の震災の中で、作物作れない、米も作れないという状況も国内では生まれている中で、より一層そういう意味では生産も不安定な中にあるわけで、本当に慎重にしなければならなかったと思うんですよ。それがありながら、これを進めるということでやったということは本当に許されないし、私は撤回すべきだと思うんですけれども、いかがでしょう。

○国務大臣(鹿野道彦君) いろいろなお考え等々につきましては、私どもも御意見をお伺いしてまいりました。平成十五年の年でございますけれども、食糧法によりましていわゆるお米も流通統制が解かれているというようなことも含めて、先ほども申し上げましたけれども、申請があるということになりますならば、具体的な認可基準というふうなものを、これをそうではないというふうに実質的に立証できるというものはなかなか難しいというようなことから判断をさせていただいたわけでございます。
 このことにつきましては、私どもとして、冒頭に申し上げた経緯、経過の中で判断をしたということだけ重ねて申させていただきたいと思います。

○紙智子君 先ほどの、投機の対象にしていいかということについては答えられていないんですけれども、二〇〇七年から八年のときに、燃油高騰あるいは穀物の高騰で大変な事態になりましたけれども、あのときにも議論になって、やっぱり基本的に生活に直結するようなエネルギーとか食料とか、こういうものを投機の対象にするべきではないということも議論になったと思うんですよ。だから、そういうことから見ても、改めてそのことをはっきりと申し上げておきたいと思います。
 それから、法案の方に入りますけれども、一部改正案、これについては、被災した農業者やそれから漁業者が再生するためにも、今後の円滑な信用供与を継続させるためにも、農漁協の系統の金融機関を強化するということでいいますと、これは重要なことでありまして、法案には私どもとしては賛成です。
 ただし、いろいろ議論もありますけれども、農漁協だけではなくて、要は組合員をどう支えていくのかと、これを抜きに復興はあり得ないというふうに思うんですね。最もやっぱり切実で急がれている問題が二重債務の対策だというふうに思うんですよ。やはり多くの漁業者や農業者が船や漁具を失い、そして加工施設や農業資材や施設なども失い、経営基盤を失っていると。住宅も流されて、本当に在庫としてあったものも失ってしまっていると。しかし、今まで購入した借金ですとか、こういうものの上に更にこの後新たにスタートといっても、なかなかそれは大変なわけで、二重になるわけですから、だから現地では本当にせめてゼロからのスタートをと、マイナスじゃなくてゼロからのスタートをという切実な声が上がっていたと思うんですよ。これにやっぱりこたえていかなきゃならないということでずっと議論してきていたと思うんです。
 ところが、各党みんな一致して議論してきているのに、いまだにその答えが出ていないというか、対策がまだちゃんとできてきていないということがあるわけで、なぜ今に至ってもこれができていないのかと、二重債務の解決の打開策ということができていないのかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今回の法改正というものにつきましては、先ほど申させていただきましたけれども、被災地において、被害を受けた地域におきまして農漁協等が適切なる金融機関としてその機能を発揮するというようなことのために必要な資本増強だと、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。
 そういう意味で、今回の資本増強というものはいわゆる二重債務問題というふうなものの解決にも必要であるものと、こういう考え方で今後とも進んでいかなきゃならないと思っておるところでございます。

○紙智子君 二重債務の解決の問題というのは、一次補正のときには到底もう緊急のこれだけの対策では間に合わないと、じゃ二次補正でということですごく期待があったんだけれども、二次補正でもなかなか出てこないという経過があったわけですよね。やっぱり、遅れれば遅れるほど復興に向けた体力も失われていきますし、気力もだんだん萎えていくというふうに思うわけです。
 それで、今回、仮設住宅に入れるようになったんだけれども、しかし、実際に入ってしまうと電気代だとか水道料はこれはもう自賄いだということで、お金がないのでやっぱり入るのやめたという話が出たということですよね。こういう事態、深刻な事態というのは、阪神・淡路大震災のときも中越地震のときもそこまでのところはなかったと思うんですよ。今回やっぱり、そういう入ることもできなくなるような困窮した状況というのがあるわけですから、もう本当に一刻も早くやっていただきたいというふうに思います。
 それからもう一つ、これは漁業にかかわっての問題なんですけれども、養殖施設への支援を強化するようにこれまでも何度か求めてきました。それで、一次補正が成立した後、浜を回ったんですけれども、一次補正では不十分だという声でいっぱいだったわけです。例えば、ワカメの養殖に必要な施設は災害復旧事業の対象になるんだけれども、海の水の中のものについては対象になるということなんだけれども、ところがそこから上に上がるとというか、採苗ですとか加工施設については対象にならないということが問題になっていたわけです。
 災害復旧事業の対象にならない陸上の施設に対する支援、これは絶対必要だと思うんですけれども、これについてはいかがでしょうか。

○大臣政務官(田名部匡代君) 先生の御指摘のとおりでございまして、たくさんの関係団体の皆様から御要望をいただいた中で、今回、二次補正の中では水産業共同利用施設復旧支援事業百九十三億、この予算を付けまして、この中で先生が御指摘になられたような陸上の施設についてもしっかりと支援をしていく考えでございます。

○紙智子君 二次補正の中で水産共同利用施設復旧支援事業と、この中でちゃんとやっていくということでよろしいですね。ちょっと返事を言ってください。

○大臣政務官(田名部匡代君) はい。その中でしっかりと支援をしてまいります。

○紙智子君 ワカメの加工に必要な納屋や、百万円すると言われる塩蔵のかまへの支援も必要だというふうに思います。
 それから、今瓦れきの回収が作業をやられているんですけれども、一次補正で予算が付けられたけれども底をついてしまうと。それで、八月にはなくなってしまうという話も出ていたわけですけれども、水産物の水揚げで収入を得るまでの間、二年、三年掛かるわけですよね。当面の収入対策が途絶えると、これ、浜から離れなきゃいけなくなるということでもあります。
 政府として、瓦れきの回収作業を始めとして、途切れることなくやっぱり当面の収入対策を行うべきだと思うんですが、その際に、やはり二次補正で八千億円計上しているわけです。これ、復興予備費というふうになっていると思うんですけれども、これなども使って瓦れきの撤去作業を引き続き続けていくということでの収入源になるような対策として活用するということも必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

○大臣政務官(田名部匡代君) 一次補正の中で、瓦れきの処理などを行っていただく方々に対して百二十三億の予算を付けたわけですけれども、事業再開までにしっかりと国としても支援をしていく、応援をしていくことは大変重要だと思っております。そんな中で、瓦れきの除去の状況がどうなっているのかという現場のこともしっかり把握をしながら、また地域の皆さんの思い、考え方というものもしっかりと受け止めながら今後対策を考えていきたいと思っております。

○紙智子君 私もずっと浜を回った際に、瓦れきの撤去が、やっぱり撤去しているんだけれどもまだまだあるという話を聞いているわけですよ。
 例えば、牡鹿半島のところの浜があるんですけれども、風向きが変わってくると、今まで大分引っ張り上げて取ったと思っていたんだけれども、また流れ込んできて、また取っても取っても出てくるという状況があるんだけれども、予算がもうなくなったという話が現場であったわけですよ。ですから、そういうことを含めて、もちろん掌握するのが大事ですけれども、しっかりと滞りなくやっぱり進むようにしていただきたいと思います。
 もう時間になったんですけれども、もう四か月を震災から超えたわけです。それで、本当に現地に行くと、この被災地の復旧復興というのはなかなか進んでいないという思いが非常に強いわけです。なぜ被災地に復興への希望が見えないのかと。予算があっても漁業者の負担が重くのしかかっているということがなかなか解消されていないということがあるわけです。
 税金でこれまで個人財産の取得や形成はしないということがずっと今までの立場として言われてきたんですけれども、やっぱり振り返ってみても、これまでの中で地震、津波による被害ということでいえば、本当に今までにないほどの大きな規模なわけで、今までの枠にとらわれていたんじゃ駄目ですから、そこはやっぱり超えていくんだということを強くメッセージを出していただきたいということを最後に強く申し上げまして、質問を終わらせていただきます。