第177回国会 2011年5月19日 農林水産委員会


○TPPは復興の妨げ 食料自給率の向上を再生の柱に!
 原発被害の賠償金の早期支払を要求


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、五月十七日に閣議決定をした政策推進指針についてお聞きします。
 この政策推進指針は日本再生の方針を提示するというものですけれども、日本再生に向けた再始動に当たっての基本七原則を明示しています。その中に、七原則と、それから二番目のところで各主要政策の進め方ということでいろいろ書いてあるわけですけれども、これを見ていて疑問に思ったのは、この基本原則に食料自給率の向上という根本原理が全く触れられていないということです。
 今回の震災で、やはり東北の農業、漁業ですね、深刻な打撃を受けているわけで、食料自給率の下落は避けられない状況だというふうに思うわけです。それだけに、東北農漁業の復興とともに日本再生の方向の柱に、食料自給率を引き上げていくということをやはり柱として位置付ける必要があると思うんですけれども、大臣は、これ、柱として位置付けるということにされなかったのはなぜなんでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) この五月の十七日の政府としての方針である政策推進指針というものが閣議決定されたわけであります。これは、今回の大震災におけるこの状況を踏まえて、特に農林漁業が大きな打撃を受けたわけでありますけれども、震災からの復旧復興に全力を尽くすというふうなことが、これが重要であるとして農林漁業再生戦略が位置付けられたということでございます。
 一方、今先生からの御指摘の食料自給率については、昨年の三月にもう閣議決定いたしておるわけでありますから、私どもとしては、今後とも食料自給率の目標達成ということに向けて全力を挙げていくというふうなことでございます。

○紙智子君 既にもう前回入れているからと、当たり前なんだと、だから入れていないということでもあると思うんですけれども、そうではないと思うんですね。
 やはり今回本当に大きなダメージを受けたわけで、むしろこれまでよりも一層そういう意味では強調しないといけないし、そのことを含めることで、文言としてきちっと書き込むことで本当にみんなが認識をしていくということにもなると思うので、ここは是非本当に重視して入れていただきたいというふうに思うわけです。
 そして、五月十七日、私たち共産党としても第二次の提言を先日総理に対してもいたしました。この提言の中でも、被災地での農業の復興に逆行するこのTPP、これについては参加をきっぱりと断念すべきであるということを指摘しました。今回のこの政策推進指針の中では、断念するどころか、この協定交渉参加の判断時期については総合的に検討するというふうに言って協定交渉参加の可能性を色濃く残しているわけです。
 これだけの震災被害を受けて、その復興さえも困難な状況になっている中で、更に日本の農林漁業を壊滅させるようなTPPについては、これは復興の妨げになるので断念すべきだということを、大臣、はっきりとなぜ言われないんでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 先ほど青木先生からの御質疑にもございましたけれども、私どもといたしましては、これだけの大震災を受けた被災地、とりわけ漁業、農業地を復旧復興させる、そして原子力のこの事故を一刻も早く収束させると、こういうところに全力を尽くしていくというようなこと、最優先させていくというふうな、こういう認識に立っておるところでございます。

○紙智子君 問いに答えてないと思うんですね。はっきりとTPPはもうやめるべきじゃないかとなぜおっしゃらないんでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 重ねて申し上げますけれども、基本的にこの六月にTPPに対する参加交渉というふうなものを決めていきたいという意向を総理大臣自らが発言されておったわけでありますけれども、それが総合的ないわゆる検討というふうなことになったということは、基本的に、今私が申し上げましたとおりに、この大震災の復旧復興、そして原子力の事故というものの収束、ここに全力を尽くしていくという一つの政府としての意思の表れだと、こんなふうに私どもは思っておるところでございます。

○紙智子君 現地を歩きますと、必ず漁業者、農業者の皆さんから出てくる中に、あのTPPだけはやめさせてくれというのが出てくるわけですよね。そして、これ米国自身が、この大震災の上、TPPで追い打ちを掛けることはできないと、アメリカ自身がこう言って、言わばTPPが日本を苦しめる、そういうものであるということをそういう形で認めているわけですよ。そういうときに日本政府自身が、先送りはしたけれども、しかし引き続きAPECの会議に改めてそのことを盛り込んで話を入れさせていくような方向性も出ているということは、私、問題だというふうに思うんですね。
 今回だけでこの話は終わらないので、引き続きやらせていただきますけれども、継続して是非追及していきたいというふうに思います。
 それから次に、原発被害による補償問題についてです。
 原発事故の発生以来、もう既に七十日を過ぎようとしているわけです。農業者には東京電力からの賠償金及びその仮払い、これは一円も、必要だ、やると言っているんだけれども、一円もまだ支給されていないわけです。どうしてこれほど時間が掛かるのか。茨城、栃木のJAは、東電に対しては三月分の被害額については四月末にはもう請求を済ませているわけですよね。にもかかわらず、一向に支払われていないわけです。
 東京電力は、先日、衆議院ですかね、予算委員会の場で、五月末には仮払い支払を始めるという言い方をしていますけれども、これ、それから始めるという話で、もう一日も早くやっぱり手渡すということでは前倒ししてでも支給すべきじゃないかと思うんですけれども、大臣、それ直接東電に対して申し入れておられるでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 私どもといたしましては、この委員会におきましても申し上げてきたところでありますけれども、まずこの審査会におけるところの指針にきちっと今回の被害を受けておられる方々の賠償金が支払われるように盛り込まれるということについて働きかけをしてきたということでございます。
 また、三回にわたって東京電力関係者も一緒になっての連絡会というふうなことにおきましても私が指示をいたしまして強く東電に対して一刻も早い早期支払を行うようにと、こういうふうなことを求めておるところでございまして、昨日はテレビでも報道されておりましたけれども、具体的に一定の金額というのは幾らなのかというふうなところまで、農林水産省側から厳しく東電側にそのことを求めるというようなことの場面も報道されておったところでございますけれども、引き続き一刻も早い早期支払をこれからも働きかけていきたいと思っております。

○紙智子君 東電側が払うということについて、はっきりしているものについては払われるわけですから、例えばもうそれを前倒しという形にということなんですけれども、例えばJAなどがつなぎ融資ですか、やっているわけですけれども、これを使って直ちに、もう明日、あさってぐらいには手元に渡るような形で一時的にそれを先払いしていくという方法なども含めて、これ考えられないんでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) とにかく、重ねて申し上げますけれども、東電側が賠償金をまず補償するというようなことにおいて、それが一刻も早く実行されるようにこれからも強く働きかけていきたいと思っております。

○紙智子君 とにかく早く手渡るということが今本当に必要だというふうに思うんです。
 それで、五月末から払い始めるという話が先日も出されているんだけれども、実際に請求が上がっていないといけないという話もあるわけですよね。それで、その手続なんかも含めて、東電の仮払いの人員体制というのがどうなっているのか、ちょっとお聞きしたいと思うんです。
 人員が不足していて請求処理事務が滞って、支払までこれから更にまた何か月も掛かるということになっては困るわけですから、現時点での請求受付をしてから支払までの期間どのぐらいなのかというめども含めて、ちょっと経産省に来ていただいていますけれども、お答えください。

○副大臣(松下忠洋君) お尋ねの件でございますけれども、この請求書の処理作業をする体制、これは東京電力からは、損害賠償の窓口であります福島原子力補償相談室とその体制をつくっておりまして、既に五百名程度まで増員したと聞いております。その中で、さらに、農林漁業者向けの仮払いを実施する、それを早急に急いでいくということのために要員強化をしていく、五月下旬までに更に進めていくというふうに聞いておりまして、これはしっかりと見守って実行させたいと、そのように考えておるところでございます。
 十七日に対策本部を開きまして今後の工程表を決めましたけれども、まず最初に農林関係をやりたいということで、五月下旬からはそれが早速実行されるような形でやっていきたいということを酌んで、これを実現させたいと考えています。

○紙智子君 その期間についてもできるだけ短縮していくということでは、その補充も、今増やしてきているということなんですけれども、大事だというふうに思うんです。
 それから、支払方法もできるだけ、順々にだんだん行くというんじゃなくて、もうストレートに生産者のところに行くような仕組みが取れないかと。直接、農業者、漁業者の口座に振り込むようにして、支払に掛かる時間を短縮するべきじゃないかと思うんです。
 例えば、電気料金を私たちが納めるときって口座引き落としになると思うんですよ。だから口座というのはあるわけですよね。だから、そういうことなんか含めて、時間掛かって次々と下りていくという仕組みじゃなくて、ストレートに行くようなことを考えられないんでしょうか。これについてはどうするのか、明らかにしていただきたいと思います。

○副大臣(篠原孝君) 具体的な仮払金等の支払方法につきましては、各県の協議会、漁協、農協が中心になっておりますが、そこと東京電力の話合いでもって、今、紙委員御指摘のような速やかなやり方というのは考えられるのではないかと思っております。
 我々は、いずれにしましても、一刻も早く請求が行われ、一刻も早く支払われる方向で東京電力に働きかけてまいりたいと思っております。

○紙智子君 よろしくお願いします。一刻も早くということです。
 それから、問題は、風評被害の補償の問題なんですけれども、第二次指針でこの風評被害の検討に入るようなんですけれども、前回、私、予算委員会でこの風評被害を被害補償に含めるべきだということを言って、菅総理自身も、自分もそうしなきゃいけないと思うというふうに答えがありましたが、文部科学省来ておられますけれども、検討の状況、今どうなっていますか。

○大臣政務官(林久美子君) 紙委員にお答えをさせていただきます。
 現在、この第二次指針に向けた検討状況でございますが、今月十六日に行われました第四回の原子力損害賠償紛争審査会の場におきましても、このいわゆる風評被害については業種や業態が多様であるということもありまして、実態についてしっかりと調査もしていこうということで意見の一致を見たところでもございます。
 今後は、この原子力損害の範囲の全体像については七月ごろに中間指針として取りまとめていただきたいというふうに思っているんですが、それよりも前に、実は第五回の審査会が来週月曜日の二十三日、第六回の審査会は今月三十一日に予定をしているんですけれども、この風評被害については、公正中立な立場から、具体的な考え方というのは、この第二次指針をできれば今月中に取りまとめていただきたいと思っておりますので、その中に盛り込んでいきたいと思っています。

○紙智子君 これも本当に急いでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 最後に、大臣、生産者について言いますと、現在もこの風評被害で苦しめられている状況が続いているわけです。それで、私たち共産党としても、先ほど紹介した申入れの中にも、この風評被害を含む全面賠償を東京電力に行わせることを明記していますけれども、仮払いにもこの風評被害を含めて行うべきだということを、これは予算委員会の場でも大臣に申し上げましたけれども、大臣としても、この問題で更にやっぱり指導力を発揮していただいて、決着を付けていただきたいと。最後に決意を語っていただきたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 基本的には、林政務官からお話ありましたとおりに、この審査会において風評被害につきましてもきちっと盛り込まれるようにということで、引き続いて働きかけをしてまいりたいと思っております。
 また、いろいろと御指摘をいただいたことにつきましては、私どもとしても誠心誠意、大変苦しい思いをなされている方々のために、やはりどうあるべきかということも踏まえて努力をしてまいりたいと思っております。