<第177回国会 2011年5月18日 本会議>


○憲法審査会規定について「改憲手続きの必要はない」と反対討論

○参議院憲法審査会規程案(鈴木政二君外七名発議)

○議長(西岡武夫君) 本規程案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。紙智子君。

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 私は、日本共産党を代表して、憲法審査会規程案に反対の討論を行います。
 なぜ今、憲法審査会規程なのでしょうか。そもそも憲法審査会は、四年前、改憲手続法の制定に伴う国会法改定で改憲を目的とした憲法の調査を行い、憲法改正原案を審査し提出する機関として規定されたものです。
 当時、安倍政権の下で、自民党などが目指す九条改憲のスケジュールに沿って、慎重審議を求める圧倒的多数の国民の声を無視し、強行成立させました。その横暴な自民党政治に国民はノーの審判を下しました。そうした経過から、今日まで参議院は審査会規程を作らず、審査会を始動させてこなかったのです。
 ところが、今回、菅政権は、ねじれ国会を乗り切る思惑で自民党の要求を受け入れたと言われています。憲法改正にかかわる問題を政権維持の手段にするなど言語道断であり、断じて許されません。
 提案者は、改憲手続法が成立して四年もたつのに憲法審査会規程を作らないのは立法不作為だとしきりに言いますが、この議論は、憲法に改正規定がありながら手続法がないのは立法不作為だと言って手続法を強行した四年前の理屈と同じです。しかし、審査会規程がないことで国民の権利が侵害された事実はどこにもなく、立法不作為論はそもそも成り立ちません。
 大体、国民は憲法改正を求めてはいません。この十数年間、改憲勢力は執拗に改憲の機運を盛り上げようとしてきましたが、国民はそれをきっぱりと拒否してきました。今日に至るまで、改憲勢力が主眼とする九条改憲を求める声はどの世論調査でも一貫して少数であり、多数になったことは一度もありません。したがって、改憲手続を整備する必要は全くないのです。
 審査会規程が未整備であることを問題にするのなら、むしろ改憲手続法そのものを廃止すべきです。しかも、改憲手続法の内容は、国民主権の原理に反し、どんなに投票率が低くても国民投票が成立し、有権者の二割台、一割台の賛成でも改憲案が通る仕組みとなっており、公務員や教育者の国民投票運動を不当に制限していることなど、極めて不公正で反民主的なものです。だから、民主党も手続法に反対し、衆議院の審査会規程に反対したのではありませんか。
 参議院では、手続法の採決に際して、民主党が提案し、最低投票率の問題など手続法の根幹にかかわる十八項目の附帯決議を議決しています。この附帯決議で指摘された問題は、今日まで全く議論をされておりません。にもかかわらず、民主党は、衆議院で反対したものと同じ内容の規程案を自ら提案し、何らの議論もなく決定しようとしています。一体、国民にどのように説明するのでしょうか。その姿勢が厳しく問われています。
 今、未曽有の大震災と原発事故の下で政治がやらなければならないことは、生存権を保障した憲法二十五条を生かし、憲法の立場に立って、何よりも人命と生活を最優先にして、被災者を救済し、原子力災害の危険を除去し、そして生活再建と復興に向けてあらゆる手を尽くし、全力を挙げることです。こうした重要な課題が山積しているときに憲法審査会の規程を制定することは断じて認められません。
 全ての人々が安心して平和に暮らす権利を定めた日本国憲法の精神と原理を全面的に生かしていくことが求められていることを強調し、私の反対討論といたします。(拍手)