第177回国会 2011年5月18日 国際・地球環境・食糧問題に関する調査会


○(水問題への取組の課題、在り方について)

○紙智子君 これまで参考人質疑などで伺った意見の中で、水道事業の海外展開について、維持管理に入っていってリターンがあるかといったらそんなにないという声とか、水ビジネスは大きくもうけるようなビジネスではないという発言もあったんですね。それで、政府の新成長戦略で位置付けているこの水道事業、水ビジネスの戦略は何なのかということで三点伺いますので、所管する分野の方で結構ですので、順次答えていただきたいと思います。
 一つは、新成長戦略で、環境技術において日本が強みを持つインフラ整備をパッケージでアジア地域に展開・浸透させるというふうにあるわけですけれども、このパッケージを強調しているんですけれども、今のODAとどういうふうに違うのかということが一つ。
 それからもう一つは、事業リスクを政策金融で支援する場合には、これは財源はどういうふうになるのかということですね。
 それから三つ目は、官民パートナーシップということが強調されているんですけれども、自治体の水道局などの公益事業体の海外展開策を策定、推進する際の課題というか、どういった課題があるのかということで、三点それぞれお答えください。

○会長(藤原正司君) それぞれ担当する部門、一か所ずつお答えいただきますから、みんなが手を挙げる必要はありません。経済産業省。

○政府参考人(市川雅一君) 三つのうちのまず一点目のところでございますが……

○会長(藤原正司君) 一つだけでいい。

○政府参考人(市川雅一君) はい。
 新成長戦略、パッケージというお話でございますけれども、これはいわゆる先ほど御説明いたしましたが、いろいろな技術を持っているそういう民間のメーカーと、あとオペレーション、事業運営のノウハウを持っている地方公共団体といったようなところがあるわけですけれども、つまりハードとそれからソフトのオペレーションというようなことのパッケージということで理解をしておりますので、そういうものをアジアに併せて展開していくということで、さっき申し上げたような官民の連携でやっていくというやり方ということでございます。

○紙智子君 ODAとどう違うんですか。

○政府参考人(佐渡島志郎君) 実は、ODAと申しましてもいろんなパターンがございますけれども、一番典型的なODAと何が違うかということを御説明をいたしますと、ODAは基本的には相手に対してサービスを提供するわけですね。知識だとか、物もそうですけれども、物を通じたサービスを提供しているわけです。それに対してODAの場合には、基本的には掛かったコストを価格あるいは対価という格好でいただかないのがODAでございます。
 海外ビジネスの展開の場合にはそこはやはり、何といいましょうか、投下コストをきちんと回収するような方法で皆さん事業を考えられると、ここが一番決定的に異なる部分ではないかと私は思います。

○政府参考人(篠田幸昌君) 実は私の方から手を挙げたんですけど、総務省さんのお答えが本来かと思うんですが、承知している範囲で申し上げるわけでございますけれども、要するに、本来されておられる地方公営企業さんが、地方公営企業さんの本来の仕事をおっぽり出してまで海外でやるということを進めているわけではもちろんございませんので、持っておられるノウハウでありますとか蓄積されたノウハウでありますとか経験でありますとか、そういうものを生かす道として海外にそういった点を供与することはできるんではないかということでございますので、本末転倒はよろしくないということだと思います。

○政府参考人(藤森祥弘君) 成長戦略との関係についてお答えをしたいと思います。
 国土交通省といたしましては、上下水道一体、また上水道、下水道だけの運営管理を長期にわたって受託をすることによりまして、現地にSPCを、プロジェクトのための会社をつくるわけでございます。それにつきまして日本の企業が投資をする、また日本の政策金融で投資をしたお金が運営管理によって利益が出た場合に日本に配当として返ってくるというのが、一つの日本に入ってくる、外貨が入るという意味で成長戦略の一部を成すのかなと思っております。
 また、運営管理をする段階でいろいろな資機材が出てまいります。ランニング、途中で消耗品が出てまいります。そういったものを日本から輸出ができるということができて、それによって日本の製品が海外に展開できる。また、日本の企業が開発した技術、海外で生産されたものにしても、そこで使うことによってロイヤルティー等が入ってくるという、直接、間接的な収入が日本に入ってくるという意味で経済成長に貢献するものだというふうに考えている次第でございます。
 以上です。

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○会長(藤原正司君) 理事会でも確認いたしましたように、調査会報告の作成に当たって、それぞれの会派から、是非こういうものを載せてもらいたいと、こういう報告をしたいという御希望がございましたら聞かせていただいて、あと、どういうふうにまとめていくかは事務局と私と両筆頭にお任せ願いたいというふうに思いますので、フリーにお手を挙げて意見を表明していただければ結構かと思います。

○紙智子君 調査会でこの間やって感じたことを発言したいと思うんですけど、二点です。
 一つは、今のちょっと主濱さんのとも重なる部分もあるんですけれども、今後、世界的に水の使用が増えていくということの中で日本がどうあるべきかということです。それで、日本の食料自給率四〇%と。これ、食料輸入国であるということと同時に、今話があったように、水資源のその輸入大国でもあると、同時に。世界で水の枯渇あるいは水資源をめぐる紛争が起こっている中で食料を輸入に依存する国の在り方を考える必要があるということです。
 その点で、参考人の方の意見の中で、環境負荷でいえば一番深刻なのは化石水だという発言がありました。循環していない水資源を使って生産されたもの一部日本に入ってきている、数十年後には枯渇する、その影響は非常に大きいということが発言されていましたし、水がない国で食料を輸入する話と、水が十分あるところで食料を輸入することとは大分意味が違うんだという発言もありました。そこはこれから見直していかなければいけない時期だという回答があって、これは非常に大事なことじゃないかなというふうに思いました。
 それから二つ目の問題は、新成長戦略の水ビジネスについてなんですけれども、水道事業の海外展開で利益が生まれるのかどうかということを私はずっと聞いてきたんですけれども、それは、水道事業というのは浄水場や水道管などの整備や更新などの多額の費用が掛かると。日本でいえば、水道事業が赤字になって水道料金の値上げが問題になる事例があると。参考人からは、水道事業の海外展開で維持管理を入れてリターンがあるかといえば、そんなにないということや、あるいは人件費プラスアルファぐらいが稼げればいいかなという意見ですとか、大きくもうけるようなビジネスではないというふうに言われた発言があったことというのは非常に印象に残っているわけです。
 加えて、水事業で進出した水メジャーが撤退をしたり訴訟になる事例もあって、リスクが大きいということも分かりました。今日の調査会で、水ビジネスで我が国に収益が入ってくるという発言があったんですけれども、これはちょっとだからこの間の議論からいうと少し温度差があるなというふうに思いました。
 私も、ODAの日本が支援している国で、ベトナム、ラオス、カンボジアとかインドなども行かせていただいたんですけれども、やっぱり日本の技術を海外で生かす方法もよく考える必要があるということを感じているんですね。確かに喜ばれているというか、本当に飲料水で安全な水を確保するために日本の技術で上下水道も支援して造っているとかというのは、非常に喜ばれていたり、病気がなくなったとか子供がすぐ赤痢になったりしなくなったという、そういう声もいっぱい聞こえて、こういう点での日本が果たしている役割は大きいなということも感じてきたわけですけれども、しかし、故障したりしたときに、日本が引き揚げた後にそこで直せないと困るということですとか、現地の人たちがやっぱりずっと維持し続けることが可能なやり方ということも非常に考えなきゃいけないことだというふうに思ったわけです。
 同時に、官民パートナーシップということが言われたんですけれども、日本の企業が海外の公共事業を行う場合のリスクを、これ日本の公的資金で補填するということになると、これはいかがなものかなということも感じました。
 以上です。