第177回国会 2011年3月25日 農林水産委員会


○平成23年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、農林水産省所管について委嘱審査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今度の大震災に際して、福島、宮城、そして続いて北海道にも入りまして津波被害の調査を行いました。船は流されて養殖施設や港の施設が壊れるということでは、経験したことのない甚大な被害だというふうに思います。特に、東北地方の水産業は壊滅的な被害を受けています。水産業そのものの復興ということと地域そのものの復興ということも、本当に総力を挙げて、それこそ従来の枠にとどまらないでやっていかなきゃいけないと、抜本的な対策が必要で、政府を挙げてやっていく必要があるんじゃないかというふうに思ったわけですけれども、まず最初に大臣のこの点での見解をお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) まさしく、重ねて申し上げますけれども、今日の状況というものの状況を的確に、適切な処置を講じていくためにも的確な情報というふうなものをしっかりと踏まえて、そして、できるだけ迅速に手を打っていくというようなことが今一番求められていると思いますので、まさしく都道府県とも連携を取りながら、また、農林水産省といたしましては、農政局もございますので、そういう農政局の職員も現地に、それぞれ被災を受けたところに足を運びながら情報を収集すべく今努力をいたしておりますので、そういう情報というものをしっかりと把握をして、そして一つ一つ具体的な策を講じていきたいと、こういうふうに考えております。

○紙智子君 北海道を回ったわけですけれども、どこに行っても、お金と時間があれば何とかなるから頑張るという話をして、是非東北地方にも応援に行きたいということも言われたんです。私、こういう思いになっているということは大事だというふうに思うんですね。やっぱり、ともすると、いや、東北の大変さに比べれば我慢しようというふうになるかと思うんですけれども、我慢するんじゃなくて、ちょっとの助けがあったらそれでやっぱり復活して、そして応援できるようになるという、そういうことというのも大事なんじゃないかなということを感じまして、それは北海道だけじゃなくて、西日本の方も人命まではいかなかったけれども、やっぱり大きな被害受けているところたくさんあると思いますので、そういうことからも、漁業者の皆さんがやっぱりそういう前向きな気持ちで頑張れるメッセージを出していくことが大事だというふうに思いました。
 それで、北海道の噴火湾でありますけれども、この噴火湾のホタテの養殖でいいますと、去年はザラボヤの被害だったんですね。ザラボヤの被害で収入が激減して借金を抱えるところも出たわけです。そこに今回の大津波で、ホタテの養殖施設でいうと、かごが破損し流失し、そして稚貝も流されたと、再建できても当面の収入がないという状況なんですね。
 去年、チリ沖の地震による津波の被害というのは激甚指定されたわけですけれども、養殖施設等への支援が行われたわけですけれども、適用措置、それから地域、査定方法の説明について最初に伺いたいと思います。

○大臣政務官(吉田公一君) 三月十三日に本災害を激甚災害として指定したところでございますが、養殖施設も対象となっておりまして、災害復旧事業の補助率は復旧に要した費用の九割ということに想定しております。補助要件でございますけれども、昨年のチリ沖地震によります津波被害の激甚災害指定に当たりまして、被害額が二千万円を超える地域を更に追加をいたしました。そして、今般の激甚災害指定におきまして、魚類養殖施設、貝類養殖施設、海藻類養殖施設等に分類をいたしまして、被害のあった養殖施設を幅広く対象にしていきたいと思っております。

○紙智子君 養殖施設の減損価格ということで判定をして、その九割までが補助の対象になるということなんですけれども、例えば、年数を経て、一千万ぐらいの施設を造っていて、残存価格がずっと減って百万ぐらいになったとすると、九割補助というと九十万ぐらいなんですね。新たな施設を買うのに、そうするとあと九百万必要というふうになってしまうと。養殖施設の減価償却というのは大体五年程度だというふうにお聞きしていますけれども、ほとんど価値が付かないものもあるということなんですね。そうすると、その査定のハードルが高いということで、経営の継続を断念することになりかねないというのもあるわけです。そういう声も出ているわけです。そういう点ではやっぱり見直しも必要なんじゃないのかと思っているんですが、いかがでしょうか。

○大臣政務官(吉田公一君) 委員の御発言につきましては、鹿野大臣も今聞き及びでございますし、当然大臣と相談をさせていただきまして、前向きに検討してまいりたいと思っております。

○紙智子君 今回の津波で漁船の被害というのもまた本当に、先ほどもお話出ていましたけれども、膨大な隻数も打撃受けているということなんです。北海道だけでも漁船の被害で七百件超えているということになっていて、この点では共同利用小型漁船、この建造費の補助というものがありますけれども、この対象についてちょっと御説明を願いたいと思います。

○大臣政務官(吉田公一君) 組合員の所有する五トン以下の小型漁船につきましては、沈没、滅失等の被害が多数発生しております。漁業協同組合が組合員の共同利用漁船を建造する場合の補助制度、そしてまた都道府県が三分の二以上を補助する場合に国が事業費の三分の一を負担するという仕組みになっております。

○紙智子君 三分の一補助ということなんですけれども、その中の要件といいますか、五トン未満というのがありますよね。それで、東北もそうですし北海道もそうなんですけれども、今回の漁船の被害でいうと、五トン未満の船にとどまらないと思うんですよ。ですから、やっぱり今までの制度にとどまらず、五トン以上も含めた抜本的な対策が必要じゃないのかと。これまでの枠にとらわれているとできないんですけれども、それをやっぱり今超えて検討する必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

○副大臣(篠原孝君) 済みません、今の質問にお答えする前にちょっと修正がございまして、先ほど渡辺委員の質問のところで、県間調整のところで、私、ヘクタールと言ってしまったのは、あれはトン、米の県間調整、二千六百トンに訂正させていただきたいと思います。
 それから、漁船についての紙委員の御指摘でございますけれども、我々承知しておりますところでは、先刻来申し上げておりますけれども、被害が大きかった三県では二万隻の漁船ほぼ全滅ということで、日本の漁船数、大小合わせまして十九万隻のうち約一割近くが壊滅的な打撃を受けておると。北海道におきましても二万四千五百七十七隻のうち七百十四隻。北海道は被害額も大体分かっておりまして十八億円。それから、養殖施設も相当な被害を受けているということでございます。
 漁業にとっては漁船というのが不可欠でありまして、それがなかったら漁ができないわけでございまして、先ほどからお答えしておりますとおり、まず一番目には激甚災害法に基づく共同利用小型漁船建造費の補助の仕組みというのがございます。ほかには漁船保険がございます。それから、漁船の建造や取得のための融資がございます。
 しかし、こういった既存の政策で対応できるのかという、私は、皆さん御指摘のとおり、非常に広範囲であり、もうほとんどの漁船が動けなくなったりした地区もあるわけです。それから、北海道の漁船も三陸沖に来ていたりしていて、それでそちらで被害を受けた漁船も多くあるわけでございます。
 ですから、この漁船の再建というのは、漁業、漁村の再興、復旧というものの一番の重要な要素ではないかと思っておりまして、我々この再建にはどういった方法があるのかということで今までにない方策を大至急検討しているところでございます。

○紙智子君 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。
 それと、函館も行ったんですけれども、ここは養殖施設、水産物の卸売市場の被害と、それから、あそこ観光の名所になっている、地域経済を支えている朝市、小さなお店がいっぱい入っているんですけれども、この朝市も海水につかって何百台もの冷蔵庫が使えなくなってしまったということなんですよね。買い換えようと思っても、家庭用冷蔵庫と全然違って、すごく高価なものなんです。あっても納品のめどがないということで、経営できないから生活資金をやろうとしても底を打つような状況だということで、数百店舗あるお店というのが、小規模な家族経営が多いんですけれども、店を閉じるかどうか迷っているというような声も出ています。やはりそういう、言ってみれば本当にどうするかということで悩んでいるということと、それから全体でいうとやっぱり観光の名所だったというのもあって、人が来なくなってしまったらそれこそアウトだということでの不安もあります。
 こういう状況の中で、こうしたお店に対する支援なんかも必要じゃないのかというふうに思うんですが、中小企業庁からそれについて対策を伺います。
○政府参考人(伊藤仁君) お答えいたします。
 被災されました中小企業につきましては、まずは年度末の返済期日が問題になっているかと思っております。震災によって返済猶予を求めようにも申込みすらできない企業も出ているというふうに聞いておりまして、政策金融機関であります日本公庫や商工中金において、返済期日が過ぎて申込みがあった場合にも遡及して返済猶予を認める運用を既に開始しているところでございます。
 一方、被害に遭われて復旧に向けた新規の資金ニーズ、こうしたニーズにつきましては、一般保証とは別枠の災害関係保証を既に発動しているところでございます。具体的には、市町村から罹災証明を受けました中小企業者に対して信用保証協会が無担保八千万円、普通二億円を上限とした一〇〇%保証を行うこととしているところでございます。
 また、直接被災されました中小企業者向けの融資制度といたしまして、日本公庫及び商工中金によりまして長期及び低利の災害復旧貸付けも既に開始しているところでございます。特に、事業資産などが全壊するといったような被害の大きな方につきましては、貸付け三年間につきまして一千万円を上限として金利の〇・九%を引き下げるといったような措置も講じているところでございます。
 さらに、こういった措置が十分かどうか検証いたしまして、対策について充実を図っていきたいと思っております。

○紙智子君 今、大臣お聞きになっているように、結局資金の融資ということの範囲なんですよね。
 それで、まさに漁業が基幹産業というふうにして地域経済を支えている重要な役割を果たしている、そういうところでお店が撤退したり観光客が激減するということになると地域経済に与える影響は計り知れないと。今、函館の例で言ったんですけれども、小名浜なんかもやっぱりそういう同じような状況、商店がいっぱいあるわけですけど、本当に大変な状況だというふうに思うんです。
 安心してやっぱり経営が再建できる支援をするべきじゃないかと、中小企業の対策はあるんだけれども、漁業を柱にということでいうと、そういうことを大臣の方からも一言お願いします。

○国務大臣(鹿野道彦君) この度の大震災によるところのこの被害というのは太平洋沿岸広範囲にわたって、北海道も含めて非常に広い範囲にわたっての漁港なり漁船なり、あるいは水産関係施設に大変大きな被害を及ぼしておると、こういうことでございまして、そういう中で、まず私どもにとって大切、重要だと思っていることは、被災された方々が将来への希望というふうなものをやはり持っていただくことができるような、そういう水産業が展開されるというようなことにどうこの施策を講じていくかということだと思っております。
 漁業、加工流通業の再建や漁港なり漁場なり養殖施設なり、さらに漁村全体の復旧というようなことに向けて、できるだけの努力をしていかなきゃならないと、このように考えているところでございます。

○紙智子君 次に、新年度から始まる漁業所得補償についてお聞きします。
 この制度は、公共事業の比率が高かった水産予算を漁業者の手に直接渡る仕組みに変えた点で評価できるというふうに思っています。ただ、改善すべき点もあると。
 まず、漁業所得補償の位置付けなんですけれども、農業の戸別所得補償の場合、国内の農業の再生を図るということで、食料自給率を向上させて多面的機能を将来にわたって発揮させるというふうになっています。漁業は、漁法とか魚種、それから地域によって掛かるコストが違うので農業とは違うと思うんです。しかし、なぜ多面的機能を発揮させるための補償がこの中に位置付けられていないのかというふうに思うんですが、この点はいかがでしょうか。

○副大臣(篠原孝君) 基本的には、漁業の関係の所得補償対策も農業の部分と変わりないのではないかと思っております。
 紙委員御指摘のとおり、農業の場合は、全体の農業、農村の底上げ戦略というのがございます。それで、その中の一つに食料自給率の向上というのがございます。その理由付けとして、なぜ農業についてそういうことをするのかというのに対する理屈付けでございますけれども、その理由として多面的機能を発揮しているということ、これ欧米では一九九〇年代からずっとそういうことが主張されまして、政策もそういったことに変更されてきているので、それを導入したわけでございます。
 漁業の場合はどうするかということ。多面的機能もあるわけですけれども、第一義的には、私は資源管理、作って育てて捕るというように、養殖にはそれがあるんですけれども、大半は今ある自然の中に手を加えて、そこから、自然が生み出してくれるものの中から分け前を与えていただくというようなことですので、資源管理というのが一番大事なのではないかと。そこがちょっと危うくなっているのじゃないかということで、そこに着目いたしまして、資源管理に協力してくださる方、その方たちに所得を補償することによって水産資源を回復する、そして漁業経営の安定に資すると。そういったことによりまして、漁業が持っている多面的機能の強化にもつながると。その延長線上で、日本国全体の食料自給率の向上にもつながるということで、基本的な目的は一緒ではないかと思っております。ただ、重点の置き方、理屈付けがちょっと異なるように受け取られておるのではないかと思いますけれども、基本的な目標というのは同じでございます。

○紙智子君 なぜこのことをお聞きしたかといいますと、漁業の所得補償は共済制度ですから、魚価水準が下がり続けると、結局、基準額とか補償額下がるわけですよね。それから、漁業共済というのは任意加入というふうになっていますから、積立ぷらすは共済に加入しないと対象にならないということがある。漁業所得補償ということなんだけれども、結局そうすると対象が狭くなってしまうんじゃないかという思いがあるし、現場からも出ているということなんです。
 それから、資源管理という話もあったんですけれども、今管理できない事態もあるということで、例えばですけれども、北海道でトド被害って今すごく深刻になっていて、冬に来遊するトドというのは五千八百頭ですよ、今。それで、被害額が約十四億円と。石狩湾の漁協で聞いたんですけれども、年間の水揚げ量で三千七百トン、トドが魚を食べる量を推定すると、大体千百から千二百トンになるというんですね。だから、トドが食べる量というのは水揚げ量の三〇%ぐらいになるんですよ。資源を管理しようと思うと、これ管理できないと。それで、そういう意味では、非常に絶滅危惧で駆除できないというのがありますから、こうなってくると、もう国の、何かやってもらえないのかということで、本当に若い人たちいるんですけれども、非常に苦労しているというのがあるわけです。
 今現在のトド対策でいうと、強化網の開発とか駆除、陸上防止柵を作る、あるいは追い払い策、有害生物被害防止事業って行っているんですけれども、なかなか効果として出ていないという中で、鳥獣被害のように柵を作るわけにもいかないということで、トドが魚を食べるので自然管理できないということがあるわけです。
 所得補償制度が始まっていて、今申し上げたような課題を解決していかなきゃいけないというふうに思っていて、それで漁業者はやっぱりどうして共済に入れないのというと、出すものがすごくいっぱいあるんですよね。だから、漁船保険も掛けているとか倉庫の保険もあるとか、いろんな保険が、それこそ生活の関係する保険も含めてあって、だから本当に掛金が高い共済ということでは入れないということで、入らない人たちが結構多いということなんですよ。
 だから、そういう意味では、言いたいことは、やっぱりそういう漁業経営の不安定性を考えても、本当に共済制度の拡充ということではなしに、やっぱりもっと枠を広げて所得補償制度というものでつくるべきなんじゃないのかなというふうにずっと問題意識を持っているということを申し上げたいということなんです。これについて、あればお聞きして、時間になりますので、終わりたいと思います。

○委員長(主濱了君) 時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

○副大臣(篠原孝君) 農業、林業、漁業、それぞれ形態が違いますので、その形態に合った所得補償制度というのを考えてまいりたいと思っております。漁業の特殊性も紙委員御指摘になったとおりでございまして、多種多様でございまして、農業のように生産費があってというような数字もないわけでございましてなかなか難しいんですが、その目的とするところは同じでございますので、なるべく農業に近づくような形で考えてまいりたいと思っております。