第177回国会 2011年3月25日 農林水産委員会


○家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 家畜伝染病予防法改正案について質問いたします。
 口蹄疫、高病原性インフルエンザ等の家畜又は疑似患畜について特別手当金を交付し、通常の手当金と合わせて評価額全額とするということは農業関係者の念願でありまして、それが実現することは大きな前進と言えると思います。さらに、移動制限等による売上げ減少などの補填の対象を、これまでの鳥だけから牛や豚を含めて拡充すること、それから都道府県の防疫措置に対する国の財政支援を拡充をし、消毒に要した費用を対象に追加すること、さらに、国が家畜伝染病の発生後の初期の段階から蔓延防止措置が的確かつ迅速に講じられるようにするために予備費の計上、その他の必要な財政上の措置を講ずるということは当然の改正であり、賛成です。
 ただ、改正内容に若干の懸念事項がありますので、質問をしていきたいと思います。
 三月四日の読売新聞によりますと、宮崎県で昨年発生した口蹄疫で、県は三日、症状の通報が遅れたなどとして、川南町で和牛牧場を営んでおります畜産会社安愚楽牧場など二社を文書で厳重注意をし、十七日までに改善計画を提出するように指導したとされています。これについて、なぜ口蹄疫の通報が遅れたのか、会社経営に問題がなかったのか、どう改善計画を出したのかを明らかにしていただきたいと思います。

○大臣政務官(田名部匡代君) 今の先生のお話のとおり、七例目の大規模農場では、立入検査を行った時点でもう半分程度の牛がよだれを垂らすという口蹄疫の症状が出ていた。通報の遅れは明らかでありまして、これは社内の連絡を優先したということが原因と思われます。それを受けまして、役員及び従業員等の家畜伝染病に関する知識と危機管理意識を向上させるための社内教育の徹底、これは県から指導が出たわけですが、そして早期発見、早期通報が可能な体制を構築するための管理獣医師の増員など改善報告書をこの大規模農場は提出したということを宮崎から聞いております。

○紙智子君 今回の、家畜の所有者が家畜伝染病の発生を予防し、蔓延を防止することに重要な責任を有していることを法律で明記するということはこれ重要なことだと賛成できます。それから、家畜の所有者が毎年飼養状況や、あるいは衛生管理の状況を都道府県知事に報告させるということも、全国の衛生管理の状況を掌握する上からも必要なことだと思います。それから、家畜の所有者の消毒義務についても当然の措置だと思います。
 ただ、これらの家畜の所有者の経営に対する負担度も強まっていくわけで、それに対する国の支援措置は必要だと思うわけですけれども、この点いかがでしょうか。

○副大臣(筒井信隆君) おっしゃるとおりでございます。まず、家畜の所有者、生産者の義務をきちんと規定をして、それを履行してもらわなければそもそも防疫体制が成り立たないわけでございますから、その点については賛成をいただいたとおりだと思っております。
 それに対して、国あるいは都道府県の支援措置、これもできる限り充実をしていかなければいけないわけでございまして、今まで以上に充実していることも確かでございます。先ほどから何回も繰り返しておりますが、防鳥ネットや、あるいは動力噴霧器等についての支援とか、あるいは家畜防疫員の拡充についての支援とか、これらをこれからも続けて、更に、財源との兼ね合いもございますが、充実強化を図っていきたいというふうに思っております。

○紙智子君 宮崎県は、家畜防疫員の確保の水準が全国的に見ても低くて、今回のこの口蹄疫被害に際しても、最初から最後まで家畜防疫員が人的不足ということの中で混乱を招いたということもあります。そして、全国的な獣医師の派遣を求めざるを得なかったということもあったわけです。
 今回の法改正で、都道府県知事に家畜伝染病予防法の実施のために必要な員数の家畜防疫員を確保する努力義務を課したということは当然だというふうに思います。ただ、全国的にも産業獣医師の志望者数というのは減っておりまして、以前からこの産業獣医師の確保というのは大きな課題だったわけです。この点を抜本的に改善しなければならないと思うわけですが、その点についていかがでしょうか。

○副大臣(筒井信隆君) それが全国的課題であると同時に、各都道府県の課題でもあるわけでございまして、全国的な課題に関しては、先ほど大臣の方で答弁されたとおりでございますし、今の各都道府県のことにつきましては、先ほども申し上げましたが、また法律にも規定されておりますが、具体的な、標準的な防疫員の数、これを公表して各都道府県がそこに近づけるための努力をしやすくしている、これは先ほど申し上げた数値でございます。

○紙智子君 それこそ、BSE発生のときからこのことずっと問題になってきたので、是非力を入れてやっていただきたいというふうに思います。
 それからもう一つの大きな問題ですけれども、飼養衛生管理基準に埋却地の確保について規定する問題なんです。宮崎でもこの埋却地の確保が大問題になって、その確保の遅れが口蹄疫の被害拡大の大きな原因にもなったと思います。この口蹄疫の発生以前から埋却地を確保するということは重要なわけですけれども、問題は、個人の力では埋却地を確保することは、資金的にも、川南でありましたけれども、地下水の状況の掌握というような面からも、困難な面もあるわけです。
 もし、これ画一的な取扱いということになると、埋却地の確保ができないからもう離農するというふうな事態も生じかねないということもあるんですね。ですから、国及び都道府県や市町村の協力というのは不可欠だと。その点、どのような手当てを考えているのか、明らかにしていただきたいと思います。

○大臣政務官(田名部匡代君) 一義的な焼埋却の義務というのはやはり所有者にあるということでありますけれども、ただ、都道府県は発生時に備えて補完的な準備を行うこと、具体的には家畜の所有者が遵守すべき飼養衛生管理基準の中に埋却地の確保についても規定するものとして、都道府県知事は家畜の所有者に対し、指導、助言、勧告、命令が行えることとした上で、都道府県知事は、家畜の焼埋却が的確かつ迅速に実施されるようにするため、必要な措置を講ずるよう努めなければならないということをこの改正法案に明記したところであります。それで、これを踏まえて、都道府県では発生時に備えた補完的な埋却地の用意であるとか、焼却、レンダリング施設の確保を進めていただくことを私たちとしては想定をしております。
 さらに、都道府県知事は農林水産大臣及び市町村長に協力を求めることができる旨も規定しておりまして、国としても、移動式の焼却炉の貸出しであるとか、埋却地の候補となる国有地に関する情報の提供等を行うこととしているところであります。

○紙智子君 やっぱりもっと立ち入って、実際の現場では、埋却しなきゃいけないということはみんな分かっていたけれども、実際に掘り出してみたら水が出てできなかったとか、それから、国有地の提供なんかも含めてこちらも提起しましたし、現場でやっぱりそこがなかなかうまくいかなかったということもあるわけですから、もちろん所有者自身の責任ということはあるわけですけれども、どうしてもいかないということに、ちゃんと考えて、それぞれがやっぱり、国もそうですし、都道府県もそうだし、市町村も協力体制というのは必要だというふうに思いますので、そこのところは是非しっかりと充実させてほしいというふうに思います。
 それから、この予防的殺処分ということなんですけれども、これ例外中の例外として扱うことが必要だと思います。その点での政府の考え方を明らかにしていただきたいと、これがまず一つです。
 それから、口蹄疫の専門家であります山内一也氏が、ワクチン接種した場合と自然感染した場合と区別できるマーカーワクチンがあると。このワクチンを使うと無益な殺処分を防げるという提案をしているわけです。これ極めて重要な提案だというふうに思うんですね。その方向性ということでは、やっぱり無益な殺処分を防ぐということでも国民の理解を得られるものだというふうに思うわけです。しかし、このマーカーワクチンの開発というのはもっと信頼性の高いものにしなければいけないということで、今研究途上にあるということでもあります。政府として、是非このマーカーワクチンをきちっと位置付けて、このマーカーワクチンの開発についても進めていくべきだというふうに考えます。
 この点についていかがかということで、ちょっと二つの点でお答えを願います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 現在のこの口蹄疫ワクチンについては、感染を完全に防ぐことができない、また性能にも限界がある、あるいはまた食品安全委員会での評価を得た口蹄疫ワクチンがなく、ワクチン接種家畜を食用に供することができない、こういうふうなことから検討しなければならない問題点があるというふうに思っておるところでございます。
 また、今先生がおっしゃられたマーカーワクチンにつきましては、十分な性能を持ったものが実用化されておりませんので、現時点で使用することはなかなか難しい状況にあるわけでございます。
 このために、この防疫指針におきましても、殺処分と移動制限による方法のみでは蔓延防止が困難であると判断される場合に限って接種家畜の殺処分を前提として実施することとしているところでございまして、今後より良きワクチンの開発というふうなものにつきましては、科学的見地に立ちまして、適切に検討、研究を進めていく考え方でおるところでございます。

○紙智子君 中身としては非常に大事な、今後の畜産ということで考えたときに大事な中身でもあると思うので、是非応援する方向でやっていただきたいというふうに思います。
 次に、畜産、酪農経営をめぐってです。
 それで、我が党は三月の十日にこの畜産、酪農経営について農水大臣に対して八項目で申入れをしました。これ、今全部言うわけにいかないので、そのうち時間の許す範囲でお聞きしたいと思うんですが、畜産、酪農生産者でいいますと、一昨年来の飼料価格が高騰して経営が非常に大変だったわけです。加えて、原油価格の高騰や穀物価格の高騰に直面をして厳しい状況が続いていると。
 それで、私のいる北海道でいいますと、これ取引価格の低いチーズ向けの販売拡大をやったりしてきているんですけれども、夏場は物すごく暑くて、その暑さのせいで、影響で乳成分なんかも下がって、二十二年度、プール価格ということで、プール乳価で見た場合に前年比でいうと五円下がるというようなことも言われているわけです。
 ですから、加工原料乳の生産者の補給金単価を、再生可能な所得の確保と、生産意欲の喚起を行うと、生産基盤の維持ということから見ても、今日、農業新聞見ましたら、審議会答申ということで、十銭ですか、値上げの方向ということが出されているんですけれども、もっとやっぱり下がっているという現場を踏まえて検討いただきたいし、そういう意味でいうと、限度数量ということで百八十五万トンということなんですけど、これやっぱり下がってきているわけですから、これやっぱり引き上げていただきたいと。我が党はもう二百五万トンぐらいまで引き上げる必要があるというふうに要求しているわけですけれども、是非この点、先ほども質問の中で、非常に現状の困難さを鑑みて、やっぱり期中改定なんかも含めての話ありましたけれども、是非そこのところは現状を踏まえていただいて、引き上げていくようにやっていただきたいということですが、これについてはいかがでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 先生方からいろいろと御要請もいただきました。そういう中で、この平成二十三年度の畜産物の価格というふうなものにつきましては、まさしく今日の飼料、配合飼料の高騰など、こういうことを十二分にということではないという評価にもなるかもしれませんけれども、私どもとしては精いっぱい今日の畜産をめぐる状況が極めて厳しいということから判断いたしまして、前年度よりも十銭を上乗せさせていただいて諮問させていただいたということであります。
 また、限度数量におきましても、実績は百八十二万トンでございますけれども、更にこれから増産に励んでいただきたいという、この意欲を持っていただきたいという気持ちも込めて百八十五万トンというふうな形で諮問をさせていただいたと。このことにつきましても、是非御理解をいただければと思っているところでございます。

○紙智子君 なかなか現場では、もっとやっぱり何とかならないかという思いが本当に強いというふうに思いますし、この後も引き続きそこは検討していただきたいと思います。
 それから、配合飼料の価格安定制度についても、これもずっとやっぱり問題になってきているんですけれども、生産者負担分に対して支援制度の創設をする必要があるんじゃないのかと、そして民間資金導入部分の利子補填を継続するということ、今後の想定される穀物価格の高騰に対応できるように国の財源の支援を強めるべきだというふうに思いますが、この点についても回答をお願いします。

○大臣政務官(田名部匡代君) 借入金九百億円については既に二十二年度分百八十億円を返済しておりまして、引き続き利子助成を継続していく考えであります。
 ただ、先ほど来お話をさせていただいておりますけれども、その他の配合飼料価格安定制度の補填の財源等、現時点ではすぐに枯渇をする状況にはないと考えておりますけれど、しかしながら先生方の様々な御心配も踏まえ、今後の動向というものを見極めながら対応を考えてまいりたいと思っております。

○紙智子君 ちょっと通告していなかったんですけれども、最後に、この度の災害を受けて、畜産、酪農分野でいってもやっぱり影響、打撃というのは本当に大きいものがあって、畜産、酪農分野を本当に手当てしていく上でも、今回の被害というのは未曽有のものですし、特に風評被害ということでいいますと、現場の、例えば福島から聞かれている声の中にも、とにかく牛を残していかなきゃいけないということで、もう生産者の方は胸が張り裂けそうだという声を寄せていますし、それから、既にもう牛を残したままいなくなってしまっているところの牛舎の中で、牛が、誰も餌を与える人がいないものですから、もう悲鳴に近い声を上げていると。
 そういう状況なんかも出ている中で、本当にこれに対しての思いというのを私たちもしっかり受け止めながら、やっぱり風評被害で、何ともないところまで含めて受入れ拒否するということなんかもあるわけですから、これはもう本当に従来の枠を超えた支援ということで対策を打っていかなきゃいけないというふうに思うんですけど、この点をめぐって最後、大臣、決意といいますか、それに対してのことを一言お願いしたいと思います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 想像を絶するこの度の大震災によりまして、畜産農家、酪農を経営している方々も、もちろん農業者、漁業者もそうでございますけれども、思いも寄らぬ大変な御労苦をなされておる方々に対してどういう措置を講ずることができるかも踏まえて今緊急に検討もいたしておるところでございまして、今後とも、酪農家の方々、畜産農家の方々のお気持ちというものを踏まえながら何ができるかということを、重ねて申し上げますけれども、考えながら検討してまいりたいと思っております。

○紙智子君 ありがとうございます。終わります。