第177回国会 2011年3月24日 沖縄北方問題特別委員会


東日本大震災での根室港被災への援助と、日ロ領土交渉で新たな経済連携もとめる」

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私からも、この度の災害で被害に遭われた皆さんにお見舞いを申し上げたいと思います。
 メドベージェフ大統領の国後島の訪問など、日ロ領土問題が非常に重大な局面にありながら、当委員会は昨年の臨時国会で開催されず、大臣の所信質疑さえ行われませんでした。
 今、東北関東大震災の大変な状況の中なんですけれども、やはり委員会をこうして開催をして、必ずやはり領土返還を実現すると、そういう気概の下で、一層の取組強化や、あるいはこの隣接地域対策についてしっかりとした議論を行っていくことが重要だというふうに思います。
 それで、まず担当大臣にこの領土問題の現状について基本的認識を伺いたかったんですけれども、枝野担当大臣が今震災対応で不在ということですから、園田政務官にお聞きしたいと思います。
 二十二日付けの毎日新聞に、長谷川根室市長の論考が掲載されています。ここで、メドベージェフ大統領の国後島訪問に対して、根室市民、元島民や隣接地域の皆さんの怒りは当然だが、市民が腹を立てたのは対ロ外交に対する不信感だったというふうにあります。私も昨年十二月、この委員会で派遣でもって、委員長を始め各党の皆さんと一緒に根室に行きましたけど、地元の皆さんのやっぱり怒りを肌で感じてきたわけです。旧ソ連時代を含めて、初めてロシアの国家元首がこの領土、画定していない地域に足を踏み入れると、そして領土交渉が進展していないということに対して、政府に対するこの地元の怒り。それから、最盛期には約五万人いたんですね、根室の人口は。それが今三万人を割って、漁業衰退という中で二〇〇九年度の出稼ぎ率でいうと道内三十五市でワースト、二一・八%と、道内の平均の約四倍になっているわけです。
 こういう痛切な思いをどう受け止めておられるのか、政務官として、この北方領土担当の一員として、そのことについて一言お願いいたします。

○大臣政務官(園田康博君) ありがとうございます。
 昨年の十一月、メドベージェフ・ロシア大統領が言わば国後島に訪問、このことに関しましては、本当に私どもも、今回のこの事案も含めてですけれども、ロシアとの間で、先ほど外務省からもお話がありましたけれども、立場としては本当にまだまだ深い溝がある、相入れない立場にあるというところでございましたし、そのことを改めて認識をさせられたということとともに、北方領土の島民の皆さん、旧島民の皆さん方の怒りのことを考えますと、本当に深く傷つけられたというふうに考えているところでございます。
 そういった意味では、この北方領土問題、返還に向けてしっかりと取り組んでいかなければいけないということと同時に、これは政府とそれからやはり国民の皆さん方と一体、このことを含めて取り組んでいく必要があるということを再認識をさせられたというふうに私は思っておるところでございます。
 そういった意味では、先ほども申し上げましたけれども、北方問題対策の予算というものをしっかりと付けさせていただくということが第一義的にあったわけでございますし、また、それによってメッセージをしっかりと外に対しても、あるいは国民に対してもそれを発信できるというふうに私どもは考えさせていただいたところでございます。そういったところで是非御理解をいただきたいというふうに思っております。
 また、根室市長のお話もいただいたわけでございますけれども、根室市を含む北方領土の隣接地域の皆様方、かつては行政的にも経済的にも大変北方領土と一体的な社会経済的な圏というものを持っていらっしゃって、その中で活動を行っていらっしゃったというところは私どもも聞かせていただいたところでございますし、それに基づいて発展をしてきたというところでございますけれども、残念ながらまだまだこの北方領土問題というものは解決に至っていないということに対しましては大変私も心が痛むところでございます。戦後は、その望ましい地域社会としての発展というものをしっかりとこれからつくり出していかなければいけないというふうに思っております。
 このような中でございますけれども、先月でございますが、枝野北方担当大臣が訪れまして島民の皆さん方の直截な意見を聞かせていただいて、改めて全国民の問題としてこの北方領土問題の解決に向けた決意というものを伺っているところでございます。
 私としても、しっかりとこの北方領土問題の解決に向けた環境整備とそれから外交交渉、こういったことも全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 十五分で短いので、簡潔にできるだけ答えをお願いします。
 それで、政府の対ロ交渉が暗礁に乗り上げているというのは、これは領土問題、領土返還の交渉の基本がやっぱりボタンを掛け間違ったまま来ているということに関連しているというふうに思うんですよ。政府の基本スタンスというのは、南千島と北海道の一部である歯舞群島を合わせた北方四島だけの返還要求ということでずっと来ていると思うんです。これは自民党政権の時代からそのまま民主党政権になっても踏襲してきているわけですけれども、これではやっぱり領土不拡大の原則を踏みにじってそれを正さないままに来ているということも解決されませんし、戦後処理の道理に立って国際社会をもやっぱり納得し得るような、そういうことで行かなければならないわけですけれども、そこにも行かないというふうに思うんです。我が国のやっぱり交渉の大きな弱点にもなっているということをやっぱりよく見なくちゃいけない、そして転換を図っていかなきゃいけないというふうに思うわけです。
 私どもは、旧ソ連に奪われたのは南千島だけじゃないと、これは北千島を含む全千島が奪われたんだというふうに思っています。戦後、戦争という手段ではなく、平和的な交渉で画定しているのはこの北千島も含めてということですから、そこに立ってやっぱりやる必要があると思うし、もちろんそのことをめぐって、相手がそれでもって、はい分かりましたとすぐ言うわけではないと思いますけれども、しかし、少なくとも国際社会全体を本当に納得し得るということでの論点、論拠というか、そういうものを持って臨むことが今必要だというふうに思っています。
 それで、領土が返還されずに交渉も進まない中で地域の疲弊に歯止めが掛かっていないと。本来の我が国の領土が不法占拠されていて、しかも経済交流すらできないというのがこの地域疲弊にも非常に大きな影響を与えているわけです。
 根室市を始めとする北方領土の隣接地域振興対策協議会が、これは五年前ですけれども、二〇〇六年の二月に北方領土問題の解決に向けた取り組み、再構築提言ということで政府に提案していると思うんです。内容は、一つは領土返還に向けた戦略的な環境づくりとしての四島交流の実施ということ、二つ目は自由貿易ゾーンの形成と、三つ目は北方四島とのアクセス機能の整備など、二十八項目にわたる中身です。
 私も二〇〇六年に、この中幾つかの項目、例えば拠点ということで根室病院の、市立病院の充実の問題ですとか、それから地震や水産資源に関する共同研究の問題とか漁業協力金の国による負担のことなんかも取り上げてきたんですけれども、政府としてそれ以外の項目も含めてこの全般的な検討というのは行っておられるでしょうか。

○政府参考人(小河俊夫君) 先生御指摘の再構築提言書でございますが、平成十八年二月に根室管内一市四町が、北方領土問題取組につきまして隣接地域の思いを反映させ、未来に希望の持てる取組としてまとめられたものと私ども認識しております。
 北方領土返還要求運動を粘り強く進めていく中で様々な御意見をいただくことは大切なことであるというふうに認識しており、その後も、平成十八年以降についても要請書、それから意見書をいただいておるところでございます。これらについては可能な限り対応してきたところでございます。
 これは議員立法でございますが、一昨年の七月には北特法の改正がございまして、隣接地域における特定の事業に関しての国の補助率のかさ上げについての要件緩和もなされたところでありまして、また、啓発活動については来年度、北方対策本部予算を大幅に増額し全国的な啓発キャンペーンを実施する予定でありますほか、内閣府を始めとする各省庁において各種の取組を提言書を参考にさせていただきながら進めているところでございまして、先ほども申し上げましたが、北方領土教育の充実のほか、先生が御指摘の水産庁の経営安定支援事業のほか、また元島民の方々に対する融資制度の充実についても意を用いているところでございまして、平成十八年には貸付対象者の拡大、承継の要件緩和を行ったところでございますが、来年度、平成二十三年度には北対協の融資事業の限度額の引上げを予定いたしております。需要の多い五トン以上の漁船の建造に対応できるよう漁業資金の限度額の引上げを行う予定でございまして、今後とも関係省庁との連携を密にしながら北方領土隣接地域に対する支援に努めてまいる所存でございます。

○紙智子君 それで、その中に、例えば自由貿易ゾーン、ビザなし特区というのも提言書の中の柱にあるわけです。これ、今までの枠組みを超える話なんですよね。
 例えば、北隣協を窓口にした組立てを政府としても更に検討できないかということで、未解決の領土問題があるよということはちゃんとお互い認識しながら、それの解決に向けてやるんだということを明確にしながら、そこに向けて可能な様々な形態のアプローチを考えていくということですよね。ビザなし交流でこの間、人的な、ビザを発行しないでやるというやり方しているんだけれども、これの何というんでしょうか、経済版と言ったらいいのかな、何かそういう新たな枠組みを考えられないのかと。
 例えば北方四島との関係でいうと、今まででいうと、漁業資源の管理をめぐって共同管理で、やっぱりどういう資源があるのか、回復のためにどうしたらいいのかということなんかも含めて共同でやるだとか、知床が世界遺産になったんだけど、もっと延ばして、その先まで延ばして、国後だとかあっちの方も含めてやっていくことなんかも地元で運動がされてきているわけなんですけれども、こういったものだとか、経済分野でも何かできないのかなと、そういうことなんかも返還を見据えてやっていく。
 この間、色丹島に行ったんですけど、非常に、国後もそうですけれども、湾の中がすごく汚れているわけですよね、垂れ流しになっているというのもあって。そうすると、やっぱり下水道がちゃんとできていないということもあるわけで、そういったことをめぐって、返ってくることを想定しながらメンテナンスをやっていくだとか、こんなふうなことなんかもできないのかなということなんかが地元からは提案されているんですけれども、こういった声にも是非耳を傾けていく必要があるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(小寺次郎君) 幅広い御質問でありましたが、ビザなしでどういうことができるかということに関してお答えしたいと思います。
 我々といたしましても、ロシア側と話をして、北方四島において日本とロシアが共同で何らかの経済活動をできないんであろうか、できる方法はないんだろうかと、これを検討していこうということで合意をしております。
 具体的には、今年の二月の日ロ外相会談においてこういうことを検討していこうということが合意されておりまして、我が方といたしましては、我が国の法的な立場を害さない形でどういうことができるのかということを真剣に検討してロシア側と話し合っていきたいと、このように考えております。

○紙智子君 是非そういったことでも努力をしていただきたいというふうに思います。
 それから、領土問題未解決の一環として、これまでの交流そのものも、今度はまた十六回行うということで合意はされたということなんですけれども、ビザなしのその枠組みも元島民それから関係者ということで来ているんですけれども、もっとやっぱり啓蒙も含めてというかな、ただ観光のために行くんじゃなくて、ちゃんと領土問題理解してそこに行く人たちの枠をもっと広げる必要があるんじゃないかと思うんですけれども、この点についても一言お願いします。

○政府参考人(小河俊夫君) 先生御案内のとおりでございまして、ビザなし交流は我が国国民と四島住民の間の相互理解の増進を目的といたしまして、元島民、その子、孫、また返還要求運動関係者を中心といたしまして参加をしていただいているところでございますが、そのほか教育関係者、学校の先生方、それから大学生、高校生といった青少年、それから専門家の交流という多様な主体の参加を得て行われているところでございます。今後とも、とりわけ次の世代を担う若い世代の参加を拡充し、一層幅広い層の参加を図ってまいる所存でございまして、特に青少年については事前にお勉強していただきまして、正しい理解をしていただいた上で交流を進めてまいりたいと思います。
 また、交流事業のプログラム内容につきましてもいろいろと工夫しておるところでございます。また、平成二十四年には後継船舶が就航が予定されておりますので、これを機に若い世代の交流についても検討してまいりたいと考えておるところでございます。

○紙智子君 それでは、最後に一問。
 私も、この度の東日本震災で津波の被害が、領土返還の、言ってみればその返還運動の支えになっている地域がやっぱり元気でなきゃいけないわけですけど、だんだん元気がなくなってくる状況で、今回もまた大きな被害を受けて、先ほどもお話があったから繰り返しませんけれども、今まで例えば五月から六月に向けてロシアの二百海里内に漁に行くわけですね。サケ、マスで行くとか、あるいはサンマなんかも行くわけですけど、そのときに行く船団が本当に被害を受けて、もう三分の一ぐらいしかいないんじゃないかという状況になっているわけですよね。
 ですから、そういうことも含めて、やっぱり本当に支援の手をちゃんと差し伸べて、そこをやっぱり回復していくということのために全力を挙げてほしいというふうに思っているんですけれども、この点で、水産庁、今日来てもらっていますけれども、お願いします。

○政府参考人(宮原正典君) 御説明します。
 今般の地震は大変甚大な被害を起こしました。この震源に近い岩手、宮城、福島ばかりでなくて、北海道の沿岸も含めまして大変大きな被害を漁業にもたらしているというふうに認識しております。
 農林水産省といたしましては、被災された方々への食料供給の確保に今全力を挙げている状況でございますが、これとともに漁業への漁港などの被害状況の迅速な把握にも努めているところでございます。何よりも、北海道を含めた被災された方々が将来への希望と展望を持って水産業を再開、継続できるよう、漁協加工施設あるいは漁港、漁場、養殖施設、こういった漁村全体を支える復興復旧にこれからも全力で取り組んでまいる所存でございます。
 ありがとうございました。