第177回国会 2011年3月24日 農林水産委員会


○震災対策 福島原発事故による農産物被害への補償、備蓄米の放出、酪農・畜産への支援を求める。TPPの中止を要求。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、東日本震災の被害に遭われた皆さんに心からお見舞いを申し上げたいと思います。そして、やはりこういう事態を目の前にして、本当に国民の皆さんと一緒になって我々全力を挙げて何としても乗り越えるということで努力をしなければなりませんし、本当に私もこの地震の翌日から福島、いわきの小名浜のところから始めて仙台まで、翌日なのでどこまで行き着けるか、ガソリンが切れたらそこで終わりということでありまして、そういうことも言いながら現地に行きまして、本当にその惨状に胸がふさがれる思いがしました。
 大変な事態になって、まだ人を探しているという状況の中でしたけれども、しかし同時に、その中で本当に必死になって生き抜こうとする、人と人とのつながりですね、ここを本当に復活させていくという、そういう努力も同時に見て、復興に向けた本当に強い意思というものも同時に感じて、例えば気仙沼も大変な被害だったわけですけれども、気仙沼の市場を復活させるために頑張ろうということで集まりがあったり、あるいは石巻の市場の社長さんが、水産業の再建、石巻の再建を一からやっていくんだということを決意を語られている姿を目にするときに、本当に熱いものが胸によぎりますし、そういうところに依拠して、本当に我々政治の果たす役割を発揮して乗り越えていかなきゃいけないということを改めて思いました。
 それで、そこに立ってなんですけれども、最初にちょっと通告していたのと順番変えまして、TPPの問題からお聞きしたいと思います。
 今回のこの未曽有の災害で、三月十四日、民主党の食と農林漁業再生・強化プロジェクトのチームですね、TPP交渉への参加の検討を棚上げをし、地震による被災の復旧に全力を傾けるように政府に要請することを決めたと。そして十六日には、政府が開催することになっていた四か所での開国フォーラム、この開催を中止することを決めたわけです。これによって、政府による国民に対するTPPの情報提供ができないことになったと。それから、農業改革の基本方針に関する今月末の中間整理を先送りすることにしたわけですよね。
 今、TPPで本当に深刻な打撃を受けるといった場合に、その想定される地域の人たちというのはやっぱり東北地方ですよ。未曽有の災害で二万人以上の死者、行方不明者の被害があり、町も根こそぎなくなっており、そして農業、水産業も壊滅的な被害を受けているときにTPPの参加の検討は許されないと。そして、直ちにTPP検討の作業を無期限中止すべきだというふうに思うわけですけれども、まず大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) TPPに関しましては、六月をめどに交渉参加をするかどうかというふうな判断をしたいと、このように菅総理大臣が言われておるところでございますが、政府全体としてどうするかというふうなことは、これから判断されていくことだと思っております。
 しかし、そういう中で、私ども農林水産省といたしましては、今やることは二つであります。緊急にやはり取り組んでいかなきゃならないことは、まさしく申し上げましたとおりに、被災地の方々、避難されている方々に対して食料と水の安定供給をしっかりとやっていくこと。そしてもう一つは、この被災に遭われた方々の地域をいかにして復旧復興していくかと、この二つに全力を挙げて取り組んでいく、これが最優先の課題だと、こんなふうに考えているところでございます。

○紙智子君 日本農業新聞も、三月十六日の論説でこういうふうに言っているわけです。菅政権は、地方に一方的な犠牲を強いかねない貿易自由化を進める開国論議の前に、目の前の惨状に立ち向かう救国こそを最優先すべきであると。それからまた、三月二十三日の論説でも、政府は地域社会の苦境に追い打ちを掛けるようなTPPへの参加問題はそのまま封印し、食料・エネルギー安全保障の確立など、有事にも強い日本の再構築に向けて総力を挙げるべきだというふうに書いているわけですね。全くそのとおりだというふうに思うんです。
 この点についても、一言、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 農業新聞の論調、論説というふうなものを私も見せていただきました。
 重ねて申し上げますけれども、今、農林水産省として果たしていかなきゃならない役割、使命というものは、被災地の方々に対してしっかりと食料と水、そして大切な物資を届けるというようなことに全面的に努力をしていくこと。そして、この被災地の方々、協力し合いながら、どうやって被災地を復旧復興させていくか、このことにまた全力を挙げていく、このことだということを再度申させていただきたいと思います。

○紙智子君 今回の地震、津波、そして原発の事故、これでもって農林水産分野での被害の大きさも、もう未曽有の被害を受けていると今まで議論があるわけですけれども。それで、この水産あるいは農作物、施設の被害、林野、それぞれの被害の状況というのはまだ全部が全部把握し切れているわけじゃありませんけれども、やっぱり急がれるところから次々と手を打っていかなければならないということだと思います。
 それで、最初に原発事故にかかわってなんですけれども、原子力災害特別措置法というのがありますよね。この第二十六条の措置に、風評被害防止のために自粛地域について汚染状況を調べて広報で知らせることなどもできる中身だというふうに理解をしているんですけれども、まずこれについて、どのように基づいて行われているかということで経済産業省からお聞きしたいと思います。

○政府参考人(中村幸一郎君) お答えを申し上げます。
 まず、原子力安全の規制を担当する立場の者といたしまして、今般の原子力災害によりまして、周辺住民の方々、それから農業関係者の皆様を始めといたしまして、国民の皆様に御心配と御迷惑をお掛けしている点を深くおわび申し上げます。
 委員御指摘のとおり、正確なデータ公表に基づきまして風評被害の防止というのは非常に重要な課題だというふうに認識をしております。経済産業省としても、記者会見あるいは公表資料等を通じまして、この法律に基づきます指示内容、あるいは放射線モニタリングデータの正確な提供ということによりまして、風評被害の防止に取り組んでいるところでございます。
 今後とも、厚生労働省を始めといたします関係省庁と連携をいたしまして、風評被害の防止に全力で取り組んでまいります。

○紙智子君 このモニタリングの箇所などについてや、どのようなデータの発表の仕方とか、その辺のところをもう少しお話しください。

○政府参考人(中村幸一郎君) 経済産業省の方では、電気事業者の方で行っております発電所の敷地周辺につきましてモニタリングをする箇所がございます。これにつきましては、現在、ポスト自身は計器類等について必ずしも信頼が持てるものではございませんので、モニタリングカーという移動式の車によりまして、定期的に場所を決めて放射線量率を測ってございます。そして、測られた、定期的にと申しますと大体三十分程度だと思いますけれども、三十分ごとにその地点での放射線量を測った上で集計をいたしまして、私どもの方ではおおよそ、一日に数回でございますけれども、その際にそれまでのデータというものを時系列に整理をいたしまして、記者会見のとき、それから資料配付をするときにそれを掲載をして公表しているというところでございます。

○紙智子君 このモニタリングの箇所についてはもっとたくさんやる必要があるんじゃないかと、そして詳細なデータを示すべきじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

○政府参考人(中村幸一郎君) 御指摘のとおりだと思います。
 今現在、発電所周辺につきましては、放射線量が高いものですから、作業される方々の安全も確保しながら、事業者の方でモニタリングカーを使いながらその観測をしているところでございます。また、これは事業者の方ではございませんけれども、福島県の方では、幾つかの地点を選定をされまして、定期的に同じような形での放射線量率というものを測定をされております。そういったものについても、私どもの記者会見のとき、資料配付のときにも併せて説明をさせていただいたり、資料を配付させていただいております。引き続きそういった形の取組を進めていきたいと思います。

○紙智子君 水産物についてもモニタリングをしてデータを示すということが大事だと思います。これは厚生労働省でしょうか。それから、海水も必要だと思うんですけれども、これは水産庁だと思うんです。それから、土壌については文部科学省だと思うんですけれども、それぞれどのようにされているのか説明をお願いします。

○政府参考人(梅田勝君) 現在、地方自治体において食品中の放射性物質の検査が行われております。
 福島第一原子力発電所付近の海水に含まれる放射性物質の濃度が上昇しているとの情報もあることから、三月二十二日に、特に千葉県及び茨城県に対しまして、沿岸の水産物についての検査について強化するよう依頼を行ったところでございます。
 千葉県におきましては、千葉県沿岸で採取された水産物一件について、本日、規制値以下であることが確認されたことが発表されております。今後も検査を強化して継続する予定と聞いております。

○政府参考人(加藤善一君) 文部科学省でございます。
 文部科学省におきましては、土壌に関しましては、原発から二十キロより離れましたところの空間線量率、それから土壌のサンプリング、それから空間中の浮遊物等につきまして放射線量を測りまして、それから放射性核種も測りまして適宜ホームページ等で公開し、国民の皆様方に情報を提供しているところでございます。

○紙智子君 水産庁、来てなかったですかね。

○委員長(主濱了君) 水産庁の方は。

○副大臣(筒井信隆君) 魚に関して、魚についてですね。

○紙智子君 そうです。海水ですね。水産庁は海水を調べているんです。

副大臣(筒井信隆君) 海水について……

○紙智子君 水産物は厚生労働省です。

○副大臣(筒井信隆君) はい。海水は文科ですから、そっちの方に答えてもらいます。

○紙智子君 ああ、そうですか。

○委員長(主濱了君) じゃ、ちょっと整理します。よろしいですか。
 それじゃ、加藤審議官。

○政府参考人(加藤善一君) 文部科学省でございます。
 文部科学省におきましては、海水、特に原子力発電所から三十キロ沖合のところの海水を、文部科学省の所管します法人の船を出しまして、三十キロの地点から南北に何点か海水を採取しまして、海水中の放射性核種の分析をいたしまして、これも、多分昨日だったと思いますけれども、公表したところでございます。

○紙智子君 文科省で土壌の二十キロ外のということで、実際に出ている中で、四十キロ圏内の飯舘村の土壌が高濃度のセシウムが検出されて、通常の六倍とか、沃素については四倍。四十五キロ圏内の川俣町も高い比率ですし、あと南相馬市も高い濃度で出ていたと思うんです。風向きによってはもっと、五十キロとか八十キロとか、こういうのもあるやに聞いているんですけれども、もっと広い範囲でこれもモニタリングをして詳細に示す必要があると思いますけれども、いかがですか。

○政府参考人(加藤善一君) 御指摘の点を踏まえまして、検討させていただきたいと思います。

○紙智子君 文科省にお聞きしますけれども、基準値を超えたものは流通させないということになるわけですけれども、それと、出荷自粛の対策を取っているところも含めて、出荷できないことで収入減となるところについては当然補償すべきなわけですけれども、これについて、これまでもちょっと議論の中で出ていますけれども、改めてどういう考え方でどういうふうに対応しているのかということをお願いします。

○政府参考人(加藤善一君) 御説明申し上げます。
 原子力発電所の事故に伴います損害賠償の件でございますけれども、今回の発電所の事故によります損害につきましては、暫定基準値を超えた農作物、あるいは出荷制限の指示の対象となった農作物に限りませんで、一般論といたしまして、事故との相当因果関係が認められるものにつきましては原子力損害の賠償に関する法律がございますので、それに基づきまして適切な補償が行われることになると考えてございます。
 この補償につきましては、原子力損害賠償法によりまして、一義的には原子力事業者でございます東京電力がその損害賠償の責を負うことになりますけれども、私ども政府といたしましても、東京電力がその責任を全うできるように連携、協力いたしまして、被害者の方々が適切に補償を受けられるように万全を期してまいりたいというふうに考えてございます。

○紙智子君 今後の食料増産という問題で、これは予算委員会でも話題になりましたし、今日も議論になっているんですけれども、やっぱり被災地を復興させるということで、もちろんこれ自身非常に大事なんですけれども、津波を受けた農地あるいは放射能の汚染ということではすぐに使えない状態、特に放射能汚染の場合は一定の時間が掛かるということを見ますと、すぐに作付けに行き着かないということもあるわけで、土の入替えなんという話もありましたけれども、そういうことを復旧させるということと併せて、被災地以外の生産地、ここでやっぱり増産を計画的に進めるということも今からやっぱり検討して打ち出していかないと間に合わないんじゃないかというふうに思いますけれども、この点についてどのように検討されているか、お願いします。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今回の原発事故によりまして、また今回の大震災によりまして相当食料の、水産も含めてでございますけれども、生産の減少というふうなものがこれは考えなければならないことでありまして、じゃ、それに対してどう対処するかというふうなことも非常に重要なテーマでございます。そういう意味で、これからの需給関係というふうな中でどうやって食料を増産していくかと。それが果たしてなし得ることなのかどうかというふうなことも踏まえながら、国民生活に対する食料の安定供給というふうなものに対してしっかりと取り組んでいかなければならないと思っております。

○紙智子君 これからの作付けということでは既にもう手掛けていかなきゃいけないということも現場からも上がっていますので、是非そこをよろしくお願いしたいと思います。
 それから、必要な食料を被災地に届けるために必要なガソリン、軽油などの手当てが必要だというので、これがやっぱりなかなか現地に届かないという中で、これも議論があったところですけれども、優先的にやっぱりそれを手だてしてほしいということ出ていますけれども、これについてはどのように手を打たれているでしょうか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今回の被災地の皆様方に対して、食料、水あるいはその他の物資を供給するということにおいては燃料が不可欠であります。そういう意味では、今の現状というものを踏まえたときに、被災地の皆様方に対して血液を投入しなきゃならない、その血液こそがまさに燃料だと、こんなふうに私は主張しておるところでございます。
 そういう意味で、今日まで農林水産省といたしましても経済産業省に交渉し、またいろんな意味で篠原副大臣から経済産業省の池田副大臣に対しましても支援物資の運搬に必要な燃料の優先配分などを要請する、あるいはまた筒井副大臣の方から経産省の政務三役に対してその他の燃料、軽油あるいはまたA重油あるいはまた灯油等々、そういうふうなものに対してどんなことをしても一刻も早く輸送しなければならない、このようなことから、輸送手段の確保と同時に燃料の確保に対して全力を挙げて取り組んできたところでございます。
 これからもこの輸送手段の確保と燃料の確保については引き続き農林水産省としても懸命に食料供給、水の供給と一体となって取り組んでいきたいと思っております。

○紙智子君 これも先ほども出ていた話ではあるんですけれども、米の供給を増やすために民間にずっと要請して出してもらっているというのはあるんですけれども、国が保有する備蓄米も積極的に使ったらいいじゃないかというのがさっき出ていて、取りあえず民間でもって今やっていて、まだ国の備蓄までは必要ないという話がさっきあったんですけれども、ただ、現場では不足して届いていないわけなので、そういう意味ではやっぱりスピーディーに、届いていないところに届けるということでは、全部民間が出し終わってからじゃなくて、やっぱり国の方も敏速に対応することが必要じゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

○副大臣(筒井信隆君) 特に被災地では当初はおにぎりとかパンとか弁当とか、調理が必要ない食品の要請が強かったわけで、それを中心にやってまいりましたが、ライフラインが復活したというか炊飯が可能な状況になって、精米についての要請も出始めているわけでございまして、それに関して今現在は民間在庫が約二百万トン以上あるという状況でございますので、それらで対処が可能というふうに考えて、そこから今取組をし始めております。
 首都圏においても米が店からなくなったということがございましたが、あれに関しても、米の卸大手十社にその供給を要請をした。その場合も、一番の問題は米自体がなかったというよりも運ぶ燃料がなかったという点でございまして、この点は今大臣が答弁されたような努力をすることによって首都圏についてもほぼ供給がそろい始めたという状況だというふうに考えております。
 しかし、まさに災害等々の場合のために政府の備蓄米が百万トンを基準としてあるわけでございますから、いつでもこれを放出する、こういう準備はしているところでございます。

○紙智子君 あと、畜産・酪農関係でいいますと、今度の災害で、家畜への給水とか搾乳ですね、これは毎日やらないといけないわけです。畜舎や施設などにも自家発電の燃料が必要ですし、飼料やそれから家畜輸送車ですね、これも走らせなきゃいけない。それから集乳車も走らなきゃいけないんですけれども、この燃料についても足らないと。結局、生きているものだから毎日餌を与えなきゃいけないし、毎日やっぱり搾乳しないといけないと。搾乳して放射能汚染のところは捨てなきゃいけないという悲しい実態なわけですけれども、とにかく必要不可欠ということでありまして、ここもやっぱり優先して届けなきゃいけないと思うんですけれども、この辺についてはどうなっているでしょうか。

○大臣政務官(田名部匡代君) 先生御指摘のとおりだと思います。これまで大臣、副大臣の答弁にありましたように、これに関しても優先的に配送してほしいということで経産省の方に要請をいたしておりまして、現在、東北地方への飼料運搬ですけれども、関係省庁の協力もあって燃油の供給状況が改善され、三月二十三日までに約二万三千三百トンが供給をされているという状況であります。
 引き続きこういったことをしっかりと、状況を把握をしながら取組を進めてまいりたいと考えています。

○委員長(主濱了君) 時間が来ておりますので、おまとめください。

○紙智子君 じゃ、最後、一つだけなんですけれども、計画停電ということなんですね。
 それで、命のところが優先されるんですけれども、食品産業とか乳業メーカーとか飼料工場とか、ストップしてしまうと供給することに事欠いてしまうということで、この問題についてもそこを何とか配慮していただきたいという声も出ております。この点について最後に一言お聞きして、終わりたいと思います。

○副大臣(筒井信隆君) おっしゃるとおり、食べ物はもう絶対に欠かすことができない絶対的必需品ですから、これに関連する業務ができないような停電は困るということで申入れはしてきているところでございますが、これもまあある意味で理解できるんですが、一部だけ、そういう産業だけ除いて計画停電をするわけにいかないというふうな回答でございます。
 しかしそこで、計画的な操業ができるように、なるべく早く、前日とか何かではなくてもっと早く、ちゃんと、停電地域や停電の時間をきちんと連絡してほしいという要請はしておりまして、それには徐々にこたえてもらっている、前よりもずっと、停電の箇所、時間、この連絡が早く来るようになっている、こういう状況だろうというふうに思っています。そういう方向で対処をしていきたいなというふうな考えでございます。