第176回国会 2010年10月18日 決算委員会


◎米の買い上げ 政治の責任で緊急対策迫る

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 二〇〇八年度の決算の農業分野にかかわって質問をさせていただきます。
 まず、この食料自給率を抜本的に高めようと思うと、米を始め農産物の価格保障、所得補償が必要だと、不可欠だということで、我が党はそれに踏み込む点で不足しているということを当時から指摘をしてまいりました。これについて、今まさにその問題点があらわになっているというふうに思うんです。
 今、農村地域では、総理、米を作って飯食えないと、こういう声が広がっているんです。米を作って飯食えない。そして、百七十を超える地方議会で今のこの米価暴落に対して米の買上げを含めた緊急対策、これを求める意見書が採択をされております。そして、JA中央会も要望書を届けてきているというふうに思います。
 まず、総理に対してこのことに対する御認識を伺いたいと思います。総理ですよ、総理、総理の認識を聞いているんです。

○委員長(鶴保庸介君) 事前通告ありましたか。
 鹿野農林水産大臣。

○国務大臣(鹿野道彦君) 私の答弁を前に申し上げますが、今委員から言われましたとおりに、お米の価格の下落というふうなことにつきましては非常に重大な関心を私ども持っておるわけであります。とりわけ、今年のことにつきましては、概算金の設定に当たりまして農協等々堅めの設定をしたと、こういうふうなこともありまして、価格が昨年に比べて下がっておると、こういうようなことであります。
 このことにつきましてはいろいろなことが言われておりますけれども、やはりデフレというようなことの基調の中で、まさしく余るような状況だけはしたくないというようなことから堅めの設定がされたと、このようなことではないかというふうな認識に立っておるわけでございます。
 しかし、いずれにいたしましても、このことにつきましては戸別所得補償というような制度の中で定額部分、そして変動部分と対応するということになっておるわけでありますから、これで対処していきたいと思っております。

○内閣総理大臣(菅直人君) 今農水大臣から具体的な話はありましたが、二十二年度米の取引が、昨年の当初価格よりも低い価格で二十二年度米取引が開始され、米の主産県などで米価の動向について心配の声があることは承知をいたしております。米価の下落に対して、米戸別所得補償モデル事業に参加している農家についてはその所得が補償されることとなります。
 なお、政府が米価の下支えのため備蓄運営上必要のない米の買入れを行うこと、これについては消費者の理解あるいは今回の米モデル事業の非参加者が米価上昇の最大のメリットを受けるといったような問題がありまして、ここは十分な慎重な検討が必要だと考えております。

紙議員 ○紙智子君 消費者にとってはやっぱり暮らしのことを考えると安い米の方が有り難いと、これはそう思うと思うんですよ。しかしながら、安過ぎれば生産者が成り立たないですよ。生産者が成り立たないということは、やっぱりお米を作る人や農産物を作る人がいなくなってしまうと。そうしたら結局、国産米で食べたいとか、国産のものを、安全なものを食べたいというそういうことがかなわなくなってしまう。結局は回り回って国民にそのツケが回ってくる問題なんですよ。
 それで、今日、どれだけ、じゃ米が安いのかということで、できるだけ分かりやすくと思って持ってきたのがこれなんですね。これ、五百ミリリットルのペットボトルの水です。百二十円で買ってくるわけですよね。この同じ五百ミリのペットボトルに米を入れたら幾らになるのかと、こっちに米を入れてきました。このお米は、ちなみに八月の相対取引の全銘柄の平均価格で六十キロ当たり一万四千百六円の米ですよ。一番直近のやつですね。これを入れた場合幾らかというと、百十七円五十五銭なんですよ。だから、水よりも米の方が安いということなんですよね。
 しかも、労働者の賃金、報酬と比較した場合に、最低賃金が今労働者は時給で七百三十円ですよね、最低賃金、ちょっと上がって七百三十円ですよ。じゃ、米価の場合は、この労働報酬に換算したら時給幾らかと調べると、これ、〇八年度産ですよ、それで三百二十五円ですよ。だから、労働者の最低賃金もこれでもまだ不足だと言っているのに、半分にも行かないんですよ。
 こういう状態、総理、異常だと思われませんか。総理。

○国務大臣(鹿野道彦君) 基本的に、米の価格について今、水の価格とを比較しておっしゃられたわけでありますけれども、稲作農家の人たちは丹精を込めてお米を作ってもらっておると。昔から、米という字は八十八回の手入れが必要だと、こういうふうなことで大変努力をされておる。それに対してきちっとした評価がなされるというようなことでございますが、まさしくそういう中で生産者の方々の苦労というふうなものも、やはり業者の方々も理解をされ、そして消費者の人たちも理解をしていただく中で、全体としてやはりお米というふうなものは大変重要な日本の国の主食なんだなというようなことを、この共通の認識を持ってもらうというようなことも非常に大事なことではないかと。自分さえ良ければいいというようなことではなしに、お互いが日本のこの連綿と続いてきた稲作について改めて理解をしていただくということが大事なことではないかなと、こんなふうに思っております。

○紙智子君 総理、総理の感想を求めたいと思います、その安さについて。

○内閣総理大臣(菅直人君) 水を五百ミリに比べて、米五百ミリリットルというのかtというのか、それの方が、ほとんど値段が変わらない、あるいは安い。あるいは、賃金水準に比較すると、最低賃金よりも半分以下と。
 私自身がその数字を確認したわけではありませんが、そういう点では非常に低い水準にあると。ただ、そのことがもちろん大規模に生産する人あるいはもっと効率よく生産する人にとって成り立つ、成り立たないということは、ちょっとその百ミリリットルだけではなかなか判断できませんけれども、感覚としてはそういう感覚を説明を聞いて受け止めました。

○紙智子君 ある農家の方が、もっと価格が下がればいいと言うわけですよ。で、びっくりして、なぜですかって聞いたら、もっと下がったらもうやめる踏ん切りが付くというふうに言ったんですよ。これは、私はもう言葉を失います。そういう思いにさせているというのはやっぱり政治の責任だと思うんですよ。
 更に事態はひどくて、ちょっと見てほしいんですけれども。(資料提示)これは、農協から農家に払われる米の仮渡金、概算金ですよね。六十キロ当たりで、これ見ると七千円台が出てきているんですよ。これ、去年とおととし辺りはもう一万円とか一万一千円とかだったんですが、一万円を割って、八千円どころか七千五百円ですね、こういう値段が出てきているわけですよ。
 それから、二〇〇九年産米です。この二〇〇九年産米の米価は、とにかく見て分かるように、下落の一途をたどっているということです。ですから、去年の九月の時点では一万五千百六十九円、これ、六十キロの値段ですね。それが今年の八月は一万四千百六円ですから、もう千円下がってきているということです。
 これに加えて、今年の新米、今年の新米は更に下がっているわけですよ。だから、農業者も農協も地方自治体も過剰米については買い上げてほしいと一貫して求めているわけです。ところが、菅内閣は、これ、拒否してきているわけですね。総理、なぜ買取りをされないんでしょうか。総理、総理に聞いているんですよ。
2010年産米の概算金状況 2009年産米の相対取引価格
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○国務大臣(鹿野道彦君) 米の買上げにつきましてお触れいただきましたけれども、先生御承知のとおりに、食糧法によりまして、いわゆる米穀の備蓄というのは、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の米穀を在庫として保存すると、こういうふうな取決めがあることを先生も一番御存じなことだと思います。

○紙智子君 総理。

○内閣総理大臣(菅直人君) 今農水大臣の説明もありましたし、先ほど私も申し上げましたが、この備蓄運営上必要のない米の買上げということについて消費者の理解を得られることが難しいということ、また、米モデル事業の非参加者が米価上昇の最大のメリットを受けるといったようなこと等で問題があるということで、慎重な姿勢で現在臨んでいるということであります。

○紙智子君 書いたものを読まないでいただきたいんですね。本当に現場は大変な思いで、どういう思いでこれまで何度も何度も繰り返し要請しているかということを受け止めていただきたいと思うんですよ。
 それで、今農水大臣がおっしゃったけれども、必要のない米を下支えのために買うということをやると、要するにお金を使うことに対しては国民の理解得られないという、そういう答弁ですよね。
 それであればお聞きしますけれども、いいですか、来年度からは内閣として備蓄を変えましたよね。棚上げに変えたわけですよね、備蓄を。これを、大臣にお聞きしますよ、四十万トンを今年前倒しで買い上げた場合の予算額は幾らになるのか、これ一つ。それからもう一つは、米価下落で当年産の米の販売価格が六十キロ当たり千円下がった場合、戸別所得補償モデルの事業で新たな持ち出し予算は幾らになるのか、これ数字だけでいいです。端的にお答え願います。

○国務大臣(鹿野道彦君) 二十二年度産米四十万トンを政府が買入れした場合の当該年度の財政支出額は、買入れ費及び保管費用で合計一千百四十五億円であります。それから、仮に米価が千円下がった場合の所要額は一千百六十六億円であります。二千円下がった場合の所要額は約二千三百三十二億円であります。

○紙智子君 ちょっとおかしいですね。これ事前に聞いたら、四十万トン買上げに九百七十億円って聞いていますよ。今の数字間違いじゃないですか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 四十万トンの買上げにおきましては、合計、いわゆる保管費用なりあるいは買入れ費で両方、両方で、私どもとすれば両方で千百四十五億円と、この数字を申し上げます。

○紙智子君 ごまかしていますよね。実際に買い上げたら幾ら掛かるかと聞いたのに、プラスして保管料まで入れて数を大きくしてやろうとしているんですけれども。
 つまり、言いたいのは、今四十万トンを買い上げてほしいという要求があるわけです。それを買い上げれば、結局、国が戸別所得補償で千円下がった場合に出す分よりも二百億円、国の支出が増えるということになるわけですよね。今お話があったように、さらに、もし、米価が千円で止まるとは限らないと、二千円下がった場合には、今度、支出分は二千三百三十二億円となるから、四十万トン今買い上げるよりも二倍以上も国費を投入しなきゃいけないということなんですよ。
 だから、国民の理解を得られるということであれば、むしろやっぱり買い上げて価格下がるのを止めた方が支出が少なくて済むわけですよ。そうじゃありませんか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 今のことについて触れさせていただきますと、かつて、平成十九年でございますけれども、三十四万トンの買上げが行われたんです。その際どうであったかといえば、いわゆる相対価格はほぼ横ばいで推移して、下げ止まり程度の効果で終わってしまったというふうなことだけはどうぞ御承知おきしていただきたいと思います。
 ゆえに、私が申し上げるのは、そういうような、今先生が言ったようなことで、とにかく買上げをするというようなことでありますならば、それは価格も上がるんじゃないかというふうなことでありますけれども、現実、平成十九年度の場合はこれは上がらなかったと、ほぼ横ばいにて推移したということであります。
 そういう意味で、私どもは、今回の戸別所得補償制度におきましては、いわゆる今までの一番米が下落したときというものにきちっと対処できるような、そういう設定をさせていただいておりますということを申し上げたいと思います。

○紙智子君 いいかげんなことを言ってもらったら困るんですね。実際に過去に買い上げたときに変わらなかったって言うけど、そんなことないですよ。下げが止まったんですよ、あのときに。止まったし、実際に農家の人たちは助かったと言って喜んだんですよ。だから、効果はあったんですよ。もちろん、それがずっと続くわけじゃないですよ。
 ただ、言いたいのは、結局そういう事態が、ずっと備蓄の仕組みが変わらなければそういうことが続きますけれども、今回、備蓄の方式、変えたわけじゃないですか。棚上げ方式に変えたわけだから、より一層できるわけですよ。いかがですか。

○国務大臣(鹿野道彦君) 確かに、一時的には回復があったんです。しかし、その相対価格がほぼ横ばいでその後推移したということでございまして、重ねて申し上げますけれども、その下げ止まりの程度で終わってしまったということです。
 それから、備蓄につきましては、今概算要求で、棚上げ備蓄にいたしたいという方向で概算要求をいたしておると、こういうことであります。

○紙智子君 前政権の鳩山内閣のときにはっきりと棚上げ備蓄やりますというふうにおっしゃったわけで、それはやるわけですよね。やる以上は、これは今までと同じようなことを理由としては言えないと思いますよ。
 実際に買い上げたものを使わないものは五年間保管して、五年たったらそれを市場と違うところに回すというやり方ですから、だから市場に影響しないわけですから。今も、それ、前倒しでやるということが価格の下落を止めるし、この後の対策にもつながっていく話なんですから、それを大体やれないという、そういう理由は成り立たないですよ。

○国務大臣(鹿野道彦君) もう先生、そういうことをおっしゃりますけれども、無理なんですよ、もう回転備蓄でもう既に平成二十二年度の予算は執行されておるわけでありますから。そして、あくまでも棚上げ備蓄にするというのは来年度から予算要求をしているということでありますから、それを前倒しにやれと言っても、それは無理なことでありますということを申させていただきたいと思います。

○紙智子君 農家の人たちが困っているときに、できませんって最初から言うわけですか。そして、これからのことだからと言うんだけれども、それがやっぱり政治の責任じゃないんですか。政治の果たす役割として、来年から決まっているものを動かさないということじゃなくて、だから前倒してやったらいいということを提案しているわけじゃないですか。

○委員長(鶴保庸介君) 鹿野農林水産大臣、時間が来ております。

○国務大臣(鹿野道彦君) だから、この戸別所得補償制度については、価格が下落をした場合のことに備えて変動部分というものの設定をさせていただいておるということを申し上げさせていただきたいと思います。

○紙智子君 この問題は、本当に聞いている皆さんにとっても納得いかないと思いますよ。本当に苦しんでいる、必死の思いで、言わば本当に心の底からの叫びを上げている、そういう農家の皆さんの立場に立ってやっぱりこの問題、取り扱っていただきたいと。何でもかんでも市場に任せばいいわけじゃないわけで、やっぱりきちんと価格保障、所得補償をして、そして農業を守るという立場を改めて申し上げまして、時間になりましたので、私の質問を終わります。