<閉会中審査 2010年9月7日 農林水産委員会


米価暴落 買い上げ解決を

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。時間十五分ですので、早速質問に入りたいと思います。
 まず、食料自給率引上げの戦略作物になっている小麦の問題についてお聞きをしたいと思います。
 今年の三月に民主党政権として食料・農業・農村基本計画を策定をし、食料自給率を二〇二〇年までに五〇%まで引き上げるというふうにしています。計画では、その五〇%に引き上げていく上で、寄与率ということで見るとそのうちの三分の一を小麦に充てているということで、言わば戦略作物に位置付けられているというように言っていいと思うんです。ところが、現実にはこうした政策の打ち出しと逆行する事態が起こっているわけですね。
 というのは、小麦の主産地北海道である十勝に先日行きましたけれども、うどんなどのめん向けの小麦として開発をされている品種に「きたほなみ」というのがあるんです。この「きたほなみ」の作付面積を今広げているんですけれども、これまでは主力品目というのが「ホクシン」だったんですけれども、大体「きたほなみ」だと収量が二割、三割増えるんですよね。
 それで、これを増やしていこうということで、自給率向上につなげていこうということで計画を作って進めてきたわけですけれども、もちろん増やしていくということはそれに伴って乾燥施設ということも当然必要になってくるわけで、その乾燥施設を増設したり増やすということで予算要求をしてきたわけです。ところが、国からはこの予算要求に対してはほとんどゼロ回答ということになっていて、それは強い農業づくり交付金というふうに交付金制度に変わったという経過があって、それが前年度二百四十四億円だったのが、四一%カットされて約百四十四億円ということで、百億円も削減されたと。そのことによって、今まで各農協に交付されてきたこの乾燥施設の補助金が認められなかったということがあるわけです。だから、一個はできるけど、あと二個はできないということになって、実際にはもう播種前契約なんかで契約進めてきたのに、生産者にしてみたらはしごを外された形になって困ったということになっているわけなんですね。
 それで、なぜこういう政策打ち出しながらこのような失態の状況になっているのか、それから、これに対してはどう対応するのかということについて明らかにしてほしいということが一点です。
 もう一点お聞きしたいのは、農協によっては協力し合って何とかやっていくために施設造っていこうと、そのために、一定の財力を集めてやっていく上でも自給率向上のために無利子融資制度の創設ということなんかも検討してもらえたら助かるという声も出ているんですけれども、ちょっとこの二点について最初にお聞きをしたいと思います。

○国務大臣(山田正彦君) 確かに、小麦のその乾燥施設について、強い農業づくり交付金が前回仕分で減らされまして、非常にあれは優先順位が、いっぱいいろんな要望があったものですから、この「きたほなみ」ですか、北海道のそれは外されてしまいました、残念ですが。
 こういったことにかんがみまして、今回、二十三年度の概算要求で、戸別所得補償制度の緊急対策としてそういう乾燥施設等をその中で予算計上することにいたしました。是非、戦略作物、小麦とか大豆等々に対する、例えば飼料米の倉庫とかそういったものも含めて、いろいろと今回緊急に整備しなきゃいけないものの整備、これも同時に取り組んでいきたいと考えております。
 もう一つ、無利息の資金をどうかということですが、今回一般予算の中でも無担保無保証、無利息の予算というのも出てきておりますし、いろいろ無利息の、今度政策金融公庫から、今まで各都道府県でやっていたものを無利息で貸し付ける制度、これは名前は何といったかな、農業改良資金、そういう制度もございますし、セーフティネット資金もいろいろありますし、スーパーL資金とかそういったものを利用していただいて何とか、できるだけ自給率向上というか、そういった方向に沿った形でできればと考えているところです。

○紙智子君 今そういう事態を打開していくといいますか、二十三年度からというお話があって、まあそれはそれとしていいんですけれども、問題は今の話なんですね。実際取り組んでおられる農家の方は、要するにもうそのつもりで進めてきたわけで、来年度から予算付いても、今どうするかということになっているわけですよ。だから、出ている声は、じゃ、補正で何とかやってもらえないのかということなどもあるんですけれども、この点についてはどうでしょうか。

○国務大臣(山田正彦君) その資金とあと二つ三つぐらいそういうものがございまして、今回の経済緊急対策に盛り込まれないかどうかということでお願いしたんですが、これちょっと入ってないんだな、次の補正でという形で今調整させていただいているところです。

○紙智子君 次の補正というのは、今年度。

○国務大臣(山田正彦君) もし今度、今年、多分補正になると思うんですが、そのときに。

○紙智子君 補正に検討しているところというふうに受け止めてよろしいですか。──はい。
 それじゃもう一つなんですけれども、口蹄疫の問題です。
 終息宣言を受けていよいよ産地の復興が最大の課題ということでありまして、私も実は八月の十六、十七と現地に行ってまいりました。終息に向かったということで、ずっと農家を回ったんですけど、もうとにかく畜舎という畜舎は全く一頭もいないと、閑散とした状況の中で農家の皆さんが肥料の、堆肥の切り返しを一生懸命やって、とにかくもうこれで絶対に菌は発生しないということでの安心をつくらなきゃということで、本当に頑張っておられたわけですね。
 それで、私が行った農家の一つは、要するに、発生はしなかったんだけれどもワクチンを打って、やっぱり止めるために六百七十頭の牛を全部亡くしてしまったという農家で、そこの方がおっしゃっておられましたけれども、息子たち夫婦は頑張ると言っていると、だから何とかやっぱりつなげていきたいという思いを話をされていまして、やっぱりそういう復興しようということでの思いにこたえていかなきゃいけないということを痛感をしました。
 ところが、先ほどもちょっと議論があったんですけれども、依然として明らかになっていないのがこの特措法二十三条の基金の問題なわけです。それで、宮崎県としても三百億円の基金の設置ということで要請をしてきていて、先ほどのやり取りの中でも、要は、県とも話をして、県でどういうふうなものにするかということを待っているかのような話もあったわけですけれども、やっぱり時間が掛かってきていると。これはもう本当に現地にしてみたら、いつになったら早く煮詰まるのかという思いで来たわけで、これに対して大臣としてどういうふうに受け止めてどうしようとしているのかということで、明らかにしていただきたいと思います。

○国務大臣(山田正彦君) 農水省としては、できるだけ早くという形で、いわゆる官邸にも、財務省、総務省にもお願いしているところですが、具体的に農水省の事務方でも官邸の事務方でも財務省の事務方でも詰めてもらっております、現段階で。あとは、最終的には官邸でどう調整していただけるかなと私は思っているところなんです。私なりの考え方も話ししておりますし、農水省でできる部分についても、こういうものは農水省でできますと、そういう話もしておりますし、あと、できるだけ早く決まっていただければ私も有り難いかなと思っているところなんですが、急がせるようにしたいと思います。

○紙智子君 八月の二十七日に枝野幹事長が宮崎県に行った際に、三百億円の規模の基金について、既存の制度、枠組みの下ではなかなか難しいということを述べられたという報道があったんです。これはどういうことなのかというふうに思うわけですね。既存の制度、枠組みの中では、基金の問題が特措法でも決まっているにもかかわらずこういう話をされたというのは、やっぱりそこに何かがあるというふうに思うわけですけれども、この点については把握されているんでしょうか。

○国務大臣(山田正彦君) 枝野幹事長がどのようにおっしゃったか私も定かじゃないんですけれども、ただ、基金について私どもも各省とも検討した中で、宮崎県が三百億の要求の中の二百億円は県の単独の公共事業なんです。これは、いわゆる復興資金とはなじまないだろうと、いわゆる基金としてはなじまないだろうと。そういう形でもっと、いわゆる観光とか中小零細企業に対するいろんな対策を経済産業省でも考えておりますし、我々農水省としても家畜の導入等々についてのいろんなことを今も手当てさせていただいておりますが、いろんなことを考えておりますので、そういったものを含めた、そういった本当に何が必要なのかという形で結構詰めの段階に入ってきているんじゃないかと考えているところです。

○紙智子君 補助金の、その補助金適正化法というものに何かちょっとかかわるという話もちょっと耳にもしたんですけれども、それがあるのであれば、そういうことの法改正も含めて考えるべきだというふうに思うんです。
 それで、基金の設置の問題は、特措法で全会一致でこれ確認しただけでなくて、大臣自身も八月四日の予算委員会、質問の中で、総理からも基金を設置するようにという指示をいただいたんだと、で、どういう形にするのかということを含めて鋭意取り組んでいるという答弁をされていて、それからもう一か月過ぎて、特措法ができてからは三か月たっているわけで、やっぱりもう待てないということになっているわけです。余りにもやっぱり遅いと言わざるを得ないわけで、今せっかく復興に向けて意欲を持ってやっていこうとしているときに、その出ばなをくじくということになりかねないというふうに思うわけです。
 ですから、是非、まあ大臣としての考え方も示しているということなんですけれども、必要となるならばその特措法の改正も含めて、そういう、さっき言ったような適正化法に引っ掛かるということであればそれを変えるということも含めて政治主導でやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(山田正彦君) 確かに、補助金の適正化法というのは、これ、財務省所管の法案なんで私からは何とも言えませんが、いわゆる取崩し型の基金については結構厳しいんじゃないかと思っていますが、阪神大震災のときのように運用益利用型の基金とかいろいろあるかとは思っております。
 今回、宮崎県側からの地域の自主的判断を生かした柔軟な事業展開が可能となるような基金という要請については、やはりいわゆる一定の制限受けざるを得ないものと、財務省との私どもの折衝ではそう言われておりますので、そのためにその適正化法を変えるということも、今ここでそうするということも何かおかしなことではないかなと、やはり今できる範囲での基金というものを早急に詰めさせていただければと考えているところです。

○紙智子君 現地から共通して出されているのは、やっぱり使い勝手がいいやり方ということをおっしゃっていて、それで急がれるということだと思うんですね。それで、本当に、ルールというか、必要な、何でもかんでもとはもちろんならないと思いますけれども、そういうやっぱり全体を復興させていくということで必要な対応策を基金の趣旨に基づいてやっていく必要があるということを改めて申し上げておきたいと思います。
 最後にもう一点質問したいのは、米価下落問題です。
 この問題は、私も今年の三月の予算委員会、通常国会の予算委員会でも取り上げて、やっぱり政府が米を買い上げるなど価格の下落を防ぐべきだということを私どもとしては一貫して要求してきました。これに対して山田大臣は、これも、大臣、一貫して買上げを拒否し続けてきているということがあるわけですけれども、その結果として事態はますます深刻度を増しているというふうに思うんです。
 先ほども議論がありましたけれども、二十一年産でいうと、六月、一万三千二百九十四円と、これ史上最低価格ということで、それを更に百八十五円下落すると。七月ちょっと上がったということなんですけれども、これだけでもやっぱり農家にとっては大変な打撃なわけです。さらに、今年の新米のJAの仮渡金も一俵当たりで、六十キロ一万円かそれ以下という異常な水準なわけで、各地の米作の農家からは本当にもうこれだったらやっていけないという声が上がっているわけです。一刻もやっぱり放置できない状態だというふうに思うわけですね。
 民主党さんの中からも、やっぱりこれは何とかしなきゃいけないと、買い上げるべきじゃないかという声も出ているというふうに聞いています。それから、JAさんも米の緊急需給調整対策を求めているわけです。戸別所得補償制度も、これは米価が安定すれば財源的にも安定するはずなわけで、そういう意味でも大臣としてはやっぱり買上げを決断すべきではないかと、やっぱり柔軟に対応するべきじゃないのかというふうに思うわけです。
 その点で、今のこの米価の水準に対する大臣の認識を含めて考え方をお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(山田正彦君) 先ほども山田委員とも随分いろいろお話しさせていただいたんですが、今、紙委員からもそういうお話ございました。
 確かに米価はかなり下がっております、相対取引において。まあ一番下がったのは一万四千二十六円だったんですが、それより今現在、七月に入って九十円ぐらい少し上がってきたみたいですが、いずれにしましても、米価が非常にこの何年間かはずっと下がり続けてきたということで、今も下がっていることは事実なんです。このままでいくとまた下がり続けていくであろうという、そういう言われ方をする方もいらっしゃいます。
 そのために戸別所得補償制度をやって、いわゆる生産者の、掛かる生産コストというのは必ず補償いたしますと、農家に直接支払して補償いたしますという制度を取っておりますので、今回は下がるかもしれないけれども、戸別所得補償に参加する方が来年以降更に私は増えていただけるんじゃないかと思っていますが、そういう中においていわゆる需給が安定していくんじゃないか、締まっていくんじゃないか。今年も約五万トンほどペナルティーなしでいわゆる生産数量目標に参加していただいたんで、そう考えておりまして、今言ったように買い上げて価格を引き上げてくれというのは分かるんですが、それをやると、いわゆる変動部分まで補償しながら、予算措置しながら、さらにそこに税金を掛けることが国民の理解を得られるのかどうか。また、戸別所得補償に参加していただいた方々、参加しなかった人たちまでが不当な利益を受けることになりはしないか、不公平感が生じはしないか、そういったもろもろのことを考えますと、今回はこのまま買上げせずに今回の作柄の状況その他見ながら、その推移を、買上げせずにいきたいと考えているところです。

○委員長(小川敏夫君) もう時間を過ぎていますが。

○紙智子君 一言、終わりに。
 いろいろ反論したいですけれども、時間ということなので、またこの後の、閉会中審査があるかどうか分かりませんけれども、そこでやりたいと思います。