<第174回国会 開会日 5月12日 沖縄北方特別委員会


○普天間問題 民意への裏切り 「移設」押し付け批判

○紙智子君
 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、岡田外務大臣に普天間問題について質問いたします。
 四月二十五日に沖縄県県民の大会が開かれて、ここには県下四十一自治体すべての市町村長さんが参加をすると。九万人の方々が参加をされて、そこで普天間基地の閉鎖、そして撤去、県内移設反対ということをはっきりと掲げて、言わば島ぐるみの意思を示したわけです。それからまた、鹿児島県の徳之島においては、あそこは人口が二万七千人というふうに聞いていますけれども、その島で六割、一万五千人もの人が結集をして反対集会が行われると。その後、本当に人口に匹敵するだけの二万五千八百人余の署名が総理大臣の下に届けられたと。ここも島ぐるみで反対の意思を示したわけです。基地のたらい回しはもう嫌だと、そういう県民のあるいは町民の明確な意思が示されたというふうに思います。
 最初に、この民意、ここに示された民意を大臣はどのように受け止めておられるのか、お聞きしたいと思います。

○国務大臣(岡田克也君) 委員御指摘のように、徳之島では主催者発表で一万五千人、そして沖縄では主催者発表で九万人、少なくとも非常に多くの皆さんがお集まりになって、そして集会が持たれたということについては、そのことを真摯に重く受け止めさせていただいているところでございます。

○紙智子君 多くの皆さんが集まったということを受け止めるわけですか。そこで示された民意についてどう思うのかと聞いたんです。

○国務大臣(岡田克也君) そこで示された民意というものについて重く受け止めさせていただいているところでございます。

○紙智子君 重く受け止めたというふうにおっしゃったんですね、今。──はい。
 今日、今もお話ありましたけれども、政府は普天間問題で米国と日米実務者協議をすると、そういうものはないということも今話されていましたけれども、いうことだと。ここで何を交渉するのかというふうに私も思うわけですよ。
 それで、十日に関係閣僚で協議をして、米軍のキャンプ・シュワブの沿岸部を埋め立てる現行計画を修正をして、一つは、このくい打ち桟橋工法で滑走路を建設するなどの複数の移設案とともに、普天間基地を拠点とする米海兵隊のヘリコプター部隊の一部訓練の県外移転などの危険除去、負担軽減策を組み合わせる政府案の骨格を固めたということが報じられているわけです。地元との合意もないのに、こういった中身を米国に説明するんでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) 政府がどういう現在考え方を持って米国政府と意見の交換をしているかということについては、いろいろ報道はございますが、その中身についてはここで申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

○紙智子君 先ほど、民意については重く受け止めると、そういうふうに言いながら、引き続き県民に対して県内移設を押し付けるということは、これ、はっきり申し上げて県民に対しての裏切りだというふうに言わざるを得ないんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(岡田克也君) 委員の御質問は一定の前提に立って、仮定に立っているわけですから、それについて私はコメントいたしません。

○紙智子君 しかし、実際には、総理自身が現地に行かれて、そして県外というふうに言ったにもかかわらず、最低でも県外と言ったにもかかわらず、やっぱり県内だということを話しに行ったわけですよね。それはもうはっきり言って県民の皆さんを失望させているわけですけれども、これ押し付けじゃないんですか。

○国務大臣(岡田克也君) 委員のお立場は日米安保反対という前提で御議論になっているんだと思いますが、先ほど申し上げましたように、私は、在日米軍、その抑止力というものが日本の国民の命を守るために必要であるという前提でお話ししているところでございます。

○紙智子君 いつも岡田外務大臣は、そういう前提に立っていると、安保反対だからということで言われるということを言うんですけれども、決してそうじゃないですよ。いや、もちろん反対はしていますけれども、基本的にはそうですけれども、しかし、今言っているのは、県民の皆さんとの関係で、県民の皆さんがこれ以上の基地は嫌だと言っているにもかかわらず、しかも選挙の公約のときには国外か最低でも県外かというふうに公約しながら、それをやっぱり平気で破るということをやるということに対して問題だというふうに言っているわけですよ。
 政府案についていろいろと報道もされていますけれども、専門家の方の中には、名護市のキャンプ・シュワブの沿岸部にくいを打つ桟橋方式にしても、これは環境破壊は変わらないということを指摘されているわけですよ。くいを打てば、これは先ほども話がありましたけれども、サンゴ礁は壊される、そして光合成できなくなり、その施設の下の海草は消滅すると。周辺でも海流の変化で海草が減少して、貝類や甲殻類も消滅するということが指摘をされているわけです。
 先日、鳩山総理は埋立てをこれ自然への冒涜だというふうに言われているわけですけれども、くい打ちも辺野古の海を埋め立てるということと変わらないんじゃないんでしょうか。この点で大臣の認識はいかがでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) 総理の御発言、自然への冒涜ということを前提にしての御質問かと思います。
 私は、総理はどういう思いで言われたのか必ずしも理解をしているわけではございません。記者会見で記者の皆さんに同じようなコメントを求められたときに私がお答えしたことは、それは総理に直接お聞きいただくしかないということでございます。
 ただ、同時に、なるべく沖縄県民の皆さんの思い、負担軽減、そのために努力をする、そういう思いと、しかし同時に、先ほど来申し上げておりますように、日本国民の生命、財産、特に命をしっかりと守るために米軍の存在が抑止力として必要であるということと、この二つはいずれか一方ということではなくて、その両立をどう考えていくか、果たしていくかと、こういう問題なんだろうというふうに思います。
 委員がそういう前提で御議論いただくなら、まあそれは結構だと思いますが、いや一方の方は横に置いてということになると、これはいつまでも議論はかみ合わないということになると思います。

○紙智子君 それは総理に聞いてくれという話ですけれども、余りにも無責任だなと。
 じゃ、そういう計画は全くないということを言えるんですか。

○国務大臣(岡田克也君) 今政府の中で様々な議論を行っているところでございます。どういったことが議論されているかということは、これは政府としてまだ最終的に決めたわけではございませんので、この場で申し上げることは控えたいと思います。

○紙智子君 直接の回答を逃れるというのは本当にひどいなと思うんですけれども、一言言っておきますと、このくい打ちの計画にしても、これは九六年、SACOの最終報告のときに浮上してきた案です。打ち込むくいは、当時でいえば八千本ですかね。だから、埋立てよりもむしろ大きい影響があるんじゃないかということで批判されているものだったわけですよ。ですから、本当にそういう意味では、一方では生物多様性ということを言いながら、これは本当に見識が問われる問題だというふうに一言言っておきたいと思います。
 それで、政府案の中で、嘉手納の基地を含む沖縄県内での米軍訓練の全国自衛隊基地への分散移転、鳥島それから久米島の射爆撃場の返還、沖縄本島東側の訓練区域の一部解除などの負担軽減も取り組むとしていると。これは、基地の危険性や負担を結局は私は全国に拡散するものだというふうに思います。
 嘉手納の負担の軽減ということでいっても、二〇〇六年に負担軽減ということがありました。そういってF15戦闘機の本土移転が合意されたわけですけれども、結局現実はそれまでよりもはるかに上回る外来機が飛来していると。そして、〇九年の嘉手納町の測定でも、基準値を超える爆音というのは二万五千回ですよ。過去最悪だということが分かったわけです。軽減する軽減すると言いながら、実際にはもう軽減どころか負担は増えていると。
 ですから、この委員会で今年一月に現地に委員派遣で行きました。各地回って、そして嘉手納に行ったときに嘉手納の町長さんがどういうことをおっしゃったか。皆さん一緒に同席しているので聞かれていたと思いますけれども、嘉手納の町長さんは、この嘉手納基地というのは、言わば最大の基地であると。そして、米国がずっと使ってきていて、そこで当然協定を結んでいますよね、騒音防止協定ですとかそういった協定を結んできたけれども、結局何十年とその約束が守られていないと。もう早朝から深夜に飛行機が飛来すると。それで、どんなに抗議しても、政府に対しても何とかしてくれと言っても改まっていないと。体調を崩して裁判になっている事態だってあると。そういう今まで全然守られてこなかったことが、これから先、いろんな条件を付してそれを守らせるからと、受け入れてくれと言われても、これまで守られてこなかった約束がこれから先守られる保証が一体どこにあるんだと、こういうふうに怒り込めて言っておられたわけですよ。
 もちろん騒音のことだけじゃないですよ。私たちが行ったその直前には、読谷村でひき逃げがあったわけですからね。動かぬ証拠を突き付けてようやっと、それでも立件に至るまでの時間がたっているわけですけれども、そういうことがもう多々あると。そういう怒りに立って町長さんはおっしゃいましたよ。私は日米安保は賛成の立場だと、しかしながら、こういう事態を目の当たりにしたら、やっぱり基地があればなくならないと、こういうことは。しかし、基地を置かなきゃいけないのが安保条約があるからだとなったら、それ自身を、その是非を含めて、その問題を国会で是非議論していただきたいんだと。こういう問題になっているわけですよ。ですから、負担軽減だなんて言うけど、とんでもないと。
 私は、この嘉手納の町長さんの話について、どのように受け止めになられるのか、負担軽減にはなっていないじゃないかというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) 私も嘉手納町長には直接お会いをして、そして町役場の中でお話をお聞かせいただいたところでございます。
 今委員のお話を聞いておりまして、やや論理に混乱が見られるのかなというふうに思います。
 二つの話を言われたわけであります。
 一つは、いろいろな日米間で取決めをしても、そこに例外条項のようなものがあって、そこを使うことで実質的には、騒音をなるべく減らすという、そういう双方の合意があっても、そのことが結果的には果たされていないということについて嘉手納の町長は御指摘をされました。しかし、だからといって訓練移転をほかに分散しなくていいと言ったわけではもちろんありません。そういったことが実効性が上がるようにしてもらいたいと、こういう話でございました。
 そのことは当然のことだと思いますから、現行の枠組みの中で、あるいは場合によってはその枠組みに修正を加えることで騒音をなるべく抑えるという、その約束がしっかり実効性が上がるように努力をしなければならない、これは当然のことであろうと思います。
 もう一つの問題は、県外への訓練の分散移転ということでございます。そのことは、やはり私は、沖縄県民もあるいは知事や町長も求めておられるというふうに思います。したがって、我々としては、そういうことを真摯に実現していく、つまりこの在日米軍基地の負担というものを沖縄県だけではなくて日本全体で分かち合っていくということの重要性であります。
 この二つの問題を委員は指摘されたわけですが、やや論理に混同が見られるのかなというふうに思って承っておりました。

○紙智子君 あのね、本当に現場の痛み分かってないですよ。そういうことをおっしゃるということ自体、私は本当に怒りに思います。
 それで、時間がちょっと詰まってきたんですけれども、県民の皆さんがこの間署名集めたり集会も開いてきているのは、やっぱり閉鎖を、撤去を早くしてほしいと、たらい回しはやめてほしいということですよ。
 それで、この県内移転ということはもとよりですけれども、日本の国内のどこにも地元で合意が得られるような場所はないということを、私はもうはっきり言って米国に対してそのことをどうして報告しないのかと、普天間基地を速やかに閉鎖、撤去するように、明確にこのことを米国に言うべきだと思うんですよ。
 恐らく先ほどもその議論の中で言われていましたけれども、大臣はアメリカ海兵隊の抑止力が必要なんだと、負担と軽減ということを今までもずっと言われてきているわけですけれども、そういう立場だと思うんですけれども、じゃ、海兵隊の抑止力というのは一体何なんですか。

○国務大臣(岡田克也君) 先ほど前原大臣からも御答弁がありましたように、抑止力というのは、例えば日本ということで考えますと、日本を攻撃した場合に、その攻撃、場合によってはそれ以上の反撃を受ける、そのことをもって攻撃を思いとどまるということであります。
 他方で、日本の自衛隊というのは専守防衛ということで相手を攻撃する能力というのは基本的にない、そういう中でそれに代わるのが米軍の存在であります。国民の命を守るためには、私は米軍の抑止力というものは、これは米軍の存在というものは日本に必要であると、そういう前提で議論させていただいておりまして、議論の前提が委員とは異なるということであります。

○紙智子君 理屈はそういうことを言うんでしょうけれども、幻想だと思いますね、私は。
 やっぱり抑止力ということをいつも言うんだけれども、アメリカの海兵隊の任務については日本の防衛のためにあるわけではないということは、この海兵隊の任務を規定したアメリカの法律の中にもあるわけですよ。米国のかつてワインバーガー国防長官が、沖縄の海兵隊は日本の防衛任務には当てられていないと明言しているわけですよ。更に言えば、日本の側の元陸上自衛隊の冨澤幕僚長ですね、在日米軍基地というのは日本の防衛のためにあるのではなく、米国中心の世界秩序の維持、存続のためにあるんだということを述べているわけですよ。
 現実に、今までどんなことをやってきているかといえば、やってきたことは、アメリカの先制攻撃の戦争でイラクやアフガンに出て行って、民間人の大量殺りくに参加しているじゃないですか。日本の平和を守るための抑止力というのは、私はこれはごまかしにすぎないと思いますよ。

○国務大臣(岡田克也君) 委員と共通のところもあるのだなと思って今聞いておりましたが、私は、アメリカのイラク戦争には反対をした一人であります。ああいった明確な国連決議がない中での攻撃ということに対し、武力行使ということに対して、私は今でもそのことに対してこれを是とする、そういう考え方は持っておりません。
 しかし、今、日本の防衛のために米軍、在日米軍がいるのではないというお話ですが、もちろん日本を防衛する一義的な責任は自衛隊にあるわけです。しかし、抑止力として、攻撃能力というものがなければなかなか抑止力としては弱い。その攻撃能力を備えたのが米軍であるということでございます。その辺の認識が若干異なるのかなというふうに思っています。
 もちろん、在日米軍というのは、日本のためだけではなくて、地域の平和と安定のためにもあります。そういう意味では、日本のためだけではないということは言えると思いますけれども、日本及び東アジア地域の平和と安定のために存在する。
 もう一つ申し上げておきますと、例えばインドネシアの津波あるいは台湾の地震、そういうアジア地域における様々な災害の際に、真っ先にといいますか、かなり早い段階で駆け付けて災害救助に当たったのが沖縄にある海兵隊であるということも申し上げておきたいと思います。

○紙智子君 災害救助のために海兵隊がいるなんというのもちょっと本当に初めて聞きましたけれども。
 やはり私が申し上げたいことは、そういう今の説明も説得力を持たないと思うんです。私は、やはりこの間の沖縄の問題、普天間の問題、この問題については、やはり現地の人たちとの約束したことをしっかりと守る立場で、国外か最低でも県外かと言ったそこのところを最後までやっぱり守り抜くということで貫いていただきたいと。それを守れないようでは、もう本当に何のための政権交代かと言われても仕方がないということを申し上げて、質問を終わります。