<第174回国会 開会日 2010年4月8 日 農林水産委員会


○食料・農業・農村基本計画に関する件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 基本計画について質問いたします。
 今回、新たな基本計画として、食料自給率を今後十年間で五〇%に引き上げるということを明記したことは前進だというふうに思います。それを具体的に進める手だてについてお伺いいたします。
 それで、耕地面積が四百六十一万ヘクタールということで、二〇〇九年の耕地面積と同じ耕地面積であることを前提にしているわけです。決定的な違いということでいうと、耕地利用率が現在の九二%から二〇二〇年には一〇八%に引き上げられるということですよね。基本計画では小麦の二毛作を飛躍的に拡大としているわけです。耕地利用率を引き上げて食料自給率を引き上げるという方向性については、これは我が党も支持できるものだと思っています。
 基本計画で、五〇%にこの食料自給率を引き上げるために、品目別の食料自給率を引き上げるのに寄与する寄与率というのが出ていますよね。それから見ると、その三分の一が小麦に置かれているわけですね。要するに、食料自給率引上げの戦略の柱を小麦に置いているということだと思うんです。そうであるならば、元々は小麦や大豆なんかも自給率が高かったですし、二毛作もやっていたわけですけれども、それがなぜ行われなくなったのか、その原因をどう見ていて、その原因に対してどう打開していこうとしているのかというのが重要で、まずその点について大臣に御認識を伺いたいと思います。

○副大臣(郡司彰君) まず、私の方からお答えをさせていただきたいというふうに思っております。
 紙委員御指摘のように、以前はかなり二毛作ということで小麦の生産が行われていたことがございました。例えば、昭和の十九年でいいますと八十七万ヘクタール、最大の面積を数えておりますし、三十年でも七十五万、四十年でも三十八万ヘクタールというような大きな面積で二毛作が行われておりました。これは、当時、まだお米というものが戦後の混乱のときも含めまして完全な自給に至っていなかったという中で、米の代用食料として、押し麦、大麦でありますとか、あるいはうどんに使われました小麦が生産、消費をされていたというふうに考えておりまして、関東以西の水田地帯では米と麦の二毛作が広く普及をしていたというふうに思っております。
 しかしながら、米の完全自給が達成をされる中で、米の代用食料としての麦の需要が減退をしたことがございます。他方、パンの需要が増加をしたわけでありますけれども、同じ麦といいながら、パンに適した小麦の品種が国内にはその当時なかった、さらに米の作柄を安定化させるために田植時期を二毛作ではなくてずらさせた、前進をさせたということから米と麦との作期競合が生じた、以上のようなことから、二毛作による麦の作付けというものが大きく減少をしたというふうに今のところ考えているところでございます。
 このような中で、今後の生産拡大に当たっての考え方でございますけれども、二毛作が可能な関東以西におきまして水田の団地化を図りまして、排水対策なども行っていかなければいけないわけでありますけれども、そのようなこと等加えまして、コシヒカリ等よりも田植時期の遅い水稲の品種、例えばにこまる等の品種に転換を進めていったり、あるいはまた麦の収穫時期が梅雨に差しかかり雨の被害等を受けないよう、わせの麦品種、イワイノダイチ等でございますけれども、育成、普及をするというようなことを考えていきたいというふうに思っております。
 こうしたことの組合せによりまして、三十二年までに二毛作による麦の作付けを二十二万ヘクタール程度拡大をしてまいりたいというふうに思っておりまして、その内訳としては、小麦が十九万、大麦が三万というようなことを計算しているわけでございます。

○紙智子君 なぜ減ったかという理由で大事なことを一言も触れなかった問題があるというふうに思うんですね。
 それで、大臣にお聞きしたので、郡司さんは大臣ではないと思うので、これから大臣にと言ったら大臣がお答えいただきたいと思います。
 それで、今は全然触れなかった問題として重要な問題があるんです。
 小麦は、一九六〇年のときには三九%の自給率だったわけですよね。それが、一九七〇年に九%まで落ちたわけです。だから、十年間の間に三〇%も下がったわけですよね。当然、そのことによって二毛作が行われなくなったんですけれども、その原因としては、一九六一年に制定された、当時、農業基本法がありますが、ここで選択的拡大政策が導入をされたと。麦、大豆、菜種などの畑作物、それから野菜、果実、畜産に作目を転換してきたということがあるわけです。そのねらいと本質ということでいうと、麦や大豆、そして菜種などの油糧作物を輸入に置き換えて、畜産の振興で輸入飼料の依存とその輸入拡大を進めると。そのほとんどがアメリカに依存するものだったわけですよね。背景には、当時のアメリカの余剰農産物の実態があったというふうに思うんですよ。
 赤松大臣は、多分、私から見ると少し先輩の世代だと思うんですけれども、そういう意味では非常に認識というか、覚えていると思うんですけれども、やっぱり子供のころにパン食べると頭が良くなるとか、そんな大宣伝がされたということが背景にあると思うんですけれども。
 当然、小麦の自給率を今度三四%に上げるということになると、これ輸入小麦で百万トンほどは国産小麦に置き換わることになるんだろうと思うんです。これは政策でいえば大転換だというふうに思うんですけれども、アメリカなどの輸出国から見ると、これは権益を損なうということになると。
 大臣はこれまでも、カレントアクセスでも、国家貿易の場合はアクセス数量を全量輸入するというふうにおっしゃってきたわけですけれども、小麦もカレントアクセスで今五百七十四万トンですか、国家貿易ということで入っているわけで、これを、じゃ百万トン輸入量を減らして置き換えていくということをしなければ三四%にはなっていかないというふうに思うんです。どのようにして、大臣、そこのところを実現するお考えなんでしょうか。

○国務大臣(赤松広隆君) これは、一つには、今一番小麦の消費が多いのはやっぱりパンなんですね。そうすると、製パン業者の人たちともよく話をしますが、これは大規模、小規模問わず、やはり残念だけどという言葉が適当かどうか分かりませんが、食パンには例えばアメリカのこういう小麦を、何とかにはオーストラリアのこういう小麦を、あるいはカナダの小麦を使わないとうまくこれが焼けないとか、そういう実態があります。
 ですから、私どもは、別にアメリカにこれは遠慮しているわけでも何でもなくて、そういう製パンをする上でそれに適した品種の小麦に置き換わっていって、それがどんどんそれに代わっていくということはもう大歓迎ですし、それからもう一つは、やっぱり今小麦に頼っている分、私も昨日ビッグサイトへ一時間で往復して見てきましたけれども、ちょうど今食品フェアやっていまして、あそこなんかでも、例えば日本ハムなんかが米粉パン作っているんですね。何でハム屋がパン作っているんだと思いますけれども。しかし、そういうあらゆる食品メーカーの人たちがやっぱり米粉に大変注目していただいていて、どんどん小麦に代わって米粉を使っていこうということをやっていますので、これもかなり意欲的な数字だと思いますが、五十万トンということで、今の輸入小麦にこれを代替をしていくということも打ち出しているわけでございます。
 ですから、これは小麦に限らず飼料米についてもそうですけれども、今よく私が例に出しているのは、アメリカ等からトウモロコシを毎年四千億円も買っていると。すべて置き換わるわけではありませんけれども、少なくとも飼料用米を作って、それを食べた豚の方がおいしいんですから、そしてまた、より近くで作ってもらえるという意味で、安心、安全の飼料になるんですから、そういう意味でどんどんとそれに代わるものは代えていくということで取り組んでいきたいというふうに思っております。

○紙智子君 今のお話ですと、置き換えていくということをやっていくというお話だったと思うんですね。それであれば、これまでずっと言われてきた、WTO協定になかったけれども、国内でこれまでずっと国家貿易ということで入れればカレントアクセスもミニマムアクセスも全量輸入だというこの見解というのは撤回をされるということですよね。撤回をされるということですよね。そうしないと合わないと思うんですよね。大臣。

○国務大臣(赤松広隆君) ちょっと、米の問題と小麦の問題、ちょっと違うと思うんですね。
 小麦については、別に今国家貿易というか食管制度でやっています。これはもう製粉業者の人たちのいわゆる納得の上で、それしか使えないわけですから、それでやっているわけで、ただ、今は小麦のカレントアクセスとMA米についてどうなんだという話だと思うんですけれども、今申し上げたように、小麦の方は輸入機会の提供であると、それから国家貿易により輸入していると、基本的には当該数量を輸入すべきものという性格についてはMAの場合と同様だと思いますが、しかし今国内消費量の約九割に当たる極めて大きな数量でございまして、たしか小麦で一四%ぐらいでしたかね、自給率ってね、そんなふうだと思いますが、そういう中で、現在でもその九割を達成して、五百三十万トンという大量の輸入を行っているわけですから、これを、じゃ、すべて取っ払って、もう自由にやりますかというわけには、これはいかないだろうというふうに思っております。
 それから、MA米の方は、もう何回も申し上げておりますけれども、これは、ガット・ウルグアイ・ラウンドのあの七百数十%という米に対する関税、これの代償措置といいますか、それを認めさせる代わりに国際的に約束をした、そういうものでありますので、これと小麦とはちょっと一緒にならないということではないでしょうか。

○紙智子君 やっぱり交渉をする際に、もっとはっきりと立場を表明される方が分かりやすいと思うんですよね。要するに、置き換えていくということを考えているわけですよ。そうしないと自給率は上がっていかないわけですから。
 その際に、今までの約束、約束というかアクセス量として入れると言っていたことを、そうではないんだ、これからは違うんだということを言わないと、今までどおりやっていて、何となく変わらない中でちょっとずつというふうなことではなしに、やっぱり閣議で決めてあるわけですね、五〇%をやるんだと、そのために国家戦略で麦をそこに据えてやるんだから、そうすると、当然向こうだって分かるわけですよ、見ているわけですから。今度、政権が替わって、民主党政権がそういう方向なんだなと。そのときに、はっきりとやっぱり打ち出して、これまで言ってきた立場ではなくて、ここははっきりと戦略的に自給率を上げるためにこうするんだということを言って交渉すべきだというふうに思うんですよね。その辺はいかがですか。

○国務大臣(赤松広隆君) これはもう基本的に、だから小麦とお米は全然違うんです。
 例えば二年前に、世界的な天候不順もありましたけれども、小麦が不足をしたと。トウモロコシ等についても、エタノールへの転換ということもありましたけれども、それも不足をしたと。そういう中で、日本についてはむしろ、そういう、まあ値段は上がりましたけれども、少なくとも小麦が入らないと、供給できないということはなかったわけです。
 それはなぜかといえば、カナダ、アメリカ、オーストラリアとの信頼関係の中で、小麦については、価格は上がりましたけれども安定的に供給がなされたということでありまして、世界のこれからの趨勢を見ると、これはもう昨日の日米の食料安全保障のシンポジウムでも出ましたけれども、特にこれから小麦、大豆等、あるいは飼料作物もそうかもしれませんけれども、これはどんどんとやっぱり逼迫の状況、中長期的に見ても逼迫の状況にあるという中で、現在お米はむしろ生産数量目標を設定してむしろそれを抑えるという状況の中ですから、そういうお米の取扱いとそれから小麦の取扱いは当然これは違うということを是非御理解をいただきたいと思っております。

○紙智子君 米とはまた別ですよね。米と一緒にしないでちょっと、したいんですけれども。結局、政権の中で十年後に食料自給率を五〇%に上げると、柱は小麦で百万トン増産するんだと、それも二毛作でやるんだというふうに言っているわけですよね。
 それであれば、これまでカレントアクセスで五百七十四万トン輸入をしてきたわけですから、これが、小麦の消費が、物すごく急にその消費が増えるということでもないわけだから、そうすると国産で百万トン増加ということになると、それは一体だれが買うのかということになってくるわけですよね。ですから、そこはやっぱり国産小麦が輸入小麦に置き換わっていくというふうにしなければ、最終的にというか、目標とした自給率には到達しないというふうに思うんですよ。だから、そういうことをはっきりさせて交渉すべきじゃないかということなんですけれども、もう一度。

○国務大臣(赤松広隆君) ですから、紙委員がおっしゃっているのは、七十七万トンのアクセス米は、もうそんなものはやらないと、受け入れないということを言えということをおっしゃっているんでしょうか。

○紙智子君 米の話はしていないです。

○国務大臣(赤松広隆君) 米じゃないの。小麦についてということ。

○委員長(小川敏夫君) 舟山政務官、答弁できますか。

○大臣政務官(舟山康江君) 紙委員御指摘のとおり、百万トン数量を増やすということは、その分輸入量は減る方向だと。御指摘のとおり、消費量が大幅に増えない限りそういった方向だというふうに思いますし、やはりこれは自給率目標を達成するためにしっかりとやっていくということだと思います。
 そういう中で、そのカレントアクセスとの関係ですけれども、やはりそれは、将来における関係についてはその時々の交渉の状況を踏まえて適切に対応することになると思いますけれども、先ほど大臣からも答弁ありましたとおり、小麦についてはもうかなり大きな数量を既に輸入しているわけですね。消費量の九割という極めて大きな数量を輸入しているという状況もあって、ある意味、米についてはかなり今でももっと増やせという声がありますけれども、小麦について更に枠を増やせとか、達成しろとか、そういった声は実際に外からも起きていないという状況もあります。
 いずれにしても、やはり小麦については、そういう事情はしっかりと踏まえて、今後その数量をどうするのかというのは判断していかなければいけないと思いますけれども、やはり今、生産が増えれば輸入量が減ると、そういった方向で進んでいくんだと思いますけれども。

○紙智子君 だから、私が言いたかったのは、要するに九割ももう小麦入っているんだから、たくさんの枠入っているんだから、少しぐらい減って取り替わったとしてもそんなに言われないんじゃないかということなのかもしれないんですけれども、そうじゃなくて、やっぱりはっきりと我が国の方向としては切り替えていくんだよということを知らしめていくということが大事だと思うんですよ。
 私は、やっぱりこの輸入自由化政策というところが非常にすごく問題意識を持つんですけれども、昨年末に閣議決定されている新成長戦略ですね、これ見ますと、二〇一〇年に日本がホスト国になってAPECの枠組みを活用して、二〇二〇年を目標にしてアジア太平洋自由貿易圏を構築するということのための我が国としてのロードマップを作成するということになっているわけですけれども、このアジア太平洋自由貿易圏に当然アメリカも含まれるんだと思うんですね。そうすると、懸念してきている日米FTAも包含されているんじゃないかと。そういう自由貿易圏になっていくというふうに思うと、それを食料自給率五〇%目標の最終年に、二〇二〇年に構築するというわけですから、どう考えても日本の農業というのはそうなると幾ら食料自給率五〇%といっても大変じゃないかというふうに思うわけですけれども、この辺のところも含めていかがですか。

○副大臣(郡司彰君) 今お話がございましたようなアジア太平洋自由貿易圏の関係につきましてでございますけれども、私どもの基本は、これまでお話をしてきましたけれども、EPA・FTA交渉について述べてきた、我が国の食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わないというのが基本的な姿勢でございまして、この姿勢はすべてのところについての基本姿勢として堅持をしていきたいというふうに思っております。
 したがいまして、その範囲において考えていくということになりますれば、先ほど言いましたFTAAP、いわゆるアジア太平洋自由貿易圏の関係につきましてもこの範囲内において行っていくということが基本でございます。

○紙智子君 範囲内においてというお話されるんですけれども、今のところは日米FTAは入っていないですよね、交渉に。もしこれ交渉して受け入れるということになったら、米でいえば八二%生産減少になるということが言われているわけで、入っていないんだけれども、こういう形で、実際にアジア太平洋地域という形でその全体の中で交渉に入っていくということになると、いやが応でも日本はアメリカとの関係で非常に厳しいところに立たされることになるんじゃないかという不安もあるわけですよ。
 そこに対しての考え方も、やっぱり本当に貫いて五〇%を達成させていくということではやらなきゃいけないというふうに思うんですけれども、その辺のところについてどうなのかということなんです。

○副大臣(郡司彰君) なったらというもし仮定の話でありますれば、今のところ仮定について私どもで言及をするということにはならないというふうに思っておりまして、基本のところを重ねて文言まで繰り返すということは避けたいというふうに思いますが、基本的にEPA、FTA等も含めて、他の国あるいは地域とのそうした交渉におきまして、我が国の国内農業・農村の振興などを損なうことは行わないということを堅持をしておくということでございます。

○紙智子君 今お答えしている中身というのは実は前政権のときに、二〇〇五年に農産物の輸入自由化を促進したときに食料・農業・農村基本計画というのが作られて、EPAの交渉に際しては、食料安全保障や食の安全、安心の確保、農林漁業、食品産業の共存共栄の実現、農山村の発展や貧困削減といった面で、我が国と相手国の双方にメリットのある形で取組が求められているということで表現していることと余り差はないというように思うわけですよね。
 要するに、そこのところを本当に攻勢的に提案していくということでいうと、食料主権という考え方をそれこそ本当に明記してWTO協定に位置付けさせるというようなことを是非やるべきだというふうに思うんですよ。その点でいかがですか。

○副大臣(郡司彰君) 事実関係だけその前に申し上げておきますと、先ほど申し上げておりますけれども、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、そして国内農業・農村の振興などを損なうことは行わないというのは、これは民主党としての以前からのマニフェストに書いてある各論の字句でございますので、内容として前政権と変わらないような内容ということがもちろんありましょうけれども、これは私どものマニフェストに使った字句として御理解をいただければというふうに思っております。
 それから、食料主権という関係でございますけれども、これまで私どもの政府としては、多様な農業の共存という言い方をしてきました。しかし、これは私個人のことを申し上げれば、十数年前から食料主権というようなものは必要ではないかというようなことを党内でも何度か議論をしてきたことがございます。
 しかし、そのこととWTOの中に位置付けろということはまた若干違うようなところがございまして、御存じのように、二〇〇四年のときに使われて、それ以降ある意味を持って使われておりますけれども、まだ世界的に食料主権ということの定義についての合意もなされているとは言い難いのではないかというふうに思っておりまして、私どもとしてもそのような考え方を持っているところでございますが、今現在、世界の中でそのことを皆さんの合意とするまでには至っていないというのが現実というような認識もございます。

○紙智子君 官僚の方から説明聞くとそれと同じことを言われるんですけれども、国連では人権委員会で既に食料主権ということをもっとやっぱりしっかりと打ち出す必要があるということで決議もされていますし、そういう今の実際に国際社会の中で進んできている現実があるので、そういうことを議論されたことあるんでしたら、是非とも入れていただきたいと思うんです。

○副大臣(郡司彰君) 私自身はずっとそのようなことを使ってきた経過がございます。したがいまして、いろいろなところで十数年前からそのような議論もさせていただいておりますが、まだ党全体としても政権全体としてもそのような言葉を共通の認識、定義として使っているということにはなっていないということもございますので、これから私自身はそのようなことに努力はいたすつもりでございますけれども、現状、世界のWTOの中でということにはなっていないというのが現実であろうかというふうに思っております。

○紙智子君 ちょっとこの問題だけでまた時間取れないので、是非、今後そこのところも進めていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 次、米国産牛肉の問題なんですが、今日、先ほども赤松大臣から報告ありましたけれども、米国の農務長官と米国産牛肉の輸入条件の緩和問題でも話をされたと。日本は、事実上、全頭検査の体制を維持しているわけですよね。本来、日本に牛肉を輸出するのであれば、米国の側が日本のこの体制に、基準に合わせて全頭検査をやって行うべきだというように思うんです。
 米国の牛肉生産を行っている食肉処理の施設のずさんさということでは、私どもが調べて出版している「ノンコンプライアンス・レコード」でも明らかですけれども、二〇〇六年の六月の米国産牛肉の輸入再開以降、この三年四か月で三件危険部位の混入違反というのを含めて、米国産牛肉の輸入条件の違反で輸入差止めとなった事件というのは十三件に及ぶわけですよね。その中で、例えばカーギル社のドッジシティー工場というのは三回違反を繰り返しているとか、タイソン社のレキシントン工場が二回違反を繰り返しているとか、この米国の食肉の処理施設というのは、言わば巨大なタイソン社とかカーギル社とかいう五大パッカーが全体を支配していて、その工場というのは非常に過剰な生産スピード、物すごい早いスピードで回っていて、人員不足の配置、移民労働者に依拠していると、劣悪な労使関係に置かれているという全体の中でしばしば起こっている問題だというふうに思うわけです。
 そういう中で、米国政府に対して、やっぱり日本と同様の全頭検査、全年齢牛からの危険部位の除去、飼料規制を求めて、それが実現できなければ輸入は差し止めるという強い姿勢で臨むべきだというふうに思っています。輸入条件の緩和というのはとんでもないというふうに思っておりまして、大臣の決意、その点で伺っておきたいと思います。

○国務大臣(赤松広隆君) 日本の場合は、御承知のとおり、二十か月齢未満につきましては各都道府県が自らの判断でもって検査をやっているということでございまして、基本的に農林水産省としてはそれを超える年齢のものについて検査をして、ごめんなさい、厚生労働省としては、国としてはそういう形でやっているというのが現状でございます。
 アメリカの中のことについて、こうやるべきだ、ああやれと言うのは、ちょっとこれは内政干渉にも当たるので言えませんけれども、ただ今日のビルサック長官との話合いの中で私が例に挙げて申し上げましたのは、ここに日本の牛肉あります、ここにオーストラリアのオージービーフがあります、ここにアメリカのお肉がありますと。輸入機会を広げても、スーパーへ行って、消費者は同じ値段だという前提でも、じゃ、どれを取るのかというときに、いや、好んでアメリカの肉は安い上においしくて品質も良くて安全だといって取ってもらわなければ消費の拡大になりませんよと。アメリカの肉を避けてオーストラリアや日本の肉を取るということになったら、幾らそういう窓口だけ広げてみてもそれは意味のないことですと。中国のギョーザ事件を少し例に取って説明しましたけれども、今ギョーザと関係ないものまで裏を見て中国と書いてあると何となくまた置いちゃうなんていう消費者が、すべてとは言いませんけれども、それぐらい日本の消費者というのは食の安全について敏感なんですよと、ですから是非それにこたえるような形でやってほしい、混載事件なんていうのはもう二度と起こさないでほしいということを申し上げました。
 ただ、アメリカの方は、今、紙委員からお話に出た三件、混載事案を起こしたところについてはもうちゃんとやっているし、報告書も出しているんで、何とかこれは許してもらえないかというようなお話もありましたが、まあそれは一回報告書もきちっと読ませていただき検討はしたいということを申し上げたということでございます。

○委員長(小川敏夫君) 紙君、時間が来ておりますが。

○紙智子君 時間ですね。
 ちょっと時間が来てしまいましたので、六次産業化の問題は法案も出されるようなので、そのときにまた質問したいと思います。