<第174回国会 2010年4月1日 農林水産委員会


○農業経営に関する金融上の措置の改善のための農業改良資金助成法等の一部を改正する法律案

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 農業改良資金助成法等の一部改正ということでお聞きしますが、この農業改良資金の融資実績について件数で見ますと、二〇〇八年度で百五十七件と。ピーク時というのは七二年で六万五十三件だったわけですから、わずか〇・二%ですね。新規貸付額ということで見ますと、二〇〇八年度で八億円。これも、ピーク時が九一年だったわけですけれども、四百六十四件まで減っていますから、一・七%の水準なわけです。
 その背景に、農業近代化資金や認定農業者を対象とするスーパーL資金などの制度資金が広がったという面もあると思うんですけれども、懸念すべきことは、農業改良資金と一体的に行われてきた協同農業普及事業が、二〇〇四年の普及センターの必置規制の廃止や協同農業普及事業交付金の税源移譲などで、これ、普及センターがピーク時の三分の一まで減ったと、それから普及指導員がピーク時の約二分の一まで減ったということがある中で弱体化しているんじゃないかと、それが原因で融資実績が激減しているんじゃないかというふうに思うわけです。
 食料自給率を引き上げていくということのためにはこの農業普及事業の強化というのはどうしても必要だというふうに思うわけですけれども、その点でまず大臣の見解を明らかにしていただきたいと思います。

○大臣政務官(舟山康江君) 御指摘のとおり、農業改良資金の貸付実績が大きく減少しております。
 様々な理由がありまして、借り入れる農業者側の要因としては、やはり他の資金との優位性が相対的に低下していることですとか借入れのハードルが高いことがあります。
 もう一方、都道府県側の要因として、今御指摘いただきましたとおり、やはり普及指導センター等の出先機関の統廃合によって相談窓口が減少しているというのが非常に大きいと思っております。またもう一つは、やはり金融の専門家ではない都道府県普及センターのその担当職員が債権管理業務というものをかなり厳格にやらなければいけないというそういった負担感もあって、貸付けに一層消極的になっているということが原因だと思っています。
 そういう中で、普及指導センター、これ、かなりセンター数も職員数も非常に減っているような状況でありまして、そういう中で、やはり今まさに食料自給率の向上ですとか六次産業化ですとか、そういった経営の多角化を進めるに当たりましては、やはり指導普及員の役割というのは依然として大きいと思っています。
 そういう中で、普及事業に効果的かつ効率的に取り組めるように、普及指導員と市町村、農協、民間専門家等の多様な方々との連携を今まで以上に推進していくこと、それから普及指導員の計画的な養成や能力、資質の向上に向けた国と都道府県との適切な役割分担による研修の実施、それから普及指導員同士とか普及指導員と研究機関とをつなぐ情報ネットワークの運営、様々な試験研究機関ともやはり連携していかないといけないと思いますし、そういう情報共有、ネットワーク化、そういったものもしっかりと取り組んでいきたいと思っています。
 都道府県に移管されている部分も多いわけですけれども、やはり国として、大きな食料自給率の向上ですとか農業農村の活性化といった、やはり国家戦略として農業をもっと活性化していかなければいけないというそういった目標の中で、やはり国と都道府県、関係機関連携してこういった制度をしっかりと活用していきたいと思っております。

○紙智子君 今、重要性に触れて、国としてもしっかりやっていくということでいうと、減らすんじゃなくて増やす方向でということでよろしいですか。
○大臣政務官(舟山康江君) この普及所、普及員の数につきましては、現場の状況ですとか様々な要因があって何とも今ここでお答えできませんけれども、ただ、いずれにしても、やはりその必要性は十分認識しておりまして、数はもちろんですけれども、やはり能力をいかに向上していただくのか、そして、いろんな、様々たくさんいらっしゃるその専門家同士がいかに協力をして現場の普及に当たっていくかと、そこも非常に重要なのかと思っておりまして、その辺がきちんと連携できるような、ネットワークが組めるような、そういった支援をまずしていかなければいけないのかなと思っています。

○紙智子君 非常に大事な役割を果たしていると思いますので、そこはしっかりと対応していただきたいと思います。
 それから、今回の法改正の最大の動機というふうに思うんですけれども、食料安定供給の特別会計、これを、積立金を国庫に返還させるということにあると思うわけです。
 問題は、国庫に返還されたものが一般会計に入るわけですけれども、これが農業予算としてきちんと使われることになるのかということなんですけれども、この点、大臣、いかがでしょうか。

○大臣政務官(舟山康江君) 先ほども少しお答えしましたけれども、今回の特別会計から一般会計への繰入れというのは、例えば、特別会計に今ある積立金、剰余金で今使わないもの、必要のないものを一般会計に返納して、今の非常に厳しい国の財政状況を踏まえて国の資金を有効活用するために行うものでありまして、これは当然お金に色が付いていませんので、特別に農業関係予算に使途を限定して繰り入れるものではありません。
 ただ、一方で、農業関係予算につきましては、このような繰入れとは別の問題として、現場のニーズにこたえるためにやはり必要な予算はしっかりと確保していかなければいけないと、そんなふうに思っておりまして、予算配分にめり張りを付けることで農業を抜本的に立て直して食と地域の再生を図っていきたいと。
 やはり、今回の二十二年度予算につきましても、コンクリートから人へというあの大きな流れの中で、人を直接支援するようなそういった予算に組み替えておりますし、やはり様々な予算配分を見直す中で、食と地域の再生のために一番効果的な予算をしっかりと確保していきたいと思っております。

○紙智子君 特別会計は特別会計としての意味があったわけで、やっぱりそれなりに農林水産予算の一環として位置付けられていたわけです。不要な積立金があったとしたらこれを活用するというのは当然だというように思うわけですけど、あくまでもやはり農林水産予算として使われなければ意味がないというふうに思うんです。その点では、そこの部分というか原則については貫いてほしいというふうに思うんですけれども、これ、いかがですか。

○国務大臣(赤松広隆君) 紙委員のような御指摘も分かります。農林水産大臣としては当然そういう気持ちだということも分かりますが、もう一つ、政治家という立場でいえば、やはり自分の省だけ予算が増えればいいのか、自分の省の政策だけやればいいのかということでもないものですから、これは総合的に内閣としての優先順位を付けながら、そして、それぞれの政党がマニフェストで選挙のときにいろいろ国民に約束をしてきたわけですから。
 そういう意味でいえば、私どもの今の三党の連立の政権でありますけれども、民主党、社民党、国民新党、三党で合意をした政権政策というのがございますので、その一つの大きな柱が、四つぐらいあるとすれば、そのうちの一つが戸別所得補償制度ということで、これについては自給率向上の事業等含めて五千六百十八億円、非公共の予算としては一一四%だったと思いますが、昭和六十年以来最も大きな予算を組むことができたということで、そういうめり張りのある形でこれからも予算編成をせざるを得ないと、このように思っております。
 ちょっとさきの質問にも私からも一言だけ付言をさせていただきますが、農業普及員の問題については、私も実は今年、農林大臣が出たのは初めてらしいんですが、普及員の総会がありまして、そこでもお話をしてきましたが、委員指摘のように大変地域で大きな役割を果たしているということで、是非これからも普及員制度を充実させていけるように頑張っていきたいと思います。

○紙智子君 今、予算の問題では戸別所得補償政策で最大のという話をされたんですが、しかし総枠でいうと、これ農林水産に関連する予算でいうと、今年の予算は二兆四千五百十七億円ですから、これ前年比で九五・八%と。これは、三十四年前、一九七六年以来の低水準の予算なわけですよね。
 これ、予算委員会の要求資料で見ますと、二〇〇七年の農家一戸当たりの農業予算ということで他の先進国などと比較しますと、例えば米国は三百八十四万円なんです。イギリスは二百七十一万円、フランスは三百五十五万円、ドイツは四百一万円。これに対して日本は七十四万円ということですから、これ五分の一水準なんですよね。
 ですから、これでは、今の農林水産予算の水準では、本当に先進国並みの食料自給率を目指すということについていえば、これはなかなか無理じゃないかと、この枠の中では。やっぱり、五〇%に引き上げていこうということを大目標として掲げている以上、予算の拡充ということは当然やっぱり必要なことで、その点について、大臣、伺いたいと思います。

○国務大臣(赤松広隆君) 各国との比較ということで、まあ数字の取り方はいろいろあると思いますけれども、そのことはともかくとして、私ども、更に積極的な政策の実現ということになれば、それは予算がしっかりあった方がいいわけですから、これはもう共産党も含め各党の是非応援と御支援をよろしくお願いを申し上げたいと思います。
○紙智子君 やはり、農林水産業という問題では、これをどういうふうに国の政治の中に位置付けるかという位置付けの問題でもあると思うんですね、予算の枠を取るということは。そういう意味では、今所得補償政策を示しているわけですけれども、この目標でやろうと思っても補償水準が低ければやっぱり達成されていかないわけですから、そこは努力をしていただきたいと思うわけです。
 それから次に、前回私が所信質疑のときに質問したことなんですけれども、ミニマムアクセス米の問題を質問した際に、私が、自民党政権の時代に、WTO協定上は書いていないけれども、自分たちで解釈をして政府の統一見解ということでミニマムアクセス決めたと、だとすると、そういうWTO上の特に根拠のない解釈を政権が替わった下で民主党政権が引き継がなきゃいけないのかということで質問したわけですけれども、大臣はそのとき、これは一つの国際約束でございましてと、こうした約束そのものは政権が替わっても守っていかざるを得ないというふうに答弁をされているわけです。
 そこでお聞きしますけれども、その国際約束というのは、これ一体どこの国とのどういう内容の国際約束なのかということについてお聞きしたいと思います。

○国務大臣(赤松広隆君) これは、正確に言いますと、当時、非自民の細川連立政権ができた、あのときのたしか十二月がガット・ウルグアイ・ラウンドのあった年ではなかったかと記憶をいたしております。その中で、ガット・ウルグアイ・ラウンドの中でこうした米の関税化の問題等出まして、とにかくこの障壁を何とかしろという各国からのいろいろな話がありまして、結局、ミニマムアクセスを受け入れることによって今の七百何十%というその関税ができたと、事実上それで米の輸入を阻止することができたということではないかと思います。
 その意味で、私どもはそれだけ高い関税をする代わりに最低限これだけのお米はミニマムアクセスとして受け入れるということを約束をしたわけで、そういう意味では私は、これは各国に対する、世界に対する約束なんだと、国際約束なんだ、だからこれを勝手にやめたり縮小するなんということはできませんということを申し上げたと記憶しております。

○紙智子君 大臣が言われる国際約束というのは、WTO協定で要するにミニマムアクセスと言ったのは輸入機会の提供だと、そのことについての約束という意味を言われたんですか。だとすると、七十七万トンどんなことがあっても毎回のように入れなきゃいけないということは、これは国際約束にはなっていませんよね。

○国務大臣(赤松広隆君) たしか、これは大いに当時の予算委員会でもめた案件でございまして、政府統一見解ということで、一、二、三と三項目にわたっての見解が示されております。
 現実に輸入される数量がミニマムアクセス機会として設定される数量に満たなかったとしても法的義務違反が生ずるものではないということで、しかしその前段には、かかる例外的なケースにおいてということで、輸出国が凶作で輸出余力がないというような輸入が困難な状況もあり得ないわけではないので、そういう例外的なケースにおいては満たなかったとしても法的義務違反が生ずるものではないというふうに三項目めに書いてあるというふうに理解をいたしております。

○紙智子君 私が質問しているのは、要するに、政府統一見解というふうに言うのは国内で話をしたことで、WTO協定上そのことについて約束が決まったということはないわけですよね。にもかかわらず、それが国際約束であるかのように発言されたんで、それは違うのであれば違うんだと是正していただきたいんですよね。

○国務大臣(赤松広隆君) 例えば、今、日本がミニマムアクセスどこから入れているかというのを見ますと、アメリカ、中国、タイです。そうすると、これは国際約束ではないから、もうアメリカからも中国からも米一切取りませんよと、あるいはタイに対してもですね、一方的に例えば通告する、そんなことはあり得ないんですけれども、もしそういうことが起こるとしたら、これはそれ以外に日本に対するいろんな形でのやっぱりマイナスが生じるということは当然想像されるわけで、まさに私どもは国益ということを中心に置いて考えるわけですから、ある意味でいえば、これを譲ることによってこれだけ大きな利益がもたらされる、これによって日本の農業を守ることができると思えばいろんなことを考えるのはもう当然でございまして、今の状況の中で、むしろ私どもはこの七十七万トン、七十万トンのときもある時期ありましたけれども、この量というのをやっぱり国際的な約束としてきちっと守っていくことの方が結果的には日本の農業を守るということになると私は理解をいたしております。

○紙智子君 質問していることに答えていただきたいんですけれども、今おっしゃったことは、国内でそう考えて、これからの対応を考えたら心配だから守っていくことがいいんじゃないかという話をされるんだけれども、WTO協定上は七十七万トンずつ必ず入れなければならないと、それをしなければ違反するというふうなことで決まっているわけじゃないですよね。それ自身は協定じゃないわけですよね。そのことについてお認めになりますよね。

○国務大臣(赤松広隆君) だから、私が言っているのは、そういうことをもししたときに、例えば、今韓国でもWTOに、これはほかの案件ですけれども、提訴をされたり、いろんなことが生じてくることもあり得るわけです。ですから、そういうことを総合的に考えたときに、単にこれはWTOでこういう文書があってこういう約束ではないんだから、だからそんなものは一方的に破棄していいんだとか、そういう乱暴なことは、残念ですけれども、私どもの良識ある政権ではできないということを言っているんです。

○紙智子君 ミニマムアクセス米については、これはあくまでも米を生産しているすべての国が日本に輸出する権利を持つということになっていて、特定の国に限られているわけじゃないわけですよね。ところが、アメリカだとかそういうところから入れるということに対して、こことは絶対にこれは守らなきゃいけないということになると、これはちょっとWTO上も問題になる話だと思う、逆に、秘密でそういうことを話し合っていたのかということになるわけですから。いや、そういうことですよ。
 だから、その対応として、これからのことって、これは交渉次第のことでこれから先のことであって、今までの経過ということで見たときに、WTO協定上はそういうことがきちんと特に書いていないのに一方的に我が国の中で約束守らなきゃいけないという形でやってきたということ自体を、やっぱり実際に即してどうだったのかということをきちっと、国際協定でないんだったらないとしてこれからの対応を考えていくべきだと思いますし、それを何か今までの継続だからということで統一見解をそのまま引き継がなきゃならないという理由はないと思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(赤松広隆君) ですから、何回も申し上げておりますが、WTOの協定上、国家貿易の場合はMA米を全量輸入すると具体的に規定があるわけではありません。また、そのように規定されているわけでもないし、約束があるわけではありません。しかし、ミニマムアクセス自体は輸入機会の提供ということですので、仮に民間貿易によって行うと、国家貿易ではなくて民間貿易で行うということになったときに、ミニマムアクセス数量の枠内において民間企業の自由な輸入を認めればよいということになります。
 そういう結果で、紙さんが意図しているようないい結果が出ますか。自由に商社がどんどんそういうのを民間貿易としてやってくると、あるいはそれはもっと国家間でするんじゃなくて市場にどんどん出せと、ミニマムアクセス米を、そういうことに、自由にやったときに、日本の農業者にとって、あるいは消費者にとってと言ってもいいかもしれませんが、いい結果が出るんでしょうか。そこが基本的に私どもと多分共産党と考えるところが違うというところではないかと思っております。

○委員長(小川敏夫君) 紙さん。なお、時間が来ていますので簡潔にお願いします。

○紙智子君 規定がないということはお認めになったと思います。それで、これからの交渉についてはまた私どもとしても、前回も質問していますけれども、提案する中身というのはありますから、また大いに議論をしていきたいということを申し上げて、質問を終わります。