<第174回国会 2010年3月19日 農林水産委員会>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日はチリ地震による津波被害の対策をめぐって、前回のこの委員会でも質問されていたんですけれども、私も、この被害状況については、実は三月の六日と七日に岩手県の三陸とそれから宮城県の塩竈の方に行ってきました。船に乗って海上まで出て、そのときの被害状況の説明を聞いたんですけれども。
 陸前高田の方にも行って、そこでは、ホタテでいうと、二十一年産については水揚げをして出荷した後だったんですね。ところが、来年と再来年の分はまだあって、それがもうほとんど出てしまったと、流されてしまったということでしたし、それから塩竈の方は、私は再認識したんですけれども、ここはカキやっていて、カキについて言うと種ガキなんですね。だから、北海道も含めて全国に種ガキを出しているところだったので、このカキについては、種ガキは無事だったと、被害に遭わなくてほっとしたという話を聞いて、ああ、そうだったのかと思ったんですけれども、ただ、ここはノリとか昆布とかワカメの方が被害が出ていて非常に大変な状況だということをお聞きしてきました。
 それで、この間も委員会で随分議論もされて、いろいろ対策を打たれていて、それを是非進めていただきたいわけですけれども、その上に立っても更にやっぱり国として考える必要あるんじゃないのかなということですとか、これからの予防策としても幾つか提案をしたいというふうに思います。
 最初に、復旧資材の問題なんですけれども、生産を再開しようと思うとどうしても資材は必要なわけですけれども、棚を作ってそれを固定したりするブロックとかアンカーについては、これは海中の資材でもって強い水産業づくり交付金の対象になるというのがこの間の議論だったと思うんです。
 ところが、海上というか、海の上に浮いているものについては、これは個人ということで資材は融資しかないと思うんですよね。それで、現場の漁師さんの話だと、その個人負担が、いろいろ強い水産業づくり交付金の対象になる以外の、個人で用意しているものの負担がかなり重いんだということがあったわけです。
 例えば、これは海面に浮きが浮いていて、これホタテなんですけれども、これを実はロープでずっとつなげて、浮きを何メートル置きかにつないで、その下にロープで下ろして貝を付けて、それで養殖するというスタイルなんですけれども、これもう固まっちゃって、水面に見えているのは一部なんだけれども、海の下の方はごそっとあるわけですよね、絡まったやつが、という状態だったわけですよ。それで、この浮きとロープの部分というのは実は個人負担なんですね。
 この資材は大体どのぐらいするものなのかと聞いたら、浮きは一個当たり二千三百円だと。百メートルに五十個ぐらい付けるんだけれども、そうすると、浮きが二千三百円でロープが百メートルで二万八千円だから、合わせるとその一つのセットで大体十五万円なんですね。それで、ここの、私が行ったところの広田漁協の米崎支所というところは二百三十三台あるんだそうです。ということは、掛けるで計算すると大体三千五百万円が個人が負担しなきゃいけないということで、そうすると一人当たりどれぐらい負担しなきゃならないんだと言ったら、大体五百万ぐらいかなということなんですよ。
 そうすると、本当に、ただでさえ来年も再来年も収入がなくなるということの中でこれから資材を要求してやるとなると、とてもちょっと足りないという状況があって、これも含めて何とかやってもらえないんだろうかというのは現場から上がっていた声なんです。それも含めてやると、今度、自分たちも漁協との関係で、五年間だったら五年間、水揚げになって収入になった分から返していけるということで対応してもらいたいというのが出ていたんですけれども、これ、いかがでしょうか。

○大臣政務官(舟山康江君) 今回のチリ沖地震による被害というのは、日を追うごとに、被害金額が明らかになるごとに大きくなっているということで、非常に被害に遭われた方にはしっかりと一刻も早い手当てが必要だなと思っているところであります。
 今御指摘のとおり、ブロックやアンカーといったものは強い水産業づくり交付金で対象になりますけれども、浮き球やロープも含めて、共同利用であればこちらもこの交付金の対象となります。ただ、やはり今の補助金のシステムの中で、個人資産というものはこの補助の対象にはならないという整理の中で、なかなかこの共同利用という、ですから是非、共同利用で用意するということであれば支援の対象になりますけれども、なかなか個人に対しては交付金の対象とはならないという現状があります。
 ただ、今委員からもお話がありましたけれども、新しく浮き球など、ロープも含めてですけれども、そういったものを購入する場合には農林漁業セーフティネット資金、これは公庫の資金ですけれども、かなり低利で使い勝手のいい資金になっておりますので、これは公庫にも早急に対応するように、また相談窓口を設けるようにということで、もう三月一日にすぐ指令を出しておりますけれども、こういったことできちんと適宜適切に対応していきたいと思っております。

○紙智子君 それから、共済についてなんですけれども、これもそこの支所で話を聞いたときに、ホタテでこの地域だと四千七百万円の水揚げ、一回ですね、あるところなんだけれども、これが九割方流失してしまったと。さらに、イシカゲガイというのをやっているというんですね。イシカゲガイというのは、何かここの漁協が栽培に成功して、それで新たな町の特産にしようということで力を入れて、ようやく今年から水揚げできるということで楽しみにしていたんですけれども、これが、この入れていたやつがひっくり返っちゃって駄目になっちゃったと。それから、ホヤ。ホヤについては五月から出荷する予定だったんだけれども、これがもう軒並み全滅だったと。
 それで、そうすると本当に養殖から出荷までの間、ホヤなんかも四年見てという話もこの前も出されていましたけれども、四年じっと待ってそれで失われてしまったということなわけですけれども、このホヤとかイシカゲガイというのは共済の対象外なんですよね。何で対象外なんだと言ったら、いや、少な過ぎて組めないんだという話なんですよ。
 それで、そうすると何の補償もないということなので、例えば、一種類だけだったら大変だけれども、イシカゲガイとかホヤだとか含めて何種類かで一緒に何かつくっていくとか、そんなふうな形で共済の仕組み、まとめた共済をつくるなどの工夫ができないのかというふうに思うわけです。
 それで、やっぱり漁協が新たな特産にしようと力を入れても、セーフティーネットがなければやっぱり続けられなくなっちゃうわけで、そこのところを検討してもいいんじゃないかなというふうに思ったので、これについていかがでしょうか。

○大臣政務官(舟山康江君) 共済についてですけれども、今御指摘のとおり、ホタテについては共済あるんですけれども、ホヤやイシカゲガイ、御指摘のとおり今共済の対象外となっております。
 その理由としては、やはり共済という保険の設計を組むためにはある程度母数がないとなかなか設計ができないということ、それから数理設計も含めてですけれども、データもなかなかそろわないということで今対象外になっています。
 ただ、やはり共済というのはセーフティーネットとして有効に役立つ側面が非常に大きいわけでありまして、農林水産省としても、今できるだけ多くの皆さんに共済に入っていただきたいという呼びかけもしているところでありますし、やはり今共済の対象になっていないものも、どうやれば共済の設計ができるのか、今小さい養殖水産物を組み合わせての共済ができないのかという御提案もありましたけれども、そういった様々な工夫を凝らしながら、漁業関係者の御意見も踏まえて、やはりこれは今後検討していかなければいけない大きな課題だと思っております。
 実際、これから今省内で新しいセーフティーネットの在り方ということで所得補償も含めてこの共済の在り方も検討を始めた段階でありますので、是非、規模の小さい養殖水産物についてもしっかりと検討していきたいと思っております。

○紙智子君 加えてなんですけれども、養殖共済に入っていない人が結構多い、ばらつきがあって、気仙沼なんかは本当に入っていない人が多くて大変だという話聞いたんですけれども。
 入っていないということは、やっぱり厳しい経営状況の中で、結局無事な状況がずっと続くと掛け捨てみたいになってしまうというので、塩竈に行ったときにはノリ養殖の方は、実は年間でいうと八十万ずっと掛け捨て状態なんだという話をしていて、そこのところももっと入りやすく、たくさんの人が入れば負担が軽くなるわけだからたくさん入ってもらわなきゃいけないわけだけれども、それには入りやすくする努力というのは一層やらなきゃいけない、今までもやってきてはいると思うんですけれども、一層やらなきゃいけないと思うんですね。
 だから、例えば掛け捨てという形ではなくて、一定期間掛けても災害に遭わなかった場合には無事戻しみたいな、農済はあるんですよね、無事戻しはね。そういうふうに軽くするとか、あるいはずっと被害に遭わないままだったら掛金がだんだん安くなっていくみたいな、何かそんなことをしてもっと入りやすくするようにしていくのはどうなのかなと、そんなことも考えてはいかがかなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○大臣政務官(舟山康江君) 実は、漁業共済におきましても、今御指摘の無事戻しですとか等級別割引の制度がございます。
 無事戻しにつきましては、これは昭和五十七年から導入されているものなんですけれども、四年間の契約を一セットといたしまして、四年間無事故若しくは支払共済金が非常に少ない場合には無事戻しですね、つまりは、簡単に言えば五年目は自己負担額ただだというような無事戻しの制度があります。これも、全体の加入者のうち四分の一から五分の一ぐらいはこれに加入していただいておりまして、やはりこういったものも推奨していきたいと思っています。
 もう一つ等級別割引、これは、自動車の保険が毎年事故を起こさなければ等級が下がって掛金が下がっていくというのがありますけれども、同じような仕組みで、前年の契約に適用された等級とその損害率から等級を定めて、割引最大五〇%、逆に事故が多ければプラスにもなりますけれども、そういった割引制度がございます。
 今、そういったことで、平均すれば通常の平均的な掛金よりも安い掛金で入っていただいている方の方が多いという形になっておりまして、そういった無事戻し、等級別割引というのは実際にあります。
 いずれにいたしましても、先ほど申しましたとおり、こういったことも含めて、共済の在り方についてはまた今後しっかりと検討していきたいと思っております。

○紙智子君 それから、被害を受けた養殖施設の処理の問題なんですけれども、津波でいかだなどの養殖施設の被害がかなり深刻で、これはもう多分片付いていると思うんですけれども、塩竈の港のところに揚がった状態なんですよ。これ、昆布とかワカメがもう絡まって、それで折れた、何というか、つい立てみたいなやつ等含めて、もうごちゃ混ぜになって、これは捨てるしかない、廃棄物にするしかないんですけれども、こういう状態のものがあって、これはたまたま漁師の方が必死になって岸に引っ張っていって、片付けなきゃいけないとやっていたんだけれども、クレーンがないとやっぱり持ち上がらないんです、重くて。それで、たまたまこの塩竈の場合はボランティアで、クレーンを持っている方がただでやってくれたらしいんですけれども、これも実は業者を頼んでお金掛けてやると大変なことなんですよね。
 そういう状況があって、それで、例えば陸前高田市なんかは、そういう片付けるために大変だから、漁業者大変だから、自分の漁場を元に戻すのだって大変なのに、本当に大変なので、市が独自にそのための支援するというので、お金を出すということをすぐ決めたんですよ。それとか、塩竈なんかは、ここに揚がった廃棄物を処理するための人を緊急雇用創出の予算で対応しようということで、そういう手を打ったりしていて、これ自身が漁業者にとっては大変な助けになるわけですよね。
 それで、そういう取組があるんだけれども、同時に、海の上のもの、さっきもちょっと見せましたけれども、上のものとか、中にある漂っているものについては、これは個人の責任ということになっていて、被害を受けた養殖施設を撤去するための支援というのがない状態なんですよね。これも何か考える必要あるんじゃないのかなと。いかがでしょうか。

○大臣政務官(舟山康江君) 今御指摘のとおり、所有者が分かっているものについては、その除去、処分する責任というのは基本的には所有者にあるということになっています。
 ただ、先日の藤原委員の質問にも環境省それから総務省からお答えがありましたけれども、例えば環境省の事業で対応できるものもあると思いますし、また総務省の方で、例えば所有者が明らかでなく、その公共団体がいろんな撤去に乗り出すということに対しては、特別交付税の交付というのができまして、これは年を区切って翌年の頭ということになりますので、今回の被害に係るものは二十二年度の特別交付税により算定することになりますけれども、そういった支援もあります。
 また、農林水産省の方の予算においては、養殖施設であればなかなか難しいのかもしれませんけれども、例えば流木とかそういったものによって航路が埋まってしまったりとか、そういった公益上に特に非常に支障があるというときには災害復旧事業の対象にもなりますので、そういった被害状況に応じて、できるだけ支援をできるものをしっかりと支援をさせていただきたいと思っています。

○紙智子君 環境省は頑として、事業者の責任によるものだから、あくまでも、例えば津波でもって一般の家庭からそういうものが出たときにはやるけれども、漁業者の人が事業でやったやつは一切見ないというのが、ちょっとやり取りしてがっくりしてしまったんですけれども、そういうことなので、ちょっとこれは何らかの対策は是非考えてほしいと思います。
 それからもう一つ、災害復旧事業で救えない制度のすき間というのもあるんじゃないのかと。自然災害に対する事業はいろいろあるんですけれども、今までお話ししたように、津波被害に対して海上にある養殖施設の撤去費用が自己負担となっていると。それから、共済に加入していない人は補償の手当てというのは今の段階ではないと。
 しかし、考えてみると、エチゼンクラゲの被害対策なんかは、駆除費用だとか陸上処理費用に助成する仕組みというのはあるわけですよね、エチゼンクラゲは。避けようがない自然災害、今回のように災害において、水産庁としてのやっぱり緊急の支援や復旧に係る事業や費用というのは今は融資とか共済しかないんですけれども、こういうための費用というのは水産庁として何かやっぱりあっていいんじゃないかというふうに思うんですけど、どうでしょうか、検討していただけませんか。

○大臣政務官(舟山康江君) 今、エチゼンクラゲ、大型クラゲ等の有害生物の駆除には支援をしているではないかというお話がありましたけれども、なかなか避け難い自然被害という意味では全く違うということにはならないと思いますけれども、ただ、このクラゲ被害、そういった有害生物の被害というのは、やはり放置すれば広がってしまうという、もっと更に被害が広がるという意味でやはり国がきちんと食い止めると、国が事業をやるということなのかなと思っておりまして、そういった意味では、今回のこういう津波による被害とはまた少し観点が違うのかなという気はしております。
 ただ、一方で、確かに今回の被害も遭いたくて遭ったわけでもなく、本当に自然災害の中でもう避けようにも避けられないという側面もあると思いますので、何らかの対策というのは検討していきたいと思います。
 ただ、もう一つ、この間、これも藤原委員の質問のときにもお答えしましたけれども、例えばやはり個人の努力で非常に災害に遭っても壊れにくい強固な施設を造って災害の被害を免れた人たちもおられますし、やはりそういったところとのバランスも考えていかなければいけないのかなと、そんな思いもしておりますけれども、何ができるのかしっかりと検討はしていきたいと思います。

○紙智子君 それで、最後なんですけれども、これからの予防策ということで考えなきゃいけない点で、被害を最小限に抑えるための対策として、今お話のあった養殖いかだなど、流されないようなあらかじめ強いアンカー、強力なものに切り替えておくということなんかも大事なんだというふうに思うんですけれども、もう一つ、港付近の廃船、使わなくなった船ですとか岸壁に山積みされている輸入木材、これが流されれば凶器に化すということもあるわけですよね。それで、台風なんかでもそうだと思うんですけれども、伊勢湾台風のときに大量の木材が流出して、それでもって亡くなられた人も多いということを聞くわけです。
 だから、大きな津波などが来た場合にどう対応するのかということでは、今回テレビでずっといろいろ放送している中で、高知県の須崎市ではワイヤーロープを掛けていたと、固定していたということが後で分かって、これ教訓にしなきゃいけないんじゃないかって話をしていたわけですけれども、木材などの流出を極力防ぐなどの予防策を考える必要があるというふうに思うんです。
 この点でちょっと国土交通省にお聞きしておきたいと思います。

○大臣政務官(三日月大造君) ありがとうございます。
 紙委員御指摘のとおりでございまして、問題意識は共通、共有しております。
 それで、これ、御地元の北海道南西沖地震が平成五年に起こったときにも、まさに港にあったものが、浮いていたものが凶器と化して多くの方が犠牲になられました。昨年、愛知県の三河港で高潮になったときにコンテナが動いてしまうということもありました。
 そういうこともあって、今、国土交通省でつくっております社会資本整備総合交付金、この交付金の中で漂流物防止施設の整備といったことも対象にしようということで、新たに制度を拡充しましてその対策を講じようとしております。厳しい財政事情はあるんですけれども、こういう漂流物防止施設の整備をしようという自治体の御意見をしっかりと伺いながら対策を講じてまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 是非、地元というか、地域によっても違いも特徴もあると思うので、やっぱり使い勝手が現地にとっていいというものを考えていただいてということをお願いして、質問を終わります。