<第174回国会 2010年3月5日 予算委員会>


○ 政府米備蓄方式を転換し「棚上げ式」に 首相が表明

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 戸別所得補償制度のモデル事業をめぐって、今各地での説明が行われています。今、米農家にとって最大の経営上の問題は、〇九年産の米の米価が下落しているということです。ちょっと見ていただきたい。
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 これ、去年の十一月で、このグラフでいいますと、六十キロ当たり一万四千八百七十六円と。十二月の時点で一万四千七百五十四円、そして今年一月で一万四千六百八十六円ということで、じりじりと下がっているわけです。
 問題は、政府が計算している生産費ですね、米の生産費。六十キロ当たり〇八年で一万六千四百九十七円ですから、既にもうこの相対価格が二千円近く下がっている中で更にこういう形で下がり続けているということなんですけれども、この米価の状況に対して、最初に総理に御認識を伺いたいと思います。総理です、総理。最初、認識、総理、総理です。

○委員長(簗瀬進君) まず、赤松広隆農林水産大臣。

○国務大臣(赤松広隆君) 私の方から、そういう数字については総理はそんな細かいこと分かりませんので、私が。あっ、総理、ごめんなさい、済みません。私が基礎的な数字についてはお伝えをさせていただいて、あとそれを総理がどう考えるかということをお答えをいただければ私はいいと思います。
 今お示しをいただいた数字というのはどこから持ってこられた数字か分かりませんが、少なくとも農林水産省で相対取引価格ということでお示しをしているのは、例えば二十二年一月で一万四千六百八十四円、前年同月比で一万五千二百五十三円ですから九六%ということで、もちろん下がってはいますけれども、そんな極端に大幅に下がっているということではないと。
 それからもう一つは、二〇〇九年産ですから、これは今まで作付けやりたい放題やらせておいて下がるの当たり前ですよ。だから、今度は戸別所得補償制度の中で生産数量目標をきちっと守ってもらうんですから、これは需給が締まればこういう状況にはならないということは何度も私の方から御説明をさせていただいていると思っています。

○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 赤松大臣に言われてしまいましたけれども、確かに、元々、私どもが政権を交代をして、この政権に着く前から生産費を下回っているという状況であろうかと思います。それだけやはり米農家は深刻だと、私はそのように理解をしています。それが更に徐々に下がってきているというのは、彼らにとってはやはり気が気でないと、そのようにも感じております。それだからこそ、私どもとすればできるだけ早く戸別所得補償制度というものを定着をさせていく必要があると、そのように考えております。

○紙智子君 総理はちゃんと素直に答えられて、要するに、下がっているかどうかという認識を聞いたわけで、総理は下がっているということを認識されているという話だったと思います。
 それで、参議院の本会議のときに我が党の市田書記局長が米価下落問題を指摘して、生産費を基本とした米の政府買入れを求めたことに対して、総理に対して聞いたときに対して、これは総理はまともにお答えになっておりません。なぜこの米価下落問題に取り組まないのかということについてお聞きします。

○国務大臣(赤松広隆君) 紙委員も、もちろん今までの農業政策についてのいろんなお考え方はあっていいと思いますが、是非ここで、今までの制度とは百八十度違う、そういう農政の大転換なんだということを是非御理解をいただきたいというふうに思っております。
 その意味で、米がだぶつくであろうという前提の下に、だからこそ米の大量の、いわゆる価格を維持するために買入れをやるんだという今までのやり方はもう取らないというのがこの新しい政権の下での私どもの考え方でございます。ですから、米の備蓄で買入れの問題も後で出るかもしれませんけれども、これもあくまでも緊急のときのための備蓄であって、何も米の価格を支えるためにやるということではないということでございまして、したがいまして、大幅に下がるんだからそういう価格を支えるために米をどれぐらい買うのかとか、買う覚悟はあるのかということを聞かれても、元々そういうことにならないし、そういう発想には立たないということを是非理解をしていただきたいと思います。

○紙智子君 米価が下がり続けているときに、それを止めるための対策を取らないのかなというふうに思って今聞いていたわけです。
 それで、戸別所得補償政策で、それでやるんだということを言われるんだけれども、それはあくまでも今年の秋に取れる米以降の話なんですよ。その手前の、去年取れた九年度産、これに対して、これはもう対象外ですから、戸別所得補償政策には。だから、いよいよこれから種をまかなきゃいけない、その種を、種もみを買うお金も今下がっていて大変だというときに何もやらないのかということが問題になっているわけです。そのことを聞いているんですよ。

○国務大臣(赤松広隆君) ちなみに、こういう例をお話しすれば御理解いただけると思いますけれども、今、各県ごとの割当てをしました。そして、各県ごとから今度は各地域協議会ごとの生産数量目標の割当てをしております。これも済みました。そしてあと、個別の各地域協議会の中でそれぞれ個別に、それぞれの生産者、お百姓さんに対して、あなたは来年の生産数量目標はどれだけですよということも実は今やっている最中で、ほぼ七割ぐらいがもうそれを終了しています。
 ということは、この戸別所得補償制度に積極的に参加をして、自分はもうこれだけの今年度は持分で米を作っていくんだということを多くの農業者の皆さん方が、もう既に前向きにそういう準備に今入っていただいているということで、先ほども冒頭申し上げましたけれども、相対取引で一年前と比べても一万五千二百五十三円が一万四千六百八十四円ですから、わずかには下がっていますけれども、そんな言うほどのあれではないと……(発言する者あり)
 ですから、それについて今回は、特に固定分ということでその生産費と販売価格との差額についてきちっと埋めますし、更にそれが開いたときには今度は変動部分としてその部分も手当てをしているということですから、御心配の筋には当たらないと思います。

○紙智子君 そういう答弁されるから、日本農業新聞に何て書いてあるかというと、かみ合わぬ米価論争ですよ。先の話じゃなくて今の話をしているのに、今言ったことは全部先の話でしょう。だから、日本農業新聞に何て書いてあるかというと、市場に滞留する過剰在庫の解消策は不透明なまま論戦を終えたと、この論戦の行き先についてどう決着するのか、生産者はかたずをのんで見守っていると書いているわけですよ。〇九年の米の価格の議論をどうして踏み込んでやらないのかということなんです。

○国務大臣(赤松広隆君) 多分、御質問と御意見の趣旨は、これだけだぶついているんだから米をもっと買いなさいということだと思いますが、じゃ例えば、これは私が質問する立場ではありませんが、三百万トンをそのために買い上げたら幾ら掛かると思いますか、三百万トン。分かりますか。一千五百億円ですよ、一千五百億円。一千五百億円を貴重な税金から、本当に必要か必要じゃないかも分からない形で三百万トンを果たして今積み上げることが本当に国民の理解を得られるのか、そういうことをしっかり考えてほしいということなんです。

○紙智子君 私、それを言うんだったらミニマムアクセス米をやめたらいいと思うんですけれども。
 それで、今まではやっぱり需給調整は昔は国が責任を持っていたわけですよね。これまで、主要食糧法の改正以降も少なくとも需給状況を見ながら、やっぱり大変だということになったら備蓄米の制度をそのルールにのっとってそれで変えますということをやって何とかしのいできたということがあるわけですよ。〇八年はそれをやりましたからね。今は、来年からの話はするけれども、今のことは何らやっていないということでいえば、結局は、今下落していることの打つ手というのはほとんどないに等しいというふうに言っていいと思うんです。
 私は、この価格の下支えというのはやっぱり必要だと。これなしには、これから先どんな直接支払をしたとしても成り立たないというふうに思うんですよ。この価格の下支えという点では、私は、さきの総選挙のときに民主党のマニフェストに書かれている、米の備蓄を不作等が一定期間なかった場合にえさ用などで処理する棚上げ方式に転換しと、三百万トン備蓄体制を確立するという公約は、これは重要だというふうに思うわけです。
 そこでまず、この棚上げ方式というのはどういう仕組みかということと、今の仕組みとの違いについて御説明を願います。

○国務大臣(赤松広隆君) 今まではいわゆる回転備蓄ということで、それぞれ毎年一定程度の米を購入して、そして古くなったものから、三年過ぎたようなものから順番に毎年毎年主食米として、食用米として市場に出していくという仕組みでした。
 ところが、今、この間何年間の推移を見ますと、米はだぶついている状況が続いてきましたから、そういうだぶついている状況のところに米をまた食用米として出すと、更に米価下げるということはなかなかできないんで売るに売れないと、抱えっ放しにするということにしながら、結局は財政上大変大きな負担を掛けながら、時期をずらしてでも何とか処分してきたというのが今までの実態です。
 ですから、私どもはそういう回転備蓄ではなくて、いわゆる棚上げ方式として、一定のお金は掛かりますけれども、しかしそれはいったん買い上げたものはもう食用米には出さないと、それはもう加工米や飼料米に回すんだと、そして需給に影響を与えないと、市場の主食米のですね、そういう立場で財政当局の皆さん方ともしっかりとその辺は議論しながら御理解をいただいて、是非こうした今までの回転備蓄方式から棚上げ方式にしていきたいと。
 しかし、そのときに、先ほども申し上げましたけれども、その三百万トンという話もありますけれども、これはしかし民主党のマニフェストじゃなくてインデックスの中に書いてあることですけれども、しかもそれかぎ括弧でちゃんと書いてありますが、国内産以外のものも含むということはMA米を含むという意味ですけれども、この七十七万トンも含んで三百万トンということで。
 しかも、じゃ反対に私は、それは多ければ多いにこしたことないでしょうけれども、今まで三百万トンじゃ足りなくなったことありますかと。過去一度、二百四十万トンぐらいあったと思いますが、そのときだって二百四十万トン使い切ってないじゃないですか。そういう中で、果たしてこの七十七万トンのMA米プラス今大体百万トンぐらい、結果的に今抱えていますけれども、これぐらいあれば十分なのではないかというのが私どもの基本的な考え方で、ただしそれはさっき言ったように回転備蓄でやるんじゃなくて、そのまま棚上げにして、それは食用米以外にやって米価を下がらないように、影響を与えないように、そういうことはちゃんと配慮してやっていきますよというのが基本的な考え方でございます。

○紙智子君 だから、棚上げ方式賛成だと言っているわけでね。減反緩和や米価の下支えという点で私は非常にこれ大事だと思うので、それは賛成なんですよ。ですから、二月の二十三日に衆議院の方で赤松大臣が答弁されているわけですけど、回転備蓄に転換するという、これは賛成だと。速やかにやるべきだと。(発言する者あり)違う、回転備蓄じゃなくて棚上げ方式ですね。速やかにやるべきだ、おやりになるということですね。

○国務大臣(赤松広隆君) 是非、その方式しかないというふうに確信をいたしておりまして、その代わり、くどいようですけれども、今財政状況がこういう状況ですから、それは多ければ多いという気持ちも分からないわけじゃありませんけれども、それはもう常識的な範囲、今必要とされる最小限の範囲で備蓄をしていくという考え方でおります。

○紙智子君 総理も同じお考えということでよろしいですか。

○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 結構です。棚上げ方式にいたします。

○紙智子君 是非ともこれ早くやってほしいということと、それから量については我が党はまた考え方ありまして、ミニマムアクセス除いて純粋の国産で百五十万トンはというふうに思っていますけれども、その点も述べておきたいと思います。
 それと加えて、流通大手による買いたたきが横行しているという問題で、これまた生産者にとっては大変な不安なことになっているわけで、これに対しての対応策はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(赤松広隆君) 済みません、もう一回、ちょっとお願いします。

○委員長(簗瀬進君) 済みません、繰り返し。

○紙智子君 流通大手による買いたたきが今始まっていると。

○国務大臣(赤松広隆君) これにつきましては、本来の戸別所得補償制度の趣旨をきちっと生産者にも、あるいは流通業者にも御理解をいただく中で、買いたたくためのそういう交付金制度ではありませんので、是非その本旨を守っていただきたいということと、それからもう一つは、先ほど申し上げましたように、毎年今三十万トンから五十万トンぐらい米がだぶついていると言われていますけれども、そういう中でこれからは需給がどんどん締まってくると。そんな安売りしなくたって適切な価格でちゃんと米は売れるんだということになれば、売る方も、流通業者が来たって、そうですか、じゃ安くてもいいですわ、どうぞお持ちくださいなんていうことは言わないようになると思いますので、その辺は余り私は心配をしておりません。
 ちょっと先ほどのことだけ、一つ訂正というか追加させていただきますが、備蓄米については私はそういう固い信念でやっているということで、何か私が個人が全部決めちゃうみたいなことに誤解されるといけませんので。基本的なそういう考え方でおりまして、これは例えば審議会の食糧部会とか、そういうところの意見もきちっと聴いて、その上で正式には決めるということになっていますので、大臣の決意はと聞かれたんで、私自身はそういう決意でおりますということで、別にもう断定的に決めたと、そんな意見も聴かずにというふうに誤解されるといけませんので、ちょっとその点だけ訂正をさせていただきます。

○紙智子君 生産者の中では様々な不安があるわけですけれども、そういう中で共同通信の報道が更に不安をあおっているということがあるんです。
 それで、最後、仙谷大臣にお聞きしますけれども、共同通信の二月二十八日付けで、成長戦略について触れて、具体的な政策に踏み込んだ検討が始まったと。二〇一〇年度にモデル事業としてスタートをする戸別所得補償制度を貿易自由化の安全網と位置付け、農業関税引下げと一体的に進めることを求めたって書いているんです。これについて、大臣、どういうことなのか御見解をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(仙谷由人君) そういう記事が存在したことは認めますけれども、その記事に我々が責任を取るわけにはいきませんね。それで、ほかの社も後を追って全然お書きになっていないですよね。今のところ、成長戦略のペーパーの中でその種のことを書いたものは一切ありません。あるいは、今そういう議論がされているかどうかということについて、私はもう全く承知しておりません。
 ただ、民主党としては、今の経済、日本の置かれたポジションからいって、EPA、FTAというのは大変重要な通商といいましょうか、あるいは日本のこれからの基本的な施策として大変重要な柱だというふうには考えておりますが、そこで具体的に、とりわけ農業をめぐってどういう交渉が行われるかということと基本的なEPA、FTAが大変重要だということは、共同通信がお書きになったような関係になるのかどうなのか、そんなことは全く論議になっていないということであります。

○紙智子君 一切全くそういうのはなっていないという話なんですけど、記事としていえば具体的なんですよね、書いてある中身が。
 農業の戸別所得補償制度をてこに農産物の関税を引き下げ、自由貿易協定、FTAを推進。法人税率を引き下げ、企業の海外移転を防ぐことも盛り込んだと。そのほかにも、企業の太陽光発電の問題ですとか、いろいろ具体的に書いていて、当てずっぽうで書いたのかというふうにはちょっと思えないなという面もあるわけです。
 それで、やはり今回の米のモデル事業をめぐって、これ、米価下落を前提として関税引下げの地ならしじゃないかという不安の声がかねてからあるんです。ですから、そういう意味では、大臣は否定されたんですけれども、もしこういう事態になったら大変だと、重大だというふうに思うんですけど……

○委員長(簗瀬進君) 時間が過ぎております。

○紙智子君 はい。
 赤松大臣、そのことについて一言。

○国務大臣(赤松広隆君) これは、私自身の考えでもありますし、あるいはまた鳩山政権全体の基本的な考え方だと言ってもいいと思いますけれども、EPA、FTAについては貿易やサービスを促進してどんどんとそれを進めていくと。
 一方、これはマニフェストにも書いてありますけれども、その際、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興を損なうことは行わないということをきちっと皆さんにお約束しておりますので、その考え方の下に進めていきたいと、このように思っております。

○紙智子君 日米FTAあるいはオーストラリアとのEPAについては、我が党としては、これは本当に断固としてそういう動きが出れば阻止をするということで、最後に申し上げまして、質問を終わります。

○委員長(簗瀬進君) 以上で紙智子君の質疑は終了いたしました。(拍手)