<第174回国会 2010年2月17日 少子高齢化・共生社会に関する調査会>


○ (「コミュニティの再生」のうち少子高齢化と コミュニティの役割(コミュニティの担い手、 活動の継続についての課題))

参考人 関西学院大学人間福祉学部教授 牧里 毎治君
島根県海士町長 山内 道雄君
和歌山県古座川町長 武田 丈夫君
三鷹市長 清原 慶子君

○紙智子君 今日は、四人の参考人の皆さん、ありがとうございます。日本共産党の紙智子でございます。
 私は、平成の大合併を地域コミュニティーという角度からお伺いしたいと思うんですね。
 それで、全国町村会が「平成の合併をめぐる実態と評価」というのをまとめているわけですけれども、この中で、合併のプラス効果ということで財政支出の削減などを挙げていますし、マイナス効果としては行政と住民相互の連帯の弱まりということを書いていて、周辺部の衰退なども挙げています。それから、合併を選択しなかった町村の可能性というところで、地域に対する愛着と責任感の共有などを挙げています。
 市町村関係者から話を聞きましても、合併で中心部から遠いところほど地域が衰退しているし、周辺部で暮らせない状況になり、中心部も崩れていく傾向にあると。なぜかというと、地域内の再投資の中核を担っていた、多くの従業員を抱えていた役場が消えてしまったからだということなんですね。
 それで、この小さな町村のコミュニティーが合併によって壊れている状況があるわけです。当時、政府は平成の大合併を強力に推進しているんですけれども、地域のコミュニティーという角度から見るとどういう影響が与えられたのかということについて、今日、町長さんお二人お見えなので、お考えをお聞きしたいと思います。

○参考人(山内道雄君) 最初に申し上げましたように、今、全部、町村会のあのアンケート、もうそのとおりの、その中に私どもの意見も入っているはずなんです、具体的に。
 ということで、私は決して合併反対論者じゃないんです。合併はすべきときはすべきでいいと思っていますけれども、私は島嶼間ということでしなかったわけですけれども。今、アンケートに表れておりますように、確かにコミュニティーというものに対する、例えば合併しますと、まず役場の職員、市役所の職員が中心部へ寄ってしまうんですよ。自分ところの家を、ほっといて、その中心部へ住宅も移してしまう。これはもう私はもってのほかだと思うんですけれども、まず行政からそういうことに流れてしまう。
 そして、一番、私のところは割と災害が少ないんですけれども、一朝もう何か起きたときにはすべて役場職員が先頭で立たなければならない。もう災害が一番私は心配ですね。ですから、私のところには県道走っていますけれども、県の出先はない。まず職員が夜中でも行って伐倒して、バスが通れるように朝までにぴちっとやるということで、その管理料をうちの方へくれということで県にも言っているんですけれども。
 ですから、常に最低の行政機関とか人というものはやっぱり大事なんですね。そして、中心部へ吸われますと、そこら辺りがみんな中へ中へ、中心へ吸われていく、考え方までそうなっていると。これはもう私ははっきり言って言えると思います。

○参考人(武田丈夫君) 古座川町におきましても合併は、古座川町は合併はしておりません、単独を選んだ町です。隣の二つの町は合併しておりました。そのときにどういった形で合併をしなかったかと経過を見てみますと、やはり財政的な問題が一番のネックになったようでございます。そのときに古座川町は比較的財政的にまだ余裕が、余裕があるというほどじゃないんですけれども、うまく回しておった。ほかの二町村につきましては非常に赤字を抱えた厳しい町だったと。そういうことで合併をしなかった。
 それともう一点は、山村ですので、奥地の地域の住民はやはり合併すると取り残されるという感じを非常に持って、合併しないでほしいということであったようです。今、第二次合併も進められておるところでございますけれども、それにつきましても、もう古座川町につきましては絶対に合併しないでほしいという意見が非常に強うございました。
 山内町長さんもお話のありましたように、古座川町の役場の職員、これは古座川町内で住むのではなくて、その近辺のもっと便利のいい町へ引っ越していくわけです。そこから通っていると、子育てをそこでするといったふうな現象が出てきております。それが非常に我々としても心苦しい、困った状態で、今後どうしていけばいいのか、それも課題の一つというふうになっております。本当に、火事があると全員が出てきて役場で対応している、台風があると全員が出てきて役場で待機し対応していると。そういった状態の中で、やはり町外に住まれるということは非常に対応に難しい。
 そういった中で、地域のためにはやはり役場を核として、その地域地域へ人をやっぱり配置しながら緊急時の対応というのも取り組んでいかなきゃならぬということで今対応しているところです。

○紙智子君 地域の活性化とコミュニティーについて次に伺いたいんですけれども、地域の活性化というと、どうしても、これまでだと企業を誘致するとか、あるいは大型公共事業に依存する傾向というのはあったと思うんです。そういう流れに依存せずに持続可能な地域づくりをどう進めていくかということを考える時代になっていると思うんですけれども、そのキーワードが、一つは地域資源ということがあるんだと思うんです。
 その上で、持続可能な地域づくりを進めるときに、コミュニティーというのは何か、どういう役割を果たすというふうにお考えかということがまず一つと、実際に地域資源を生かして物をつくったとしても、その販路というか販売ルートがないと成り立たないということもあるんですけれども、その点で、そのルートをどういうふうに確立されているのかということについて、国や国会がそういうときにどういう支援をするといいのかということなどを、じゃ、海士町長さんとそれから武田古座川町長さんとお二人にお聞きしたいと思います。

○参考人(山内道雄君) これもお話の中でしましたんですけれども、特に我々の離島では地域資源も限られていますが、しかし誘致とか、あるいは原材料を本土から仕入れてそれを加工して商品化してもとてもこれは競争の対象にならないということで、やっぱり島らしい商品づくりといいますか、それが大事だということで、例えばつまようじのもとになるクロモジの木ですね、これ今東京でもお茶屋で売っています。
 これは精神障害のある施設の皆さんが、若い人が頑張っていますけれども、これに火を付けたのがIターンの別府の温泉宿の息子が四年間おって道を付けてくれたんですが、これなんかも我々は、医者と縁がない時代には、傷を負うと、それで少し幹を削って浸すとその傷はうまないんだということ。
 それが、幹しかなかったのが、今は花が物すごく、もう普通のハーブには負けないいい香りが出、そしてまた葉っぱも今お茶になる、そして幹もお茶になるということで、それが一つの商品化したということで、これもやっぱりパッケージが大事だということで、パッケージにはいろいろ苦労しましたけれども、これもまさかと思っていたのが今東京でも売れるようになったと。ですから、もうあとは知恵だと思っています。
 そして、国の制度の中で地域再生マネージャーというのがございました。卓越したマネージャーではございませんけれども、全般やってもらうようなマネージャーの力もあったことも事実。そして、フードコーディネーターの先生、女性の先生なんですけれども、先生とか、あるいは料理研究家の先生が実は私のところへ半分住み着いておられます、気に入っていただいて。
 先生方の知恵を借りながらそういうふうな商品づくりしたことと、同時に、東京へ我々が持って出るその催事の場所とか、この前も汐留でやったんですけれども、AMAカフェをやったんですが、そういうことはやっぱり都会の知恵のある人、あるいは人脈がないとできないことなんですが、まあ人は人を呼ぶといいますか、もう本当に人づてで、人に恵まれてそういうことができたかなと今思っているところです。

○参考人(武田丈夫君) 今年の一月の多分四日付けだったと思うんですけれども、朝日新聞の記事の中に、これからの地方を生かしていくには、ないものをつくるのではなく、あるものを生かせという記事が出ておったと思います。私もこの古座川町の町長になってからまだ一年七か月ほどしかたっておらないんですけれども、そういった中で、やはりお金もうけに取り組まないと住民が居着かないということもありますので、何か小遣い稼ぎにできるものがないかということを考えて見ておりました。
 企業誘致とかそういうのはもうとても無理ですし、元々あった林業、これも今もう非常に木材価格が低迷しておりますので、お金にならないということもありますので、何か物がないかということで見てみましたところ、古座川町内ではもう至る所に自宅の裏山にミツバチの、ニホンミツバチの巣箱を置いているんです。それはもうどこの家の裏にも置いているぐらいの感覚で、道を走ればもういっぱい見えるんです。ですから、このミツバチのはちみつを何とか生かせないかと、それが一つ。
 それともう一つ、ずっと回っておりますと、庭先のちょっと日陰のところにキイジョウロウホトトギスという、ホトトギスの黄色いきれいな花が咲くんですけれども、十月に。それがあるわけです。それは茶花として切り花で京都市場でかなり高価な取引をされております。そういったものを、元々そこにあるものを生かせないか。
 それと、それに取り組んだときに、お年寄りだけじゃなくて、お年寄りでもできる、それから若い者でも、若い特に女の方でもやってみようかなと思うもの、それがないかということで、花作りなんかはやはり若い者も取り組んでくれないかなという思いで、それを今手掛けておるところです。
 そういった中で、その取組の仲間が集まればそこに連携が出てくるということになると思います。先ほど言いましたニホンミツバチ、これは私、出身が玉川大学ですので、玉川大学には日本で唯一、ミツバチ科学研究センターという研究所を持っています。そこで品質保証それから販売をやっておりますので、そこと連携を取って、去年の暮れにテスト販売ということで、玉川大学から古座川産のはちみつということで出しております。売っているはちみつの三倍の値段です。それも来年度はもう少し量を増やしながら、できるだけ集めて品質保証というので売っていきたいと。
 それも、ちょっと時間取って申し訳ないんですけれども、ミツバチは三キロしか飛ばないんです。三キロ以内のみつを集めます。そうすると、古座川町のような山奥では、人家から三キロ離れているところの山というのは幾らでもあるんですわ。そういうところにも巣箱を置いているんです。だから、三キロ離れているというか、人家から三キロということは、人家の周りで稲作だとか野菜を作っていますので、農薬は絶対掛かっていないんです、その三キロの先では。それと、人家がないから車もほとんど行かない。ですから、排気ガスもない。もう全くの天然自然です。そういったプレミアを付けていると。
 やっぱり地域にあるものをできるだけ生かしていきたいなと、小さなことですけれども、そういうことで思っております。
 それと、販売に当たっては、今言いましたのが一例です。ですから、品質保証をして金額をきちっと決めていくということ。それと、やはり花を売ったり切り花を売ったりするのは、東京市場へ今、毎年テスト的に出しているんですけれども、そういったところの市場調査、これはもう絶対必要になると思います。テスト販売して、その購入の動向がどうであるか、そういったことも必要です。
 去年の暮れから四十日間ですけれども、交通会館のライスアイランドというブースがあります、そこで古座川町産のユズ、ユズ製品、シイタケ、お茶、それから菊芋のチップとか、そういったやつをテスト販売しました。定価よりも高く売ったり低く売ったり、どういった傾向があるか、そういったこともやっております。
 ですから、やっぱりその販売ルート、それをきちっとするための市場調査、これを何とか充実していきたいということで、新たな予算付けも行ったところです。

○紙智子君 ありがとうございました。