<第173回国会 2009年11月25日 沖縄北方問題特別委員会 03号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 普天間基地の移転問題についてお聞きします。
 岡田大臣は、先週、沖縄に入って、自治体首長さんらからも普天間基地の県内たらい回しはやめてほしいという声を聞かれたと思います。嘉手納町では宮城町長から、とてもじゃないけれども統合案はのめないと、逆に、これまでの負担軽減はどうなっているのかと、騒音規制措置も守られていない現状を訴えられたと思うんです。
 十一月七日に行われた町民集会でこの嘉手納の高校の生徒会長さんが、静かな町で生活したい、これ以上僕たちを苦しめないでと発言をし、翌日、二万一千人集まった県民大会では小学校六年生の男の子が、約束は必ず守ってください、大切な海を、僕たちの未来を壊さないでと発言をしています。
 世論調査を見ますと、県外、国外移設を求める声も依然として強いということが、毎日新聞それから琉球新報、朝日新聞でも明らかになっているわけですが、大臣はこうした声をどのように受け止めておられますか。

○国務大臣(岡田克也君) 私自身、十五日から十六日にかけて沖縄を訪問し、今御指摘のように、知事、そして名護市長、嘉手納町長を始め自治体の関係者の皆さん、そして議長を始め県議会の各会派の代表の方々とも意見交換をさせていただきました、会派すべてではありませんでしたけれども。改めて沖縄の置かれた状況の厳しさということを認識した次第であります。
 ただ、この問題は、一つはやはり普天間の現在の危険な状況、これも現場に行って五年ぶりぐらいに普天間の状況を見ましたが、全く状況は変わっていないと。滑走路の延長線上に小学校がある、多くの民家が取り巻いている、こういう状況を長く放置はできないということが議論のスタートだったはずで、やはり早くこの問題を解決しなければいけないと、改めてそう感じたわけであります。
 そして、その解決の方向として、前政権の時代にできた日米間の合意、つまり、辺野古沿岸部への移設、そしてグアムへの八千人の海兵隊の移動、そしてその結果として必要がなくなった基地の返還、こういうパッケージが今あるわけで、このことをすべて白紙に戻してというわけにはいかないだろうというふうに思っております。例えば、八千人のグアムへの移転、あるいはその結果としての基地の返還などは、やはりこれは沖縄の負担軽減につながる話でありますので、そういったことはしっかりと実現していかなくてはならないと。
 問題は、普天間の移転の問題をどうするかと。ここのところについて現在日米間で、現在の案になったその経緯についての検証を行っているところであり、先般、私とルース大使あるいはクリントン長官との間でワーキンググループを設けて、そして迅速に、できるだけ早く結論を出そうということを合意したところであります。そのワーキンググループの中でしっかりと今議論を行っているところです。

○紙智子君 お言葉では、状況の厳しさはよく分かると、早く危険な状況を何とかしなきゃいけないと思っているということを言われるんですけれども、今日の例えば新聞報道などを見ますと、結局県内のたらい回しというような決着を付けようとしているんじゃないかという危機感を率直に言って持たざるを得ないわけです。
 それで、岡田大臣は二十一日に、県外、国外に移すとなると何年も掛かる、その間、普天間の危険が持続すると、で、海兵隊グアム移転が白紙に戻るかもしれないというふうに述べて、嘉手納への統合案が望ましいという認識を示されたわけですけれども、私はそのことをだれがおっしゃっているのかなと。アメリカのゲーツ国防長官がそういう主張をされたのかどうかなというふうにも思うわけです。
 それから、先日どなたかの質問に、政権を取ったときには計画は九合目まで来ていたんだということをおっしゃられているんですけれども、これは県民にとっては全く理解できない話で、大体くいも打っていないし、工事は全く始まっていないわけで、そういうやっぱり認識というのは違うというふうに現地ではおっしゃっているわけです。
 それで、沖縄県民の普天間基地の危険を直ちになくしてほしいと、直ちになくしてほしいと、そして県内たらい回しをやめてほしいという願いにどうこたえていくのかというのが大臣のなすべきことじゃないのかと。この県民の意思を本当に反映させた真剣な交渉を米国と行うべきじゃないのかというふうに思うんですけれども、いかがでしょう。

○国務大臣(岡田克也君) まず、九合目までという表現を私が申し上げたのは、委員御指摘のように、確かに新しい移設場所での工事は始まっておりません。そういう意味ではまだ始まっていないわけですが、しかし、最初から数えれば十三年に及ぶ様々な議論がなされ、そして日米間で一定の合意に達し、その中には、先ほど申し上げた八千人のグアムへの移転、その結果としての基地の返還ということも含めて合意がなされ、そういう意味で私は九合目までという表現を使わせていただいたところでございます。工事だけに着目して申し上げたわけではありません。
 嘉手納への統合の話ですけれども、私は、先ほど申し上げたように、なぜ今の案になったのかということを検証する中で、かつて日米双方から一時は提案された嘉手納への統合というものがなぜ駄目になったのか、どこが問題なのかということをその検証作業の中に加えたいということを申し上げたわけであります。嘉手納で決めるべきだということを私は申し上げたわけではありませんし、それは私が決められる問題ではありません。内閣として決定をしていかなければいけない問題。
 しかし、かつて提案されたということはそれなりに理由があるはずで、私なりに外務大臣として、なぜ駄目だったのか、選択肢というふうになり得ないのかということをきちんと自ら検証するということは私の責任だというふうに考えているところでございます。
 以上です。

○紙智子君 朝日新聞の十七日付けの世論調査を見ますと、普天間基地の移転について、前政権時代に米政府と交わした名護市への移転の合意は守った方がよいか、それとも見直して再交渉した方がよいかという問いに、見直して再交渉した方がよいというのが五四%です。毎日新聞の二十一、二十二日、一番直近の世論調査でも、県外か国外への移設を目指して米国と交渉すべきというのが五〇%というふうになっていて、鳩山首相の県外、国外移設への期待を高めているということを示していると。単純に現行計画を受け入れるような結論を出した場合には支持層の期待を裏切る形にもなりかねないということも書いているわけです。
 それで、大臣は米国に対して、この普天間基地を海外に移設させる選択肢というのは、これは提起されているんでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) 様々な議論を米国側とはしております。ただし、議論の前提は、現在の案になったその経緯を検証するという前提で行っております。したがって、今委員が御質問になったようなそういう議論には至っておりません。
 そして、マスコミはいろんなアンケートをされています。委員が今おっしゃったことは私承知しております。ただ、もし、普天間の移転の問題、米国と再交渉すると、その際に、今まで合意した中身、つまりグアムへの八千人の移転とか、あるいはその結果として空いた基地の返還と、こういうことも全部含めての議論になる、それでも交渉すべきかというふうに聞かれたときにどういう答えが返ってくるのかというのは、また少し違う問題ではないかというふうに思っております。

○紙智子君 いろいろな議論をしているけれども、海外というのはそもそも話をされていないということなわけですよね。それで、やっぱり県民、国民の多くは一刻も早く危険を取り除いてほしいと願っていると。結局そうすると、アメリカが受け入れそうもないことは初めから提起もしない、結局アメリカの顔色を見て態度を決めるということになりはしないかと。
 これまでやっぱり基地のたらい回しが普天間の基地を増強させてきたということがあると思うんです。普天間を早期に閉鎖するという理由で嘉手納に移転をするということだって、当然これはもう現場から見れば許されない話だと。今の政権が替わったということで本当に大きな角度から、新しい角度からの対話を国民は期待している、絶好のチャンスだと思っているわけで、そういう県民や国民の期待にこたえて、普天間基地については直ちに閉鎖すべきだと思いますし、基地のたらい回しはするべきではないというふうに私申し上げておきたいと思います。答弁はこれは要りません。
 それで、続いて日ロの領土交渉についてなんですけれども、先日の首脳会談で鳩山首相が、北方四島の帰属の問題を最終的に解決できるような五六年宣言の二島返還を超えた独創的な対応を期待すると述べたことに対して、二島では納得しないと意思表示したものの四島をとも言わなかったというふうに論評されているわけです。先週、元島民の皆さんを始め署名を携えて国会に要請されに来たんですけれども、やっぱり非常に新たな進展を期待をしているということを私自身も受けながら感じました。
 それで、新政権として、これまでの対ロ外交でどういうやり取りがされてきたのか、未公開のやり取りも含めて全容を明らかにして検証する必要があるんじゃないかというふうに思うわけです。我が国がどんな論拠で返還を求め、どんな返答がされたのかと。歴史的な経過を含めて評価を行って、その上で国際社会を納得させられる道理ある論拠を確立して交渉を行うべきじゃないかと思うんですけれども、これについて、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) 先ほどの委員の御発言に関し一言だけ申し上げますと、やはり日米同盟ということを、これは必要なことだという前提で考えるのか、それに否定的な立場で考えるのかというところで基本的に違う問題だというふうに私は思っております。
 さて、北方四島の問題ですが、APECの際の首脳会談において鳩山総理は、四島の返還を求めるとの日本側の基本的立場についてまず言及をしたわけでございます。その上で、メドベージェフ大統領が度々使われる独創的アプローチ、独創的アプローチと言われるのであれば、まさしく独創的アプローチでやってもらいたいという趣旨のことを鳩山総理が言われたということであります。
 なお、御意見にありました今までの経緯を明らかにしてということでありますが、こういった交渉を、厳しい交渉をやる際に、今までの我が方の、もちろん、相手方は、これは相手のある話ですから勝手にこちらが明らかにできるわけでは必ずしもありません。そういうふうになれば、たちまち交渉はその時点で止まってしまうと思います。じゃ、日本がどういうことを今まで言ってきたのかと、過去にさかのぼってそういうことを言うというのは、私は厳しい交渉をやっている中で取るべきことではないというふうに思っております。

○紙智子君 日米同盟の評価でもって違うという話をされたけど、そういうことではないと思うんですよ。やっぱり今多くの県民、国民がどこのところを一番強く思っているかというそういう声に立って考えたときに、そしてこれまで民主党さん自身が選挙の中で公約もされてきた経過もある中で、やっぱりどうこたえていくのかということであって、決して、日米同盟をどうする、評価するかということの違いということに問題はすり替えないでいただきたいというふうに思います。
 それから、日ロの交渉の問題については、国民全体の中では、具体的に今までどういうふうに日本が主張してきたのか、あるいはどういうやり取りがあったのかということは、やっぱりよく知られていない部分というのもあるわけですから、そこは是非検証していただきたいというふうに思いますし、やっぱり世界各国が見ても道理ある中身で交渉するという論立てを持ってやっていくことが必要だというふうに思っています。ちょっと、あえてこれまで我々の主張ということで今まで繰り返してきたのでここでは言いませんけれども、そういう道理ある中身でということを申し上げておきたいと思います。
 それで、最後にですけれども、前原担当大臣に伺いますが、先日の所信的あいさつの中で述べられていましたけれども、大臣になられてすぐ北方四島を納沙布岬と洋上から御覧になった、視察されたと、そして元島民や関係者の話を聞かれたということで、領土問題が未解決であるがために安定的に漁業ができないという問題や、それこそ経済そのものが大変疲弊しているという問題なども御覧になったと思うんですけれども、やっぱり長い間主権をめぐる問題でそういう領土返還運動の拠点として頑張って支えてこられた、そういう地域を御覧になっての御認識と今後の対策ということでの御所見を伺って、質問にしたいと思います。

○国務大臣(前原誠司君) 委員おっしゃったように、六十年余り北方領土が返還をされていないと、帰属が決まっていない、日本の固有の領土が返還をされていないという事実の中で、元島民の方々あるいはそれを受け入れてきた地域の方々の思いというのは非常に私は重く受け止めなくてはいけないと思います。だからこそ前の国会におきまして、私は衆議院の特別委員長でございましたけれども、特別措置法の改正を行って、そして支援も含めての様々な施策の拡充を図らせていただくということでございますし、今回も泉政務官とともに現地に伺いまして地元の自治体の方々から様々な要望を受けました。また、旧島民の方からも様々な要望を受けました。
 外交交渉は、外務大臣あるいは総理、しっかりやっていただくとして、我々は旧島民の要望として当該自治体の御要望というものをしっかりと政策に反映をさせていくということを、ちょっと時間がありませんので具体的には申し上げませんが、しっかりと取り組んでいくということを改めてこの委員会でもお約束をさせていただきたいと思っております。