<第171回国会 2009年6月16日 農林水産委員会 第15号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 この間、農地法等の改正をめぐって二回審議をし、参考人質疑を一回やってきているわけですけれども、今回のこの法改正が何のための改正なのかということをめぐっては疑問は依然として大きいし、懸念されている内容が審議で解決されていっているのかというと、そうではなくて、むしろ現実味を帯びてきているというふうに思うわけです。
 そもそも、何のために一般の農外企業の参入ができるように法改正を行う必要があるのかということについて、先週の十一日ですか、舟山委員が質問したことに対して大臣はこういうふうに言っています。要は多様な担い手、多様な主体が入るべきだ、それしかない、それによって耕作放棄地が解消されるとも思っていないし、企業の側が耕作放棄地に喜んでやってくるなどとは思っていないと答弁をされたわけです。これは私驚きだったんですけれどもね。
 大臣は、参議院の本会議で法改正の趣旨について、自給率向上のためにも農地を優良な状態で確保、利用できるようにというふうに述べた上で、しかし、農業従事者の減少、高齢化が進む中で耕作放棄地の増加に歯止めが掛からない現状にあると。また、転用期待等により農地価格が収益に見合う水準を上回る傾向にあるなど、効率的な利用に必要な集積が困難な状況にある、このような農地をめぐる課題を克服しと、こういうふうに今度の趣旨について明確に言っているわけですよ。本会議での主濱議員の質問に対しても同じ趣旨で繰り返し答えられているわけですよね。
 ところが、この委員会の中では、耕作放棄地をなくすとは思っていないということですから、だから、目的に掲げつつも余り期待していないということを言っているということ自体どうなのかなと。いかがでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) 農地法の改正だけで耕作放棄地が消えてなくなれば、そんなに結構なことはございませんが、それだけではできない。先ほど風間委員の御質問にもお答えをいたしたところでございますが、いろんな政策を総動員をしながら耕作放棄地を解消し、そして自給率を上げ、自給力を高めということでございます。その中にあって、今農地を持っているんだけれども使われていないというような状況が非常に拡大をしつつあるわけで、したがって、そこに利用という形態に着目をして、貸しやすく、借りやすく、そしてまた多様な担い手というものを入れておるわけでございます。
 多くの手法を使っていろんな課題を克服していかねばなりません。それは、一々ぎりぎり言われますと、おまえの言っていることは矛盾するではないかというふうに言われるかもしれませんが、私はかなり気を付けて答弁をしておるつもりでございまして、いろんな政策を総動員をしながら一つ一つ解決をしていきたい。今回の農地法の改正はその中の重要な一つの道具というか、一つの手段というか、そういうような位置付けで今回お願いをしているものでございます。

○紙智子君 受け手をつくるという点では、私は、何も変えなくても、今の現状の法律のままでも農業生産法人つくれば参入できてきたわけですし、そういう形でやって何も矛盾ないというふうに思うんですよ。確かに借りやすくなるとかということはあるかもしれませんけれどもね。しかし、今までの枠を維持したままだって、それはやれるというふうに思うんですね。
 やっぱり耕作放棄地が増えているという問題、これ以上増やしちゃいけないと、何とかしなきゃいけないと、これは切実な国民全体が思っていることだし、農村地域もそうですよね。切実なことだけに、それをやっぱり理屈としてそのためになんだということを言われれば、それじゃしようがないのかなというふうに受けやすいというのはあると思うんですけれどもね。
 私は、結局は、これは口実としてそれを取り上げているのであって、本当の目的は担い手の対象を一般の農外企業にまで広げると。一遍に所有までというのは反発も強いから、取りあえずは貸借のところで止めておこうというのではないのだろうかというふうに思うわけですよ。
 それは、これまで何度かこの議論の中に出てきていますけれども、経済財政諮問会議の平成の農地改革、この中で、やっぱり企業型の農業経営、これがなぜ重要なのかということを説いて、それでこれをもっと推進しなきゃいけないということを提言をしているわけですよ。
 これ、さかのぼっていきますと、大体、九七年のときに経団連が出している農業基本法の見直しに関する提言、この中でも提起をされていることとも重なっているわけですよね。それで、その九七年のときの提言というのを見てみるわけですけど、そうするとそこには株式会社形態による農業経営の導入というのがあって、一として農地転用規制の厳格化、二として株式会社の農地取得の段階的解禁。その中には、農地転用規制の強化を前提に、株式会社の農地取得を認めるに当たっては、段階的に進めていくことが考えられる、例えば、第一段階として、農業生産法人への株式会社の出資要件を大幅に緩和し、第二段として、借地方式による株式会社の営農を認める、その上で最終的に、一定の条件の下で株式会社の農地取得を認める方式が考えられるということを言っているわけですよね。
 大臣はこの方向に進めるつもりなんじゃないのかと、それは絶対にないというふうに言えるんでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) 私は、私はうそは申しませんと昔だれかが言ったようでございますが、これだけ衆参で答弁をしてきておるわけでございます。
 翻って、例えば株式会社が農地を取得するということが農業振興をするに当たっていかなるメリットがあるかというふうに考えたときに、所有しなければならぬというメリットもそれはないわけでございます。それはもう利用ということでそれは十分事は足りるのでありまして、私は、将来的に段階的に、なし崩し的にという言葉をお使いにならなかったと思いますが、やがては株式会社に農地の所有権も認めるのだと、しかし今は抵抗が強いから取りあえず利用だけにしておこうなぞということを考えているわけでは毛頭ございません。

○紙智子君 そのようにおっしゃるわけですけど、この間の衆参の議論の中で、衆議院での議論を、議事録を読ませていただいていますけれども、言ってみれば推進の側に立つ議員の方に対して大臣が答えているところがあるわけですよ。
 四月十五日の衆議院の議論で、自民党の小野議員ですけれども、そこで、一定の期間実績を積んだ企業に対して、将来的には所有も認める方向で検討すべきじゃないかという趣旨の質問をしたのに対して、大臣は、ここは私もずっと悩んでいるところで、委員御指摘のようなことがどうなんだろうかなということで、随分考えたことがあると述べられていると。今回は現行どおり、農業生産法人に所有取得権は限定するということでございますと。だから、今回は現行どおりだけれども、将来は考えるというのが本音なんじゃないのかなと読み取れるわけですけれども、いかがですか。

○国務大臣(石破茂君) 御精読をいただきまして恐縮であります。
 実際、悩んだことがあるのは事実です。それを否定するつもりはございません。いわゆる法人に農地の所有権を認めているというところと認めていないというところと世界中いろいろございまして、例えて言えばアメリカ合衆国、多くの州においては認めないということになっておるわけです。他方、ヨーロッパでは認めるというところがたくさんあるわけでございます。しかし、それと家族経営が相反しているかといえば、そうではないということもあるので、そこは法制度等々いろんなものを読んでみなければなりません。私も全部読んでいるわけではありませんし、ここにこうだという断定的なことが言えるわけでもありません。そういうことで随分と悩んではきたことは事実でございます。
 今回はという表現が委員の誤解を招くようであれば、この法改正によってそういうことは考えていないというふうにそれは訂正をさせていただきたいと思います。もちろん衆議院のことですから参議院で訂正をさせていただくことはできませんが、私の本意というのは、将来にも法人に所有権を認める、一般法人に認めるということのメリットというものを農業振興という観点からは極めて見出しにくいことでございますので、物事の価値観というよりも、実際に実利的に考えてもそのようにしなければならない必然性はないものと考えております。

○紙智子君 もう一つお聞きしたいんですけれども、担い手の対象の問題です。
 それで、賃借権を与えられた一般企業は担い手に位置付けられるかどうかということについて、これも先日、他の委員の方が質問したのに対して、大臣は、農地を効率的に利用し、継続的、安定的に農業経営を目指す者であれば、担い手として位置付けられるというように答えられましたよね。つまり、担い手として農地の利用集積もできると。それから、担い手ということになると担い手の制度を活用できることになると。それから、大企業に対してでも、入ったときに、様々な制度融資、これも活用できることになると。
 そうなると、制度融資もというふうになりますと、いろんなやっぱり優遇策っていうかあるわけで、かなり手厚い対応をできることになると。そうすると、完全にこれは現役の家族経営の農家などとのバランスが崩れていくことになるんじゃないんでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) それは今日の答弁でも何度か申し上げましたが、先ほど山田委員の御質問にもそういうようなお答えをしたような記憶がございますが、それを排除する理由はどこにもないということでございます。しかしながら、そこに当たって、それを認めるに当たって、権利取得を認めるに当たって、その地域における家族営農でありますとかそういうものとの調和、両立、併存、そういうものにはきちんと配意をしていかねばならないし、運用ベースにおいてもそうなのであります。
 ですから、本当に大企業がわあっと農地を広く取得して、家族農業、家族経営というものが淘汰をされると、そういうような姿を私どもは望んでおるわけでもございません。そこにおいて共存ができますように、この法の運用というものに当たっては、それは万全を期してまいりたいと思いますし、地域におきましてもよく周知を徹底してまいりたいと存じます。

○紙智子君 大臣は、一般企業と農業生産法人と優先順位とかは付けないのかということがやり取りされた際に、優先順位が云々ということではなくて、両方一緒に進めていかなければならぬものというふうに言われているわけです。そうなると、結局、農地を効率よく利用するならだれでもいいということになるんじゃないのかと。そうなると、これまで一般の企業に対しては農地取得はさせないことにしてきた、その意味がどういうことになるのかというふうになるわけですね。
 利潤追求が第一の農外企業に無制限に開放するということになると、これは農業の活性化どころか、農地利用や農村の社会に重大な混乱と障害を持ち込むおそれがあったからこそいろいろな規制を行ってきたんじゃないのかと、これまで。農業の振興のためということではなくて、農業と農地を対象にしたビジネス機会を拡大して農地の大企業の支配につながる心配があったからこれまで参入に対しては慎重に対応をしてきたんじゃないのかということを考えますと、もうその必要はなくなったというふうにお考えなのか。

○国務大臣(石破茂君) いや、必要がなくなったなぞとは申しておりません。先ほど申し上げましたように、その地域において家族経営を主体とした営農が営まれるということを私どもは考えておるわけでございますし、私どもが考えております計画もそうなのでございます。
 ただ、とにもかくにも農地が利用されていない、いろんな理由がありますが、所有はあるけれども利用されていないという状況をどうやって変えていくかというときに多様な担い手というものは考えてしかるべきだろうと。そして、貸しやすく、借りやすくするように制度は整えていくべきだろうと。多様な担い手ということを考えるということと大企業が小規模な家族経営を駆逐するということは、それは決してイコールではない。そうならないように制度の運用には配意をしていくということを申し上げているわけでございます。

○紙智子君 私は、ここのところを、この切れ目をあいまいにしていくと、結局、農地法そのものの存在意義を失わせていくことになるんじゃないかというふうに指摘をしておきたいと思います。
 次に、農業生産法人の要件の見直しなんですけれども、二条第三項二号関係についてです。
 総株主の議決権等の二分の一未満まで認めるというふうにしていますけれども、これは、現在、関連業者の議決権を一事業者当たり十分の一以下という制限を廃止するということとともに、農業生産法人と連携して事業を実施する一定の事業者、政令で定める者として想定しているのが農商工連携で連携相手となるスーパーだとか流通企業、加工メーカーですね、こういうところが対象ですけれども、それらの企業が議決権の二分の一未満まで持つことができると。これまでは、要件を議決権の十分の一以下にしてきたのは農外企業の支配を防ぐためだったわけですけれども、今回の要件緩和によって農外企業の支配を可能にするんじゃないんでしょうか、いかがですか。

○国務大臣(石破茂君) 農業生産法人が安定的に経営をしていくためには、関連事業者との連携、これが不可欠でございます。
 近年、農業生産法人が非常に経営が好調になっているというところを見ますと、必ずそこには関連事業者との連携、いわゆる農商工連携というのか、他党さんのお言葉を借りれば、第六次産業化というのか、そういうことが背景にございます。
 そういうこともございまして、農業生産法人への出資につきまして、食品の加工や販売などの関連事業者の一事業者当たりの議決権の上限につきまして、現行、総議決権の十分の一以下との制限は撤廃すると。農商工連携事業者など、農業経営の発展に協力してくださる一定の関連事業者さんにつきましては、その議決権の合計の上限を、原則、総議決権の四分の一であるところを例外的に総議決権の二分の一未満まで緩和するということにしておるわけでございます。
 ただし、このような場合でございましても、農業関係者の議決権は常に総議決権の二分の一以上ということになっておるわけでございますし、経営の決定権は農業関係者が保持するということになっておるわけでございますので、関連事業者が経営支配すると、そういうような影響力を持つことにならないように措置をしておるのは御案内のとおりでございます。

○紙智子君 そうならないようにと言うんですけれども、やっぱり農業生産法人というのは農地取得権を持っているわけで、その中の半分以上という、二分の一ですか、ということはやっぱりやりやすくなっていくんじゃないのかというふうに思います。
 それから、ちょっとだんだん詰まってきているので次、行きますけれども、標準小作料の制度廃止、それと長期賃貸借の創設について、二十年から五十年ということですけれども、これ、ちょっと併せてお聞きします。
 これまで農地の賃借料を決める際に、七三%の経営体が標準小作料を参考にして、標準小作料が必要というふうに考える経営体も七六%と、広く活用されてきたわけです。このやり方が、ただ単に現場で自主的に話し合って決める、そういう良さがあるというだけじゃなくて、やっぱり耕作できる水準を定めると、こういう意味があったわけですよ。ところが、これが今回廃止されるということになると、この考え方に立った在り方を壊すことになるわけです。これについてどう考えるのかということが一つです。
 それからもう一つは、農地の長期賃貸借の創設についてですけれども、五十年に延ばすと。五十年に延ばすとどうして有効利用できるのかということですね。参考人の質疑の際にも出ていたんですけれども、借りる側のワタミさんですね、武内さんも、五十年なんというのは必要ないというふうにおっしゃっていたわけですよ。担い手に対するアンケートをやると、二十年以上を望む人というのは五%にとどまっているわけですよ。だから、貸し出す側も借りる側も当事者が長過ぎると言っているのに、どうしてこういうふうにするのかなと、だれが要求したのかなと思うんですけれども、この二点についてお答え願います。

○国務大臣(石破茂君) 標準小作料の意義ということを繰り返すことはいたしません。現状に合わなくなっているということでございます。
 かつてのような大規模地主さんがいて、そういう下で少数の地主から多数の零細小作農の方々が高額の小作料を押し付けられるというようなことがあったので、そうならないように標準小作料というものをつくってまいりました。今そういう状況でもございませんし、制度上の減額勧告、この例もほとんどございません。最近五年間では、平成十五年、平成十六年に全国で二件ずつ勧告が、十五年に二件、十六年に二件とあっただけでございます。実態に合わなくなっているというのは基本的な認識です。
 しかしながら、目安となるものは必要でございますので、地域ごとにそういう農地の種類別、あるいは圃場整備事業の実施状況などなど細かく区分をいたしまして、実際に実勢の賃借料がどういうことになっているか、そのことがすぐに分かるような仕組みと、こういうことを新たに設けまして、実態により即した取引というものが行えるようにしたいというふうに考えているものでございます。
 五十年というお話は何だということでございますが、別に五十年でなきゃいかぬということをだれも申し上げていないのでありまして、五十年以内の賃借権設定も可能にするということを申し上げているだけのものでございます。それは多様な賃借というものがあるわけでございまして、果樹の場合にはそういうふうに延ばした方がいい場合もあるのではないかという御指摘があることも事実でございます。
 これが五十年になろうがどうしようが、別にそれが、賃借権が所有権に化けるものではございません。どんなに年数が長くなりましても、所有権の本質であります処分権能が与えられるというものではないわけでございます。したがいまして、今回の存続期間の見直し、賃借権の存続期間の見直しが所有権の取得の道を開くというようなことには全くならないことを申し上げておきます。

○紙智子君 今お答えになった中で今の現実に合わないからだという話しされたんですけど、しかし、農業委員会のお話聞きますと、この小作料は一定の目安を示すということで不当に高くなることを抑制する働きがあったと、それが廃止されたら抑制が利かなくなって高い方に流れていくんじゃないかという心配をされているわけですよ。市町村が一定の水準を定めるとか市町村が適正であるというふうにしても、相対で貸し手と借り手が決めることができると、実勢反映してというんですけれども、それがじゃ適正価格なのかどうなのかと、耕作できる水準ということで適正なのかどうかということは何をもって判断するのかということを思うわけですね。
 そしてもう一つ、賃借権の五十年ですけれども、別にその全部をということじゃないんだという話なんですけど、それであれば何も延ばさなくても、果樹とかかんきつ類についてのみそういうことはやったとしても、ほかのものについては別に変える必要がないんじゃないのかということを思うわけですけれども、いかがですか。

○国務大臣(石破茂君) そういうお考えもあるかなとしか申し上げようがないのでございますが、実態に合う合わないというのは、やはり実勢価格というのは、昔の非常に強い立場にいる地主というのがあって、弱い立場にいる小作人の方々というのがあって、そこで不当に高いお金が押し付けられるというようなことがかつてはあったでしょう。今はそういうことではなくて、貸しましょう、借りましょうという側が実際にお互いに折り合うような、それが実勢価格になっているものだと思います。それがどこがどうなっているかということがきちんと客観的に分かる、リアルタイムに分かる、そういう仕組みを整えていくということがより合理的な貸し借り関係の創設につながるものだというふうに私は思っているところでございます。
 それから、それじゃ果樹は五十年にして、それ以外は今のままでいいではないかと言われれば、それはそういう考え方もあるのかもしれません。
 先ほどの繰り返しになりますが、五十年以内の賃借権設定を可能とするということでございまして、いろいろなタイプの賃借権というものがあるだろうと、それを可能にしておるものでございまして、委員のようなやり方も別に私は否定もいたしませんが、私の申し上げておるような今回の政府の提案でも何らかの実害があるかといえばそういうことはないだろうと。むしろ、多様な賃借というものが可能になり、そしてまた、それが決して処分権の付与に及ぶものではないということで、何ら差し支えはないと考えております。

○紙智子君 私は、この二つの問題というのは、全然現場からは要求は上がっていないと、求めていないのにどうしてこういうことを決めるのかなという、非常に不思議に思っていまして、結局はこれは財界からの要求なのかなというふうにも思うわけです。
 最後になりますけれども、農業委員会の役割について、これはこの委員会で何度も議論されてきていますけれども、今回の改正案で農業委員会の役割が非常に重いというふうになったわけです。一般の法人や個人の農業参入に対して事前事後のチェックを行わなきゃいけないと。どういう場合に許可し、どういう場合に不許可とするのか、その判断基準と運用方針を明確にしておかなければもうこれは混乱すると。
 それで、参考人質疑の中でも具体的に基準を示してほしいという意見も述べられたわけですけれども、非常にそういう意味では法改正で重大な役割強化が必要となっている中で、いろいろこの間答弁にあって、公平公正にとか適正にとか客観的にということはいろいろ話されているんですけれども、中身についてはこれからなわけですよね。ですから、具体的な予算上の措置も含めて、体制強化という場合にどうするのかということなどを含めてしっかりと明らかにしていただきたいということを最後に一言答弁を求めて、質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) その委員の御指摘は、この法律を作りますときに省内でも大変議論があったところでございます。これは、与党からも、野党の皆様方からも、農業委員会というものに対してそれがきちんと運営ができるようにしていかねばならないということ、そして、指針というもの、ガイドラインということをちゃんと示せというような御指摘もいただいておるところでございます。
 農業委員会がこの法改正において大きな役割を担いますので、この参議院におきます御議論というものを踏まえて、私ども、法律が成立いたしました暁にはきちんとした対応をしてまいりたいと、このように考えております。

○紙智子君 終わります。

○委員長(平野達男君) 以上で質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、農地法等一部改正案に反対の立場から討論を行います。
 反対の第一の理由は、大企業を含む国内外の企業に農地の利用権を全面的に認めたことです。このことにより、様々な困難を日本農業と農村にもたらすことは必至です。
 優良農地に進出した企業は、資本の論理の下で容易に撤退することはこれまでの経験でも明らかです。企業の撤退で優良農地に広大な耕作放棄地が生まれることになるでしょう。様々な事後チェックによっても、一般企業に農地をゆだねる、こうした危険性はなくなりません。
 また、企業を担い手として積極的に位置付ける政府の方針の下では、これまで家族経営を中心とした地域営農が崩され、農村に新たな混乱を生むことになるでしょう。さらに、企業に広範囲に農地利用権を認めれば、将来的に財界が望む企業の農地所有権を認める道につながらざるを得ません。
 それに加え、個人の農地利用権を何の制約も付けずに認めたことは、個人が産廃処理などの目的を隠して農地利用権を取得し、取得後、利用権設定の農地に産廃などを投棄する危険性を大きくするもので、極めて問題であります。
 反対の第二の理由は、農業生産法人への農商工連携企業の出資割合を五〇%未満まで認めたことです。これにより、農地所有権を持つ農業生産法人に対する農外企業の支配を一層可能にすることになります。農地利用権を使った優良農地に対する企業進出とともに、日本農業、農村に対する企業支配が一層進行することになるのは必至で、日本農業の基盤となってきた、そして今後の日本農業の発展の基礎となるべき家族経営を圧迫し、弱体化することになりかねません。
 反対の第三の理由は、本改正案が標準小作料を廃止するとともに、事実上の農地所有権とも言える五十年にも及ぶ農地の長期賃借権を創設した点です。
 標準小作料は、全国の農村で小作料の基準として使われ、その存続が強く望まれてきました。その廃止は、農地の賃借関係を不安定化させ、資本力のある企業による賃借料のつり上げを使った農地集積を許すことになり、農村に混乱を招きかねません。また、五十年に及ぶ長期賃借権の創設は、企業による農地利用権を長期に固定させることを認めることになり、事実上、企業による農地所有を既成事実化させることにもなるもので、強く反対するものです。
 政府は、耕作放棄地対策だとして農地法の一部改正を持ち出しましたが、それが全く根拠のないものであることは、大臣自らが認めたことからも明らかです。耕作放棄地を含め日本農業に困難をもたらしたものは、自民党農政による農産物価格引下げ政策で、農業者の営農意欲を奪ったからにほかなりません。今最も必要なことは、このような農地法等の一部改正ではなく、米を始めとする農産物価格保証制度を抜本的に拡充、充実させ、日本農業を再生させることであることを強く指摘して、討論を終わります。