<第171回国会 2009年6月10日 少子高齢化・共生社会に関する調査会 第06号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 法務副大臣と、それから厚労の副大臣にお聞きしたいと思います。
 それで、外国人の研修、そして技能実習生の制度についてお聞きします。
 それで、これは元々途上国への技術移転ということが目的なんですけれども、実際にはそれを隠れみのにして低賃金の単純労働力ということで利用してきていると。パスポートを取り上げたり、あるいは強制の貯蓄をやったり、長時間残業を強いながら残業代も払わないとか、こういう人権を無視した形での問題が大きな問題になったわけですけれども、それが昨年の秋以降、原則三年間の期間途中で解雇、帰国させられる例が急増していると。
 それで、法務省の調べで、昨年の十月から今年の三月の六か月間で、研修生、実習生合わせて二千二百人が途中にして帰るということになっているわけですけれども、特に三月は一か月だけでも七百三十一人に上っているんですね。
 派遣切りと同様で切りやすいところから切るという形でやられているわけですけれども、非正規切りということで国内でも大問題になりましたけれども、第二の非正規切りというふうにも言えるわけですけれども、この研修生、実習生は、建前としては人づくりのための国際協力、言わば国策で日本に来てもらっているということなわけで、彼らは多額の保証金などの費用を払って来日をしているけれども、人手不足を補う、実態としてはですね、低賃金労働力ということで働いてきたと。その研修生、実習生が言わば雇用の調整弁という形で泣き寝入りを強いられるということがやっぱりあってはならないんだと思うんです。
 この点について、法務、厚生両副大臣に、その認識とそれから対策ということで簡潔にお願いしたいと思います。

○副大臣(佐藤剛男君) ただいまの御質問に対応いたしまして法律の改正等も国会に出しているわけでございますが、またいろんな運営等あるいは行政の実態において、特に研修・技能実習制度における不正行為ですね、不正行為の実態について実態をまず調査して、それ調査やっているんです。かなり、数字申し上げることできますが、これをいかに減少させて、そして関係機関等の協力を得てこの制度の適正化に持っていかなければいけないという問題意識でございまして、これ全く同じでございます、先生と。
 ですから、これの問題、具体的に言いますと、受入れ形態別で言いますと、団体監理型の受入れ形態、これが四百四十五機関ある、それから企業単独型の受入れ機関が七機関ございますが、これ詳細申し上げると時間が掛かりますから申し上げませんけれども、名板貸しがあったりいろいろありまして、これ、一つばんそうこうを張るとまた次が出てきたり、いろいろあるんです。
 それで、これを実態調査を積極的に関係機関との間で協力をやりながら実施しまして、そして強化しまして、制度の適正化、言葉で言いますと制度の適正化でございます。それをやっていかないことにはこれはしようがないということでございまして、先生の方向に進んで今一生懸命やっています。
 いいですか、そんなことで。

○紙智子君 はい。
 じゃ、厚労副大臣。

○副大臣(渡辺孝男君) 委員から御指摘ありましたとおり、昨年十月から本年三月までに約二千二百人が中途で帰国しているという状況で、本来、外国人研修・技能実習制度は、研修と技術実習合わせて三年間、我が国に滞在して実践的な技能を習得していただく制度でありますので、このような状況は制度の趣旨に反して好ましくないと厚生労働省としては考えております。
 その対応でありますけれども、やむを得ず研修、技能実習を継続することができないようなケースにつきましては、国際研修協力機構を通じまして新たな受入先の開拓、情報提供等を実施し、引き続き我が国において実習が継続できるよう支援をしているところでもあります。またあわせて、受入れ企業及び受入れ団体に対しまして新たな研修生の受入れや途中帰国について慎重な対応の要請をしているということと、国際研修協力機構における緊急の相談窓口を設置しまして、外国人研修生、技能実習生に対する母国語での相談の機能を拡充をしているところであります。
 こういうことを通じまして本来の制度の目的が達せられるよう努力をしてまいりたいと思っております。

○紙智子君 今お話しになった、法務省が指針を出されていて、それで厚労省も都道府県にもその通知を出して、今おっしゃられたような、やむを得ない事柄であるのかどうなのかということも含めてきちっとしたことをやるように出してはいるんですけれども、今その法改正ということも分かっているんですけれども、これからのこととしてということではなくて、今現実に起こっているそのことについて、やっぱりどうかということをしっかりやっていかなきゃいけないんだろうと思うんですよ。
 それで、中途帰国を余儀なくされた二千二百人余りのその研修生、実習生が本当にやむを得ない事由だったのかということや、実習生の場合の雇用契約を結んでいるわけですけれども、解雇権の濫用がなかったのかという問題や、研修生、実習生の同意ですね、これを受けなきゃいけないんですけれども、新たな受入先の確保の努力がどれだけなされているのかとか。法務省は指針出してきて、それは大事なんだけれども、それでもって要はチェックされているかどうかというところが大事なんだというふうに思うんですけれども、その辺のところはどうでしょうか。法務省に。

○副大臣(佐藤剛男君) そういうことだと思いますよ。
 細かいことを答弁するの。

○紙智子君 ちゃんとチェックされているかどうか。

○政府参考人(高宅茂君) 御指摘の本年三月の途中帰国の七百三十一名、内訳申し上げますと、倒産が三十八件ございます、そのほか事業の縮小であるとか経営の悪化であるとか、これが残りの六百九十三件でございます。倒産にしましても、いずれにしてもやっぱり受入れという形態で日本の企業の方で受け入れていただいたわけですので、やはりそこでほうり出すということではなくて、当方でできる限り新しい研修を継続できるような形に持っていくように指導はしているところでございます。
 ただ、統計的な数字は残念ながらちょっと持ち合わせておりませんので、失礼します。

○紙智子君 今三十七社ですか、実際にはこれ、二百八十一人が実際に移籍できるようにと申し込んでいるわけですけど、そのうち五十人ぐらいしか移籍できていないというのを聞いているんですよね。だから、二千二百人の人はもう既に帰ってしまっているということで、対応できているのはわずかしかないということでもあると思うんですよ。
 ですから、やっぱりそこのところはちゃんと受入先の機関任せではなくて、指針や指導をちゃんと担保することをやっていくということからも、研修生、実習生への具体的な支援の仕組みをつくることが必要だというふうに思いますので、是非そこのところをよろしくやっていただきたいと思います。
 終わります。

○紙智子君 二回目になりますけれども、ちょっと先ほど言い切れなかったことも含めて。
 先ほど神本委員が質問されて、そこでやり取りした中で、帰国に対する支援ということで、途中でやめざるを得なくなって帰られる方の帰国の支援ということで、公的な資金でという話だったわけですけれども、その際に再入国しないという約束というか、しなければ出してあげるということだというふうにちょっと受け取っているんですけれども、何となくこう釈然としないなと思いながら聞いていました。ちょっとその理解が足りないのかもしれないですけれども。
 それで、研修生たちは、母国の言わば送り出し機関の人材募集ということの中で集められてきたと思うんですね。それで、その機関との間で契約を結んで、それでその渡航の費用だとか事前の研修費だとか手数料とか多額の準備費用を負担しているわけですよね。送り出し機関に保証金も支払っていると。中には、土地や家の権利書を預けなきゃならないということも多いというふうに聞くわけですけれども。
 それが研修・実習期間の途中でトラブルがあったり、あるいは途中帰国した場合に、本当は働いて幾分か入った分で返そうと思っていると思うんですけれども、それがやっぱりできなくなってしまうと。それで、保証金の金額が日本円にすると百万から百数十万だということなんですよね。そうすると母国の年収の数倍に当たると。これが結局途中になってしまうと、みんな借金になってしまうわけですよね。
 そうすると、いろんな技術を覚えようとかということでせっかく最初来るわけだけれども、受け入れた側の都合でもって途中でそれがならなくなって、帰ったはいいけれども借金だけがもう残るということになったら、これはちょっと余りにもひどいんじゃないかなというふうに思うわけです。
 そういう場合に、やっぱりそういう保証金というのがそもそもどうなのかなというふうに思いますし、それは送り出した国との関係なわけですから、それも是非実態を調べて、それでやっぱりその辺のところも話し合っていくというか、そういう対応策を取る必要があるんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、これについていかがでしょうか。

○副大臣(佐藤剛男君) ただいまの御質問は、帰国支援事業との関連で、いったん日本から出ましたと、それで今度入るときにどうするのかという、そういう側面から、法務省サイドからお答えしたいと思っております。あとは関連の厚生労働省なりですね。
 帰国支援事業で帰国した外国人は、当分の間、再入国が認められないということとされているんです。これで、じゃ、当分の間というのは具体的にどの程度の期間であるのかという問題があるわけでございますけれども、この問題に対しての答弁でございますが、日系人離職者に対する帰国支援事業というのは、厳しい再就職環境の下、我が国での再就職を断念しまして、そして帰国することを決意した者に対して帰国支援金、これを支給するというものでありまして、帰国支援を受けて帰国した者については、当分の間、再度同様の身分での入国は認められないということになっております。
 じゃ、さらば、この当分の間というのはどの程度の期間なのかと、こういう問題なんですが、これについては厚生労働省等関係省庁との協議の結果、本事業開始から原則として三年をめどとしつつ、今後の経済、日本の経済、世界の経済、そういう今後の経済・雇用情勢の動向等を考慮しながら見直しを行うということとされております。
 以上が法務省サイドからの答弁でございます。
 以上です。

○政府参考人(杉浦信平君) 先ほど神本委員が御質問されて、今また法務副大臣が御答弁された件は、日系人等の、ブラジル人等の日本におられる方々が母国に帰られる場合の帰国支援の話でございまして、紙委員のお話は研修・技能実習生の帰国に関するもので、事業としては異なるものでございます。
 それで、研修生、技能実習生につきましては、先ほど委員の御指摘もありましたように、できるだけ本来のといいますか、元の企業で継続して雇用していただくという努力をJITCOを始め関係機関の方でやっていただきますけれども、倒産してしまった場合あるいはどうしてもその事業が継続できない等の理由によりましてその企業で働けないといった場合に、本人の希望も含めてやむを得ず帰国するといった場合に、帰国の旅費を立替払をするという制度を今度補正予算で付けようと思っております。
 こちらの制度につきましては、元々が技能実習制度といいますのは、一回原則三年間といいますか、一年プラス二年間で技能を身に付けていただいて本国に帰っていただいて、そこで生かしていただくという制度の趣旨でございますので、再入国ということは当初から、少なくとも現段階においては考えていないものでございますので、私どもとしましては、その研修生、技能実習生につきましては、そういったやむを得ない場合についての帰国旅費の立替払という事業で対応したいというふうに考えております。

○紙智子君 分かりました。その旅費については分かりましたけれども、実際には物すごくお金を掛けて、途中でこういう帰らなきゃいけないという場合に借金になっちゃうわけじゃないですか、保証金の問題とか。これについてはどうですか。厚労省の方。

○政府参考人(杉浦信平君) 現地といいますか元々の国で、出国するに当たりまして保証金等のお金を、多額のお金を払っておられるという話はお聞きするところでございますけれども、研修生、技能実習制度として来る場合といいますか、我が国でその制度の運営として考えた場合には、日本に入ってきてから、そこでしっかり雇用関係の下で働きつつ技能を身に付けていただいて帰っていただくという制度でございますので、その前提のところまでを考えた制度というふうにはなっていないということを御理解いただきたいと思います。

○紙智子君 もう、ちょっと時間終わりだというんですけれども、いいですか、今のに対して。
 法務省、じゃ先に。

○副大臣(佐藤剛男君) ただいま委員から保証の問題が出ましたから、この関連で法務省サイドから答弁をさせていただきます。
 送り出し機関が不当に保証金等を徴収したり、保証金の一部、これを不当に返還しないような場合というのはあるわけでございます。これは、適正な研修生、技能実習生の受入れを阻害すると、受入れ阻害というものと考えております。
 それで、このような観点から、法務省としましては、送り出し国政府との領事当局間協議の場等がありますが、そういう場を通じまして機会あるごとに、送り出し国政府に送り出し機関の適正化について申入れを行っています。
 また、現行制度においても、入国管理局における審査の過程で不当な行為を行う送り出し機関であることが判明した場合は、その送り出し機関からの受入れを認めないこととする、認めない、そういう対応を行っております。
 さらに今回、今、法改正をあれしていますが、法改正に合わせまして関係省令の改正等を、法律案が通った暁でございますが、の改定等によりまして、入国審査の際に送り出し機関と本人との間の契約書の提出を求め、当該契約に不適正な取決めがないかを確認するなどして不当な行為を、送り出し機関から受入れをより確実に阻止することを予定しております。
 今後とも、不当な行為を送り出し機関に対して厳格に対処するように、研修・技能実習制度の適正化に努めてまいりたいと思っています。これは、法律改正を今お願いしていますが、それを契機にしましてやっておるわけです。
 それで、保証金、違約金の全面禁止につきましては、送り出し国によっては送り出し機関が保証金や違約金を徴収することが法令上認められている場合もあるんでありまして、現時点においては一律に禁止することとはしてはおりませんけれども、今後、外務省等の関係機関と連携しながら、送り出し機関が徴収している金銭の実態について十分に把握した上で、必要な措置につき検討を続けてまいりたいと考えております。ですから、同じ立場に立って本件の問題処理をしていくということであります。
 以上でございます。

○紙智子君 ありがとうございました。

○副大臣(佐藤剛男君) はい、しっかりやっていきます。
 追加して申し上げますと、そのとおりでございまして、今いろいろ調査やっています。そして不正行為の認定を受けた類型別でいいますと、いろいろな研修生の所定外作業をやっていたり、それから労働関係法規違反やったり、それから名板貸し、名義貸しですね、それをやっていたり、この三類型だけで約四分の三占めるとか、いろんな形態やっていまして、そういう実態調査をしっかりとやって、そしてそれに対して適正なる、ほかの機関との間の連携をやりながら適正化に努めるということに尽きると思いますので、一生懸命やりますから。
 以上です。