<第171回国会 2009年4月27日 決算委員会 第06号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 都市計画法改正問題について、特に都市農業にかかわる観点からお聞きしたいと思います。
 現在、国土交通省として都市計画法の抜本的見直し作業が進められているというふうに聞いておりますけれども、最初に、その経緯と現状についてまず明らかにしていただきたいと思います。

○政府参考人(加藤利男君) お答えを申し上げます。
 御指摘のように、私どもでは、今、都市計画制度の全般的な見直し作業に取りかかっておるところでございます。これの考え方でございますが、現在の都市計画法は昭和四十三年に制定されたものでございまして、昭和四十三年当時の都市計画をめぐる環境というのは大きく様変わりをしてきております。具体的に申し上げますと、我が国がこれまで経験したことのない人口減少でありますとか高齢化社会の到来、そのほかにも地球環境問題の深刻化ですとか市町村合併による行政の広域化といったようなことがございまして、私どもといたしましては、都市政策自体の大きな方向性について原点に立ち返って見直すこととしておるところでございます。それで、現在、社会資本整備審議会の小委員会において幅広く御議論をいただいております。
 私ども、それをビジョンと言っておりますが、このビジョンを取りまとめた上で、これは今年の夏前ぐらいを目途にビジョンを取りまとめたいということで作業を進めておりますが、それを受けた形で、具体の都市計画制度の在り方について、その制度設計を含めて、新たな都市政策の方向性に沿って、都市計画制度が十分にその機能が発揮できるように具体の検討を進めていきたいと、こういうふうに考えておるところでございます。

○紙智子君 要するに、現行の都市計画法が高度経済成長期に作られているもので、その前提が都市人口が急増すると、都市への機能の集中ということで、それにこたえるものだったわけですけれども、それがこれからでいうと都市の人口減少、それから高齢化が進むと、そういう現行の都市計画法が想定していなかった事態が進行するということが明確になっている中でこの都市計画法の抜本的見直しが必要になったという、そういう理解で大臣、よろしいでしょうか。

○国務大臣(金子一義君) 御指摘いただきましたように、今までは市街化区域内の保全すべき農地について、都市計画制度におきましては、生産緑地制度を活用して保全を図ってきておりました。地域の実情に応じて、その保全、活用が図られるよう地方公共団体には周知してきたところであります。
 ただ、一方で、緑のオープンスペースというのは都市にとって必要不可欠でありますし、また都市農地というのも、都市の緑地的空間、防災的な空間、また農業体験、レクリエーションの場としても都市における良好な生活環境の確保という面からも大きな役割を果たしていると思っております。(発言する者あり)どうも失礼しました。

○紙智子君 今、途中までお答えになりましたけれども、現行の都市計画法は、この高度経済成長の中で都市に集中する人と機能に対して、市街化区域という線引きを持ち込んで、その市街化区域内に取り込まれた農地を宅地や商業施設や、あるいは様々な都市機能に必要な用地に転用するということで都市需要にこたえてきたわけですけれども、逆に今人口が減少すると、それで高齢化が進むという事態では、宅地が新たに必要になるというわけじゃないし、逆に住宅地が縮小していくと、あるいは商業施設も縮小するという事態になるわけで、市街化区域内の農地の位置付けというのは大きく変わらざるを得ないわけですよね。
 それで、都市農業のサイドから見ると、これ、市街化区域内の農地は農地として保全をして農業振興してほしいということになりますし、都市農業の多面的機能ということから見ますと、これは都市住民も、緑の保全やいやしとしての機能ですとか、あるいは災害とか防災の対策ですとか、何よりも新鮮な農産物が得られるということからもこの都市農業を支持しているわけで、都市計画法の抜本的な見直しでこの都市農業を都市計画法に積極的に位置付けるべきだというふうに思うわけですけど、これで大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

○国務大臣(金子一義君) 都市農業、新鮮な野菜が食べれるという意味で、私、個人的には、これ是非、大事なことだと思っております。
 ただ、こういう市街地における農業というものを、あるいは農地というものをどう考えるのか、農業政策という意味で、あるいは農地保全という意味でどう考えるか。これ、税制も関係いたしますし、そういう意味では、私のところだけでやっちゃうわけにいきませんものですから、やはり在り方について、農水省を始めとして関係の省庁と相談していきたい。
 そういう中で、都市計画制度にどう位置付けられるのか、先ほど局長が答弁しましたように、今年の夏めどに審議会の検討結果も出てくると思いますので、そういうのを踏まえて、緑のオープンスペースは、私はもう、元に戻りますけれども、何とか確保できるような方向というのを考えたいと思っています。

○紙智子君 今私が申し上げました意見というのは、同じような意見は、現在、都市計画法の見直し作業を進めております都市政策の基本的課題と方向という検討小委員会でも出されていることですよね。
 この小委員会の第八回小委員会、これ三月十九日に開催されたものですけれども、ここに提出されている都市政策の基本的課題と方向検討小委員会報告骨子案、これを見ますと、「都市政策の課題」というところでは、「農地の転用・開発と都市からみた農のニーズの高まり」として都市農業問題を次のように位置付けているわけです。
 「都市郊外部等では、依然として農地転用は多く、農地転用後は資材置き場や駐車場等が雑然と拡がっている例が多く見られる。ここでは、都市行政と農地行政の双方の土地利用コントロールの隙間に陥っている農地が、経済合理性の観点から容易に転用され、その結果、無秩序な市街化、営農条件の悪化など双方にとって望ましくない状況の悪化を惹起。」、「一方、食料自給率向上や食の安全の観点から農業の重要性が再認識されているほか、農地について、都市住民は、農業体験の場や緑地としての機能を積極的に評価するなど、身近な自然を求めるニーズが顕在化。」、「後継者不足等から耕作放棄地が増えているものの、都市内にも農地は多く存在。」と。都市政策としても、農地に対する土地利用コントロールや都市の機能としての農地の位置付けについて検討する必要というふうに述べていますよね。
 それからさらに、「政策転換の視点」というところでは次のように述べているわけです。
 「農地から宅地へと転換していた都市の膨張・拡大から宅地需要の減少へという時代の変化と農業の再評価、都市住民の農への関心の高まりなどの観点から農業政策との関係は重要。」だと。これからの都市農政を考える上では、都市の生活の一翼を担っているものと言える農山漁村との共存を考慮に入れることが必要だと。
 さらに、もう一つ言っているんですけれども、「農地など土地・地域の性格に相応しい土地利用」として次のように述べているわけですね。
 「都市の非成長トレンドの前提において、農地を含めた都市環境をコントロールする手法を検討。」と。都市近郊地及び都市市内の農地について、「農業生産機能を中心に、自然とのふれあい、憩いの場、防災機能等の多面的機能の側面から、都市サイドとしても、積極的に位置づけ。」というふうに言っているわけです。
 そこで、大臣に再度お聞きするわけですけれども、都市計画法にこの都市農業を積極的に位置付けると、これは大臣、先ほどもちょっと自分自身としてもということを言われたんですけれども、大臣としてそのことの位置付けというか、重要性についてどのようにお考えか、おっしゃっていただきたいと思います。

○政府参考人(加藤利男君) お答え申し上げます。
 先生の御指摘のとおり、私ども今検討していますビジョンの中では、都市農地をめぐる問題点、あるいは都市農地を積極的に都市サイドとしても評価をして、これをしっかり保全していくことが必要ではないかというような中間的な御意見の取りまとめをちょうだいしております。
 実は、この都市農地をどう守っていくかということについてはこれまでも長い議論がございまして、元々、これも先生御案内のとおりでございますが、実は市街化区域内と調整区域という線引きをしてございますが、特に市街化区域内の農地について申し上げたいと思います。
 市街化区域内というのは、これも御案内のとおりでございますが、おおむね十年以内に市街化をちゃんと、きちんとした市街地環境を整備しようということで性格付けられておるところでございますが、市街化区域内はそういたしますと、人口が都市部に流入してきていた時代は非常に開発圧力が強うございました。開発圧力が強い中で農地をいかに守っていくかということで工夫されたのが生産緑地制度でございます。これは昭和四十九年に最初に導入されました。これを大きく平成三年に改正をさせていただきました。
 そういう中で、都市サイドとして都市農地をどう評価するかという議論がその当時からずっとなされてきたわけでございますが、都市計画として都市農地をどう見るかということになりますと、これも先生もう御案内のとおりだと思いますが、元々これは、都市農地を都市農地として守っていただくためには生産緑地を使いますが、そのときの大きなねらいは、緑の機能を積極的に評価すべきである、こういう観点から制度が構成されております。
 都市計画的に緑が評価できるという以上はある程度の規模がないといけないということで、現行五百平米の規模を定めておりますが、以前はもっと大きかったわけでございます。平成三年のときにもいろんな議論がございましたが、できるだけ残された貴重な緑を守ろうということでこの面積を大きく下げました。ぎりぎりのところまで下げて、しかも、当時もそうでございましたが、できるだけ営農を継続していただけるような環境を生産緑地地区制度に盛り込もうということで制度改正を行ったわけでございます。
 今申し上げましたように、したがいまして、都市計画としては緑とかあるいは公共施設の用地になり得るものであるといった要件が一番先に来て、それを担保するためにいろんな要件が定められておるわけでございます。また、手続も定められているわけでございますが、そうした都市計画上の理屈というものを、再度、先生御指摘いただきましたが、都市農業という目からは都市計画法では残念ながら位置付けがなされておりません。
 したがいまして、都市農業という観点から都市農地を正面から受け止めたときに、果たして都市計画制度でどううまく整理ができるのか、あるいは整理ができなくて外に飛び出すものか。これは非常な議論をしてみませんと制度設計が固まりませんけれども、いずれにいたしましても、私どもとしては、昭和四十三年以来の右肩上がりの都市を取り巻く環境から随分変わってきたので、その中で都市農地の扱いについても随分変わってきたと、そういう面から制度を総点検したいという気持ちで現在いろいろ検討をしているところでございます。

○紙智子君 大臣に伺いたいんですけれども、今いろいろ議論の途中ということを話されているんですけれども、三月二十六日の日本都市計画学会で、国土交通省の大臣官房審議官の石井喜三郎氏の「都市計画制度の抜本的見直しに向けて」という講演が行われていますよね。その資料を見せていただいたんですが、これを見ても都市計画制度見直しの論点として五点挙げている。その中の一つが農地も含めた都市環境のコントロールなわけです。そして、都市農地に対する市民ニーズは高く、農業体験の場や緑地としての機能を積極的に評価としているわけですよね。要するに、国土交通省の都市計画サイドの幹部も、また検討小委員会も、都市計画に積極的に都市農業、都市農地を位置付けようということでは一致しているんじゃないかと思うわけです。
 ですから、重ねて大臣にお聞きしたいんですが、大臣としてもその方向でやはり都市計画法の抜本的改正のイニシアチブを発揮していただきたいと思うわけですけれども、いかがですか。

○国務大臣(金子一義君) 先ほど申し上げましたとおり、都市の農地というのは都市の緑地的空間あるいは防災的な空間として大事な役割を果たしていると認識しております。したがいまして、ただ一方で、農地、農業政策としてどうするかということになりますと、これは農林省と協議、関係省庁と協議しなければいけない点でありますが、都市計画という観点から大事だという認識を持っておりまして、したがいまして、新しい今後の社会経済の状況変化というのをきちっと踏まえました都市政策の方向、それに沿ってきちっと機能が発揮できるように現行の制度、これは総点検して幅広く検討をしたいと思っております。
 社会資本整備の審議会、御議論いただいている今後の都市政策の方向性の取りまとめというのが、今こういう課題でやっていただいていますけれども、これを踏まえた上で具体の都市計画制度の在り方に関する議論を進めていきたいと思っております。

○紙智子君 是非大臣としてのイニシアチブを発揮していただいて、今せっかく議論しているわけですから、やっぱり前に向かって進められるようにしていただきたいということを申し上げたいと思います。
 それで、次に、大臣にお聞きしたいんですが、全国の市街化区域内の農地面積ですけど、これは九万二千八百ヘクタールあるわけです。そのうち一万四千五百八十四ヘクタールが宅地並み課税にならない農地課税で、今ちょっと農業政策の話されていましたけれども、農地課税で相続税の猶予制度の対象となる生産緑地として登録されているわけですけど、残りの七万八千二百ヘクタールの農地というのは固定資産税は宅地並み課税ということで、相続税の猶予制度もない農地になっているわけですよね。
 結局、都市農業の八四%がこういう宅地並み課税、相続税猶予制度のない農地に支えられているわけです。そして、その生産緑地以外の市街化区域の農地というのは、結局この十五年間で半減しているわけですよね。市街化区域内の農地を保全する課題というのは、そういう意味では急務だというふうに言えるわけです。それだけに、都市計画法の改正も急がれているというふうに思うわけですけれども。
 冬柴元国土交通大臣が、平成二十二年の春には都市計画法の改正法案を提出するという考えを既に表明されているわけですけれども、当然その法改正に都市農地の見直しも織り込まれるべきだというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(金子一義君) 先ほど申し上げましたように、具体的な都市計画制度の在り方、議論を二つに仕分けしながら検討してまいりたいと。
 一つは、地方分権に合わせまして、平成二十二年度、通常国会に提出し、早急に措置するもの、これは都市計画に関する国の関与の在り方が、冬柴大臣が平成二十二年通常国会提出に向けて準備するということを言われたのはここを言っておると理解しております。
 もう一つは、総合的かつ慎重な検討が必要、その先に逐次措置するもの、この二つに仕分けしながら、今の農業政策との関係といったようなこと、あるいは税制の関係といったものはどうしても総合的に、方向は私がもう先ほど申し上げているとおりでありますけれども、税制等々につきましては、あるいは農業政策につきましてはこれは総合的な検討も必要であると思っておりまして、ただ、逐次措置をするという仕分はさしていただきながら進めたいと思っております。

○紙智子君 二〇〇六年の十一月に東京都の都市農業検討委員会、ここで貴重な都市農地の保全に向けてということで報告書を発表しております。その中で、これまで都市開発によって減少してきた都市農地について、今後は都市に重要な役割を果たすものとして農業政策と町づくりの両面から明確に位置付け、保全する必要があると提言をしているわけです。
 あらゆる面からそれを実現させるときになってきているというふうに思うんですけれども、この点で大臣の決意といいますか、お伺いをして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

○国務大臣(金子一義君) 先ほど申し上げましたように、私は都市農地というものは貴重な財産だと思っておりますので、そういう方向で検討、そういう方向でと、ちょっと言い方は間違えましたけれども、何とか残せるような方向で議論をして、検討をしてまいりたいと思っております。

○紙智子君 終わります。