<第171回国会 2009年4月23日 農林水産委員会 第11号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、法案に入る前に、先日、委員長提案で当委員会に提出をされて、そして採決、成立をしました農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法案、JAS法の一部改正について質問をしておきたいと思います。
 それで、法改正に至った背景に、この間食品の偽装表示が多発していたこと、その原因の一つに、これまでのJAS法の制度の下でいいますと、偽装表示をしても、まず農林水産省による表示是正の指示が出されて、それに従っておけば何ら罰則を受けずに済むと。ですから、偽装表示のやり得という問題があったわけです。是正の指示が出されてもそれに従わずに、次に是正命令を受けて、それにも従わない場合に初めて罰則を受けるという、事実上は罰則規定が使えないものになっていたわけです。そのために、これまでの偽装表示事件というのは、不正競争防止法違反ですとかあるいは詐欺罪での起訴というふうになっていました。
 そのことはこれまでも課題になっていたわけですけれども、今回の改正によって、原産地表示について直罰方式を導入するということとともに、その場合の罰則を二年以下の懲罰又は二百万円以下の罰金ということで、厳しくしたことで偽装表示に対する抑止効果が期待されるという点ではこういう改正は良かったというふうに思うわけですが、しかし、表示についていいますと、原産地表示だけではないわけですね。例えば遺伝子組換え食品ですとか、有機JASもありますし、期限表示という問題もあります。そういう中で対象を原産地表示に絞ったというのは、これだけでは私は不十分だというふうに思うわけですけれども、今後、今度の原産地表示以外のものについてどのようにされるのか、大臣にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) 先般、議員立法によりましてこのような法律が可決、成立をいたしました。議員立法でございますが、その趣旨等々、提案者から御説明がありましたし、今委員が御指摘のとおりでございます。
 産地偽装というのが極めて悪質であるということにかんがみまして直罰規定が導入されたわけでございまして、食品偽装に対します抑止力はこれによって高まると考えておるわけでございます。したがいまして、今回全会一致で御可決をなさったものでございまして、私どもといたしまして、全会一致で院の御意思としてこれが決まりました以上、まずこれが適切に運用されるかどうかということを見極めていくというのが行政府に与えられた課題ではないかと、このように考えておるわけでございます。
 産地偽装は、国産品と輸入品との価格差等々を背景として、期限表示の改ざんなどと比べまして発生件数が非常に多いということ、七五%とも聞いておりますが、非常に多いと、また社会的影響も多いということがあるわけでございます。
 当省といたしましては、産地偽装に限ることなく食品表示の適正化を図っていかねばなりません。そして、不適正な表示を迅速に是正するということが基本であると考えております。引き続き、委員が御指摘のようないろんなことがございまして、食品表示Gメンによりきちんとした監視を行う、厳正な指示、そしてまた公表を行うということによりまして、消費者の方々の信頼確保、そしてまた抑止力の確保というものを図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
 また、警察庁との連携協定に基づきまして、捜査機関に早期に情報提供を行うということで、表示関係法令、委員が御指摘になりましたとおりでございますが、表示関係法令の罰則の適用ということがきちんと行われなければならないとも思っておる次第でございます。

○紙智子君 全会一致で通っているので、その実施ということで、それはそうなんですけれども、ただ、それでもってすべて網羅されるということではなくて、今後の問題としてまだこういう問題もあるということを指摘をさしていただいて、改善をしていかなきゃいけないと思っております。
 それで、今おっしゃられていますように、やり得ということが今まではあって、例えば不二家の洋菓子ですとか、ミートホープの偽装事件ですとか、石屋製菓の白い恋人の賞味期限の改ざんですとか、それから三重県の赤福の賞味期限の偽装とか、船場吉兆の賞味期限の偽装とか、ずっと繰り返されてきたわけで、やっぱり繰り返させないということが大事なわけですから、警察庁との連携ということなんかも話がありまして、そういう意味では少しは厳しくなったんだという話もあるんですけれども、しかしながら、やっぱりきちっと直罰に、本当は全体を掛けてやっていくということが安全、安心をしっかりと確保する上では必要じゃないかということを申し上げまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 漁業共済制度についてですけれども、今回の法改正はリスクの低い事故に関して共済対象から外すということで、掛金負担を軽減をして漁業者が共済に加入しやすくすると。これは、実際、現場を歩きますと高過ぎてなかなか入りづらいという話が出ていたわけで、それはそれとして必要なことではあるというふうに思うんです。
 この間の漁災法の改正は、言ってみればそういうやり方というか、同様の手法で掛金の負担の軽減を図ってきたというふうに思うんですね。やっぱり、掛金の負担が重いということでなかなか加入できないということは明らかだったわけです。それで、この間、異常災害が毎年のように漁業に対しての影響を与えているということと、それから漁業経営が依然として厳しい状況にあると。そういうことを考えますと、リスクの低い事項を除外して掛金を下げるという、まあ言い方というか、小手先と言ったらいいか、こういう範囲の手法で共済加入を促進するということでは限界があるんじゃないのかというふうに思うわけですけど、この点、いかがでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) 小手先と言われますと、やや、そうではないのではないですかと、こう言いたくもなるんですが。要するに、保険の設計として考えた場合に、そういうようなものを除外をしていくということによって掛金を安くする、そういうようなことをきちんと行っていき、入りやすいようにしていかねばならぬと思っているところでございます。
 加入促進の観点から掛金負担を軽減するということは極めて重要で、国としては、法律に基づきまして、共済掛金につきまして平均四六%、これを補助をいたしておるわけでございますし、平成十八年度からは更に、平均でございますが、掛金の七%について上乗せ助成を図っておるわけでございます。
 これだけで十分だとは当然思っておりませんで、漁業者の皆様のニーズに即した特約商品を提供しなければならぬ。事故の少ない方へは掛金の割引制度を活用していただくべく、これも徹底をしていかねばならぬ。そして、今回の法改正で養殖共済あるいは漁業施設共済に係る掛金の安い商品を提供いたします。
 ですから、そのようなことで、委員のおっしゃいますように、掛金負担をどう軽減をするか、促進を図るかということを考えておるわけでございまして、午前の答弁でも申し上げましたが、これですべてだということを申し上げるつもりはございません。更に加入促進を図るための手だてというものを、保険の設計等も併せて考えてまいりたいと思っております。

○紙智子君 漁業共済は、中小漁業者が相互の救済を図る保険であるということと同時に、やはり水産基本法に基づいて国の漁業災害対策の重要な柱としての性格も持っているというふうに思うんです。
 それで、農業共済の掛金に対する国庫負担というのが五〇%から五五%というふうになっているのに対して、漁業共済の場合は加入区域内の全員が加入しなければならないという義務加入の方式を取らないと、結局、国庫補助率、これが一〇%から三二・五%ということで、非常に低いわけですよね。ですから、現状を見ても義務加入が九割以上を占めていて、実際上この義務加入方式でなければ加入は不可能に等しいというふうに思うんです。
 それで、全員の加入が困難な地域でもセーフティーネットが機能するようにするためには、義務加入以外の国庫補助率をせめて農業共済並みに引き上げていくことが必要なんじゃないのかというふうに思うわけですけど、これについてはいかがでしょうか。

○政府参考人(山田修路君) ただいま義務加入についてのお話がございました。
 義務加入制度というんでしょうか、地域の方々が皆さんで入っていただくという仕組みにつきましては、先ほどもちょっと御答弁いたしましたけれども、その地域全体でできるだけたくさんの人が入っていただくと、母集団を確保していくということでそういった方式がいいのではないか、あるいは普及をしていく上で有効ではないかということで今の義務加入制度を取っているわけでございます。
 委員がおっしゃいましたように、その一方で、やはりだれかが反対をするとなかなかまた合意ができないということで、使いにくいのではないかという意見があるのも確かでございます。これに関しましては、やはり私どもも、制度を検討する際の検討課題の一つとしてそういった意見もあるということ。一方、母集団を増やしていく、あるいはみんなでとにかく対応をしていくということで、これも有効なのではないかという意見も一方でありまして、今回はこの制度についてはそのままするということにしたわけでございます。
 私どもとしては、加入を増やすということが非常に重要であると考えておりますので、今の義務加入制度も利用しながら加入促進を図っていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 やっぱり、現場にとって一番どういう形がいいかということで、引き続き追求していただきたいというように思っています。
 それから、次なんですけど、ちょっとお配りした資料を見ていただきたいんです。これは、北海道の噴火湾、室蘭だとかああいうところを挟んだ噴火湾で行われているホタテの養殖なんですけれども、去年の秋から、ザラボヤというホヤの一種なんですけど、大量に付着をすると。それで漁獲に大きな影響が出ているんです。ホタテに害を及ぼすわけではないんですけれども、ホタテそのものは別に影響を与えないんですけれども、結局、水を大量に含んでいるザラボヤが、見たとおり、写真のとおり、もうびっしり付着して、ホタテが見えないほど付着すると。物すごく重くなってしまうわけですね。それで、一緒に引き揚げる際にその重量でホタテが海中にぼとっと落ちてしまうということになったり、ホタテと同量以上のザラボヤが一緒に引き揚げられるということで作業量が物すごい増えちゃっているわけですよね。それで、場所によってはホタテの成長不良というのにもちょっとつながっているというのも言われているんです。
 それで、耳づりというように言われているんですけど、ロープ垂らして、それにホタテが付いて、水中に浮かせたまましばらく成長を見るということになっているんですけど、要するにそこにびっしり付くわけですから重くなっちゃうわけですよね。それで、浮かせておくために浮き玉を付けておくわけですけど、浮き玉にも、これ見たとおり、びっしり付くものですから、これが重くなって沈んでいくというふうなことになっているわけです。
 それで、四月初めに現地の話を聞くと、ホタテを一トン揚げるのに、これの付いた廃棄物の処理だけでも四千五百円掛かると言うんですよ。それで、入念に洗浄してやっているんだけれども、通常の二倍の時間は掛かると、作業効率が三分の一に落ちているというように言われていて、普通だったら耳づりのロープというのは七、八本で浮き玉を一つなんですけど、全然それじゃ足りなくて、一本に一個付けなきゃいけないぐらいなっているわけですね。それから、作業でトラックに積んで、機械を使ってやるんですけれども、いろいろ付いているものですから故障も出てくると。想定外の出費が強いられているという状況なわけです。
 それで、ちょっとその写真のところで見てほしいのが、これがロープにつながって、中に貝が入っているわけですけど、それとこの浮き玉に付いているのと、その下の写真が、これはちょっと向こう側に金網というか網が見えていると思うんですけど、これがぐるぐると回って、それに水圧で水をざあっと掛けてぐるぐる回すということで、そんなに頑固にくっついているというんじゃなくて、そうやると取れるらしいんですけど、そういう形でこれ取って、ごみが物すごい大量に出てきているという図なんですよ。
 それで、こういう事態の中で苦労してやっているということなんですけれども、漁獲はあるんだけれども作業効率が大幅に落ちると。経費の負担が増えて手取りの収入が減るというこういう場合というのは、結局、漁業共済でも経営安定対策でも救済されないわけです。浮き球などの個人所有の漁具に対してはこれは支援がないわけで、なぜこうなっているのかというのは今水産試験場もいろいろ研究して調べているわけですけれども、異常気象の影響があるのかどうなのかということで今検討しているわけですけれども、いろんな形でこういう不測の事態に、コスト増によって漁家の手取りが減少になるということに対しての対策を考えるべきじゃないかということなんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) ザラボヤ、これ食べられないのかと聞きましたら、食べられませんと言われました。噴火湾に元々生息しておるわけでございまして、日本全国の沿岸に広く分布するホヤの仲間であるというふうに聞いております。
 平成二十年の秋以降、大量に付着するようになり、委員御指摘のように、水揚げ効率が大きく落ちていると。そしてまた、えさがホタテガイと同じ植物プランクトンでございますので、ホタテガイの成長への影響も懸念されるということでございまして、私どもの方の大型クラゲなんかもそうなのですが、何でこんな時期にこんなものが出てくるのかということについてきちんとした解明も努力をしております。それも解明をしていかなければいけません。
 いずれにいたしましても、そのような有害生物によりまして、漁業生産活動の影響というものを最小限にとどめるべく駆除等を行っていかねばならないし、そしてまた、これを駆除をするに当たりましては、生産コストが増大しないようにしていかねばなりません。
 委員も御覧のとおりのザラボヤにつきまして、ホタテガイに付着したザラボヤ、これを除去する装置の導入、何か一つ百万円ぐらいと聞いておるんでありますが、この二分の一について補助を行っております。また、大型クラゲ、トドなんかもそうなんでございますが、広域的に生息いたします、回遊いたします有害生物につきましては、都道府県と連携をいたしまして、漁業者が行います駆除あるいは混獲回避の改良漁具の導入、このために必要な経費につきまして助成を行っているものでございます。
 さらに、漁業生産コストが増大をすることにより資金繰りに影響が出ました場合、金融面での支援として日本政策金融公庫の長期運転資金でございます農林漁業セーフティネット資金、これが御利用いただけるということになっておるわけでございます。
 これらの措置によりまして、被害を防止し生産コストの軽減に努めてまいりたいというふうに考えておりますが、これはザラボヤの処理等々、また相当のコストが掛かるんだろうなというふうに思っております。よく実態を把握をいたしまして適切な措置をとりたいと考えております。

○紙智子君 よく実態を調べてという話で、今、最初お答えになったところは既に今までもやられている対策であって、その範囲では足りないということでお話をさせていただいたんですよね。
 今回、ザラボヤなんですけれども、例えばトド被害なんかも延々ともうとにかく格闘が続いていると言ったらいいか、トドは殺しちゃいけないわけですよね、決まっているわけですよ、駆除する量は。ですから、そういう中で、もう強化網に切り替えなきゃいけないというので網を替えたりとかしてきているんですけれども、追い詰められて漁法そのものを変えなきゃいけない、小型の底引きの船に替えようというようなところまで検討しなきゃいけないぐらい漁師の皆さんは追い詰められているわけです。
 それで、借り増し経費への補償はないし、ただでさえ厳しい状況の中で、やっぱりこういうコスト増を漁業経営で吸収するというのはなかなか不可能ということで、先ほど大型クラゲの話もありましたけれども、対策を取ってきたわけですけれども、やっぱり自然相手でいろんなことが、想定外のことが今出てきているというふうに思うんです。そういう中で、やっぱりこれまでやられてきている範囲じゃなくて、そういうコスト補償の機能ということで、もうちょっと踏み込んでやれないものかなということなんですけれども、もう一言お願いします。

○国務大臣(石破茂君) これは、先ほども申し上げましたように、よく実態を把握をし、私ども、今申し上げましたような助成あるいは融資等々で何とかいけはしないかなと思っております。
 ただ、委員御指摘のように、本当にその時々変わるものでございますし、トドも出れば、もう最近はラッコがどうしたみたいな話もございまして、やはり時々によっても変わるものでございます。ですから、実態をきちんと把握をし、コストが増嵩しないように、あるいは経営が安定するように適切な政策は打っていかねばならないと思っております。
 今後とも、よく実態を把握するように努力をいたします。

○紙智子君 最後、もう一つだけ質問したいんですけれども、漁業安定対策の問題で積立ぷらすですね。これでもって、先ほども話が出ていましたけれども、元々水産庁が一万一千経営体で約一割の加入を想定していたということなんですけれども、加入実績という点では千七百二十六件で沿岸漁業者の一・五%と。まあ、一年目だからということもあるかもしれませんが、それでもちょっと少ないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、昨年末に若干所得要件の見直しをやって、加入のハードルが高過ぎるという問題は、これは本質的にはやっぱり変わっていないというふうに思うわけです。
 地域特例というのがありますけれども、北海道では個人の所得下限が二百七十四万七千円だったのが二百六十三万一千円に、十一万円下がったということで、担い手特例も五年後には他産業並みの所得を確保する計画が必要で、例示されているような大幅な操業効率アップが見込めるような新船の建造や機器の導入をすればその借金返済が迫られるということもあるわけで、五年間での所得増というのはなかなか見込めないというのが実態だと思うんです。
 漁業者の減少や高齢化が進む中で、この担い手の育成を目指すということでは、初めから絞り込むんじゃなくて、やっぱり思い切って更なる要件の緩和を広げていただきたい、対象を広げていただきたいということを申し上げたいと思います。
 これについて、最後、一言答弁いただいて、終わりたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) 何で八割にとどまっちゃったかということは先ほど来申し上げておるとおりでございまして、漁業者の方々が燃油高騰への対応に追われてしまった、あるいは初年度でございましたので改善計画の作成などに習熟していただいていなかったということ、そしてまた燃油が高騰いたしまして加入要件を満たせない、そのような経営体が生じたということが低位にとどまったということだと思っております。
 このため、昨年末、漁業者の方々の御要望も踏まえまして、所得金額に燃油高騰によります補正額を上乗せした額で所得水準を判定する等々加入要件の見直しを行いましたが、今後とも、業務推進上の問題点の洗い出しを行いながら、漁業系統団体と連携をいたしまして加入推進を図りたいと考えております。
 私といたしまして、今後もそのような問題点あるかどうか、そしてまた、あるとすればどのようにそれを克服できるか等々、よく、現場のニーズというものが第一でございますので、それを踏まえました上で多くの方々が事業に加入できるようにしたいと考えております。

○紙智子君 終わります。