<第171回国会 2009年4月16日 農林水産委員会 第08号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 主要食糧法の、最初、一部改正の問題で質問をいたします。
 この改正は、汚染米の不正規流通事件が大きな動機となって、その改善のための改正ということです。米穀の出荷又は販売の事業を行う者が遵守すべき事項の規定を整備するとともに、立入検査の忌避に対する罰則を強化するものなどというふうになっているわけです。
 それで、これは午前中からの質問の中で、何人かの方も同じような質問をされておりました。要するに、その中で規定していることがあるけれども、実際上の中身が示されていないと。午前中のやり取りの中でも、政省令にこれは載せるということで、であれば、そういうものをちゃんと見なければ分からないのじゃなくて、そういうものがきちっと整った上で本来出すべきじゃないかということも出されていて、私もそうだというように思うわけですよね。
 そういう点では、確認の意味ということになりますけれども、重なるところもあるわけですが、改めて、この中で言われている、条文の中で用途別の管理方法と規定されている中身、具体的な中身。それから、遵守すべき事項、どういう中身かということについて、まず二つお聞きしたいと思います。

○政府参考人(町田勝弘君) 委員御指摘は第七条の二、食糧法の新しい第七条の二でございます。米穀の用途別の管理の方法その他の米穀の出荷又は販売の事業を行う者が業務の方法に関し遵守すべき事項というのが条文でございます。
 この具体的な遵守事項の内容でございますが、一つとして、用途が限定された米穀につきましては、その定められた用途以外に使用してはならないということ、二つ目といたしまして、他用途の米が混入しないよう区分保管すべきこと、三つ目といたしまして、定められた用途に使用されることとなるよう、販売に際して相手方の確認など適切な措置をとるべきことなどを定める予定でございます。

○紙智子君 事故米の不正規流通事件が起こったその原因の一つは、やはり必要のないミニマムアクセスを輸入して、在庫になってたまって、これを何とか処理しようとしたということがあるわけです。それからもう一つは、米の流通の規制緩和が行われたと。
 特に、これ二〇〇三年のときの主要食糧法の改正、まあ二〇〇四年から実施ということになったわけですけれども、この結果、米の販売の登録制度から届出制度に変更したと。だから届出さえすればだれでも米穀を出荷、販売することができるようになったと。その結果、様々な事業者が参入をして自由に米の売買を行うようになったと。
 それから、取扱量が月二十トン以下の販売業者については、これは届出義務がないわけですよね。届出なくてもいいということもできるようになっているわけです。それで、そういう中でいわゆるペーパーカンパニーのような怪しい業者についても参入できるような余地をつくってしまったと。
 ですから、農水省も実際にこの法改正をもって実質的に国がそれまで責任を持って管理していたその管理を放棄したということにもなったというふうに思うわけです。そういう中で、実態がつかめないということの中で事件が発生したし、そして解明しようと思ってもなかなか複雑でよく分からないということにもなったわけです。
 いわゆるこうしたやっぱり行き過ぎた規制緩和、これに対してどのような反省をされたのか。まあ原因と結果ということを言うのであれば、こういう届出制度の見直しが本来見直されるということが求められるのが当然じゃないかというように思うわけです。米の流通システムの検討委員会の中でも検討項目に入っていたというふうに思うわけで、その点についてまず大臣にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) 規制緩和が行き過ぎたのだと、これに反省をすべきであると、こういうような御意見をおっしゃる方もあるわけでございます。あるいは届出制度というのはよろしくないのであって、登録制度に戻すべきではないかというような御意見もある、それもそれなりにこう説得力のあるお話だとは思うんです。
 ただ、先ほど我が党の山田委員とも議論させていただいたところでございますが、それでは食管法の時代にきちんとできていたかといえば、やみ米みたいなものがあって、そのときにもいろいろな問題は起こっておったわけで、やはり私は民間の自由な流通というものは最大限尊重していかねばならないであろう。さはさりながら、何をやってもいいという話じゃございませんので、トレーサビリティーでありますとかそういうもので流通経路をきちんと確保したい、トレースができるようにしたいというふうに思っているわけですし、守るルールを定め、そして罰則も科したいし、その実効性もきちんと担保をしたいなというふうに思っておるわけでございます。
 どのようなやり方にしても、それは悪いことをしようと思う人は出てくるわけでありますが、それがどれだけ民間の自由な流通というものを、そしてまた消費者の多様な選択というものを尊重するかということは、私は今日においても重要なことではないかというふうに考えておる次第でございます。
 あるいは委員が今御指摘になりましたように、二十トン以上の事業者しか把握ができないと、届出制ではそうであるが、二十トン以下に規模要件を引き下げるべきではないかというふうな御指摘もございました。
 確かに、より多くの出荷・販売事業者を捕捉すべきだという御認識はそのとおりでございますが、ただ、この規模要件につきましては、旧食糧法におきます登録出荷業者、この数量要件が二十トン以上であったということを踏まえて引き続き二十トン以上としておることでございます。
 なお、十九年度末におきまして八万四千、それぐらいの業者さんを把握をしておるわけでございまして、緊急時対応という観点から下げるということは必要がないのではないかというふうに私は現在思っておるところでございます。
 届出がない業者さんもそれはあるわけでございますが、迅速に、何というんでしょうか、抜き打ち検査というものを適宜行うということが必要でございまして、これは内部告発があったらば迅速に行うということもそうですし、内部告発がなくても疑義のあるところには検査を実施するということになるわけでございまして、届出がない業者さんにつきましても、きちんとした実効ある監視は行っていく、そのような体制を整えたいと思っておるところでございます。

○紙智子君 私は、法を改正すると、もっと良くしなきゃいけないというのはそれはいいと思いますけれども、やっぱり根本的な本質的な反省がなかったら本当の意味で的の当たった対策にならないというふうに思うわけですよね。
 それで、去年の段階で、大臣は、十月でしたけれども、この問題をめぐってはどんなふうにおっしゃっていたかというと、売買事業の実態を把握していなかったことに自分自身が重い責任を感じているというふうにおっしゃっていたわけですよ。そして、届出制のままでいいのか、これについては議論しなくちゃいけないというふうに答えていたわけですよね。そういうことを当時おっしゃっていたわけだけれども、今の答弁になるとそういうことが全く抜けてしまっていて、それで別に問題はないという、大きな問題はないという、問題なのはその悪いことをやる業者が出たことが問題というふうになってしまっているんじゃないかと思うわけですよ。違うんじゃないかと思うんですね。
 やっぱり農水省がちゃんと把握し切れていないという、そこのところをどう強化しなきゃならないかということだし、そのことについてどうなんですか、その当時言われていたことがどうしてこういうふうに変わっているのかということをお聞きしたいんですけれども。

○政府参考人(町田勝弘君) 検討の経過の事務的な話でございますので、私から……

○紙智子君 事務的な話じゃないですよ。

○政府参考人(町田勝弘君) 事実関係のお話をさせていただければと思います。事実関係だけ私から説明をさせていただければと思います。
 紙議員からも冒頭御指摘いただいたんでございますが、このトレーサビリティーシステムにつきましては、米の流通システム検討会で検討を重ねたところでございます。当初、届出制がいいのか登録制がいいのかという議論もあったんですが、種々議論いただいた後、やはり過度な規制というものは避けるべきではないか、その中で実効性が上がるような方策を考えるべきだということでございます。
 今回につきましては、規模の要件を求めず、遵守事項も掛けますし、取引の記録もしていただくということでございます。これで私ども実効性を上げていきたいと考えております。

○委員長(平野達男君) 大臣、補足ございますか。

○国務大臣(石破茂君) 今局長が答弁したとおりでございます。
 どちらにしても、そういうよろしからぬ業者というものがそういうことができないようにその監視の体制をきちんと整えるということが必要だと思っております。届出であろうが登録制であろうが悪いことをしようと思う者はいるのでありまして、そういう者をきちんと監視をし、そしてまた仮にそういうことが行われた場合には摘発をするという体制を整えるというふうにシフト、重きを置いておる、そういうことだと御理解をいただきたいと存じます。

○紙智子君 やはり把握できない状態のままでいろんなことが起こったということについて、結局そこのところをきちっとじゃどうやって打開しなきゃいけないかということを出さなきゃいけないのに、実際には無届けのままの人たちが今も手を付けられないままいるということになっているわけですよ。
 それで、無届けの二十トン以下の米の販売業者の存在について、今回の法改正でやるつもりはないという話だったわけですけれども、手を付けていないわけですよね。でも、このままにしていたら、やっぱり何らかの意図を持った業者がいて悪用されるおそれというのはなくならないですよね。米の全体の流通の中の二〇%が届出のない業者によって販売されているわけですよ。その部分が常にあるわけですよね。そこに意図を持った業者が入ったときには、これまた同じようなこと繰り返しになると思いませんか。
 ですから、私はこれを、二十トンというのは、これ省令事項ですよね。だから、いろんなところの省庁またがなくてもいいわけで、大臣の決断があればこの取扱いの数量引下げさせることができると。例えば最低一トンまで下げるとか、そういったことができるはずだと思うんです。ほとんどの米の販売業者をこれやっぱり届出業者にしてちゃんと把握できるようにしておかないと、出口のところで規制すればいいというふうに言うけれども、実際にはどういうものたちが動いているのかということが分からない中ではチェックのしようがないということがあるわけですから、是非そこは大臣御判断をいただきたいと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(石破茂君) なぜ二十トンかということにつきましては先ほど答弁を申し上げたとおりであります。繰り返すことはいたしません。
 米の取扱い規模にかかわらずどのようにして把握をするかということなんでございますが、一つは巡回調査でございます。農協あるいは小売、卸売業者、スーパー、農業生産法人、巡回調査をやりましょうと。その次は精米業者、販売業者、製造業者、そういうようなものの情報をきちんと把握をする、これはラベルによるものでございます。
 さらには、事業者の従業員から内部情報が提供された場合、これは通報みたいなことになりますが、これが三番目だろうと。あるいは地域の保健所、警察、地方自治体、自治体によりましては協議会を開催するところもございますが、そういうようなことによって把握をしたいというふうに思っております。
 さらに、これに加えまして、トレサ法によります取引記録を遡及、追跡することによりまして、取引先の事業者を順次把握するということが可能でございます。
 したがいまして、食糧法で届出をしていない事業者におきましても遵守事項というものが守られるのだというふうに考えておりまして、今申し上げましたことを重層的に行うことによりまして相当に可能になるのではないかと私は思っておるわけでございます。

○紙智子君 今の答弁では全然納得できないです。やっぱり擦り抜けることできますよ。いろんなこと今言いましたけれども、やっぱりそういう様々な業者が目を付けて、法の網をくぐってやるというところに対してきちっと手を打たなければ、なかなかやっぱりこれは止めることができないというふうに思うわけです。
 それで、結局、今のところやるつもりがないというお答えなわけですけれども、私は結局そういう意味では、根本的なところはおいたまま周辺のところで変えようという話の範囲にとどまっているというふうに言わざるを得ません。
 次に、トレーサビリティー法の問題です。
 それで、食の安全、安心の確保にとって、今回、米にもこのトレーサビリティーを導入するということは賛成です。そして、米の産地表示を義務付けることも、国産米の信頼性の確保の上からいってもこれは望ましいことだというふうに思っているわけです。ただし、これもこの間、午前中を含めて議論があったわけですけれども、トレーサビリティーと産地表示の実施ということをめぐってはいろいろ問題があると。
 それで、まず、米は主食だけではなくて、米関連の食品というのは大変広範囲にあるわけです。もちなんかもそうだし、米菓子もそうなわけですし、そのほかにもあるわけですけれども、この対象範囲の問題として酒、それからみそ、しょうゆなども対象にすべきではないかというふうに思うんですね。事故米の不正規流通問題の有識者会議の中でも、酒を対象にということは提言もされているわけです。
 それで、お酒については財務省の所管ということなので、財務省にお聞きしたいと思います。まず最初に、財務省の方にお聞きしたいと思います。国税庁。

○政府参考人(西村善嗣君) お答え申し上げます。
 酒類につきましては、法律上、政令で指定をすることによりまして対象品目に加えることができるよう措置をされているところでございます。
 酒類を対象品目にするかどうかにつきましては、今後、社会通念上、米を主たる原材料とするほかの米加工品を所管する農林水産省とも相談をしながら検討をしてまいりたいと考えております。

○紙智子君 それじゃ、続いて、酒、みそ、しょうゆなども含めてもっと広げる対象ということで、先ほどの中でお酒については大臣も述べられたんですけれども、今の国税庁の話も受けながら、大臣としていかがでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) 酒につきましては午前の答弁でも申し上げました。酒も対象にすべきであるというふうに私は考えております。その観点から、よく財務省、国税庁と協議をし、実効性を上げたい。私は、酒は入るのが当然とまで言い切っていいかどうか分かりませんが、入るべきだというふうに思っております。

○委員長(平野達男君) みそ、しょうゆ。

○国務大臣(石破茂君) 委員長、失礼しました。
 みそ、しょうゆはどうなのだということでございますが、みそ、しょうゆというものも、将来的にといいますか、対象とするということになっていくのだろうというふうに思っております。
 何度も何度も同じことを申し上げて恐縮ですが、もう一度整理のために申し上げますと、政令で指定をするというときには米穀そのもの、その次に御飯として提供されるもの、チャーハンとかどんぶりとかそういうものですね。その次に米を主たる原材料とするもの、あられ、せんべい、おだんご、こういうことになるわけです。
 次に、米を原材料としていることを商品の訴求ポイント、セールスポイントみたいなものですね、米粉パンというものを基本として現在検討を進めておるわけでございます。
 みそ、しょうゆの場合にも、やはり米というものがかなり決め手になるということは私は事実であるというふうに考えておるわけでございまして、今四つジャンルを申し上げましたが、みそ、しょうゆも、そういうような観点から対象品目の範囲について私どもの中で検討していきたいというふうに思っております。

○紙智子君 それじゃ次、米を含む食品、加工品についてもどこまで対象にするのかということが問われてくるわけですけれども、衆議院では、対象を米関係以外の飲食料品にも広げることを今後検討するということを内容とする法案の修正が行われたわけです。消費者が極力やはり表示を求めているわけで、更に広げるべきだというふうに思うんです。
 そこで、まず、修正案を提出された提案者に修正の趣旨をお聞きしたいと思います。

○衆議院議員(筒井信隆君) 修正案における飲食料品の種類には何の限定もされておりません。したがって、当然のことながら、すべての飲食料品についてのトレーサビリティーを検討して、その義務化を広げていく、これがその修正案の中身でございます。
 事故米の問題が直接の契機となって米のトレーサビリティーがこの法案として出されました。しかし、食品の、食べ物の安心、安全を脅かす事件は事故米だけではなかったわけでございまして、ウナギでもありましたし、牛肉でもありましたし、あるいはギョーザでもありましたし、やっぱりすべての飲食料品についてトレーサビリティーを義務付ける、これを早急に実現することが食の安全につながる不可欠のことだという趣旨でございます。

○紙智子君 この趣旨を受けて、農水大臣、これに対してどのように対応してやっていくでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) ですから、方向性は全く一緒なんです。すべてをやりたいと、そっちの方向へ向けて検討を進めていきたいということでございまして、それを否定するものでは全くございません。
 ただ、もう先ほどから何度も同じことを申し上げますが、中小企業者の負担をどうやって軽減をするかということ。もう一つは、これ日本の国だけで回るお話ではございませんので、これは国際規格と整合しなければいかぬ。午前中も議論がありましたが、国際規格との整合を外れて、これが貿易を阻害するものであるなどというような指摘を受けることがないようにということも考えていかねばならないわけでございます。
 そういうことは考えますが、駄目だ駄目だということを言うのではなくて、もうできるだけ広げていくという方向性で努力をしたい、すべきだということは、私は、今の筒井議員からお話がございましたが、それと全く趣旨を異にするものとは思っておりません。

○紙智子君 では次に、米穀の出荷又は販売の事業を行おうとする者が、あらかじめ農林水産大臣に届出を行うことが義務付けられているわけですけれども、米穀事業者というのはどういうものを対象にするのか、具体的に示していただきたいと思います。

○政府参考人(町田勝弘君) 米トレーサビリティー法の御質問でよろしいでございましょうか。はい、失礼いたしました。
 本法律案におけます米穀事業者につきましては、第二条第二項におきまして「米穀等の販売、輸入、加工、製造又は提供の事業を行う者」と定義されているところでございます。

○紙智子君 トレーサビリティーの実施時期について、先ほども風間議員の方からのやり取りがありましたけれども、これは公布からの一年半後と、それから産地表示について二年半という極めて長い期間が、非常に長いなというのが見た実感なんですけれども、なぜこんなに掛かるのかということについてお聞きしたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) これは、先ほどもお答えしました周知徹底とかあるいは体制整備、それは、これをやりますよといって、多くの業者さんがおられるわけですね。そしてまた、どういうような書式にするかということも含めましてある程度の期間は要るということだと私は思っておるわけでございます。ですから、急ぐということはそのとおりなんでございまして、それに向けた作業も加速をいたさせます。いたずらに安全係数を取って時間を長く見ておるわけではございません。
 これ、本当に詰めた議論をしなきゃいけないのは、先ほどのみそ、しょうゆなんかの話でもそうなんでございますけれども、それが訴求ポイントなのかどうなのかという、かなり、数字で表されるものじゃないものですから、それぞれの御負担あるいは業者さんの数あるいはそれらの規模、そういうことも勘案をしながら、しかし一番第一に考えなきゃいかぬのは消費者の安全なのだということだと思っております。私どもとして、検討は加速をいたしますし、消費者の安全というものを最大の眼目としながら努力をしてまいりたい、そのためにある程度のお時間は必要なのでございますが、いたずらに時間を掛けてだらだらとやるということが許されないことはよく承知をしておるところでございます。

○紙智子君 もう最後になりますけれども、そういうこの間の議論、いろんな業者の方や、様々な反対意見や抵抗などもあるということも聞いておりまして、その長い期間の中、先ほどできるだけ短くするという話がありましたけれども、その中で、やっぱり骨抜きにならないようにそのことはしっかりとやっていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。