<第171回国会 2009年4月6日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第04号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、主に中曽根外務大臣を中心にお聞きしたいと思います。
 まず、北方四島への出入国カードの問題についてですけれども、北方支援事業がロシア側の出入国カードの提示要求で中止をされて二か月以上たっています。地元では不安が募っていまして、例年五月からビザなしの渡航、自由訪問があるわけで、今年も確実に行われるように交渉を強めてほしいという訴えがされているわけです。どのような見通しなのか、まずお答え願います。

○国務大臣(中曽根弘文君) この北方四島への訪問は、一九九一年の十月十四日付けの日ソ外相間の往復書簡等に基づいて、いずれの一方の側の法的立場をも害するものとみなしてはならないと、そういう前提で設けられた枠組みに従って行われているものでございます。
 二〇〇八年までの間、日本側代表団がこれらの枠組みの下で北方四島を訪問いたしました際には、ロシア側から出入国カードの提出を求められることはございませんでした。しかし、今年一月の人道支援物資供与事業のための北方四島への訪問の際には、直前になりまして、日本側代表団の四島への訪問のためには出入国カードの提出が必要である旨のロシア政府による立場の変更が表明をされたところでございます。
 外務省といたしましては、直ちにロシア側に対し、出入国カードに関する一方的な要求の撤回を強く申入れをしてまいりましたけれども、ロシア側が態度を変えませんでしたので、やむを得ず今回この人道支援物資供与事業を中止をしたところでございます。
 二月にサハリンで行われました日ロ首脳会談におきまして両首脳はこの問題を取り上げられまして、四島交流などは両国の国民の信頼醸成の観点からも大変重要な事業であり、お互いに継続していく意向であることを確認をいたしました。そしてその上で、この問題は友好的また建設的に解決をさせるべく事務方に至急作業させるということで一致をしたところでございます。
 現在、こういう首脳間の合意も踏まえまして、今年の五月から四島交流等を予定どおり行うことができるように、早期に調整を終了すべく、今ロシア側との間でこの問題の解決に向けた協議を精力的に行っているところでございます。

○紙智子君 墓参や防災やあるいは生態系の保護の問題など、本当に共同事業で多方面にわたる重要な課題もある中で、やっぱりこれをきちっと解決をして臨むということを求めておきたいと思います。
 次に、沖縄の米軍基地の問題ですけれども、中曽根外務大臣は所信の中で、在日米軍の兵力態勢の再編は、抑止力を維持しつつ沖縄の負担軽減を実現するものと述べていますけれども、実際にはこれは負担軽減されておりません。嘉手納町の調査によりますと、嘉手納の米軍機、戦闘機ですね、これが北海道の千歳などに訓練移転をしていても、その間は岩国などから、ほかの基地の所属の戦闘機が大量に嘉手納で訓練をしていて、結果として沖縄での騒音被害が全く軽減されていないと。
 さきの二月六日の衆議院の予算委員会で我が党の赤嶺議員がこの問題について質問したのに対して、浜田防衛大臣は明確に負担軽減していないということをお認めになったわけですけれども、外務大臣も、この嘉手納の基地渉外課が行った調査、負担軽減されていない実態については認識しておられますね。

○国務大臣(中曽根弘文君) 私、いつでしたか、先般沖縄を訪問いたしまして、嘉手納飛行場も視察をいたしましたけれども、米軍の航空機による騒音問題等、大変地域の皆さんには御負担、御迷惑が掛かっていると、そういうふうに実感をいたしました。飛行場周辺住民の皆さんの御負担がやはり一日も早く解消できるようにと、そういうふうに思っておりますが、米側に対しまして、そういう意味では周辺住民への騒音の影響が最小限になるよう働きかけるなどの取組は従来から行っているところでございます。
 また、米軍再編の一環として、嘉手納飛行場に所属をいたしておりますF15部隊の訓練の一部を本土で実施をするということで合意をいたしまして、一昨年三月以降、移転訓練を実施をしてきております。これに対しまして、負担軽減として十分ではないと、そういう声があることも承知をしておりますけれども、この訓練移転がそれ自体負担軽減に資することは、これは事実でございまして、周辺住民の負担を少しでも軽減するために今後とも着実にこれを実施していきたいと思っております。
 北朝鮮の状況を含めまして、委員も御承知のとおり、今この地域は非常に不確定、不透明なそういう現下の安全保障環境にあるわけでありますけれども、この在沖縄米軍は抑止力の維持に引き続き重要な役割を担っていると、そういうことから、この抑止力を維持しつつ、可能な限り地元の負担を軽減するため努力をしていく考えでございます。
 先ほど、二月六日の浜田防衛大臣の御発言についてお話ありましたけれども、嘉手納飛行場は極東最大の米軍飛行場として大変重要な役割を担っております。したがいまして、いわゆる外来機というんですか、そういうものが飛来することについても日米安保体制の目的にこれは資するものでございまして、そういうものである限りはこの飛来中止を米側に求めることが適切であるとは考えておりません。
 他方、この米軍の航空機による騒音問題など、飛行場周辺の住民の御負担につきましては、これは先ほどから申し上げておりますが、十分認識をしておりまして、米側に対しましては再三こういうような騒音の影響が最小限になるよう働きかけを行っておるところでございます。引き続いて、そのような騒音を始めとする御負担が軽減されるように米側に働きかけを継続していきたいと思っております。

○紙智子君 今の御答弁の中で、嘉手納では軽減されていないということはお認めになったということで受け止めてよろしいんですよね。

○国務大臣(中曽根弘文君) そのような声があるということは、先ほど申し上げましたけれども、負担の軽減として十分ではないという声があることは承知しておりますが、しかしこの訓練移転というものがそれ自体負担軽減になると、嘉手納においては、ということは私は事実であると思っております。

○紙智子君 そういう声が上がっていることは認識していると言われるんですけれども、軽減されていないということをはっきりとお認めいただきたいと思うんですよ。
 それで、先ほど来、米軍の再編とグアム移転で全体としては軽減されるというふうに言われたんですけれども、現実には軽減されていないと。それどころか、沖縄の伊芸区のレンジ4の建設、これは当委員会として去年現地視察に行ったわけですけれども、ここで、米軍が実弾演習をする都市型訓練施設で、地元は断固として撤去を求めていたんですけれども、これは移設をするという形で、撤去じゃなく移設という形でこの建設を進めて、いまだに終わっていないと。終わっていない間はずっとこの危険な訓練が続いているわけですよ。しかも、これと別にキャンプ・ハンセンでの自衛隊との共同使用も強化されていると。
 こういう米軍の危険な訓練が負担軽減の名の下に全国に実は拡大をして、日米共同訓練も強化されているというのが私は実態だと思っていまして、ちょっとお配りした資料を見てほしいんですけれども、これは北海道の状況です。
 上の方の棒グラフ、これが米軍基地を抱える地域の渉外知事会の資料なんですけれども、北海道の米軍施設・区域の面積でいいますと、白いグラフですけれども、白いのは全国一ですね、面積で。それから、箇所数、黒い方ですけれども、これは沖縄に次いで二番目なんですよ。
 矢臼別演習場は、防衛省が作ったこの下の方の地図、黒い点がありますけれども、こういう箇所にあるわけですけれども、はるかに広い面積です。これは丸ぽつだから余り広く見えないけれども、面積で塗りつぶしたら相当の面積になるわけです。沖縄県道の一〇四号線越えの実弾演習というのは、過去二年間、矢臼別だけで連続して行われています。沖縄での訓練と同質同量というふうに言いながら、夜間訓練はずっと強行し続けてきたわけです。
 そして、嘉手納の戦闘機の訓練移転の一つというのは千歳飛行場に来ているわけですよね。千歳の大演習場には、このほかにも市街地訓練施設といって、マンションとかスーパー、銀行、それから民家、マンホール、言わば模擬市街地というんでしょうか、そういうものを造っていて、その広い敷地の中で造られて、二〇〇七年から演習が行われていると。先月、米陸軍との共同演習がここで行われたわけです。
 防衛省にお聞きしたいんですけれども、市街地訓練施設は防衛省が滋賀の饗庭野、それから東富士、千歳など全国五か所に造られているんですけれども、米軍との共同訓練が行われた施設や日時、規模について説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(岸本邦夫君) お尋ねの自衛隊の都市型訓練施設で行われました日米共同訓練の場所、年月日、規模でございますが、平成十八年以降三回ございまして、まず平成十八年の二月十九日から三月三日までの間、滋賀県の饗庭野市街地訓練場において陸上自衛隊約三百五十名、米軍約二百五十名が参加して、それから二回目が、平成二十年十一月二十八日から十二月十七日にかけて、同様の饗庭野市街地訓練場において自衛隊約二百名、米軍約二百二十名が参加して、それから三回目、御指摘ございましたように、先月、三月二日から三月十一日、北海道東千歳市街地訓練場において陸上自衛隊約三百五十名、米軍約三百名が参加して日米共同の訓練を実施しております。

○紙智子君 平成十九年でいいますと、千歳では延べで六千人以上の自衛隊員が訓練したということを聞いているわけですけれども、米軍との共同演習で更にこの連携強化をしているわけです。
 一月に私はこの千歳に調査に行きましたけれども、訓練はそのときはやっていなかったんですけれども、写真が張ってあって、戦車だとかヘリコプターだとか、こういうものとも一体になって実戦をしているということや、それから、近距離で銃を持って、それで射撃をする、そういう訓練ですよね。それで、実際には弾は出ないんだけれども、レーザーというんでしょうか、ぴっと光るもので、実際に当たった箇所によって、例えば頭に当たったらこれは死亡とかいうのがコンピューターにちゃんと集められて、どれだけ技術が高まっているかということを見れるようになっているという仕組みになっているというのを見て、私は本当に恐ろしい実戦さながらの訓練がやられているということを思うわけです。
 饗庭野では頭に布のターバンのようなものを巻き付けて走る相手に対してねらう訓練もしているということでは、米軍とのこの市街地訓練というのは実は海外での戦闘も想定したものなんじゃないのかというふうに思うわけですけれども、いかがですか。

○政府参考人(岸本邦夫君) 陸上自衛隊におきましては、多様な事態、安全保障に関します多様な事態に対処するため、平成十四年度以降、御指摘いただきましたような都市型訓練施設を利用して実動訓練を実施しております。これは、今申し上げましたように、様々な事態に適切に自衛隊が対処するため、市街地戦闘などに関する戦術あるいは戦闘能力の向上を図っておるものでございます。

○紙智子君 様々なことに対応してということなんですけれども、結局、北海道が、負担を軽減するということを言いながら全国にこういう形で訓練を拡大をしていって、先ほど示した図のように北海道が全国一の言わば施設、地域を抱えている、訓練なども行って、結局、負担軽減ではなくて広がっているということなんですよね。
 それで、北海道の矢臼別演習場では、米海兵隊が昨年十一月の実弾演習で白燐弾を撃ったということを明らかにしたわけです。
 白燐弾というのは、米軍が二〇〇四年にイラクのファルージャの攻撃で使用して、最近はイスラエルがパレスチナ自治区のガザの攻撃で使用し、国際的な非難を浴びているものですね。その性質ということで言いますと、酸素と反応すると激しく燃焼する、二千五百度以上に達すると。人体に付着すると皮膚や肉、骨まで焼き尽くす非人道的な兵器と言われているわけで、米軍はこれを発煙弾として使用しているというふうに言っているんですけれども、結果的には多数の民間人が犠牲になっていると。
 そこで、防衛省に聞きたいんですけれども、海兵隊が矢臼別で白燐弾を使用したのはいつからなのか、何発撃ったのか、矢臼別以外ではどうなのかと、全容について明らかにさせるべきではないんでしょうか。

○委員長(市川一朗君) 紙君、時間が来ておりますから。井上地方協力局長、簡単に。

○政府参考人(井上源三君) はい。
 昨年度の矢臼別演習場でのいわゆる一〇四号線越えの移転訓練でございますけれども、アメリカの海兵隊によりますりゅう弾砲射撃の際にいわゆる白燐弾を使用したというふうに聞いているわけでございます。
 他方、この訓練以外に米軍が日本国内の訓練でいわゆる白燐弾を使用したかどうかにつきまして在日米軍司令部に確認をしておるわけでございますけれども、矢臼別演習場での一〇四号線越え移転訓練以外でいわゆる白燐弾を使用した実績があるかどうかにつきましては確認が困難であるという回答があるところでございます。

○委員長(市川一朗君) 時間です。

○紙智子君 時間ですということなんですけれども、私は大臣に最後に申し上げておきたいんですけれども、これは把握もしていないというのは非常に問題だというふうに思うんですよ。国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチは白燐弾というのは焼夷弾だというふうに位置付けているわけで、人体への被害というのは本当にひどいものですからね……

○委員長(市川一朗君) 時間を守ってください。

○紙智子君 はい。
 是非そのことにしっかり積極的に対応していただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。