<第171回国会 2009年3月23日 予算委員会 第17号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今回の雇用保険法の改正に関連して、季節労働者対策についてお聞きします。
 派遣、期間工など非正規労働者の対策として、雇い止めの場合、過去六か月保険料を納めれば九十日分の失業給付を受けられるなどの改正案が衆議院を通りました。
 非正規といえば、夏場、工事現場などで働き、冬場は仕事がないために雇い止めされる季節労働者も同じです。北海道、東北など全国にいる約二十万人の季節労働者についても、雇用保険の失業給付の改善など対策が必要ではないでしょうか。大臣、お願いします。

○国務大臣(舛添要一君) 北海道なんかで季節労働の方、たくさんおられるのを私もよく熟知をしております。
 ただ、やっぱり問題は、できれば通年働いてもらう、通年雇用化というのはこれがやっぱり大きな目的というか、望ましいと思います。
 したがって、やはり平成十九年度からはそういう目的のためにいろんな手を打ちまして、今、季節労働者を雇っている事業主に対して、通年雇用化すればこれは奨励金を与える。それから、別の企業がその季節労働者を使ってくださるときには、試行雇用というかその奨励金を与える。それから、労働者レベルではハローワークが全面的にそういうことをサポートするということでやっていますので、大きな目的がまずそこにあるということを最初のお答えとして申し上げておきたいと思います。

○紙智子君 通年雇用は長年季節労働者の皆さんにとっても願いだったんですね。しかし、実態はなかなかそうなってないというのがあるわけです。
 どれだけ実態をつかんでおられるかなというふうに思うわけですけど、北海道の建設政策研究所が今年一月にやったアンケートで、例えば苫小牧の三十七歳の季節労働者は、毎年仕事の稼働日数が減り続けている、給料の手取りが減っている、ほかに仕事がないため今の会社で働くしかない、しかし保険料も払えず無保険で子供も病院に連れていけない、失業保険も四十日になり一時金が出ても支払にすべて消えてしまう、冬になると一家心中を考えてしまうと答えています。この方だけじゃないんです、こういう例は。
 やっぱり、失業期間中の生活を支える、所得保障に直接結び付くような事業が必要なんだと思うんです。抜本的な季節労働者の冬期の援護の対策というのは、これ必要じゃありませんか。

○国務大臣(舛添要一君) 労働政策審議会においてこの点もずっと議論をしてきていますが、要するに、例えば一時金、今これ委員御承知のように四十日ですけれども、それを増やすという対策よりも先ほど私が申し上げたような総合的な雇用対策で通年化するという方向を目指そうということでございまして、本来的には五十日を三十日というふうに決めていたんですが、段階的な措置として今四十日というのにしておりますので、もう本当にこれは悩ましい点でありますけれども、やはり通年雇用化と、これを第一の目的として、そして五十日を三十日というのを四十日の経過措置ということで対応してもらう。やっぱり、循環的に季節労働を繰り返すよりも、私は常に申し上げているように恒産なければ恒心なし、やはり通年雇用化と、これが一番いいことだと思っております。

○紙智子君 今言われたように、かつて失業保険法のときには冬場の失業期間に見合う九十日間、給付がされていました。雇用保険法になって五十日分の特例一時金に減らされたわけですけれども、冬期援護制度があって一定の所得保障の追加がされていたわけです。ところが、二年前から四十日に削られた、冬期援護制度も廃止されたと。そういう中で、一人平均でわずか約二十万円で厳寒の三か月、四か月、ここを過ごさなきゃいけないわけですよ。大変なんですよね。不況で夏場の仕事も減っていて、無年金者、それから低年金者が多いんです、季節労働者。命にかかわる問題になっているわけです。ですから、せめて特例一時金を五十日分に増やしてほしいというのが現場の声なんですよ。
 その対策として、今新たに五千億円ですか、五千億円の基金をつくるという話があるんですけれども、五十日分に戻すだけでも五十億円でできるんですよ。だから、この切実な声に、大臣、こたえていただきたいというのが現場の声なんです。もう一遍、いかがですか。

○国務大臣(舛添要一君) 委員のこの御希望をきちんと賜って、どう検討できるか、やってはみます。
 ただ、先ほど申し上げたように、事情はよく、私、北海道の事情をよく知っていますから分かりますが、やはり何度も申しますけど、通年雇用化の総合対策をしっかりやるべきだと。
 それでもう一つは、日本全国で言えるわけです。雇用は守って、生活は守っていかんといかぬですけど、そのためにはきちんと雇用が生まれるようないい経済政策をやらないといけないというふうに思っています。北海道でも、例えば夏場の、公共事業を含めて夏場は仕事いっぱいある。冬は、例えば除雪という形でつないでいかれている方もたくさんおられます。そういうようなことも含めて総合的な課題として考えますが、委員の問題意識は共有させていただいて、少し検討させていただきたいと思います。

○紙智子君 今回のこの法改正の趣旨からいうと、当然私は季節労働者もここに含まれてしかるべきだというように思うわけです。今大臣よく知っているとおっしゃられたんですけれども、是非一度北海道に来ていただいて、事情をやっぱりよく聞いてほしいと。今、今もう本当に求められている、そういう痛切な問題だということを申し上げて次の質問に移ります。
 政府が国会で承認を求めるとしている障害者権利条約、これはその前提として条約に反する制度は見直す義務があるということですね。まず外務大臣、お願いします。

○副大臣(橋本聖子君) 本条約の締結に際しましては、同条約上我が国が負う義務を履行するため、しかるべく国内法整備が行われることが必要だということを考えております。

○紙智子君 三月上旬に、障害者団体との意見交換の最中にもかかわらず国会提出という話が流れて批判の声が上がりました。障害者団体は、障害者に同年齢の市民と同じ権利を保障し、障害に基づく差別を禁じたこの条約に基づいて国内法制を見直すことを強く求めています。批准は当然なんですけれども、拙速ではなく当事者の参加を保障すべきだと思いますが、大臣いかがでしょうか。

○国務大臣(中曽根弘文君) 障害者のこの権利条約というのは、もう委員が一番よく御存じでございますが、障害者の人権、それから基本的自由、これを完全に実現するということで大変重要な意義を有しておる。そういうことを踏まえまして、二〇〇七年の九月に条約の署名を行いまして以降、可能な限り早期の締結を目指しまして関係省庁の間で協議を行ってきたところでございますが、その過程におきましては、障害をお持ちの方々とのいろんなNGO、そういうところとの間で緊密な意見交換も行ってまいりました。全部で八回にわたって行ってきたところでございますけれども、そういう団体等の御意見、そういうものも参考とさせていただいているところでございます。
 外務省といたしましては、この国内における処置に関する議論の状況を今後も見極めながら、関係者の方々の理解を得られる形で条約を国会に提出したいと、そういうふうに考えておりまして、引き続いて調整をしていきたいと、そういうふうに思っているところでございます。

○紙智子君 その障害者権利条約と一番相入れないのが自立支援法だと思います。障害があることが自己責任だと言わんばかりに、生きるために必要な支援や作業所で働くことが利益を受けているとして定率負担を原則に利用料を取るということは障害のある人には耐えられないことなんです。
 今回、政府は定率負担を見直すと言っていますけれども、現在の負担をどう見直すのか。舛添大臣は十七日の厚生労働委員会で更なる改善の可能性を示唆されましたけれども、具体的に示していただきたいと思います。

○国務大臣(舛添要一君) 委員御承知のように、与党のプロジェクトチームで二月の十二日に障害者自立支援法の抜本的見直しの基本方針が取りまとめられました。一つは、「利用者負担については、能力に応じた負担とし、法第二十九条等の規定を見直す。」と。それから、「その際、特別対策や緊急措置によって改善した現行の負担水準の継続や更なる改善、分かりやすい制度とする。」ということが盛り込まれております。具体的に支援法の改正法案をどうするか、こういう提言を受けまして今政府で検討しているというのが現状でございます。

○紙智子君 厚生労働省の原案では一割負担は残していますでしょう。もう一度。

○国務大臣(舛添要一君) 今やっている軽減措置ですと、平均の負担率は約三%になっております。それから、例えば所得の低い方が通所サービスを行う場合に、一か月一万五千円の負担上限額が千五百円まで軽減をしておりますので、そういうことを踏まえて、どういう形で更にもう一歩進めるかということを今与党と議論をしながら進めているという段階でございます。

○紙智子君 やはり一割負担の火種を残したまま少し手直しをして応能負担だと言われても、到底納得はできないわけです。二度にわたる負担軽減措置がとられても、障害者にとっては生きるために重い負担が掛けられるという制度の根幹が変わらないと解決にならないわけです。
 札幌では重度のダウン症の娘さんの御両親にお話を聞いたんですけれども、彼女は作業所に通っていて、利用料と食費で現在月八千五百四十円掛かります。工賃が一か月一生懸命働いても六千円ですよ。負担は更に、国保料が年間で一万六千百六十円、そのほかに御両親の送迎交通費に年間二十四万円を超えるんです。親も子も年金収入の中で、とにかく障害ゆえに負担がのしかかってくると。
 やっぱり支援費の制度のときには、ホームヘルプサービスの場合、九割の人が無料だったわけです。ですから、応能負担にするというんだったら、せめて三年前のこの水準に戻すべきじゃないかと、いかがですか。

○国務大臣(舛添要一君) 二十一年度予算案では、先ほど私が申し上げました、軽減措置を延長する、それから資産要件の撤廃をするというようなことを考えておりますけれども、これは今ほど申し上げましたように、与党の提案を受けまして今省内で検討しているところでございますので、少し今の委員の意見も参考にしながら検討させていただきたいと思います。

○紙智子君 更なる改善というふうに言ったんですけれども、本当にこの九割の人が無料だったところまで改善するのかどうか、これもう一度、大臣、いかがですか。

○国務大臣(舛添要一君) 障害者自立支援法の理想というのは、それは障害者がタックスで面倒を見られる立場からタックスペイヤーになる、そういうことでいろんなところを私も見てきました。生き生きと障害者が働いている、そういうところが全国で増えればいいなと、こういう理想の火を掲げながら、しかし現状で非常に難しい状況があり、しかも今こういう厳しい経済情勢ですから障害者の方の雇用というのはますます難しくなる、そういう現状を踏まえた上でどういうふうにするかということを今検討させていただきたいと思います。

○紙智子君 小手先の見直しで、やはり応能負担というふうに言い逃れることは私は本当にこれは許されないというふうに思っています。
 四月に、旭川市で、聴覚障害に知的障害、それから自閉症、この重複の障害の二十八歳の青年とその御両親が自立支援法は違憲だということで提訴に踏み切ります。彼は作業所で働いていますけれども、利用料と食費が三年間で三十万円に上るんですね。作業所の木工製品はあの旭山動物園のグッズコンテストで二回もグランプリを取っているんです、本当に評価されているわけです。働くことが社会の一員として本当に自覚と誇りを培うものになっているわけです。しかし、この自立支援法は、それを受益だということで働く場で利用料を課すわけで、彼の誇りを傷つけて、社会参加や自立を阻むものになっていると思います。
 本来、やはり憲法二十五条の生存権の理念に照らせば、やっぱり障害者に負担を求めるべきではないということを私は強く申し上げまして、質問を終わります。