<第171回国会 2009年3月04日 農林水産委員会 第01号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 既に今いろいろ議論をされてきました。それで、その中で、国際的な穀物価格の高騰などの要因によって畜産、酪農が大きな打撃を受けているというのは共通のものとして示されてきましたし、この間の離農の数字なども含めて示されたわけです。そして、現在、飼料などの国際価格が下落傾向にあるとはいっても、しかし、この二、三年に受けた大きな打撃を取り返して持ち直すという状況になっているかというと、そこまでまだ至っていないというのも大体共通の皆さんの認識ではないかというふうに思います。今のまま放置すれば、やはり国民への安定的な酪農製品の供給そのものも危ういということもまた事実だというように思うわけです。それで、我が国の酪農、畜産を維持し発展させるというためには、再生産できる仕組み、そして経営安定対策の抜本的な強化が必要になっているというのも大体皆さんが発言された中身ではないのかなというふうに思っているわけです。
 我が党としては、先日、二月の二十七日ですね、農林水産大臣あてに今必要な対策ということで申入れをいたしました。六項目申入れをしたんですけれども、今日、時間が十五分と限られていますので、その中で酪農問題に集中して質問したいと思います。
 それで、大臣に伺いたいんですけれども、加工原料乳の生産者補給金について、これ、昨年の四月から一円、それから七月から三十銭、これが引き上げられて、十一円八十五銭というふうになったわけです。それで、現場の酪農家の皆さんに実際どうなのということで話を聞きますと、やっぱり経営を守って続けてこれからいくためには更に引き上げてほしいというふうにおっしゃるわけですよ。
 実際、〇八年、搾乳牛一頭当たりの生産費で約六十一万円掛かると言うわけですね。ですから、一頭当たりの搾乳量で割り返した生産費というのはキロ当たりで七十九円だと言うんですよ。ところが、昨年四月以降も資材価格が上がって、生産者の乳価というのは大体九十円ぐらいでないとやっていけないと言うんですよね、九十円。この三月にメーカーとの交渉で五円超えて引き上げられるということなんですけれども、生産者のプール価格、プール価格という形でやっていますけれどもね、それで見た場合には約八十三円だと言うんですよ。そうすると、この価格だったらぎりぎりだと。
 現状は維持できたとしても、過去二年間赤字、赤字だけど上がるよということで我慢してこの間何とか持ちこたえてやってきたわけですよ、借金しながら。そういう赤字の部分を補てんするということで考えれば、今のままだったらそこを補てんするところまで行かないということを考えると、やっぱり負債部分を緩和するためにも補給金の引上げあるいは限度数量の引上げというのが必要なんだというふうに言っているわけです。これについて大臣どうかということを一つ聞きたいということ。
 もう一点は、乳用の雌牛の導入の支援をしてほしいということなんですね。これ、どうしたって、酪農家の皆さんは新たに妊娠した牛を買って、お産すればすぐ乳搾れるわけですから、そういう牛を何頭か導入してやっていかなきゃいけないわけですよね、不可欠なわけですよ。それで、そのほかに、例えば施設設備だとか資材だとか機械とか、そういう更新なんかも必要な、毎年毎年出てくるんですけれども、そういうものも含めて考えたら、導入したいけれどもなかなかできない状況になっていると。
 その妊娠した牛の値段が上がっているんですね、今。五十万超えて五十二万、五十三万というところから更に六十万ということにもなっていて、これが例えば北海道から本州の方にということになると運賃も掛かりますからね。そうすると、本当にこの買い取れないという状況があるという中で、今後の生産に希望をつなげるためにも是非支援措置をとってほしいという声が上がっているんですけれども、これについてどうかということで、二点お聞きしたいと思います。

○政府参考人(本川一善君) まず、加工原料乳でございます。
 これにつきましては、まさに、何回もお答えしておりますが、法律に基づきまして、直近の物価等の動向も踏まえ、補給金単価については一定のルールに基づいて算定をしてまいるという考えでございます。
 それから、限度数量につきましても、最終的に生乳需給見通しを基本に生産団体が行う計画生産等を考慮して設定して、明日、審議会に諮問をして答申を得て決定をしていくということにさせていただきたいと考えております。
 それから、乳用雌牛の導入でございます。
 私どもが、手元にありますのは、搾乳牛の更新に当たりまして、自らの経営の中で生産しておられるのが大体経営の三分の二程度でございます。残り三分の一は外部から導入しているというような形になっております。これに対しましては、近代化資金とか各種制度資金により計画的な導入に対して支援をさせていただいておるところでございます。
 仮に、自家生産で対応している、これに支援をするということになりますれば、自家生産で対応している生産者との間の公平の問題というようなもとでありますとか、あるいは需給バランス、それは需給の状況にもよりますけれども、そのようなことから従来からは適切でないというふうに整理をしてきているところでございます。

○紙智子君 いつも、この質問すると、判で押したように機械的な答弁が返ってくるんですよね。要するに、計画的、算定に基づいてという話をされるんですけれども、本当にそれでいいのかというふうに思うんですよ、今の現状に照らして。そこをもっと変えてほしいということを私は強く言いたいわけです。
 川上から川下の話すれば、先ほど来も話にありましたけど、生産のところの川上からだんだんメーカー、そして販売店、消費者というふうに波及していくわけですよね。結局は、国民生活全体に波及していって、もう続けられなくなってやめてしまうということでどんどん生産基盤がなくなっていくわけですから、そういうことを黙っていていいのかということなんですよね。このことを真剣に考えていただきたいと思うわけです。
 もう一点。都道府県で飲用向けの酪農生産を行っている農家の話なんですけれども、〇七年から〇八年と二年続いて採算割れだと言うわけです。一戸当たりの赤字額で、合わせて約五百五十万円だというふうに指摘されていると。これはさっき山田先生がいろいろ言われていて、まだ都府県の方が額的に言えば北海道よりは少ないのかもしれませんけれども、それでも採算的には赤字、採算割れで来たと言うわけですよね。
 多くの酪農家の方は、家族の労賃などの家計を切り詰めて何とかする、あるいは借金、貯金を取り崩すというような形でやってきているわけで、これをやっぱり継続できるように経営安定対策というのはどうしても必要じゃないかというふうに思うわけです。
 若い担い手がこの後希望を持って続けられるようにしていくというのが今、本当に切実な声になっているわけです。農家の息子、娘が都会に働きに出ていっているわけですよ。なかなか自分のうちでは大変だというので、働きに行って派遣労働で働いていると、今、派遣切りに遭ったと、それで地元に戻ってきたとしても、その派遣で働いていた分の労賃も払えないような今現場の実態になっているということでは、今、農家で引き取ったらいいじゃないかという、一方では雇用の問題で議論もあるわけだけれども、やっぱりそういうことも含めて、そういう経営安定対策、ずっと続けられるようなことを考える必要があるんじゃないかと思うんですけれども、この点、大臣いかがですか。

○委員長(平野達男君) 石破大臣、先ほどから指名されていますけど、どうですか。どうしますか、答弁を。大臣。

○国務大臣(石破茂君) 本年三月から飲用牛乳向けの乳価を十円上げるというのは、ずっと御議論のあるところであります。ただ、それがかえって消費の減退を惹起するのではないかということでセーフティーネットは張らなきゃいけませんと。そしてまた、国産の飼料に立脚した酪農政策を展開をしなければなりませんし、乳用牛の遺伝的能力の向上等を通じた酪農生産基盤の強化も図らなきゃいかぬということであります。
 私は、正式には何年ぶりなんでしょう、十八年ぶりですかしら、この問題、また正面から議論をさせていただいているのですが、北海道、都府県で事情は違います。違いますから一律に論じることはできません。価格の決め方とかそういうものは、やっぱりルールにのっとってやるということは基本だと思っているのです。年々によってルールが変わったりしますと全く安定性を欠きますので、それはルールにのっとって淡々とやるということなのだと私は思っております。
 ただ、関連対策みたいなものは、負債対策も併せて、それぞれの経営、個々に着目をしながら、精緻にやっていかねばならないのではないかというのは先ほど風間委員にもお答えをしたとおりでございます。実際に、経営はどんどん悪くなっているじゃないか、どんどんやめていくじゃないかというようなことを看過することはできませんので、関連対策が本当にそれぞれの個々の酪農経営にとって意味のあるものによりなるように今後とも努力はしていかねばならないと思っております。

○紙智子君 先ほども北海道の酪農とそれから都府県とは違いがあるということを言われているんですけれども、やっぱりどっちも成り立たなきゃいけないわけですよね。北海道の酪農家の人は北海道さえ良ければいいなんて全然思っていなくて、なぜかというと、北海道でどんどん牛を増やしてやっていくときに、牛を今度買ってもらわなきゃいけないわけですよね。都府県の方は北海道から牛を導入して、それで回っていっているわけですから、どんどん今都府県の酪農が、去年、おととしですか、もう一千二百戸とか一千戸とかという、離農しているという中で、どんどん縮小されている中で、売りたくても売れないような状況も一方で出てきているわけですよね。だから、本当に健全でなければ成り立たないと、どっちも、そういう関係にある中で、本当に何としてもそこがちゃんと安定的にいくようにしていかなきゃいけないということなんですけれども。
 ちょっと時間がなくなっちゃうので飼料の問題とかはちょっとカットさせてもらって、今のことを含めてもう一回大臣に聞きたいんですけれども、やっぱり乳価どうする、価格どうするというだけで対応し切れなくなっていると思うんですよ。実際、今年に入って、一月ですか、北海道の農協酪農畜産対策本部委員会かな、ここはJA中央会やホクレンや全道の農協幹部がもう一斉に集まって、そういう場で農水省の担当部との意見交換が行われたと思うんですよね。その中で意見いっぱい出されているわけですけれども、食料生産をしている農業において、貯蓄ができるだけの所得が確保されなければだれも農業をしなくなると、それから単年度単年度で経営が成り立つようにすべきなんだと、それから様々な地域で作物ごとの経営が成り立つような政策が必要だといった意見がずっと出されているわけです。
 やっぱり、いかにして経営安定を図るかということが焦点になっているという中で、もっと先を見て、中長期的という話もさっきされていましたけど、本当に先を見て畜産・酪農経営を守るために、やはり畜種ごとに必要な所得を確保することを目的とする、かつてやられていましたけれども不足払い制度のような、こういう価格制度の導入の検討をやっぱり今するときじゃないのかと思うんですよ。
 かつて、二〇〇〇年ですかね、議論して法改正して、言ってみれば政府が保証価格というのを決めてやるというのを変えたわけですよね、二〇〇一年から変わったわけだけれども、そのときの導入の理由で言っていたのは、要するに実需者のニーズを生産者に伝達して加工原料乳の生産を促進するんだと、そのための法改正なんだと言ったけれども、結果やってきてどうなっているかと見れば、こんなふうにどんどんどんどん縮小されていって生産基盤そのものがもう失われてしまいかねないという事態の下ですから、改めてそこのところを見たら、その価格制度の在り方といいますか、全体安定していくような仕組みということで、そういう新たな価格制度の導入の検討こそ今必要なんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) それでは、不足払いがそんなに良かったかというと、不足払いの当時もいろんな問題はあったわけですよね。だから今の制度に移行している。やはり、私は、価格交渉力というものがどれだけきちんとできるかということだと思っておって、価格交渉力をきちんと付けるためにいろんなハードの事業もやっていきたいと思っています。
 しかし、今の制度やってみてこんなじゃないかということは、それはそういう面もございますので、価格というよりは、むしろその関連対策をどのようにして打っていくかということではないかと思っております。
 新しい不足払いから今の制度に移行してもう十年近くたつわけでありまして、今の制度の効果の検証というのは、それはやっていかねばならぬ。それは、ありとあらゆる政策を検証すると、こう申し上げております。その中の一つとして今の制度がこれで良いのかどうか。私は、今の制度を維持しながら価格交渉力というのを強めていくべきだというふうに考えておるものでございますけれども、いずれにしても、この制度を維持するというからには、この正当性というものの挙証責任は私どもにあると思っております。

○紙智子君 ちょっと時間になってしまったんですけれども、やっぱりその関連対策ももちろん必要だからやらなきゃいけないと思うし、その不足払い制度の当時がすべて良かったのかというと問題もあったと、それもそうだと思うんですよ。だけど、やっぱり実際にこの間やってきたことの検証と今言われたので、それは大事だと思うんですけど、検証しつつ、太いところで今この事態を根本から解決していくというための対策、是非考えていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。