<第169回国会閉会中審査 2008年9月18日 農林水産委員会 第01号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 午後から様々な角度から議論がされてきたと思います。それらを踏まえて、幾つか私も質問をしたいと思うわけです。
 今度の事故米の転用の問題ですね。ミニマムアクセス米として輸入されていた米のうち、事故米の扱いになっているものが、この三笠フーズ株式会社、浅井、太田産業、島田化学工業などに非食用として販売されていたにもかかわらず食用に転用されて売られていたと。もう国民は本当に大変な怒りと不信を募らせているわけですよね。特に、その米の中に最強の発がん物質と言われるアフラトキシンB1に汚染されたものもあったり、基準値の五倍以上のメタミドホスに汚染されていたりと、こういうものがあったと。さらに、この事故米がそういう事態でありながら堂々ともうスーパーだとか米穀店に売られていたと。
 このことは、これまで私などがミニマムアクセス米について、これはやっぱり日本の国内の米全体に影響を与えるのじゃないかというふうに言うたびに、決してそんなことはありませんと、決してこの主食用の米の需要には影響を与えないんですということを豪語していたわけですよ。その発言が結局は全くの虚構であったということを示すものだというふうに思うんです。
 まあこういう事件を起こしたということでいうと、三笠フーズもそれらも責任重大で許せない問題だというふうに思っていますけれども、こういう事件を引き起こす原因をつくった農水省の責任というのはより重大なんだというふうに思うんですね。
 ところが、農水省の方の認識はどうだったかというと、先ほど来いろいろ議論があったように、その白須事務次官が、立入調査は不十分であったと言いながらも、しかしそのことをもって責任があるかと言われれば、責任はないというような発言をしたわけですよ。
 それに対して大臣は注意をしたということなんだけれども、大臣は先ほども、農水大臣責任なかったなんて言ってないんだと、責任はあったというふうにおっしゃったんだけど、しかし、その責任の中身は何かというと、冒頭に報告の中で言われていましたけれども、不正な実態を見通せなかったという責任、そのために消費者に不安をあおったという責任と。見通せなかった、そして不安をあおったというふうにおっしゃったわけですよ。
 だけど、私はその程度じゃない、そういう責任じゃないだろうと思うんです。もっと根本的に言えば、本来は水際のこの食品の検疫ですね、ここで食品衛生法の違反だと言われて、積み戻しないしは廃棄と、こういうふうに指示をされていたミニマムアクセス米を年間七十七万トンですか、今、大体、義務だから輸入しなきゃいけないと。これ義務でも何でもないのに、義務だから輸入しなきゃいけないということで、どんな不衛生な米も、これ輸入してきたと。それがやっぱり今回の事件の大きな原因であって、それを進めてきた農林水産省の責任こそ、これ真っ先に問われなければいけないというふうに思うわけですけど、この点について、大臣、いかがですか。

○国務大臣(太田誠一君) 紙委員の御指摘をよく理解をしていないのかもしれませんけれども、ミニマムアクセス米は、これはいわゆる完全な関税を、高関税を認めてもらう代わりに課せられた義務でありますので、今、農林水産省がどういう……

○紙智子君 そんなこと言ってるんじゃない。

○国務大臣(太田誠一君) 意図であれこれだけは輸入しなければいけないということでございます。その中には非衛生的なものもあるでしょうし、食品衛生法違反だったものもあるかもしれない。だからそれを水際で検査して、これ以上は、これは食用としては使わないということでございます。

○紙智子君 また後戻りですよ、今の答弁では。(発言する者あり)

○国務大臣(太田誠一君) いやいや、そういう検査を、水際検査でそれは入れないことにするということだと思います。(発言する者あり)いやいやちょっと分からない。

○紙智子君 答弁後戻りしちゃ駄目ですよ、いろいろ議論こう来ているのに、また先に戻っちゃって。だからそういうことはしようがなかったというわけですか。その事故品として扱われたものをそもそも入れちゃいけなかったと、それを入れたというところが問題だということを言っているのに、それもし入れなかったら今度のような事故につながっていなかったわけでしょう。そこのところを言っているわけですよ。
 今回のこの事件の事故米の数量でいいますと、二千七百七十九・五トンだと。ミニマムアクセス米が輸入され始めたのは九六年からですよね。九六年から二〇〇七年までの検疫で食品衛生法違反というふうに言われたミニマムアクセス米は、いろいろ調べますと一万七百二十八トンですよ、全部で。それらのミニマムアクセス米も日本に非食用として入ってきたと。いろいろ聞いて調べていきますと、輸入商社と農水省との間で契約が交わされていたと。食品衛生法違反とされたミニマムアクセス米も非食用として輸入できるということになっているわけです。選択とかなんとか言っていますが、輸入できるということにしてきたわけですよね。そうすると、輸入商社にしてみれば、どんな非衛生的な米を持ってきてもこれ入るわけだから、輸入できるわけだから、これはリスクを負わなくていい。確かに安く売らなきゃいけないというのはあるけれども、リスク負わなくていいわけですよ。こんなおいしい取引はないと。
 一方、政府にしてみれば、とにかく輸入すれば非食用であってもミニマムアクセス米の数量としてはカウントできるわけだから、そうしたら七十七万トン、とにもかくにも入れることはできるというような意識が働いてきたと思うんですよ。だから、農水省から見れば願ったりかなったりだと。
 じゃ、この一万トン超えるような食品衛生法違反のミニマムアクセス米は、じゃ、どんなふうに扱われてどこに販売されていったのかということでいうと、今、過去五年間については今一生懸命解明しているというんだけれども、その前のこともあるわけですよ。これ一体どうなっちゃったのかと。これについてはどうですか、大臣。

○政府参考人(町田勝弘君) 現在お示ししておりますのは、十五年以降のものでございます。これにつきましては、公文書といいましょうか、関係の書類の保存期間という関係もございまして、現在すぐ分かったものはこの五年ということで行っているものでございます。
 また、食品衛生法違反ということで、残留農薬基準がオーバーしていれば、これは食品衛生法違反、違反する可能性が高いものでございまして、これにつきましてはベトナムから入りましたアセタミプリド、この一件、これまで一件ということになっております。

○紙智子君 それで、ちょっと厚生労働省にお聞きしたいんですけど、一万トン超える食品衛生法違反のミニマムアクセス米のうち、その多くがカビ発生って書いてあるんですね、全部、見てみると。カビ発生、カビ発生、カビ発生、ずうっと書いてあるんだけど、このカビ発生ということで食品衛生法違反になったんだけれども、そのカビが最強の発がん物質であるアフラトキシンB1なのかどうかということについて検査していますか。

○大臣政務官(金子善次郎君) 先生御指摘のアフラトキシンにつきましては、検査は実施しておりません。と申しますのは、食品衛生法上の体系から申しまして、カビ等を理由に食品衛生法違反として取り扱われた輸入米につきましては、要はカビ米等というような理由で違反ということになるわけでございますので、それらにつきましては更なる検査の必要性というものがないというような判断をいたしておりまして、格別にアフラトキシンということにつきましては実施はいたしておりません。

○紙智子君 だから、していないんですよ、要するに。していない、カビに汚染されていた、それもアフラトキシンに汚染されていたかどうかもだから分からないと。そういうものが、一万トンを超えるものが日本国内に輸入されて、その後の流通経路も分からないし、場合によっては主食として転用されていたかもしれないというか、実際転用されていたという事実があるわけですよね。
 現実には、今回もう病院とか福祉施設だとか保育所にも回っていると。この責任を一体どうするのか、だれが取るのかと、大臣いかがですか。

○国務大臣(太田誠一君) この責任を取るというのは、先ほどから申し上げておりますように、法令上の不備のせいで起きたとすれば、それは法令を直さなければいけない。それが再発防止策になるわけでありますし。法令どおりにしていなかったためにそういうことが起きているということであれば、その個人の刑事責任を問うことになるわけでございます。
 そういうふうにして責任は明らかにすべきものと、厳格にこれは行われるべき処分は行わなければいけないと。また特に、内閣府の第三者委員会において、そのことは法曹界の代表者なども含めて厳格な結論を出してもらおうとしているところでございます。

○紙智子君 もう食べちゃった人がいるかもしれないわけですよね。そして、どうしてか分からないけれども具合悪いなと、だけれども理由が分からないということだってあったかもしれないわけですよ。本当にその責任というのは重大だと。
 農水省は、この非食用の米の工業需要がどれだけあるのかという、これもつかんでいなかったというのがさっきの話の中でもはっきりしたと思うんですよ。結局つかんでいなかったと。
 工業用ののり需要といっても、のり業者の方から見れば、要はでん粉であればいいわけだから、小麦でもいいし、タピオカなど幾らでも安く手に入るわけですよ。だから、何もあえてお米でなくたってよかったわけですよ。
 ですから、本来非食用の米の工業用の需要なんてほとんどないと。そんなことは重々分かっていながら、農水省は、そういうことが分かっていたから逆に、実需者に直接売るんじゃなくてわざわざ三笠フーズのような中間加工業者に事故米を売っていたんじゃないかと、正直に言えばそういうことだったんじゃないのかということなんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(太田誠一君) 私も競争入札で大半が売られているものと思っておりましたので、それはだれが参入してきても文句は言えないと。製造業者だからといって横流しをしないとは限らないというふうに思っておりましたが、随契も多いということを後に知りましたんで、それならば話は別だというふうに今は考えております。

○紙智子君 それで、ちょっと今の答弁も納得できないんですけれども、問題はここにとどまらないんですよね。
 こういう事故米が堂々とスーパーで売られていたということは、じゃこれ以外にも、例えば加工米だとかほかのものもそういうことがあるんじゃないだろうかと当然私たち疑問に思うわけですよ。
 思っていたら、やっぱり案の定、加工米についても、その米が、三笠フーズが加工米を主食用にしていたということが明らかになったわけですし、もう少し以前にも、株式会社伊藤謹ですか、ここが加工原料用の輸入米を主食用に転売して不当に利益を上げていたと。米粉に加工する条件で買い受けた輸入米を米粉に加工しないでそのまま転売していたということが発覚しているわけですよ。
 だから、やっぱり氷山の一角なんじゃないのかと。だとしたら徹底的な調査がこれ必要だと思いますけれども、いかがですか、調査されますか。

○政府参考人(町田勝弘君) 報道等あります。徹底的に調査をしたいと思います。

○紙智子君 それから、もう一つなんですけれども、ちょっと資料も要求しているんですけれどもなかなか出てこなくて、質問までには出してほしいと言っていたんですけれども出てこないんですけれども、小麦です。
 小麦について見ても、これ九五年から二〇〇七年にかけてミニマムアクセス米を上回る三万八千七百一トンもの食品衛生法違反の輸入小麦が非食用で輸入されているわけですけれども、果たしてこれミニマムアクセス米と同じような事態がないのかどうか。これ厳しくチェックすべきではないかと思うんです。
 なぜかといいますと、この今までの経過もあるんですけれども、実は私どものところに内部告発が来ています。それで、元製粉工場に出入りしていた業者の方から、当時三笠フーズと同じようなことが行われていたんだと、過去ですね。行われていたと。
 それで、米と違うのは、小麦の場合数千トン、数万トンという物すごい規模だと。ダンプで毎日搬入がされるわけだけれども、その際に、山のように盛り上がって積み重ねられるところの中に大小のカビの山があって、中には赤い字で使用禁止と書かれた紙の切れ端が交ざっていることもあったと。色が変わっていたり変なにおいがしたりと、そういうのがあって、それを、悪いものについてはちょっと取り除いて、そして正規の麦と分からないように、物によっては一五%あるいは一〇%、五%と交ぜていたと、こういうことが指摘をされているわけですよ。
 そういう事態を見ても、やはりこれについてもきっちりと点検すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(町田勝弘君) 一点、事実関係だけ御説明、まずさせていただきたいと思います。
 御指摘のありました食品衛生法違反三万八千トンということでございましたが、私どもこれ、十四年に二万七千八百十五トンと大変多い数字でございましたので確認をしましたところ、この二万七千八百十五トンにつきましては、染料が付着していた大麦が混入されていたということで、これはすべて返送されておりまして国内には輸入されておりません。
 このほかのものにつきましても、これまで輸入検疫におきまして残留農薬基準、超えた事例はございません。食品衛生法違反になったのは水漏れによる腐敗等でございます。これらのものにつきましては、食用に回らず飼料等にされているということでございます。
 今後、消費者の皆様に不安を与えないようにということで、食品衛生上問題になります輸入米穀、お米につきましては輸出国への返却又は焼却等廃棄処分を行うということでございますので、輸入小麦につきましても同様な取扱いを行っていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 今そういう説明あったんですけれども、これらについても非常に重大な問題ですし、やっぱり本当に分からないところで、もしかこれが回っていたんだとしたら、分からないところでパンになったり、めんになったりしたものを口に入っているということにもなりかねないということだと思います。
 ですから、これを受けて、ちょっと大臣、最後に、こういう事態に対してもきちんと一刻も早く点検すべきだと思いますので、それについて御答弁いただきたいと思います。

○国務大臣(太田誠一君) MA米のみならず小麦についても同様のことがないかということでもって厳格にチェックすべきだというのは、おっしゃるとおりでございます。その点について、今御指摘のあった、今日御指摘のあった様々な点について幅広く見直しを指示をいたしたいと存じます。

○紙智子君 最も国民の食の安全、安心というところで責任を持ってやらなければならないところで、今ずっと議論になって明らかになってきたように、結局は、実態もないのに、やっぱり無理に、もう無理して無理してMA米を買い入れて、その処理でどうするかということでとにかく吐き出したいと、そういうことが優先されて、本来ちゃんと点検したり把握しなければならないことも把握していないと。
 こういう事態というのは本当にゆゆしき事態でありまして、是非、まだ今解明途中のところもたくさんあると思いますから、引き続きこの問題について取り組んでいただきたいということを最後に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。