<第169回国会 2008年6月9日 決算委員会 第11号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず初めに、後期高齢者医療制度の問題について総理に伺いたいと思います。
 先週の六日、後期高齢者医療制度の廃止法案が参議院で可決されました。ここには国民の皆さんの痛切な願いが反映されているものです。そして、先日、沖縄の県議会議員選挙が戦われましたけれども、ここでも最大の争点となったのがこの後期高齢者医療制度でした。そして、結果は、与党が惨敗をし、過半数を割るという事態になりました。
 この敗因について、総理もまた官房長官もそのことが背景にあるということをお認めになっていると思います。そうであるならば、ここはきっぱり廃止をされたらいかがでしょうか、総理。

○内閣総理大臣(福田康夫君) やめるかどうかという話になりますが、そう簡単なものじゃないんです。今、どういう問題点があるかというものを集中点検いたしております。それの答えが出てまいりますので、そういうものを見て総合的に判断したいと思っております。

○紙智子君 手直しでは駄目だというのが国民の皆さんの声なんですね。やはり、制度の根本的な考え方、年齢で切り分けて、そして医療を抑制する、差別する、こういう制度の根幹そのものに間違いがあるということで国民の皆さんが怒りを上げているわけです。そして、その怒りが、説明されればされるほどそのことに気が付くわけですから、ますます強くなってくる。そういう中で、先日、そのことを反映して廃止法案が出されて可決をされたわけです。
 そして、これについては、与党の中、自民党の皆さんの中でいっても、本当に長老と言われる中曽根元総理大臣やあるいは堀内総務会長さんなども含めて、こんな冷たい制度じゃ駄目だと、堀内元総務会長などは、この思想はまさにうば捨て山だと、こういうふうに言われているわけですよ。ですから、やっぱりそこを真摯に受け止めて、これは廃止すべきだということを重ねて申し上げておきたいと思います。これはもう答弁は要りません。
 次に移らせていただきます。
 六月三日からローマでFAOが主催する食料サミットが行われました。ここに総理も出席をされて、そして発言をされました。今飢餓で苦しむ人たちのためにも一刻も早く支援の手を差し伸べなければならないと、それからまた、こうした今の食料不足の中で、世界最大の食料純輸入国である我が国においても、食料自給率を高めることを通じて今の不測の事態に対して貢献できるように、そのために努力を、あらゆる努力を尽くさなければいけないという発言をされたわけです。
 私、お聞きしたいんですけれども、総理はこの自らの発言についてどのような理解の下でされたのかと。つまり、世界最大の食料純輸入国、確かにそうです。そのことは、つまりどういうことかといえば、日本はこれまで世界各国の食料を買い集めてきた、そのことが今日この食料危機、飢餓を一層促進しているということにつながっているということを自覚されての発言だったんでしょうか。

○内閣総理大臣(福田康夫君) 今まで食料は世界でどちらかといえば余剰があった、だから我が国も輸入できたんです。そして、また同時に、低廉だったでしょう。低廉だったということはその大きな証明であると思いますよ。ですけれども、この一、二年状況が変わってきたというそういう状況の中で、我々は新しい状況ということで考え方を修正していかなければいけないという時期に至っているというふうに思っているわけであります。
 この間のFAOで話をいたしましたのは、それは、緊急的に食料を困っている国に、飢餓にあえいでいる国に支援のために拠出するということ、そういうこととか、今こそそういう国々においても農業生産高を増強するための生産力強化、これを図らなければいけないということ、そのために我が国としても応援できることがあれば応援しましょうといったようなこと、それから、バイオマスにつきましても、これを食料、穀物に関係のないセルロース部分を利用するといったような新しい技術をもっと開発しようではないかと、こういったようなことを提言したわけであります。

○紙智子君 私は、やっぱり人ごとであってはいけないと思うんです。やはり、自分の足下を見なければいけないと思うんですね。
 米について言いますと、今世界の米の価格というのは三倍以上に上がっていますよ。そういう中で、アジア諸国では米が不足して手に入らないと。それこそ暴動が起きるような事態になっているわけです。そういうときに日本では、米を減反して、作っちゃいけないと、余ったらペナルティーだと厳しく規制を掛けているわけです。米が余っちゃいけないといってそうやっておきながら、一方では外国からの米を輸入しているわけです。
 これまで外国からミニマムアクセス米で入ってきているのは八百三十二万トンです。そして、百五十二万トンが今余って在庫になっているわけです。しかも、これ自体もおかしいわけですけれども、今度はその余っている輸入米を三十万トン放出する用意があると国際公約をされてきたようなんですけれども、困っている国にお米を支援するのは、これはいいと思いますけれども、しかし、この問題にしてもアメリカからの了承があったからじゃないんですか。アメリカがうんと言わなければできなかったんじゃないかと。
 ですから、こういったことを含めて、国内で減反する一方、輸入を続ける、こういう矛盾をそのままにして洞爺湖サミットを本当に開いていいのかと、私は恥ずかしいことになるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。総理です。

○委員長(小川敏夫君) 総理、答弁難しいですか。

○紙智子君 総理に、基本的に総理に。農水大臣は明日、明日委員会ありますので、そこでやりたいと思います。

○委員長(小川敏夫君) 若林農水大臣、では、簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(若林正俊君) 一言だけ。
 MA米を援助用に出すということなど、アメリカの了承が必要であるかのような御質問がございましたけれども、そのようなことはございません。我が国の判断として従来もMA米を援助に活用してきておりますし、これは我が国の判断として行うことといたしているわけでございます。

○紙智子君 総理。

○委員長(小川敏夫君) 総理、引き続いて答弁求められていますが。

○内閣総理大臣(福田康夫君) ただいまの農水大臣の答弁と同じでございます。

○紙智子君 私が問題にしているのはそういうことじゃないんですね。
 結局、世界で今食料が不足していると。不足しているときに、増産しなきゃいけないと呼びかけられているわけですよ。その増産が求められているときに、何で今、日本で輸入を続ける一方で減反しなければならないのかということなんですよ。おかしいですよね、これは明らかに。それは、やはり政府が米の買入れ価格をこの間一貫して下げてきた、さらに米の価格保障をなくして価格を市場に任せてきた、こういう問題があるわけです。
 ちょっとパネルを見てほしいんですけれども、このように生産費を下回る政府の米の買入れ価格ですよ。ずっとこれ下がってきているんですね。この青い線というのは実は生産費です。生産費よりも常に下回っている、そういうことで続けてきて、全体が下がっているわけですよ。そして、去年の秋口には、この六十キロ当たりの米価が一万四千二百六十五円、こういうふうに下がってきたわけです。
 これは、実は米を作っている生産者の九五%はもう採算割れなんですよ。作れば作るほど赤字になると、こういう事態になっているんですね。そして、これ、労働報酬に換算して計算出していますけれども、一時間当たりで二百五十六円ですよ。これじゃ到底やっていくことできないという事態になっているわけです。
 ですから、本当に、総理が約束されてきたように、言われているように、増産しようと、自給率上げていこうということであれば、米の価格を保障して、減反をしなくても安心して生産に取り組めるようにするべきではないんでしょうか。いかがですか。

○国務大臣(若林正俊君) 基本的には食料の価格、これはやはり需給、需要と供給の中で決定される、そのようなメカニズムでなければ、これは長期的に、安定的に供給が需要に応じて行われるというようなことが担保されないことだと、このように考えておりまして、国として、米の価格につきましても、市場の需給情勢を反映した形で取引が行われるように食糧法を定めてそのような運用をしているところでございまして、やはり需給を反映した形で価格が決定されるというメカニズムは維持していかなければならない、このように考えております。

○紙智子君 今問題になっているのは、国際的にいっても、国際的な人々の需給そのものが問題になっているわけですよ。今までとは大きく情勢変わってきているわけですよ。全体に不足している、そういう中でもっと各国は増産しなければならないと、そういう状況になってきているからこそ、EUも減反政策決めていたわけだけれども、これ撤廃することを決断したわけですよね。日経新聞に出ていますけれども、そういう記事が出ています。それから、アジア各国も今、米の増産を次々と打ち出しているわけですよ。こんなふうに、今の状況を踏まえて各国が切り替えてきている。そういう状況の中で、相変わらず同じ延長線上で、いや、需要と供給のバランスがと、そういうことではやっぱりいけないと思うんですね。
 我が党は、日本農業の再生プランの中で、米については六十キロ当たり一万七千円の価格保障をする、これ不足払い制度ですけれども、不足払い制度の導入をうたっていますけれども、こういう価格保障制度を導入すれば無理な減反をせずに安心して米作りに取り組めるわけです。そして、この価格保障制度によって飼料の自給率、食料自給率の引上げ、これもつながっていく飼料米、これも積極的にこの後作っていくことができると。そのことは世界の食料生産にとっても寄与できるはずだと思うんですね。
 今、大きなそういう国際情勢の変化の中で、やっぱりこういう方向を転換することが本当に求められているんじゃないかと思いますけれども、総理、決断すべきではないでしょうか。

○内閣総理大臣(福田康夫君) おっしゃっていることは、半分分かりますけれども半分分からない。
 分かるところは、それは確かに生産者の生活を保障した方がいい、高い値段で決めた方がいいということです。それはそうしてあげたい。だけれども、じゃ、高い値段で国民がそのお米を買って食べると、そういうことになるわけですか。そこのところはちょっとよく分からないんですけれども、それとも政府が差額でも補償しようと、政府が出すんですか。政府は財政再建で今一生懸命やっているところなんですよね、そういう部分も考えていただかなければ、総合的に考えて今の政策を取っておるのであります。
 しかし、おっしゃるように、今確かに世界の需給というものは変調を来している、そういう中でもって我が国も今のような自給率でいいのかと、こういうことは大いに反省しなければいけないというふうには思っております。

○紙智子君 今、財政が大変だからということをおっしゃったんですけれども、私は、本当に農業予算そのものも振り返って見てみますと、もうどんどん切り削ってきているんですよ。かつては三兆円超えるだけの農業予算あったわけですよね、農林水産予算が。今はもう補正予算付けなければ二兆円台ですよ。
 ですから、ずっと予算を下げてきて、これ七一年のときには一般会計に占める農業の予算というのは一一%ありましたよ。それが今何%になっているか御存じですか、今三%ですよ。これだけ減らしてきて、これだけ深刻な事態になっているときに、お金がないからということで補償するのは難しいというのは、これはやっぱり考え方変えなきゃいけないと思いますよ。
 今私たち提案している再生プランでいきますと、例えばそういう所得補償、不足払い制度ですけれども、不足払い制度ということでさっき言ったようなことをやりますと、大体九千億ぐらいのお金でできるというふうに提案しています。二〇〇八年度の今年度の予算の中で大体、所得とか価格のところに回っている農業予算というのは五千四百億か六百億だと思います。ですから、それにプラスあと四千億ぐらい上乗せすれば、これはできることになるわけですよ。
 しかも、WTO協定の中で価格支持は削るという方向で一致しているということをいつもこのできない要因に挙げるんですけれども、これは全部否定しているわけじゃないですから。それぞれの国に対して必要な補助については確保できるということを認められているわけですよ。日本はその枠をほとんど使ってないですよ、使ってないに等しいですよ。各国はみんな使っているわけですから、そこを本当にその気になればあしたからだってできることだと、私たちはそういうふうに考えているわけです。
 先日総理が公約したことを本当に実現するためには、私は、やっぱり今、日本農業の政策転換が求められていると、そのことを強く申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。