<第169回国会 2008年4月24日 農林水産委員会 第8号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 ちょっと質問時間が短いので、答弁も極力簡潔にお願いしたいと思います。
 それで、最初に、食品安全部長に来ていただいています。米国産牛肉の危険部位の混入についてなんですけれども、昨年の四月、当時は安倍総理でしたけど、訪米前に、厚生労働、農水両省は、輸入検査の体制を大幅に緩和をして、米国産牛肉の全頭検査から抜取り検査にする日米合意を結んだわけです。結果、昨年八月の輸入時の検査で危険部位の混入が見逃されたということだと思うんです。
 ということであれば、ほかにもそういう見逃しがないのかということももちろん問題になるわけですし、それから、日本向けじゃないというんだけど、こういうことが繰り返されているわけで、当該施設だけの禁止じゃなくて、やっぱり全体をまず禁止すべきだと、その上できちんと調査をすべきだというふうに思います。そうでなければ日本国民の安全守れないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(若林正俊君) 先ほども私から御答弁申し上げましたけれども、私は、今回のこのような過って積載されたものが入ってきたと、こういう事例だと考えておりますけど、それにしましても、こういうようなものが、こういうことが起こったということは大変に遺憾なことだとまず考えております。
 しかし、委員がおっしゃられましたように、従来、全箱調査、確認後調査をしてきたものが、昨年の六月でこれはチェックのシステムを変えまして今の仕組みに切り替えたわけでございますが、新しい今の、時間の関係ありますから新しいシステムの説明は省略いたしますけれども、こういう日本国内における新しいチェックシステムの下で市場流通の前にこれが発見されたという意味で、現在の我が国が取った安全確保のためのシステムは当時想定したとおりの機能を果たしているというふうに認識をいたしておりまして、今回の事例は、現時点では日本向けの輸出ではないものを誤って積載した個別事例というふうに考えられますので、全面の輸入停止措置を講じました平成十八年一月の事案のように、システムとして米国農務省が適合しているという証明がなされたその品物の中から出てきたケースとは違っているということ、それから他の施設からは一昨年の七月の輸入手続再開以後これまで類似の問題は全く発生していないことということを踏まえますと、まずは当該施設からの輸入手続を今保留しておりますが、他の施設からの輸入牛肉については、念のために輸入時の検査段階の抽出率を引き上げるというような措置を講ずることによって対応をすることが適当と考えているわけであります。
 今後、これらの措置が更に必要かどうかにつきましては、米国から提出される調査結果の報告を踏まえて適切に対処していきたいと、こう考えております。

○紙智子君 全く納得できないです。国民も納得できないし、安心できないと思います。やっぱり、抽出率を高めただけでは全然足りないと思いますし、前回のときもそれは成田で発見されて全面禁止にしたわけですから、やっぱり毅然とした対応を取って、米国にちゃんと対応させるべきだというふうに思います。そのことをちょっと強調して、法案の質問に入ります。
 京都議定書のCO2の削減の目標の達成に向けた今度の法案ということでは、これは非常に重要で賛成です。以前からこの森林荒廃が問題となってきたわけですけれども、地球温暖化問題を契機として人工林の間伐、ここに更に取り組むことが必要だと思っています。
 それで、間伐面積二十万ヘクタールの上乗せを目指すという、今度、ことなんですけれども、森林吸収源の対策予算は、この間、緊急の間伐対策の補正予算と合わせて対応してきたと思うんですね。今後、やっぱり本予算を増額していくということ、そういう重要性についての御認識をお聞きしたいのと、この法案に伴う新たな予算措置が十億円なんですけれども、さっき議論出ていましたように、市町村の取組、ここをよく見て増額を図るべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(若林正俊君) 当初予算で所要の国費負担分が措置されるということが望ましいという基本的な考え方については私もそのように思いますけれども、予算編成の中で農林水産予算全体、更に国の予算の枠組み、こういうような中でそれが達成できない場合には補正予算をもってしてもこれを確保するという姿勢で、何としてもこの二十万ヘクタールの整備を進めなきゃいけないという意味で、その予算を確保するつもりで頑張っていきたいと思っているところでございます。
 なお、この十億円との関係につきましては、これは本体、大宗は、従来の国そして都道府県を通じて森林組合、また素材生産組合がこれを受けて整備をするというのが大宗でございます。ただ、そういう中にありましても、従来から何ら国の支援がない中で市町村が小さい森林所有者の行う間伐などについて単独、独自でやってきているのがあるわけでございます。
 こういうような熱心な市町村、あるいはその市町村管内にあります小さい所有者で、周りと組んでできないということで、にもかかわらず所有者が熱心に取り組むというようなものを、これも一つの新しい助成の体系の中に加えることによりまして全体の整備を進めるという意味でこの新たに市町村交付金によります市町村の取組を対象としたわけでございまして、その意味で、この成果が見られるようになりましたら更にこれを拡充をしながらいきたいと思いますが、基本は、やはり国、都道府県を通じての従来の助成体系を積極的に進めていくというのが基本だと考えております。

○紙智子君 IPCCの第四次評価報告書で、地球温暖化に対する森林の貢献ということで、一つは森林面積の維持増加と、そして、次に森林蓄積の維持増加ということで、ここに着目して人工林の間伐を進めるということで温暖化の緩和策というのが進める方向だと思うんですけれども、そういうふうに言いながら、一方で、天然林の伐採を全国的にも大規模に進めてきているという例があるわけです。
 例えば、北海道の森林管理局で、二〇〇四年度の国有林野の事業統計で概算すると、天然林の伐採比率が八六%に上るんですね。檜山森林管理署、ここは二〇〇五年に国有林内の北限のブナ、非常に重要な、貴重なブナの天然林が残っているんですけれども、この一部、皆伐に近い伐採をやっているわけです。五〇%以上というふうに見積もられる伐採率で、ここは国土保全タイプの森林でもあるわけですね。それから、尾根筋の土砂流出防止の防備保安林、これも伐採していると。土場も計画の五倍の面積を皆伐して、作業道でいうと八メートル幅、縦横無尽に造られていたわけですね。
 対象区域を大幅に逸脱した過剰の伐採という問題や林野庁の職員による違法伐採もあったということで環境保護団体から指摘されて、現地を調査して、当初、いや、伐採率一九%だから問題ないんだと言っていたわけですけれども、いや、そんなはずないということで言われて、それでいろいろ調べたら、そうじゃなくて、実際には本数も百四十一本多くて、伐採率は二九%だったわけです。訂正して追加報告書を出したという経過があるわけですよ。
 こういうやっぱり林野庁の姿勢を見ますと、非常に国有林、天然林を伐採することに対する認識が甘いんじゃないかと。一体この現況をどういうふうに認識しておられるのか、そして、森林吸収源対策といいながら今後もこういう天然林を伐採を続けるのかということについて、長官のちょっと認識を伺っておきたいと思います。

○政府参考人(井出道雄君) 国有林野事業における天然林の取扱いでございますけれども、国有林野事業につきましては、公益的機能の維持増進ということが第一義的な目標としながらも、様々な木材需要にこたえまして、林産物を持続的かつ計画的に供給しまして地域の産業の振興なり木の文化の承継などに寄与しているところでございます。
 このような考え方を踏まえまして、特に自然環境の保全上重要な天然林については、原則として伐採を行わない保護林などに設定いたしまして、厳格な保全管理を行っているところでございます。
 また、保護林以外の天然林につきましても、皆伐して人工林に転換する拡大造林は行わず、抜き切りによりまして、天然の力によって次の世代の樹木を発生させてその育成を図りまして天然林として維持していくことを基本としておりまして、近年、天然林の伐採量は急速に減少をいたしております。
 今後とも、長期的な視点に立ちまして、天然林をあくまでも持続可能な形で利用を図りつつ、貴重な資源として適切に維持増進してまいりたいと考えております。

○紙智子君 そういうことを言われるんですけれども、実際上はやっぱり山のずっと奥で作業をしているものですから目に触れないわけですよ。分からないところで、保護団体の方が調査をして初めて明らかになるというケースが多いわけです。しかも、天然記念物のクマゲラのえさの木があったり、生息が明らかな場合もちゃんと調査も行われないと。
 それから、大雪山の国立公園の伐採も問題なんですけれども、これも去年十月、保護団体の調査で分かったんですけれども、実際に風倒木の処理だということで天然林を六十五ヘクタール、一万九百八十一立米消失をしているわけです。重機で斜面を削り取るような形で道を付けながら表土を削って、もう根こそぎこれを除去して搬出をしていると。
 風倒木処理と言うんだけれども、六十五ヘクタール全体が本当に倒れたのかという、どうなのかと調べようと思っても、本来、事前に写真を撮っておくんだと思うんですけど、その写真撮影もしていないと。だから、本当はどうだったかということが全然分からないという中で無残に踏み荒らされているわけです。
 こういうやっぱり天然林の伐採と土地の改変というのは適切だったと考えるかどうか、これについてもお願いします。

○政府参考人(井出道雄君) 今お話のありました大雪山の国立公園内の国有林ですが、平成十六年九月の台風十八号に伴う強風によりまして、約四十ヘクタールにわたってほぼ全面的に幹折れ、根返り等の被害が発生いたしました。これらの風倒被害箇所におきましては、放置しておきますと、病虫害の発生によりまして周辺森林への影響が懸念される、あるいは水源涵養とか良好な景観の形成といった公益的機能の低下が懸念されることから、被害跡地の森林の再生を目的としまして、被害木の伐倒、搬出後、前生樹と同様のトドマツの植栽等を行ったところでございます。
 これらの処理に当たりましては、植栽する樹種あるいは風倒被害も考慮した植え方につきまして、専門家の助言も得ながら適切に実施してきたところでございまして、今後とも、森林の機能の早期回復や良好な景観の回復に努めていきたいと考えております。

○紙智子君 風倒木処理と言うんですけど、やっぱり納得していないですよね。
 それで、やっぱりいろいろ手続上問題ない、やっているやっているという話なんですけれども、実際には全部が倒れていたわけじゃないんじゃないかと。やっぱり健全な木もあったのに倒木処理を隠れみのにして根こそぎ切って、そして売上げを上げてというか利益を得るためにやったんじゃないかというふうに、そういう批判の声も上がっているわけです。
 こういう指摘について……

○委員長(郡司彰君) 時間が来ております。

○紙智子君 やっぱり真摯に受け止める必要があると思いますし、天然林の伐採量というのは長いスパンでは減っているわけですけれども、実態としては、まだまだお金になるということで伐り過ぎの面もあるんですね。
 だから、やっぱりもっとそこのところは大切に慎重に縮小していく必要があると思いますし、ちょっと最後に大臣、一言だけお聞きしておきたいんですけれども、やっぱり公告縦覧で説明しているからいいんだということではなしに、本当に十分説明もし、そして貴重なブナ林とか天然林は極力保全すべきではないかというふうに思うんですけど、これについて一言だけ。

○国務大臣(若林正俊君) 先ほど林野庁長官が方針を説明しておりますが、この国有林につきましては、あくまでも長期的視点に立ちまして、天然林を持続可能な形で利用を図りながら貴重な資源として適切に維持増進をしていくということが大切だと、こう思っておりまして、そのような趣旨を国有林の担当者に対してもしっかりと徹底を図っていきたいと、こう思っております。