<第169回国会 2008年3月28日 沖縄及び北方問題に関する委員会 第4号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 先月、沖縄県の北谷町で起きた米海兵隊による女子中学生暴行事件、これに本当に強い怒り、私も感じますし、ちょうど委員会、委員派遣で現地に二日目に行きましたけれども、そこでやっぱり肌でその怒りというものを感じました。その後、被害者がもうそっとしておいてほしいということで告訴を取り下げたと。私は、ここにどれほど深い傷をこの女子中学生が負わされたのかということを考えますと、本当に胸が痛みます。
 こういう事件が起きるたびに、政府は、綱紀粛正、再発防止ということを言ってきたわけですけれども、その直後にも、今回も米兵による女性強姦致傷事件あるいは民家や事務所への侵入と相次いでいるわけです。とにかく繰り返されてきているという実態だと思うんですね。
 米兵による性犯罪というのは米軍にとっても重大な問題になっていて、米国防総省は二〇〇四年から年次報告をまとめて実態を把握しています。二〇〇七年会計年度の報告では、米軍全体で報告のあった性暴力事件というのは二千六百八十八件と。この数字さえ被害の全体のごく一部と言われているわけですけれども、立件のための親告を行った数で見ると、その六割がレイプなんですね。民間人への暴行が五百七十四件で六百二十三名、基地外での暴行が七百四十九件となっているわけです。
 大臣も年次報告御覧になったと思うんですけど、こういう米兵の性犯罪の実態についてどのように思われますか。

○国務大臣(岸田文雄君) 米国防省、三月十四日にこの年次報告を発表しまして、二〇〇七年度の米軍人が関与をした疑いのあった性犯罪の件数あるいは国防省及び各軍が実施している予防策の取組を公表したということ、承知しております。これ国防省が米軍人等による性犯罪の防止に向けた取組の一環として、性犯罪に関する透明性をできるだけ高めるという趣旨で毎年行っているものと認識をしております。
 こうした、米国防省がこの問題を深刻にとらえて、そして透明性を高める、こうした取組を行うということ、是非これからもこうした取組を行ってもらわなければならないと考えております。

○紙智子君 我が国の犯罪統計の強姦とか強制わいせつの認知件数というのは、人口一万人当たりで発生率が〇・八件ということなんですけど、米兵の性犯罪の発生率というのは一万人当たりで十八件ということで、二十二倍になるわけですね。
 沖縄には基地の七五%が集中していると。それで、基地内外に居住しているけれども、とりわけ海兵隊員の比率というのが多いというのが特徴なわけです。沖縄には、戦争の言わば真っただ中から帰ってきた、そういう兵隊、それから、これから従軍する兵士が集中していると。世界にもなかなかそういうところというのはないんじゃないかと思うんです。
 ジミー・マッセーという元海兵隊員が書いた地獄のカウボーイという本があるんですけれども、余りにも衝撃的な中身で米国内では出版されていないということなんですけれども、それによると、沖縄の海兵隊員は自分の人生の中で出会った最悪の人間だと。海兵隊がいるところ、安全な人間、安全なものは何もないということが書かれているわけです。
 日常的にやっぱり殺人、そういう訓練をしている、そういう海兵隊。沖縄がこういう海兵隊を多く抱えているということについて、大臣の認識をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(岸田文雄君) 兵力の編成につきましては、地域の情勢に即した兵力編成により、米軍の抑止力によって我が国の安全を確保するということだと承知しておりますが、結果として、沖縄に駐留する米軍のうち海兵隊員の占める割合が高くなっているということだと思います。こうした中で、米軍兵士、海兵隊員による様々な事件が発生しているということであります。
 こうした事案を防止するためには、まず我々としてもこうした兵力編成を前提として再発防止策を講じなければいけない。こうした兵力編成を前提とした再発防止策を日米協力してしっかりと講じていく、こうしたことを考えなければいけないと考えております。

○紙智子君 ちょっと余りにも認識が甘いというか、やっぱり親しい隣人じゃないわけですよ。もう事は、やっぱり本質がそういう殺人をするということの中で、そういう精神状況を持ってやっている、訓練をしているというわけですから、そういうものに対する感覚というのか、そういう認識がやっぱり本当に日本の政府というのは甘いんじゃないかというふうに思うんです。
 それで、県議会の抗議決議でも、米軍基地の整理、縮小を図るとともに、海兵隊を含む米軍兵力の削減推進というのをはっきり掲げているわけですよ。沖縄の基地の世界に例を見ない実態をやっぱり深く認識してほしいという思いも非常にあるわけですよ。
 米軍は、イラク戦争以降、特に深刻化している性犯罪の対策を取るために報告書をまとめているんですけれども、被害者の国籍、事件発生地を公表はしていないわけです。日本や韓国やNATOの諸国など世界各国に駐留しているわけですけれども、それぞれの地域の被害実態というのは秘匿しています。隠しているわけです。表に出していません。
 それで、九五年の少女暴行事件、沖縄でありましたけれども、その際に、アメリカの地方紙でデイトン・デイリー・ニューズというのがありますけれども、この新聞社が一九八八年から九五年の二月にかけて、米海兵隊、海軍の軍法会議の記録を情報公開で求めた。十万件以上の犯罪記録を分析をしたんですね。
 その分析の結果、その期間に裁かれた性犯罪というのは千八百三十二件あったと。そのうち、在日米兵が裁かれた性犯罪というのは二百十六件なんですよ。それで、スペインが二十四件、イタリアが十六件、アイスランドが十二件、英国が十件と。日本が異常に多いんですね。それで私、ほかでもそういうふうになっているのかと思ったら、けた違いというか、突出して日本が高いんじゃないかというふうに思うわけです。欧州なんかは現在も八万五千人という米軍の最大の駐留地なわけですけれども、性犯罪の被害ということではそんなに日本みたく多くないということでもあるんですね。
 国防総省に被害実態を、やっぱり詳細に被害者の国籍や事件の発生地域も含めて明らかにさせると。そうやっていくことが日本、とりわけ沖縄において被害の実態をリアルに把握することにもなると思うんです。そういう意味では、きちっと要求してそれを出させるということが大事じゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 米国防省において、この問題を深刻に受け止めて透明性を高めるということで自主的にこうした公表を行っているわけですが、この公表の仕方についていろいろと申し上げるのは控えたいと存じますが、ただ、その中で我が国において発生した米軍関係者の犯罪については、我が国としまして、しっかりと米軍と情報を共有して、そして再発防止に向けて緊密に協議していかなければいけないと考えております。
 我が国において発生した犯罪についての情報、これにつきましてはしっかりと把握していきたいと考えています。

○紙智子君 大臣は、今回の事件後、県知事と会談をされていますけれども、その際に、沖縄県民の皆様の怒り、いかばかりかと推察申し上げると、アメリカに対し強く働きかけなければならないというふうに述べられたと思います。
 それで、外務省が二月の事件後に米側に照会、聞いたところが、国別の統計は作成していないと言ったと。そうですか、分かりましたということではなくて、やっぱりどれだけ過酷な状況にあるのか知る意味でも詳細なデータを出してほしいということで求めるべきだと思うんですよ。ドイツにも五万七千人が駐留しているということなんですけれども、ドイツの場合は、広大な米軍基地というのは市街地から遠く離れていて、森の中にあって、そもそも民間人とは接触しないような場所だということでもあるんですね。
 ですから、そういうことを含めて、やっぱりよく詳細をつかんでやっていく必要があると思うんです。そのことについてお聞きしたいと思います。

○国務大臣(岸田文雄君) まず我が国としては、我が国における犯罪の状況はしっかり把握しなければいけない、先ほど申し上げたとおりであります。そして、ほかの各国の状況につきましても、我々はこうした問題に適切に対応するため、情報収集はしっかりしなければいけないと思っています。

○紙智子君 しっかり情報収集して、言うべきことはきちっと言うと。日本だけが突出しているというのはやっぱりおかしいですよ。いや、どこでもない方がいいに決まっていますけれども、そういうことを是非厳しくやっていただきたいということと、それから、沖縄の県民集会が先日開かれているわけですけれども、その中では、基地があるからこその被害だと、やっぱり基地の被害によって人権が侵害され続けているんだということを訴えているわけです。そういう声が渦巻いていると。沖縄の痛みをなくすには、やっぱり基地撤去しか道はないんだというのが思いだと思うんですね。基地の整理、縮小にしても、日米地位協定の改定に向けても、やっぱり沖縄の実態を明らかにするために強く交渉していただきたいということを重ねて申し上げたいと思うんです。
 最後にもう一つ聞きたいのは、沖縄県が野村総研に委託をして駐留軍用地跡地利用に伴う経済波及効果等検討調査報告書というのが昨年出されました。まとまったものが出されて、読まれているかと思うんですけれども。この報告書なんですけれども、見てみますと、基地の跡地三地域での人口の増加率、商業・サービス活動、それから販売額などを調査していて、プラスマイナスを分析しているわけですね。これによりますと、那覇の新都心地区、それから小禄金城地区、それから北谷町の桑江地区、北前地区、いずれでも経済効果が上がっているという報告が出ているわけです。
 長年、一方で基地に頼らなければ成り立たないようなそういうことも、見方も言われていたわけだけれども、基地に頼らずとも自立したやっぱり経済の発展ができるということの実例として非常に中身的には内容を示しているというふうに思うんです。
 この点に対しての大臣の所見を伺いたいと思います。

○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘のありましたこの調査につきましては、沖縄県が平成十八年度に内閣府の大規模駐留軍用地跡地等利用推進費に係る補助事業によって実施をしたものであります。本調査では、嘉手納以南の既に返還された跡地も含めて、今後返還予定の跡地についてその経済波及効果を推計しておりますが、米軍基地の大規模な返還により沖縄の社会経済が大きな影響を受けるであろうということを改めて数字で示したものと認識をしております。
 今後、嘉手納以南の米軍基地の返還が具体化する場合において、地権者及び地元市町村等の主体的な跡地利用、取組に対して、国としても沖縄振興につながる土地利用が展開されるように、こういった視点から様々な土地利用が展開されるように支援をしていかなければいけないと考えております。

○紙智子君 各地からの予算要望も出されましたけれども、是非今後とも振興を進めて、やはり基地撤去ということを強く進めながらやられることを是非心から指摘をしまして、質問を終わります。