<第169回国会 2008年3月31日 農林水産委員会 第5号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 官製談合の摘発を受けて、緑資源機構の廃止の方向が出されました。我が党は、以前からやはりこの大規模林道、緑資源幹線林道の余りにもひどい自然破壊、生態系破壊、そして官製談合についても追及してきたので、これ廃止は当然だというふうに思っております。
 しかし、廃止は決めたものの、大規模林道の事業は地方に移管する、特定中山間、農用地整備事業は官製談合はなかったとして着手済みのものは終了までやると。果たして談合を全面的に解明してこの見直しを図ったのかどうかというのは非常に疑問に思っております。
 それで、まず農水大臣に伺いますけれども、官製談合が認定されたのは平成十六年から十八年の契約のみなわけです。少なくとも十年間は行われていたということが指摘されているわけです。官製談合の逮捕者には林野庁のOBも含まれていて、歴代林野庁長官以下が多数、理事長らに天下っていたと。なぜチェックできなかったのか、どこに問題があったのか、十分解明されたというふうに大臣は思われていますか。まずこれが一点です。そして、林野庁の監督責任をどのように認識しているのかということ、この二つをお答えください。

○国務大臣(若林正俊君) このような悪質な官製談合が繰り返し行われてきたということの原因についてでございますが、緑資源機構が外部の有識者から成る委員会を立ち上げて、その主導の下に取りまとめた入札談合再発防止対策に関する調査報告書、これにおきまして指摘を受けておりますのは、まず指名競争に偏重した契約制度であったこと、コンプライアンス意識の欠如があったこと、そしてまた狭く固定的な人事といったようなことが原因として挙げられているのでございます。
 私もそのような報告書の御指摘を重く受け止めたわけでございますが、緑資源機構としては、この委員会の指導を受けながら、全職員を対象として入札談合への関与などについて一人一人すべてについて調査をするということで調査をいたしまして、関与した職員の処分を行ったところでございます。農林水産省としては、このような調査報告につきましては、調査方法が適切かどうかなど所要の検証を行ったところでございます。
 そして、今お話がございました林野庁自身の監督責任でございますが、今後、これらの談合の原因というようなものを明らかにしたところでありますが、これからの談合防止対策につきまして、先ほども申し上げましたけれども、入札方式は災害復旧事業等を除いてすべて一般競争入札で実施させること、また、緑資源機構においてはコンプライアンスマニュアルを作成して職員を対象とした研修を実施すること、また、農林省内に入札監視のための委員会を設置するなどを講じたところでございまして、これらが廃止された後もこれらの措置を継続してきっちりと監督をしていくということでございます。
 林野庁としては、この持っております監督上の責任につきましては、これらの措置を確実に実施をするということによって果たさるべきものと考えておりまして、これによって国民の信頼回復に努めてまいりたいと、こう思っております。

○紙智子君 いろいろなこれからの対策をしますということなんですけど、十分解明されたというふうにお思いですか。

○国務大臣(若林正俊君) 緑資源機構におきましては、機構が、有識者を入れました、外部の有識者から成ります委員会の指導の下に徹底した調査をいたしましたこと、そしてまたその調査で明らかになった職員を処分したということによりまして、私は十分なその原因究明と対処措置が行われたものと理解しております。

○紙智子君 その認識は本当に不十分だというように思います。
 松岡元大臣、それから緑資源の機構の元理事らがかぎを握っていると言われていたわけですけど、こういう当事者の皆さんの自殺もあって結局立ち消えになっているという側面もあるわけです。十分解明できていない。あるいは、緑資源機構のこの談合事件は政官業の癒着解明にまで発展する可能性があったわけです。ところが、この緑資源の一事業の談合事件へと矮小化されてしまったんじゃないかと、こういう声もあるわけで、疑問は残されたままだというふうに言わざるを得ないと思うんです。そのことは今後も踏まえておかなければいけないというふうに私は思います。
 そのことを言いつつ、次にお聞きしますが、大規模林道事業の自然破壊の実態についてです。
 各地にこの林道の工事のつめ跡が残ったままです。山形の朝日連峰を貫く真室川・小国線、ここはクマタカが生息していると、そこに幅員七メートルの舗装道路は要らないということで運動が起こって、高まって、この区間は中止に追い込まれましたけれども、既に移管された区間で崩落が続いていると。維持補修が町の財政を圧迫している実態です。
 このほかにも同じようなところが、例えば広島の細見谷だとか各地にあって、私の地元の北海道でも平取・えりも線、このえりもに向かっていく道路の途中ですけれども、平取―新冠区間というのは自然保護団体の皆さんが地盤の悪い地すべりの地域だと、地帯だということで指摘をしていたのに、ここに林道を造っていったわけですね。
 これ台風でこの区間が六・九キロの半分以上の三・五キロが道路が崩れ落ちたわけです。沢に大量の土砂が流れ込んで河畔林をなぎ倒すと。ここは私も直接見に行ったんですけれども、至るところが崩落している状態でした。二十七億円の事業をやって、更にこの災害復旧費の適用を受けて、三億三千六百万円税金をつぎ込むことになったわけですね。大規模林道のこの被害復旧事業は毎年約百億だというんですね。
 さらに、この道路の先にまだあるんですけれども、様似―えりも区間というところがあって、ここは日本生態学会が工事中止を求める意見書を出していました。地域の植生とか、それから動物の分布状態ということでそこで分析しているんですけれども、非常に貴重な種類で、しかも絶滅危惧の植物や動物が大変多い地域だと、だからやめてほしいということだったわけですけれども、それと加えて、この区間は崩落しやすい地質だと、地形的な特徴もあるんだということで触れていたわけですけれども、森林開発公団、それから緑資源公団、ここによる二つの環境影響調査の評価では、そういった自然的な特徴なども含めて全然掌握されていない、土石流などの災害の影響については全く問題にしていないと、こういうことで学会として指摘をしていました。こういう批判に対してどのように認識をしているのか、これは林野庁長官にお聞きしたいと思います。

○政府参考人(井出道雄君) 緑資源幹線林道事業の実施に当たりましては、工事着手前に自主的な環境調査を実施しまして、環境保全に配慮しつつ事業を進めてきたところでございます。
 具体的には、学識経験者や専門家から御指導いただきつつ、自然環境への影響の回避、低減を図る観点から、クマタカなどの希少動植物の生息生育状況をも現地調査するとともに、透明性の確保を図る観点から調査結果も公開してきております。また、工事の実施に当たりましても環境調査の結果を踏まえまして環境に配慮した工法を採用し、工事による改変区域の縮小を図り、またクマタカなどの繁殖時期は工事を中断するなどの対応を行ってきております。
 このように、環境調査やその結果に即した事業実施を通じまして、自然環境の保全に関しましては従来より適切な配慮に努めてきたところでございます。

○紙智子君 従来より適切なやり方をしてきたと言うんですけれども、これらの環境調査をやってきたのは、もう無理をして進めてきているわけですけれども、その調査をやってきたのが林野庁、緑資源が多数天下りしていた公益法人なわけです。そして、その企業なわけですね。そこが補助金を受けて、地質についても、希少動物、動植物についてもずさんな結果を出して工事を進めてきたわけです。
 北海道の場合ナキウサギの生息地ということで、これも問題点指摘されていたわけですけれども、調査をした結果、当初は生息は確認できないというようなことを言っていたわけです。二十四企業が談合にかかわって専ら地質や環境調査をやってきたわけですけれども、その結果そのものにも疑問もある、それから不信感も非常にあるわけです。
 ですから、今後、各県が見直しを検討するにせよ、あるいはこの事業を継続するにせよ、談合企業が行った調査の結果を基にするのではなくて、やっぱり調査をやり直すべきだし、その際、国も責任を持って再調査や再アセスメントを援助すべきだというふうに思うわけですけれども、まずそれを聞く前に、今対象となっている十五道県の意向がどうなっているかということをちょっとお答え願います。

○政府参考人(井出道雄君) 私どもが現在までのところお聞きしているところでは、十五道県のうち、そのうち七県は二十年度から補助事業による林道整備を実施していくということを予定されております。また、同じく七道県、北海道を含む七道県については、平成二十年度は事業の見直し、調査、検討をまずやってみようと言っておられます。最後に、一県だけ青森県においては、一定の事業効果は既に発現しているので残事業は取りやめると、こういう意向だそうでございます。

○紙智子君 そもそも、この大規模林道の契約や調査など官製談合の実態から見れば、地方移管じゃなく中止じゃないかという声もあるわけですけれども、それを地方が判断するという形で継続する、このこと自体もどうなのかという声も上がっているわけです。
 それで、私の地元の北海道の大規模林道の問題点ということでいいますと、そもそも母体の計画である大規模林業圏開発構想、これが本来の趣旨に反して非常に優れた天然林の地帯に設定されたということにあるわけです。
 北海道でいいますと、滝雄・厚和線ですとかえりも線などはもう断崖絶壁のすさまじいところに進めてきているんですけれども、これ貫通しないと使えないと。そして、工事自体が環境破壊ということで、今中止したとして、周りは森林の施業ができる状況じゃないわけです。それから、既存の林道にも接続しないと。それから、毎年融雪期の後はのり面が崩れて補修が必要になるわけですけれども、その区間だけ完成したとしても、町に移管されても、これ維持管理できないという事態なんですね。
 ですから、このままだときちんとした環境影響評価をせずに崩落を繰り返しながら工事をしてきたツケをすべてこの町村に回すことになってしまうと。
 今お答えがあったところでいいますと、北海道についてはこれから検討していくという段階なわけですけれども、途中まで造ってきたこの大規模林道を中止する場合には、やっぱり経済的にもそれから環境的にも最も負担の少ない形でやっていくということになると、例えばその選択肢としては廃道という、そういう選択肢もあると。
 そういうふうな、地方がこういうやり方ということで一番効果的なやり方が取れるように、国としてはやっぱり全面的に援助すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(井出道雄君) 緑資源機構が施行いたしました既設の緑資源幹線林道につきましては、部分的な開通でありましても林道の機能を果たすことができるものでありますので、これまでの投資を無駄にすることがないよう、円滑に地方公共団体に移管した上で適切に管理していただくことが重要だと考えております。このため、この平成二十年度予算におきましても、既設道の移管円滑化事業として必要な応急処理工事を行い、林道としての機能を確保した上で市町村への既設道の移管を進めることといたしております。
 いずれにしましても、これから先は北海道庁を始め各道県におきましてこの後の工事を継続されるかどうか検討されるわけでございますが、それに当たりましては、もちろん地方公共団体が自主的に事業内容の調査検討を行うことができる仕組みでございまして、環境調査も含め、このことについては国が助成できることにしているところでございます。

○紙智子君 いずれにしても、やっぱり相当無理していろんな声があったにもかかわらず推し進めてきたということがありますから、そのしりぬぐいを市町村にさせることがないように、そのことを改めて強く申し上げまして、質問を終わります。