<第169回国会 2008年2月20日 農林水産委員会 第1号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 国際的な穀物価格の高騰によって、全国の畜産・酪農農家が非常にその経営を維持できない大変な事態になるということで、私、昨年も大臣に質問させていただきました。
 耐え切れずに、黙っていたらえさ代がもう高く付くので牛を売ってしまうと。そうすると、生産基盤そのものがなくなっていくということで、もう早くメッセージを出していく必要があるんだということでお話をさせていただきました。
 今回、例年よりも早く乳価を決定するということで、こういうふうに早くやることになっているということ自体は良かったというふうに思いますけれども、問題はその中身だと思うんですね。それで、新聞報道などでは三十年ぶり大幅アップ、四月から八%ということで報道されているわけですよ。
 北海道で酪農家を回って聞きますと、配合飼料の価格が二〇〇六年度以降二〇%も上がっている中で酪農経営を維持するためには、生産者が受け取るその乳価というのは実質的には十円は上がらないといかないということをみんなおっしゃっているんですよね。生産者にとっては八%というのは実質的には五円十銭なんですよ、来るのは。限度数量の話も今日ありましたけれども、これを引き上げるというのはもちろん切実な声ですし、あわせて、最低限で加工原料乳の生産者補給金をキロ当たりで五円以上は上げてほしいというのが強い要求として上がっているわけです。
 大臣、これにこたえるということで、そういうおつもりはありませんか。まず、お答え願います。

○国務大臣(若林正俊君) この加工原料乳の補給金単価につきましては、委員も御承知のとおりでございますが、生産者補給交付金の金額の算定のルールというのがございまして、この補給金の単価につきましては法律の十一条でございますが、そのルールに基づきまして、できるだけこの飼料価格が上昇を続けてきているという意味で直近の配合飼料価格をできるだけそれを採用していく。また、光熱水道費などの値上がりもございます。これらも織り込んで、このルールに基づいて適正に算定をするという考え方でございます。

○紙智子君 算定ルールに基づいてということがいつも決まって返ってくるんですけれども、やっぱりちょっと低過ぎるんじゃないかなと思うんですよね。
 時々、申し入れしますと、いや、BSEのときでも七十銭という話がされるんですけれども、実際に〇三年から〇六年までもこれ引下げだったり維持だったりということが続いてきたわけですし、〇七年でやっと十五銭ですから、もう円じゃなくて銭の単位ですよね。だから、これ自体が本当に低過ぎるということなんですね。
 生産者が実際に受け取っている乳代、これ大臣御存じでしょうか。一リットル当たりで見た場合には、全道平均でいいますとおよそ六十七円八十銭がメーカーから受け取る金額なんですよ、六十七円八十銭。これには飲用向けも加工用もチーズ向けも全部ひっくるめたプール乳価という形で農家が受け取っている額なんですね。これに対して国から十円五十五銭の補給金が出されているわけですけれども、実際の乳量で割り出していくと、全道の乳量で割り出していくと、実際には農家当たりに行く額というのは四円二十六銭なんですよ。ですから、メーカー側と国から出てくるものを合わせて、一リットル当たりで七十円から七十二円ぐらいのところを上下しているというのが実際の手取りということなんですよね。
 一リットルの牛乳を私たちがスーパーに行って買うとき、一リットルのあのパックで今幾らしていますかね、実際には二百円とか二百八円とか、ちょっと脂肪の高いものになると二百二十円とか二百二十何円とかというぐらいだと思うんですけれども、大体そのぐらいで私たちは一リットルの牛乳を買うわけですけれども、これがだから生産者の手取りになっているのは三分の一でしかないということなんですよ。そのぐらいやっぱり差があるということですね。
 私はもっと分かりやすくするために今日これを持ってきたんですけれども、こっち水ですよね。これで大体百円から百十円で手に入れることができるんですけれども、容器代は別として、これと匹敵する量で牛乳が、生産者が受け取る額ってお分かりでしょうか。これは三十五円なんですよ。こっちは百円、百十円、こっちは三十五円と。だからね、おかしいなと思うんですよね。だって、朝から晩まで、朝四時から起きてですよ、それで牛を飼って一年間三百六十五日休みなく働いて本当に大変な思いして、そして付く価格が三十五円ですから。今酪農家の皆さんは、この三十五円をせめて四十円にしてもらえないかという話なんですよ。こんなことができないのかというのがもう率直な思いとして私、したものですから、今日はあえてこういう形で示させていただいたんです。これについて大臣、どのように思われますか。

○国務大臣(若林正俊君) まず、水との比較において生乳、牛乳価格が安いんじゃないかということについては、私もそういうふうに常日ごろ認識しております。
 ただ、委員がお示しになられました百円と三十五円ですという、大体農産物について生産者の取り分、お米とか何かもそうですけれども、最終、末端の消費価格との比較になれば、まあ三分の一以下に大体なっているんですよ。それじゃどこか流通過程がもうけ過ぎておかしいかといいますと、これ諸外国と比べてみましても、大体生産者側の方の手取り部分というのは三分の一程度、うまく自分で販売組織を持って売っているところで四割ぐらい、あとは流通過程、段階を踏みますから流通コスト、輸送コスト、そういうようなものになっているのはまあ普通ではないでしょうかね。
 そういう意味では、スーパーならスーパー、コンビニならコンビニにおける販売価格の比較の中において、その販売価格を正当な価格が形成されるように、そういう環境条件をつくっていくということがポイントになるというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 やはり生産者の実感からして、これだけ朝から晩まで苦労して頑張って働いてもそんなものなのかという思いが、さっき本当に痛ましいお話ありましたけど、もう本当にそういうやっぱり生きる希望すら奪われてしまうような事態に立ち至ってしまうんだと思うんですね。働いても借金が残るという話になっているわけで、このせめて十円は手元に来るように上げてほしいという要求は、これは本当に地元の皆さん皆言っていますし、自民党の酪農政治連盟だって言っていますよね。そういう要求上げていると思うんですよ。
 だから、やっぱり是非、ルールに基づいてということであれば、そのルール自体ももっと何とか引き上げていくことで変えていくべきじゃないかと思うんですけど、いかがですか。

○国務大臣(若林正俊君) しかし、ルールを直接的に変えるというのは、それなりに合理的なシステムになってきているわけでありますから、異常事態に対応するという意味でおっしゃるのであれば、それはやっぱり個別の経営、酪農なら酪農、それは酪農の中であっても牛乳、生乳用のものと今の加工原料乳の場合と、もう一つ最近、チーズとか液状のミルクについて、別途の生産者との間で需要拡大に応じて生産体制取ってきています。それらの全体の価格の中で決定されていくなど、牛なら牛も、もう細かく言いませんけど、牛と一言に言ってもやはりF1、乳雄の場合と和牛の場合と違いますしね。それぞれごとに抱えている経営の状況に応じた経営対策を講じていくということが大事だと私は思っているんです。

○紙智子君 もちろん、そういう経営ごとにやっていくということなんですけど、再生産できるそういう対策ということでやっていかなきゃいけないんだろうというふうに思うんです。
 これ先ほども議論になっていたんですけれども、私もあえて言わせていただきますが、都府県で、今度飲用向けで酪農生産をやっている酪農経営に対しても同様の生産を継続できるような経営安定対策を導入すべきだと思うんですけれども、これについても改めて伺っておきたいと思います。

○国務大臣(若林正俊君) 都府県と北海道とでは生産の構造が確かに違うわけでございまして、都府県の酪農につきましては、生乳需給の緩和に伴う減産型の計画生産の実施をしてまいったということにあるわけですが、それに配合飼料価格の上昇ということによって収益性が低下してきたと、非常に苦しい状況になっているというふうに認識をいたしております。
 そういう意味で、配合飼料価格の上昇については、これは制度の設計として言いますと、この対策はすべての畜種、そしてまた地域共通の対策ということになるわけでございますが、都府県の酪農には都府県の酪農経営の状況に応じた生産性向上などについての取組でありますとか、先ほど野村委員がいろいろとおっしゃっておられました都府県の酪農経営の安定対策というようなことについては、総合的な対策を価格と併せて講じてまいらなきゃならないと、こういうふうに考えております。

○紙智子君 ずっと先ほど来議論聞いていまして大体共通の認識なんじゃないのかなと思っているんですけれども、配合飼料の価格安定制度についてです。
 これ、全畜種の平均で、一―三月期で一トン五万八千円になっていて、前年の同時期に比べますと、生産者の負担というのがトン当たりで七千七百円になっているわけですよね。これがもう経営危機を一層追い詰めてきているということだと思うんです。この生産者負担分に対する新たな支援制度を創設すべきじゃないかということが一つと、それから、現行の配合飼料の価格安定制度、これ、飼料価格が結局、さっきも乱高下という話ありましたけど、もうずっと上がり続けてきているという最初から想定しなかった中で今の事態迎えている中では、やっぱり限界が来るということでは、配合飼料の価格安定制度そのものを抜本的に見直す必要があるんじゃないかと。
 大体、先ほどの議論の中でも出ていたわけですから、ここは本当に受け止めていただいて、政府としてしっかりと対策を考えていただきたいと思いますが、これについても御答弁をお願いいたします。

○国務大臣(若林正俊君) 繰り返し御答弁申し上げながら皆さんに御理解をお願いしているわけでありますが、配合飼料価格の安定制度自身については、私は、この今のこういう激変緩和措置として設けられたこの制度は、ほかの生産資材にはない、極めて特殊な、特例的な措置として実績を獲得して今日に来ているということ。さらに、原油価格の高騰によりまして、中小企業や漁船漁業を始めとして、農業も施設園芸なんかがございます。その原油価格の高騰による生産資材の圧迫というものを大変受けているわけでありますが、これらについても直接的な助成というのは行われていないと。それらのことを考えますと、ここで配合飼料価格安定制度について、特別の、今抜本的というお話がございましたが、下手にいじって元をなくしてしまうようなことになっては困るという心配の方を私がするぐらい、大変特例的な措置でございます。したがって、このことについては、これをいじるということについてはやはり慎重な検討を要するというふうに考えております。
 今後の配合飼料価格の動向を十分見極める必要がございますけれども、中長期的に一体これが、高止まりするような形の中で経常的なコストとして他で吸収できないというような状況の見通しが出てきますれば、先ほど来言いましたように、まず上げて、消費者の皆さんに御理解をお願いして、消費者がその価格の、経営のぎりぎりのところで要求を出してきます価格について消費者に御理解をまず求めて、一定の消費者価格の中で吸収してもらうということをまず私は訴えていくことが必要だというふうに考え、あとは個別の畜種ごとの経営対策として対応したい、こう思っております。

○紙智子君 ちょっと時間が詰まってきたので二問をひっくるめてちょっとやらせていただきますけれども、これも議論されてきているわけですけれども、飼料米の問題ですね、飼料の自給を高めていくという問題で、これもずっと続けて質問させていただいているんですけれども、飼料用米の方は結構……

○委員長(郡司彰君) 時間ですのでまとめてください。

○紙智子君 はい。
 やられているんですが、飼料米ですね、米粒の方。こっちの方はなかなか強調されないんですけれども、こっちの方もすごく大事な話で、先ほど大臣が紹介されていた例ですけれども、実際にこれをやっているところでいいますと、今本当に効果を発揮しつつあるということでもありまして、非常に生産者の皆さんは希望を懸けてやっていこうという意欲を持っているわけですので、これに対しての積極的な対策を取ってほしいということと、もう一つは、肉用牛の肥育経営安定対策の事業の補てん、これも出された問題ではありますけれども、家族労働費と所得の格差の八割補てんということではもう今は対応できなくなってきているということでもありまして、この維持をしていくということでは、本当にこの再生産を確保できるような補てんができる仕組みにすべきだという声が上がっているわけです。
 加えて、養豚経営についても安定価格の引上げなどの安定対策を強めるということの要求が出されているんですけれども、これをひっくるめて、ちょっと分量がありますけれども、お答えをしていただきたいと思います。

○委員長(郡司彰君) 既に時間が過ぎておりますので、もし答弁なさる場合には簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(若林正俊君) 米粒としての言わば飼料米につきましては、この十九年度の補正予算、お認めをいただきました地域水田農業活性化緊急対策の中におきまして、米の生産調整の一環として、飼料用米を、非主食用米の低コスト生産技術の普及と定着を促進するというような形でこれを積極的に取り上げていくという姿勢でおります。
 それから、畜産物のその他の価格についていろいろいただいたわけでございますが、これらについては、まさに明日、畜産部会、審議会の畜産部会の意見を伺いながら、そして、今まで各方面からいただいていた意見を踏まえて、ルールに従った適正な的確な価格の決定と関連した諸対策を実施したいと、こう考えております。