質問主意書

質問第一四号

自衛官・防衛省事務官等の性犯罪行為等の処分に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年一月三十日


紙   智  子   


       参議院議長 江 田 五 月 殿

<自衛官・防衛省事務官等の性犯罪行為等の処分に関する質問主意書>


 防衛省は、自衛官・防衛省事務官等の職務遂行上の犯罪行為および私的犯罪行為など懲戒処分該当行為について「懲戒処分等の基準に関する達」に従って処分し、その公表については事務次官通達「懲戒処分の公表基準について」(平成十七・八・二)に従い、平成十七年度処分から公表を開始した。それによると、平成十七年度中に懲戒処分を受けた隊員は千三百二十五人(自衛官千二百六十六人、事務官等五十九人)、平成十八年度は千三百四十人(自衛官千二百三十四人、事務官等百六人)となっている。
 処分事由では、職務遂行上の行為又はこれに関連する行為に係る懲戒処分数が平成十七年度五百二十一人(自衛官四百九十一人、事務官等三十人)、私的行為に係る懲戒処分が八百四人(自衛官七百七十五人、事務官等二十九人)、十八年度は「職務上行為」は五百七十九人(自衛官五百五人、事務官等七十四人)、「私的行為」は七百六十一人(自衛官七百二十九人、事務官等三十二人)となっている。
 処分数の六割におよぶ私的行為は、@私的車両運転に伴う悪質な交通法規違反、A窃盗、詐欺、恐喝、単純横領、B傷害又は暴行脅迫、Cその他の四区分に分類し公表しているが、私的行為処分の二十五パーセントを占める「その他」行為の内容は不明である。
 防衛省・自衛隊は二十七万人を擁し国家公務員の約半数を占め、また軍備を保有し管轄する省であり、その職員の処分状況を国民の前に明らかにする必要があることから、以下質問する。

一 防衛省によると「私的行為」中の「その他」は、「過失傷害・致死」「私行上の非行」の二種の違反態様からなり、平成十七年度の処分数は「過失傷害・致死」が自衛官三十五人、事務官等一人、「私行上の非行」が自衛官百四十四人、事務官等十七人、十八年度は「過失傷害・致死」が自衛官二十六人、事務官等二人、「私行上の非行」は自衛官百五十四人、事務官等十三人ということである。
 防衛省の分類による「私行上の非行」には具体的にどのような行為を該当させているか全体的に明らかにされたい。

二 「懲戒処分等の基準に関する達」によると「私行上の非行」処分基準は「隊員が隊員としての品位を傷つけ又は自衛隊の威信を失墜するような過度の飲酒、賭(と)博、破廉恥行為等を行った場合に適用する」としている。
 報道によると自衛官の私的非行による処分は、強姦、強制わいせつ、公然わいせつ、のぞき、盗撮、痴漢、住居侵入、児童買春・児童ポルノ禁止法違反、セクシュアル・ハラスメントなど枚挙にいとまがない。
 これら私行上の非行行為のそれぞれについて、被処分者の階級、年齢、非行行為の具体的内容、処分の種類、処分年月日、刑事処分もなされていればその内容を明らかにされたい。

三 防衛省あるいは陸海空の各自衛隊において隊員の服務指導の参考とするために、全国の自衛官・事務官等の処分状況と懲戒事案の概要をまとめ、毎月各部局に発出しているか。また発出したことがあるか。
 その他、懲戒事案の再発防止のための周知徹底にどのように取り組んでいるか、具体的に答弁されたい。

  右質問する。


答弁書

答弁書第一四号

内閣参質一六九第一四号
  平成二十年二月八日

内閣総理大臣 福 田 康 夫   


       参議院議長 江 田 五 月 殿

参議院議員紙智子君提出自衛官・防衛省事務官等の性犯罪行為等の処分に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

<参議院議員紙智子君提出自衛官・防衛省事務官等の性犯罪行為等の処分に関する質問に対する答弁書>


一について

 防衛省においては、懲戒処分について規律違反の態様別に分類しており、御指摘の「私行上の非行」については、「私的行為に関する違反」のうち、「私有車両運転に伴う悪質な交通法規違反」、「窃盗・詐欺・恐喝・単純横領」、「傷害又は暴行脅迫」及び「過失傷害・致死」以外の違反態様がすべて含まれており、お尋ねについては、そのすべてを明らかにするためには調査に膨大な作業を要し、お答えすることは困難である。

二について

 お尋ねについては、そのすべてを明らかにするためには調査に膨大な作業を要し、お答えすることは困難である。

三について

 防衛省においては、例えば、隊員の服務指導の参考として、陸上幕僚長が陸上自衛隊の各部隊等に対し陸上自衛隊の懲戒処分の事例等について適宜発出し、海上幕僚監部人事教育部が海上自衛隊の各部隊等に対し海上自衛隊の懲戒処分の統計等について年二回発出し、航空幕僚監部人事教育部が航空自衛隊の各部隊等に対し航空自衛隊の懲戒処分の統計及び事例等について毎月発出し、情報本部総務部が情報本部の各通信所等に対し情報本部の懲戒処分の統計及び事例等について毎年発出している。
 また、防衛省では、防衛庁長官(当時)を長として設置された不祥事防止会議において、平成十二年五月、防衛庁(当時)全体として実施すべき具体的な不祥事防止施策の方向性が示された後、防衛庁副長官(当時)を長として設置された人事教育施策等緊急検討委員会において、平成十七年七月、不祥事防止施策が取りまとめられ、同年八月、「身上把握及び服務指導の充実・強化等」、「私行上の非行に対する組織としての対応」、「適格性を欠く隊員の早期排除(分限処分制度の適切な運用等)」等の施策の実施につき遺漏のないよう求める防衛事務次官通達を発出している。
 このほか、防衛省においては、従来から、年末年始その他適切な機会に、綱紀の厳正な保持を徹底するよう求める通達を発出するとともに、防衛省薬物乱用防止月間、防衛省職員セクシュアル・ハラスメント防止週間、自衛隊員等倫理週間を設定するなど、不祥事防止に関する隊員の意識の高揚を図っている。