質問第二号

ヨーネ病問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年九月十二日


紙   智  子   


       参議院議長 江 田 五 月 殿

<ヨーネ病問題に関する質問主意書>


 ヨーネ病は、ヨーネ菌に起因する慢性下痢性の家畜伝染病で、現在、家畜伝染病予防法で法定伝染病として位置付けられている。現在、日本のヨーネ病発生頭数は、千頭を超える水準まで広がっており、十年前と比較しても三倍から五倍の発生規模となっている。また、感染してから発症するまでの期間が長く、早期に感染を確認しなければ、感染が広がり、家畜経営に大きな打撃を与えることになるという性格を持っているだけに、家畜経営者としても早期発見が自らの経営を守るためにも必要なことになっている。それだけに、検査方法の正確性は、一層求められると言え、仮に、検査ミスが生じるような検査方法があった場合、それを放置した国の責任は重大であり、その検査ミスで本来健康な家畜が患畜とされ、淘汰された場合の被害補償について国が責任を持つ必要があることは言うまでもない。
 そこで、以下質問する。

 ヨーネ病のエライザ抗体検査は、いつから検査方法として採用され、採用されてから現在までの検査件数はどの程度に上るのか明らかにされたい。

 平成十九年七月十二日付け農林水産省消費・安全局事務連絡「ヨーネ病のエライザ抗体検査における留意事項について(その2)」で「牛のウイルス病に対する不活化ワクチンを接種した牛の一部において、ヨーネ病のエライザ抗体検査におけるエライザ値の一過性の非特異的な上昇の可能性が示唆されたことをお知らせした」としているが、これは、牛のウイルス病の不活化ワクチンを接種した牛の一部には、ヨーネ病陰性にもかかわらず、ヨーネ病陽性と判定された牛がいる可能性があることを認めたことになると思うが、政府の見解を示されたい。

 ここ数年ヨーネ病の患畜が急増していることは、このエライザ抗体検査の不備が原因とは考えられないのか。政府の見解を示されたい。

 過去にエライザ抗体検査によって、陽性になったものについて、診断に用いられた血清を再検査すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。また、その結果、陰性であることが判明した場合は、国家補償をすべきであると思うが、政府の見解を示されたい。

 平成十九年七月十一日付け動物衛生研究所ヨーネ病研究チームによる「牛用ワクチン接種とヨーネ病ELISA値の非特異的上昇に関する試験成績」では、牛血清アルブミンに対する抗体上昇を原因とする可能性が示唆されたとしている。

 どのような経過でこの問題が動物衛生研究所で検討されたのか明らかにされたい。
2 それ以外に非特異的反応が出る現象はないのか明らかにされたい。
3 この原因を究明する研究は進められているのか。関連する研究課題と経過を明らかにされたい。

  右質問する。

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答弁書第二号

内閣参質一六八第二号
  平成十九年九月二十五日

内閣総理大臣 安 倍 晋 三   


       参議院議長 江 田 五 月 殿

参議院議員紙智子君提出ヨーネ病問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員紙智子君提出ヨーネ病問題に関する質問に対する答弁書

一について

 ヨーネ病のエライザ法を用いた抗体検査(以下「エライザ抗体検査」という。)は、平成四年五月十三日付けの「病性鑑定指針」(昭和六十年十一月二十五日付け農林水産省畜産局長通知)の改正により、ヨーネ病の検査方法として追加されたものである。また、平成四年から平成十八年までの間に、家畜伝染病予防法(昭和二十六年法律第百六十六号)に基づき実施したヨーネ病の検査の対象となった家畜の頭数は、エライザ抗体検査以外の方法で検査されたものも含め、五百二十二万三千百四十八頭である。

二について

 一般的にエライザ抗体検査を含め、抗体検査の特性として、疾病にかかっていない家畜であっても陽性を示す可能性があるものと認識している。このため、都道府県におけるエライザ抗体検査を用いたヨーネ病の確定診断に当たっては、複数回の検査を行うなど、正確な診断に努めるよう指導しているところである。

三について

 ヨーネ病の患畜頭数が増加したのは、発生状況の把握のための検査の強化により、検査の対象となった家畜の頭数が増加したことによるものと認識している。

四について

 過去にエライザ抗体検査によって陽性になったものについて再検査する場合、時間の経過等により、検査材料が以前の検査時より劣化することから、科学的に適切な再検査ができないと考えている。また、現在のところ、エライザ抗体検査のほかに血清を検査することによりヨーネ病の診断を行う適切な方法はないと承知している。なお、家畜伝染病予防法第十七条の規定によりヨーネ病にかかった家畜が殺された場合には、同法第五十八条第一項の規定に基づき、同法第十七条の殺処分の命令があったときにおける当該家畜の評価額の五分の四に相当する額が手当金として家畜の所有者に対して支払われている。

五の1について

 エライザ抗体検査においては、ヨーネ病に限らず、一般的に非特異的反応が起こり得ることから、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所(以下「動物衛生研究所」という。)では、極力非特異的反応を減らすべく研究を実施してきたところであり、今回のヨーネ病についての試験についても、当該研究の一環として実施されたものと承知している。

五の2について

 現在のところ、動物衛生研究所による「牛用ワクチン接種とヨーネ病ELISA値の非特異的上昇に関する試験成績」に示された牛血清アルブミン以外に、非特異的反応が出る可能性があるものはないと承知している。

五の3について

 動物衛生研究所においては、ヨーネ病のエライザ抗体検査における非特異的反応が起こる原因を究明するために、ヨーネ病の診断技術に係る研究を引き続き進めているところであると承知している。