<第166回国会 2007年5月31日 農林水産委員会 第15号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私、最初に高木委員会報告についてお聞きしたいと思います。財界のシンクタンクであります日本経済調査協議会が二月に出した提言について、生前の松岡大臣は四月十日の衆議院の農水委員会で大変大事な御提言であると、我々もそういった提言を受け止めながら対処してまいりたいという答弁をされました。
 しかし、この提言は見過ごすことのできない重要な内容を含んでいます。提言は、水産業への参入のオープン化というふうに言って、養殖業や定置漁業への参入障壁の撤廃を求めています。提言は、企業参入をイメージして、沿岸漁業への参入自由化を求めているというふうに思うわけですけれども、若林大臣、農水省として、個別の内容についても大事だというふうに評価をされるのかどうか、そのことについてまずお聞きしたいと思います。

○国務大臣(若林正俊君) 日本経済調査会に設置されましたいわゆる高木委員会が本年二月に緊急提言を出されたということは承知いたしております。これは一つの提言といたしましてそのこと自身は受け止めて、無視するつもりはないわけでございますけれども、その中で、今委員が御指摘の養殖業とか定置漁業といったような部分への参入障壁の撤廃に関して申し上げますと、この養殖業とか定置漁業というようなものは漁業権漁業でございます。これは言わば海域における資源管理、あるいは共同の海域についての利用の調整というのが前提で漁業権漁業が組み立てられているわけでございまして、この新規参入を全く排除しているわけではございません。ですから、漁協の組合員として参加すると、あるいは地元漁業者と共同経営するというような多様な道が開かれておりまして、現に大水産企業の方々も子会社の形を取りまして、その地域で協同組合に参加するなどの形を取って地域と調整しながら参入をしているということがございます。
 したがって、漁業を営むに当たっては、自然の恵みであります水産資源を持続的に利用するということが不可欠でありますので、水産資源の収奪的、枯渇的な利用を招くことがないように適切な資源管理が行われること、限られた水面が多種多様な漁業者によって総合的に公平に利用されること、そういう観点から十分な調整を図ることが必要になっているわけでございます。
 このように、漁業権漁業については、様々な種類の漁業による水面利用を調整をしながら水産資源を持続的に利用して生産力の発展を図るという上で重要なものでありまして、今後とも漁業権制度との調整を図る必要があるわけでございまして、そういう観点から、この新規参入というものを進めるべきものは進めていくという視点に立つべきだと考えているところでございます。

○紙智子君 この水産業への企業の参入の自由化等について、漁業関係者からも強い批判が出されております。
 それで、北海道で意見を伺ったんですけど、漁業団体の幹部の方はどういう言い方しているかといいますと、大型店が地方に出店して、もうからないとすぐ撤退して地元の商店がみんなつぶれたと、同じようなことが海でも起こるんじゃないかと、企業は取るだけ取ってさよならになる、漁業資源は自然の力に頼って再生するということなので十年、二十年掛かると、しかし、そのときもう、時間がたてば漁業者はもういなくなっていると、前浜をつぶす気なのかという怒りの声が出されました。
 それで、今お話もありましたけど、この沿岸漁業の漁業権は、前浜の資源をなるべく多くの漁民が共有できるようにという立場で漁業権の優先順位が決められてきたというふうに思うんです。その点しっかりやっぱり守っていく必要があるというふうに思うんですけれども、この提言を受けて、調整をしてという話がされているんですけれども、よもやこの優先順位を見直して漁民を押しのけて企業が参入するということが、検討するということはないと思いますけれども、そのことについてちょっと確認をしたいと思います。そういうことはないですよねということ。

○政府参考人(白須敏朗君) いずれにいたしましても、この日本経済調査協議会から二月に提言が行われましたのは、いずれにしても中間的な提言というふうなことでございまして、また正式な提言は追って提言がされるというふうに理解をいたしているわけでございます。
 ただいま大臣からもお話し申し上げましたとおり、私どもとして、この参入障壁の撤廃については、現在のところ、いずれにしても、そういった漁業権漁業との調整、漁業権との調整が当然必要であるという観点に立ってこの提言を受け止めているわけでございまして、この提言が出たから直ちに云々かんぬんというふうなことは現時点において考えてございません。

○紙智子君 いずれにしても、現場ではそういう声が出されておりますから、そこはちゃんと耳を傾けていただきたいというように思います。
 それから次に、昆布の問題なんですけれども、私、今回の質疑を前に、ずっと浜を歩いて、北海道でも漁協や漁民の方に伺ったんですけど、昆布巻きなどの昆布加工品の原料原産地の表示の義務付け、これについて強い要望が出されているんですね。北海道昆布事業協同組合の資料によりますと、昆布の国内消費の三分の一が外国産昆布じゃないかと言われているわけです。干した昆布、だし昆布以外が、この昆布の加工品に原産地の表示義務がないわけです。
 この昆布巻きやつくだ煮というのは日本独自のものなんですけれども、ほとんどの消費者が、まさかこれ輸入品だと思っている人はいないんじゃないかと。ところが、実態は、加工に適した釧路や根室の昆布よりも、中国で養殖昆布を現地で昆布巻きなどの半製品にして、それで加工した方が安いということで、これを日本国内で味付けして販売していると。品質には当然差があるんですけれども、日本産だと信じて不適正な価格で購入している可能性もあるということで、大臣、これ適正な状態だと思われますか。

○国務大臣(若林正俊君) 加工食品の原料の原産地表示についてはかねてトラブルがございまして、その輸入品が国産まがいのものとして低価格で流通するということでございます。このことにつきましては、食品の表示に関する共同会議というものを設けまして、そこで検討をいたしました。その結果、加工度が低くて生鮮食品に近い二十食品群につきまして、この対象を大幅に拡大しまして、昨年、平成十八年の十月からこれを義務化したところでございます。
 具体的には、加工の程度が比較的低いというようなことから、原産地に由来する原料の品質との違いが加工食品の品質に大きく反映されると一般に認識されているそういう品目のうち、製品の原材料のうち一定の農畜産物の重量の割合が五〇%以上ある品目というものを義務表示の対象品目として選定をしたわけでございます。
 時間の関係がありまして一つ一つすべて申し上げませんけれども、昆布加工品につきましては、委員もおっしゃられました干し昆布というのは単純加工でございますので義務の対象としております。一方、干し昆布、魚、かんぴょうなどをいろいろな原料を組み合わせて昆布巻きにする、味付けをするということになりますと、加工の程度が低いとは言えないので義務対象となっておりません。
 義務付けの対象でない昆布加工品につきましても、原料原産地が把握できるものについては、実は事業者が原料原産地の情報を自主的に発信するという取組も広がってきているところでございまして、今、北海道の方々が御心配しておられるということもお聞きしましたが、それらの産地につきましては、積極的に自らこれは北海道の、国産の産地のものだということを表示をしていただくことによりまして消費者に対する信用をアピールしていただきたいと、このように思うわけでございまして、味を付けるというような、あるいは他の魚種とも混ぜるというようなことになってきますと、これは昆布巻きに限りませんけれども、なかなか強制をした上でチェックするということも難しいということがございますので、せっかく昨年の十月に決めたことでございますので、この二十の系統食品について、まずはこの徹底を図るとともに、その他の食品につきましては、自主的に任意的に表示を積極的にしてもらうというようなことを進めてまいりたいと思っております。

○紙智子君 今のお答えあるんですけれども、昆布その他加工品、IQ品目で輸入が制限されているわけですけど、この昆布巻きはサケ・ニシン調製品で入ってきているわけですよね。その制限の対象にならないという中で、このサケ・ニシン調製品というのは、一九九九年から見てきますと、それを一〇〇というふうにしますと、もう四倍以上なんですよ。増加しているんですね。加工度が高いというんですけど、昆布の形態は残っているわけですから、これは本当に原産地表示が不可能じゃないというふうに思いますので、是非消費者の視点に立って、それは二十品目ということなんだけど、拡大してほしいということをちょっと要望をしておきたいと思います。
 それから、共済事業と出資金の問題についてお聞きしたいと思います。
 改正案では、最低出資金制度を導入して、共済事業を行う漁協は一千万以上の出資金が必要になってくると。確かに、満たない単協は全国で三十六ということで少ないわけですけれども、この三十六の内訳ですね。つまり、百万円単位であと幾らか積み増しをしなきゃならない、そういうところ、そういう漁協がそれぞれ幾つあるのかということを一つはお聞きしたいのと、もう一つは、零細な漁協ですね、積み増しするというのは非常に大変だと思うわけですけれども、その三十六のうち半分が二倍以上積み増しということになるわけですけれども、漁協の出資金が一千万円未満のところでこの共済事業をやっていない組合というのは幾つあるのか、これ二つ、お願いします。

○政府参考人(白須敏朗君) 現在のところ、まず共済事業を実施しております漁協は全体で千二十あるわけでございますが、ただいま委員お話しの最低出資金一千万円に満たない漁協は、全体としては三十六組合あるわけでございます。
 その内訳でございますが、九百万円以上一千万未満が四組合……

○紙智子君 済みません、短めにお願いしますね。

○政府参考人(白須敏朗君) はい。八百万以上九百万未満が二組合、七百万以上八百万未満が六組合、六百万以上七百万円未満が六組合、五百万以上六百万円未満が八組合、四百万円以上五百万円未満が三組合、三百万円以上四百万円未満が三組合、二百万円以上三百万円未満が四組合で、合計三十六組合ということでございます。
 それからもう一点、出資金一千万円未満で共済事業を行っていない漁協は、十六事業年度の調査によりますれば百六十五漁協でございます。

○紙智子君 こういうところで新たに共済事業をしようと思っても、やっぱり出資金が足りないというので、それが現状でいえばできなくなるんじゃないのかと思うわけですけれども、いかがですか。

○政府参考人(白須敏朗君) いずれにいたしましても、今回、最低出資金制度を導入いたしましたゆえんのものは、共済契約者のやはり保護という観点から最低限の出資金を保有する必要がある。他の業態を見ましてもすべてそういった出資金の制限はあるわけでございまして、そういった意味からいきますと、最低限のやはり出資金というものは、共済契約者保護の観点から、あるいはまた事業の健全性確保という観点からも必要であろうというふうに考えているわけでございます。
 この点について、確かに委員が御指摘のとおり一千万に、先ほど私、内訳を申し上げさせていただいたわけでございますが、なかなか直ちにこれを出資するのは難しいではないかというお話でございますが、今回のこの措置につきましては、一つとしては、やはり三年間の猶予期間を置くことにもいたしているわけでございまして、そういった意味でこの負担に対しての配慮というものもいたしているわけでございます。
 また、先ほど来るるお話ございますように、全体として漁協の体力の強化という、経済事業あるいはこういった事業を行いますためのやはり健全性の確保という観点からいきましても、合併というものを私ども進めているわけでございますので、そういった意味からもどうしても難しいということであれば、これはやはり合併ということも一つの手法ではないかと、手段ではないかというふうに考えている次第でございます。

○委員長(加治屋義人君) 時間が来ておりますので、質疑をおまとめください。

○紙智子君 最後、お願いします。
 共済は単協では受付とか掛金を集めているだけで、共済事業の運用については、保険金の支払などは全国団体の共水連一本でやっていると思うんですよ。そういう中で、どうして単協の出資金に最低限度の規定を入れる必要があるのかなと、今まで全然問題なくやってきたのにというふうに思うわけですね。
 出先としてやる道があるというんだけれども、その場合、今までの場合と全く変わりないのか、最後にちょっとそのことだけ、事務作業ですとか、漁協に入る手数料ですとか、変わらないのかということについては確認しておきたいと思います。いかがですか。

○委員長(加治屋義人君) 簡潔にお願いいたします。

○政府参考人(白須敏朗君) いずれにしても、こういった事業の健全性あるいはまた契約者保護という観点から、最低限の出資金というものを保有する必要というものはこれはやはりあるわけでございまして、そういった意味で、今回の法改正で一千万以上の出資金という、有しなければならないということで、より一層の共済事業の健全性の確保、契約者保護を図ってまいりたいと考えている次第でございます。

○紙智子君 変わりないんですか、手数料とかは。

○政府参考人(白須敏朗君) 変わりございません。

○紙智子君 終わります。