<第166回国会 2007年3月29日 農林水産委員会 第5号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今、独立行政法人となった研究機関で問題になっているのがポストドクター、博士課程修了後の非常勤研究員ですね、ポストドクターや任期制研究者などの短期雇用の職員の処遇問題です。
 農林水産研究独立行政法人におけるポストドクターと任期制研究者の人員は、二〇〇一年は五十一名だったわけですけれども、二〇〇六年には三百三名と六倍に急増しています。ポストドクター、任期制研究者は今、論文や成果を出さなきゃいけないということで期日に追われているわけですけれども、今やっているプロジェクトや研究期間がこれ終了しますと、その後は解雇されて、その後の職の保障がないという過酷な状況です。
 ポストドクターを三年間勤めた後どうするかということになると、大半の研究者は再びポストドクターか任期制職員などの短期雇用の職に就くしかないと。三十代半ばになっても職が安定しない、生活面でいうとローンも組めない、結婚もできないというような状況に置かれているわけです。日本では博士号取得者は研究職以外の職がほとんどないわけです。短期雇用を繰り返せば繰り返すほど一般企業に就職する、再就職する道というのは難しくなってくると。こういう状況では、本当に落ち着いて研究に打ち込むことができるんだろうかと思うわけです。
 筑波の労働組合の調査によりますと、ポストドクターや任期制職員の七割から八割の方が不安や不満も抱えながら仕事をしていると。正職員、パーマネント化ですね、ここへの道や、就職活動への支援を求めているわけですけれども、松岡大臣はこうした若手研究者の置かれている状況についてどのように認識されているでしょうか。

○国務大臣(松岡利勝君) 認識も含めてということでございますが、独立行政法人の職員につきましては各独法が独自に試験等を行って採用していると、このように聞いております。法人の使命と中期目標の達成に必要な優れた人材を確保する観点から、ポストドクターや任期付研究者などを採用しているものと承知をいたしております。
 これらの雇用形態は、若手研究者のキャリア形成に有益な仕組みとして機能していると、そしてまた第三期科学技術基本計画におきましても奨励をされているところでございます。また、欧米においても研究者にとって定着した仕組みとなっており、国内にあってもこうした仕組みの活用が図られていると、このように受け止めております。
 なお、ポストドクターなどの任期満了後の処遇につきましては、各独立行政法人において当該研究の進展程度や本人の意向等に基づき決めていると聞いておりますが、ポストドクター等が常勤職員の採用に応募することも可能なことでございますので、ポストドクター等が常勤職員として採用された事例も相当数あるものと聞いております。

○紙智子君 現実に置かれている皆さんが不安を抱えながらやっているということありますし、やっぱり必要なときは活用するけれども終わったらはい御苦労さんということでは、本当に長期的に見て、有能な研究者、やっぱり時間掛けて十分しっかりやっていく、腰を落ち着けてやるという、そういう有能な研究者を育てていくということに不安定な状況であればならないと。そこに行く前に最初からもうあきらめてしまうということもなりかねないというように思うんですよね。そこは非常に危惧するわけなんです。
 そこで、ちょっと次に財務省にお聞きしたいんですけれども、今言いましたように、急速に正規職員から非正規職員への置き換えが進められているわけです。
 現実問題として、様々な形態の非常勤職員が研究の重要な部分を担っているというふうに思うわけです。研究職の特殊性で、実験ですとか作業が区切りが付くまではやっぱりたとえ深夜になっても帰宅しないで頑張るという場面もたくさんあるわけですけど、筑波が都心から五十キロ離れているという中では、やはり職場と住むところとが近いということが能力を発揮する上でも非常に大事なポイントなわけです。短期雇用とその悪条件の下で働く若手の研究者にとって、やっぱり手軽な価格の住宅ということでもこれ非常に切実な要求でもあるということで、処遇改善と一体の課題でもあるんですね。
 そこで、財務省にお聞きしたいんですけれども、私、昨年秋に出しました質問主意書の答弁で、このポストドクターのような非常勤職員でも当該主務官庁から要請があれば公務員宿舎に入居できるというふうになっているわけですけれども、これは間違いございませんか。

○政府参考人(藤岡博君) お答え申し上げます。
 昨年十一月の紙議員からの質問主意書に対する答弁書のとおりでございますが、国家公務員宿舎法及び国家公務員宿舎法施行令におきましては、国家公務員宿舎は、常時勤務に服することを要する国家公務員、その職務の性質上宿舎を貸与することが適当である者として各省各庁の長が財務大臣に協議して指定するもの等に有料で貸与することができる旨規定されているところでございます。
 国家公務員宿舎につきましては、国家公務員等の職務の能率的な遂行を確保し、もって国等の事務及び事業の円滑な運営に資することを目的として設置されていることを踏まえ、今後とも適切に対処してまいりたいと考えております。

○紙智子君 今の御答弁でもありましたけれども、国家公務員と、それからその職務の性質上貸与することが適当である者として各省庁、長が協議して申し入れるという、だから非常勤の場合であってもそれは検討することできるということだというふうに思うんです。
 それで、法人に移管された筑波大学やあるいは高エネルギー研の宿舎の入居が非常勤職員にも開放されているということは、やっぱり非常勤職員の宿舎問題が切実だということも示していることだと思うんです。
 そこで、農水大臣、ポストドクターが公務員宿舎に入居できるように是非とも財務省に要請すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(松岡利勝君) 今、国家公務員宿舎法の規定といいますか、そのことにつきましては今政府委員の方から御答弁があったとおりでございます。
 そこで、今、紙先生お尋ねの独法のポストドクター等について入居がどうかと、こういうことでございますが、これは一言で言いますと制度的には可能であると、こういうふうに、私どもはそういうふうに受け止めております。また、そのように確認もいたしているところでございます。
 現在のところ独法からの貸与の申請はございませんが、今後そういった独法の方から申請があれば、勤務実態等を踏まえ、宿舎関係法令に則して適切に対応してまいりたい。要するに、いろいろ条件等整えば可能であると、こういうことでございます。

○紙智子君 私、これ答弁いただいて、実は現場に要求が上がっているということで独法の方に行きましたところが、認識が、いや無理なんじゃないかというふうにはなから思っていて、最初から、だから申請できないと思っているわけです。そこのところはやっぱり誤解を解いて、実際上は制度上こうなんですよということを言ってやって、それで必要な人について上げてもらうというふうに是非、そこまでやっていただけるでしょうか。

○国務大臣(松岡利勝君) そういった方が申請をしてこられれば、先ほど申し上げましたように適切に対処してまいりたいと思っております。

○紙智子君 ありがとうございます。
 次に、肥飼料検査所の輸入飼料の検査体制についてお聞きしたいと思います。
 この輸入飼料の安全性が私たちの食の安全性に直結しているということは言うまでもないと思うんですね。輸入飼料の残留農薬が、えさを通じて食肉に残留農薬が移行するということもありますし、最も発がん性が高いと言われているカビ毒のアフラトキシンB1、これはダイオキシンの十倍というふうに言われているわけですけど、このアフラトキシンのB1に汚染された輸入飼料を食べた牛の乳からアフラトキシンB1の毒性の十分の一のアフラトキシンM1というのが検出をされているわけですね。それだけに、この輸入飼料の水際での徹底的な安全性チェックというのは必要だというふうに思うわけです。
 しかし、輸入飼料には今、外国における生産地の事情その他の事情から見て有害な物質が含まれる等のおそれがある飼料として農林水産大臣が指定したものを輸入する以外は、食品のような輸入届出制度がないんですね。したがって、水際での検査ができない仕組みになっているわけです。これでは国民の食の安全を確保する上からも問題だというふうに思うんですね。すべてのやっぱり飼料について輸入届出制度を確立をして、輸入の都度検査を実施する仕組みを確立するべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(松岡利勝君) 紙先生御指摘の点についてでございますが、飼料につきましては、飼料安全法に基づきまして輸入業者に対し、その事業を開始する前に輸入する飼料の種類や配合飼料の原材料等を届け出させることにいたしております。
 さらに、平成十五年の飼料安全法の改正によりまして、有害物質の混入の可能性が高い輸入飼料等を農林水産大臣が指定をし、輸入業者に輸入の都度届け出ることを義務付ける仕組みを導入しております。
 肥飼料検査所におきましては、これらの届出により把握した情報に基づきまして輸入、製造、流通段階でのモニタリング検査を実施しており、安全性の面などで問題があった場合には検査の強化や再発防止に向けた改善指導等を実施しているところでございます。
 今後とも、これらの措置を的確に実施することによりまして輸入飼料の安全性の確保に努めてまいりたいと考えております。いずれにいたしましても、法令に基づいてこのような仕組みになっていると、こういうことでございます。

○紙智子君 法令に基づいてということで平成十五年のときに議論しているんですけれども、しかし、それはすべての輸入じゃないんですよね、範囲になっていなくて限定していますし、結局はモニタリングということですから水際で止めるというふうにはならないと思うんです。
 私、実はこの肥飼料検査所を視察したんですけど、そのときに輸入飼料の検査率はところでどれぐらいなんですかと質問したところが、現場でだれも答えられなかったわけです。それで、だれも答えられなかったのもそのはずだと。それは輸入届出制度がないわけですから、その検出率を出していく分母が確定しないということがあったわけですね。
 それで、この届出制度がないということで、考えてみるとこれは恐ろしいことじゃないかというふうに思うわけです。日本に入ってくる飼料が実際にはどういう形態でどれだけ入ってくるのかということをつかめないと。ましてや水際でチェックなしに入ってくるわけですから、先ほども紹介しましたけれども、現に今全国で生産されている牛乳は今このアフラトキシンですか、M1に汚染されていると。これは二〇〇二年に厚生労働省が行った調査でも明らかにされているわけです。入ってきたからそうなったということなわけですよね。もちろん、汚染率は国際比率でいうと、国際基準の〇・二%から五・六%ということでは直ちに健康に被害を与えるという水準ではないんですけれども、しかし、この水際で検査を徹底して汚染率を引き下げるということは非常に重要なわけで、ましてやこれから地球温暖化ということも言われている中で、この飼料のカビ汚染というのがより深刻になっていくということもあるわけですから、この重要性というのは増すと思うんですね。
 そこで大臣、やっぱり届出制度を確立をして、そして水際での検査体制を確立すべきじゃないかと。やっぱりすべての飼料をリスク管理ということが、やるのは当然で、リスク管理そのものをやっぱりどう、この在り方として、今の段階ではすべて対象になっていないんだけども、在り方の問題としてちゃんと議論をして検討する必要あるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(町田勝弘君) 今、紙委員からアフラトキシンの例を引いてお話をいただきました。
 私ども、飼料中のアフラトキシンB1の残留によりまして畜産物が汚染されることを防止するといった観点から、配合飼料中のアフラトキシンの残留基準値を定めております。肥飼料検査所の検査結果ですが、これまでこの基準を超えるような事例はないということでございます。
 先ほど大臣からお話しいたしましたように、配合飼料の原料となる輸入トウモロコシにつきましても肥飼料検査所によるモニタリング検査、これを実施しております。この結果、仮に特定の輸出国からアフラトキシンの濃度が上昇する、こういった異常な事態が判明した場合は、この汚染実態に加えまして、先ほどお話しいただきました輸入届出制の対象にするという等の対策を検討していきたい、こういったことで飼料の安全性確保に万全を期してまいりたいというふうに考えております。

○委員長(加治屋義人君) 時間が来ています。

○紙智子君 このやり取りは昨日もやっていたんですけれども、問題は、だから、こうしたリスク管理の在り方ということで、これで本当にこのままずっとこの先もいいのかということについては、せめて食品安全委員会で諮問もして議論してもらうという、そのぐらいはやっぱり必要だと思われませんか。最後、大臣にちょっとお聞きしたいと思います。

○委員長(加治屋義人君) 時間が来ておりますので、簡単にお願いします。

○国務大臣(松岡利勝君) 必要に応じて対応してまいりたいと思います。

○紙智子君 終わります。

○委員長(加治屋義人君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、独立行政法人に係る改革を推進するための独立行政法人農林水産消費技術センター法及び独立行政法人森林総合研究所法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。
 反対の第一の理由は、今回の法改正が、二〇〇五年度末に中期目標期間が終了した農林水産省所管の独立行政法人のうち、農林水産消費技術センター等五法人に関して行政改革の重要方針に基づき統合することになったことを受けてなされるものであり、統合することの合理性があってなされるものではないということ、専ら管理部門の人員削減を目的とした統合であり、賛成することはできない。
 第二の理由は、統合メリットが全く見えないということです。
 今回の統合で、例えば肥飼料検査所の飼料検査率の向上のために統合するほかの機関の検査機器を積極活用することができるといった仕組みは全く考えられておらず、統合しても、それぞれの機関は、管理部門の人員削減はあるにしても、その業務形態は全く変わることはなく、単に看板を掛け替えるにすぎないものと言える。農林水産省は、検査技術のノウハウの結集、分析能力の向上、情報提供の一元化などをメリットとして並べていますが、現場関係者もやってみないと分からないという状況と言えます。
 また、統合されるそれぞれの機関はそれぞれ独法化されており、業績に関係なく予算が減っていく状況に置かれています。統合後の状況も独法化されている以上同じであり、統合によるメリットを発揮しようと努力しても予算が減る状況に置かれています。それが現場段階の意欲をそぐことになり、統合メリットを発揮しづらい状況を生むことになります。
 第三の理由は、強引な統合による弊害が予想されることです。
 農林水産消費技術センターと農薬検査所は、人事処遇が異なっており、統合によって農薬検査所の職員の人事処遇が混乱する可能性もあります。また、森林総研と林木育種センターの研究職の研究評価も異なっており、統合によって同じ独法内で別々の研究評価がなされるという異常な事態も起こることになります。
 以上の反対理由を申し上げて、討論といたします。
らせていただきます。