<第166回国会 2007年3月13日 予算委員会 第9号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 冒頭、松岡農水大臣の問題についてですが、私は、昨年の臨時国会で、大臣が最初に大臣になられたときの所信のときに政治と金の問題について質問をいたしました。
 この通常国会に入りまして、さらにまた事務所費の問題、政治と金の問題が取りざたされているわけですけれども、その答弁を聞いていますと、極めて不誠実だというふうに思います。私はこのまま済ませられないというふうに思いますので、今日ここでやりますと、また同じ繰り返しになりますから、委員長にお願いします。是非、証人喚問を設けていただきたいということで、御検討お願いします。

○委員長(尾辻秀久君) 理事会で協議をいたします。

○紙智子君 それでは質問に入ります。
 今地球温暖化の問題が国民の大変大きな関心事になっています。この問題が日本の食料に対してどういう影響を与えるのか、その温暖化の問題と食料の関係について総理のお考えを最初にお聞きしたいと思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 地球のこの温暖化が進んでいく、進行した場合でありますが、そうなりますと、気候、気温、降水量の変化等によって農作物等の生育環境に影響を及ぼしていくということが考えられます。その結果、収量の変化、産地の移動など世界の食料生産は大きく影響を受けることが考えられます。
 今後、地球温暖化の進行を始めとする不安定要因が影響を強めれば、世界の食料需給は中長期的に逼迫する可能性もあると認識をいたしております。食料の六割を海外に依存している我が国が将来にわたって国民に安定的に食料を供給していくためには、国内農業の食料供給力の強化に向けて、農地、担い手を確保していくほか、地球温暖化に適応した新品種の導入や栽培技術の向上等を図ることが重要と考えています。
 また、そもそも地球温暖化問題自体への対処そのものが極めて重要な課題であると考えておりまして、我々、京都議定書の目標達成のために全力を尽くしていく考えでございます。

○紙智子君 食料の六割をカロリーで海外に依存している日本が、この地球温暖化の進行の中で国民の食料を確保できるのかどうかと。カロリーの大半は我々穀物や食肉などで取っているわけですけれども、食肉の生産にとっては、飼料ですね、このえさの生産というのは不可欠なわけです。
 それで、ちょっと見ていただきたいんですけれども、(資料提示)これ、輸入量に占める米国の割合ということで、トウモロコシでいいますと、今、日本は米国から九四%依存しています。小麦は五六%、大豆で七五%ということで、大体このほとんどを米国に依存している。多いわけですよね。こういう状況になっていますから、この温暖化によってアメリカの食料がどうなるかということはとても気になるわけです。
 それで、この中で研究報告が二つあるわけですけれども、国際農林水産業の研究センターによる、中身を見ますと、気温が〇・五度上がることを前提として、アメリカのコウリャンなど粗粒穀物やえさ用のトウモロコシですね、これが温暖化の影響を受けて大きく減少するというふうになっています。それから、環境省の影響評価の調査を見ましても、これは、気温上昇でアメリカの小麦生産が大きく変化する、減少するということが明らかにされているわけです。気温の上昇だけじゃなくて、それによる異常気象といいますか、頻発ということなんかを含めますと、更に一層深刻な事態になりかねないということなんですが、日本は農産物を米国から主に輸入しているだけに、直撃を受けることになるんじゃないのかと。
 この点で、総理、この事態をどう受け止めていますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) この地球温暖化によって食料の生産に大きな影響があるというのは先ほど答弁したとおりでありますが、例えば、現在オーストラリアにおいては干ばつによる大きな影響が出ていると、このように思うわけでございます。
 我々、こうした変化に対応して、先ほど申し上げましたように、この温暖化そのものが大きな問題であると、このように考えておりまして、この温暖化そのものを、気候変動そのものに対して取り組んでいく。京都議定書の目標達成のために努力もしてまいりますし、またポスト京都の枠組みづくりにおいて、米国や中国、インドといった主要排出国が参加するような枠組みをつくっていく上においてもリーダーシップを発揮をしていく考えでございます。

○紙智子君 温暖化防止策に全力を挙げると、このことが非常に大事ですけれども、同時に、やはり食料自給率の引上げ、これが待ったなしの課題になっているということは言うまでもないと思うんです。ところが、そういうときに、この食料自給率を引き上げるんじゃなくて、逆に引き下げる、北海道や日本の農業に大きな打撃を与えかねない日本とオーストラリアの自由貿易、EPAですね、この問題が今開始されようとしているわけです。
 仮に日本の重要品目の関税が撤廃された場合の影響について農水省が計算されていますよね。小麦、砂糖、乳製品、牛肉で合計で七千九百億円と、これ農水省の計算したものもちょっとパネルにしてきましたけれども、こういうふうに、小麦でいうとマイナス九九%、砂糖、マイナス一〇〇%、乳製品、マイナス四四%、牛肉でマイナス五六%と、七千九百億円の減ということになるわけですけど、この計算、農水省、間違いないですよね。間違いかどうか、間違いないかどうかということだけお答え願います。

○国務大臣(松岡利勝君) 日豪EPAにより豪州産農産物の関税が撤廃された場合の影響につきましては、一定の前提を置いているわけでありますが、小麦、砂糖、乳製品、牛肉の四品目の直接的な影響として、今先生お示しのとおりのその表であることには間違いはないと、こういうことでございます。
 それは、農林水産省として一定の前提を置いて、議論をしていただく上で一つの素材としてそのような試算をしたということでございます。

○紙智子君 それで、この影響は農業だけではないわけですね。
 それで、もう一つお見せしたいんですけれども、これは北海道の道庁が計算したものです。
 先ほども議論になっておりまして、パネルにしてきたわけですけれども、この豪州農産物の関税撤廃による北海道経済への影響ということでは、生産の減少、農業生産の減少で四千四百五十六億円、それから関連製造業、四千四百十四億円、地域経済への影響と、合わせて一兆三千七百十六億円と。
 農家戸数見ますと、二万一千戸減となっています。北海道は一番多いときで二十三万戸の農家戸数があったんです。それがもうどんどん激減をしてきまして、今六万戸台ですよ。更にそこから二万一千戸減るということになるのは、これ本当に大変な打撃になるわけですね。
 そして、関連する地域経済、関連産業にも大きな影響を及ぼして、雇用者数で見ると四万七千人が減ると、失業してしまうということになっていくわけですよ。この四万七千という数字は、以前北海道の拓殖銀行がつぶれたときに、そのときと匹敵するぐらいの影響なんだということで、本当に深刻な、それこそ北海道の壊滅的な打撃を受けざるを得ないという問題になっているわけです。
 北海道の畑作の人たちは、北海道の農業というのは、畑作だと小麦とかビートとかですね、輪作体系ということで回しながらやってきたと。これが豪州との関係で、これ関税が撤廃ということになってしまうと、安い物が入ってくるとそこで価格が下がってやっていけなくなると。そうすると、輪作体系そのものがもう崩壊だということで、それこそ致命的な問題になるというふうに言っているわけです。
 それから、乳製品が入ってきた場合には、今でも安い単価ですけれども、乳価がますます下がると。今チーズの増産ということで工場もできるという話になっているんだけれども、これ自身も大変な打撃を受けることになりますから、そうすると、乳業メーカーもこう言っているんですね。つり橋を渡る最中にロープを切られるようなものだと、こういうふうに言って批判をしているわけです。
 やはりこういう大きな北海道経済についてのこの打撃を受けるということについて、総理の御感想、どうでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 豪州とEPAの交渉をスタートすると、これはもう既に決定をしていることでございますが、豪州と関係を深めていく、安全保障、政治の分野、あるいは経済の面において連携をしていく、強化をしていくことは、日本の国益にとって私は極めて重要であろうと、こう考えています。
 日豪の間に包括的な戦略的関係を築いていきたいと、こう考えているところでございますが、そして、このEPAの交渉をするに際しては、今委員が御指摘になったように、農業の分野、この豪州と日本とはもう規模も随分違うわけでございます。そしてまた、今御指摘のように、北海道においては、我が国の農業において大変重要な地位を占める北海道においては、北海道の主要農産物である小麦や砂糖、乳製品、牛乳、牛肉といった品目は豪州からの輸入品と競合関係にあるという認識はいたしています。このEPAの農業に与える影響、そして今申し上げましたように北海道の農業に与える影響も含めて様々な側面から検討をしていかなければならないと思っております。
 ですから、日本と豪州、このEPA交渉をスタートする上においてセンシティブな問題がありますねと、言わば極めて両国それぞれにとって重要な、敏感な分野、そして大事な分野があるということは確認をいたしているわけでありまして、正に日本にとってはこの農業の分野がそういう分野になると、このように思います。
 我々としては、もちろん私としても、守るべきものはしっかりと守っていくという姿勢の下において、国内農業の構造改革の進捗状況も留意をしながら、日本にとって最大限の利益を得ることができるように交渉をしてまいりたいと考えております。

○紙智子君 影響を受けないようにということをおっしゃるわけですけれども、果たして本当にできるのかというふうに思うわけですね。皆さんが願っていることはもうストップしてほしいと、そういうふうに思っているわけです。
 そもそも、この経済財政諮問会議が議論した中でこういうことが言われてきたわけで、御手洗氏や伊藤氏などがこのグローバル改革に向けての議論を進める中でEPA交渉をもっと加速せよという話をされてきたわけです。国境措置に依存しない競争力のある農業の確立だというふうにもおっしゃっているわけです。これは要するに関税ゼロにしていこうという方向じゃないんですか。そして、農業に対しては、岩盤のように非常に改革が遅れている分野に対して取り組むといって、この総理大臣の強いリーダーシップが大事なんだという話を求めているわけです。
 この経済財政諮問会議の提起を受けて、この間農水省は、実際にこの関税を撤廃した場合にどういう影響が出るかということで自給率の計算をされて発表したと。それが今の食料自給率四〇%から一二%まで下がるという話ですよね。だから、これがもし本当に妥協させられたりとか受けなきゃならない事態になったときには、これは当然ほかの国だって黙っていませんから、そうなると本当に日本は苦しいところに追い込まれることになるわけで、そうすると、もう北海道だけじゃなくて日本全体のそういう大きな打撃を受けることになることは明らかだと。そうならないようにするためにも、私はこのオーストラリアとのEPAは中止すべきだと。
 今日、オーストラリアのハワード首相とお会いになるということですから、是非そのことをはっきりと言っていただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。

○委員長(尾辻秀久君) 時間がありませんので、短くお答えください。安倍内閣総理大臣。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 日豪の先ほど申し上げましたような包括的な戦略的関係を構築をしていくことは、日本にとって、安全保障上においてもまた経済においても、そしてエネルギーや資源や食料の安定供給を確保するという意味においても私は大きなメリットがあると、このように考えています。そして、守るべきものはしっかりと守っていく。農業というのは多面的な機能を持っている大切な分野であると、こういう認識の下に豪州としっかりと私は交渉をしてまいる所存でございます。

○紙智子君 本当に食料を守り自給率引き上げるという気があるのであれば、私はやっぱり具体的なところで対策を取って、例えばえさ米を作っていく問題ですとか、財政負担も含めて引上げのために全力を挙げてほしいし、差別、選別をして小さい農家は切り捨てるようなことはやめてほしいということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。

○委員長(尾辻秀久君) 以上で紙智子君の質疑は終了いたしました。(拍手)