<第165回国会 2006年12月13日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号>




○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日、私はここに出されております今度の法案の一部改正ということについて言いますと、これは私どもとしては賛成で、長きにわたってやっぱり不利益を受けてきた元島民の皆さんにとってもこういう形で、当然だと思うんですけれども、よかったことだというふうに思っています。そのことを最初に述べておきたいと思います。
 ちょっと北方問題は後にかかわってお話ししますけれども、最初に防衛施設庁に伺いたいんですが、三沢基地所属の米軍F16戦闘機による訓練によって、昨年の九月に北海道檜山管内の江差町で生後三か月の赤ちゃん、乳幼児が割れたガラスでけがをした事件についてです。
 それで、米軍機によるこういう被害が与えられたということについては厳重に抗議をいたしますけれども、更に重大なことに、この事件を国、道は報道にリリースをし公表していなかったということなんですね。今まで米軍機の事故の公表の基準といいますか、慣例として人的被害についてはすべて公表するというふうになっていなかったのかということが一つと、それから、やっぱり国民の安全にかかわる人的被害ということでは、規模の大小にかかわらず公表していなかったということに対する反省があるのかということ、二点伺います。

○政府参考人(長岡憲宗君) ただいま御指摘の点でございますが、御指摘のように、昨年の九月九日でございますけれども、北海道の江差町におきまして米軍機が飛行した際に、振動によって民家のガラスが割れて幼児が軽傷を負ったという件でございます。
 それで、これにつきましては、私ども、在日米軍と米軍の三沢基地に照会をいたしまして、それぞれ米軍が飛行した旨の回答を得ましたことから、札幌防衛施設局から江差町それから北海道に対しまして情報提供をさせていただいております。
 公表につきましてでございますが、そういうことで情報提供はいたしておるわけでございますけれども、先生の御指摘も踏まえまして、人的被害を受けた方、そういった方の個人情報の取扱いにも配慮させていきながら、関係機関と連携を取り合いまして、適切に対応できるよう努力してまいりたいと思っております。

○紙智子君 副長官にもお聞きしますけれども、先日、北海道としても八日に札幌防衛施設局に対して今後は公表するようにということで要望されているんですけれども、これにも今後こたえていかれるということでしょうか。

○政府参考人(長岡憲宗君) 御指摘の点でございますけれども、要は情報が公開されるということが大事なわけでございまして、例えば私どもより地元の自治体の方が早くより正確に把握をされて公表される場合とか、いろんなケースがあろうと思います。ケース・バイ・ケースになるとは思いますけれども、先生御指摘のように情報公開をするということで取り組まさせていただきたいと思っておるところでございます。

○紙智子君 この被害は米軍機の低空飛行訓練で起きたものなんですね。北海道でこの十年間で米軍機に絡む事故やトラブルが分かっただけでも十二件起きているわけです。全国各地で低空飛行訓練によるガラスの破損などの事故が起きているわけです。この上、米軍機の訓練移転で更に被害が増えるということが想定をされると。
 政府は、米軍機の訓練移転について基地のある関係自治体については説明をすると。で、理解を求めるわけですけど、基地がなくても訓練空域になる自治体もこういう被害に遭っているわけで、やっぱり訓練区域になる自治体に対しても関係自治体として扱って、自治体や住民の意見や要望を聞くべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(渡部厚君) お答えいたします。
 訓練移転、今度米軍再編の関連でやることになっているわけでございますけれども、訓練移転に関する具体的な訓練内容につきましては今後決定することになりますので、現時点でどのような訓練をどこの区域で行うかということについては決まっておりません。
 従来から、日米共同訓練を行うに当たりましては飛行場周辺の自治体に対して事前に御説明してきておりまして、今般の訓練移転に関しましても同様に飛行場周辺の自治体に対して御説明していきたいというふうに考えておりまして、先生御指摘でございますけれども、訓練区域の下にございます自治体に対する御説明ということにつきましては、現時点では考えていないところでございます。

○紙智子君 現時点では考えていないというふうに言われたんですけども、訓練区域というのは定まっているわけですよね。米軍機の訓練移転というのは、年間計画というのを作っていると思うんですよ。作成することになっているし、そうすると、あらかじめどこどこの自治体の辺りかというのは分かっていると思うんですね。だから、関係の自治体というのは特定できるというふうに思いますし、そういう意味ではやっぱり要望や意見を聞くべきだというふうに思うんですけど、もう一度お願いします。

○政府参考人(渡部厚君) 今先生御指摘の点につきましては、今後検討させていただきたいと思います。

○紙智子君 きっちりと検討していただきたいと思います。
 それから次に、ロシアによる漁船の銃撃事件の問題です。
 私、これ、どこの海域で、ポイントであろうとなかろうと、無防備の漁船が銃撃されていいはずがないというふうに思うんです。船舶に対する銃撃事件で、国際海洋法裁判所が一九九七年に下しているサイガ号事件の判決がありますよね。ここでは、追跡船が最後の手段として武力を行使するのは適当な行動が失敗に帰した後に限られると、その場合であってさえも適当な警告が船舶に対して発せられて人命を脅かさないようにあらゆる努力が払われなければならないとしているわけですね。どこで事件があろうと、やっぱりこの武力行使が最後の手段として、しかも人命を損なわないように最大限の努力が当然だというふうに思うわけです。
 副大臣にお伺いしたいんですけれども、このロシア側の銃撃がこういう国際的な判決からしてどうだったのかなと、調査をし明確にしていくということは再発防止の上でも重要なことだというふうに思うんですけど、いかがでしょうか。

○副大臣(浅野勝人君) 御指摘の八月に発生した第三十一吉進丸の銃撃・拿捕事件は、日本固有の領土である北方四島の領海内で起こったものでありますから、我が国の領土問題に関する立場からしても容認できるものではありません。また、ロシア側の銃撃によって日本人の船員の方が一名亡くなっているゆゆしい事件であります。事件発生直後から、麻生大臣を始めあらゆる外交ルート、レベルでロシア側に抗議を含めて申入れを再三、再発防止を含めて行ってきております。
 今回の事件の事実関係については、現在なお捜査が行われているところでございまして、船長を含む乗組員の方々からの聞き取りをするとともに、ロシア側に対して船体の引渡し、それから関連情報の提供を求めております。
 この船体の引渡しというのは、これ、事実関係を解明していく上に貴重な証拠でもあり、欠かすことができないんですけれども、ロシア側からは船体の引渡しに応じることは困難であるという回答でありまして、再考を求めておりますが、今日なおそういう状況にあります。関連情報についても、事実関係解明のために、ロシア側に対し提供を引き続き求めております。
 御指摘のサイガ号事件との関連につきましては、ちょっと政府参考人に答えさせます。

○政府参考人(八木毅君) 御指摘のサイガ号事件でございますけれども、これは、九七年十月に、セントビンセントのタンカー、サイガ号が、ギニアの排他的経済水域において漁船に燃料油を供給した翌日にギニア当局によって拿捕されたと、こういう事件でございまして、この事件を受けまして、国際海洋法裁判所においてこの拿捕の適法性が争われたと、こういう事例でございます。
 国際法の観点から申し上げますと、この吉進丸の事件の本質というのは、これは海洋法に関する問題というよりは北方四島をめぐる領土問題であるというふうに考えております。これに対しましてサイガ号の事件は、領海の外の排他的経済水域における沿岸国による他国船舶の拿捕の適法性が争われたケースでございまして、今回の事件とは性格を異にするものというふうに考えております。
 ただ、その上で申し上げれば、このサイガ号事件の判決では、先生今おっしゃいましたように、船舶の拿捕の際の実力行使はできる限り回避し、それが不可能な場合は、状況において合理的かつ必要な限度でなければならないと判示されているというふうに承知しております。
 いずれにいたしましても、ただいま副大臣から答弁申し上げましたとおり、今回の事件は我が国として北方領土問題に関する基本的な立場からも、また人道的観点からも容認できないということを繰り返し表明してきているところでございます。

○紙智子君 究明されるということは確認してよろしいですよね、政府としてね、事件の真相を、ということでやっておられると。究明されると、真相を究明されるということでやっているということは確認してよろしいですね。

○副大臣(浅野勝人君) そのとおりでございます。

○紙智子君 漁業者に対しての聞き取りということは海上保安庁が今されているということなんだけれども、やっぱり国際的な判決の視点から、ロシア側の銃撃の問題点については、やっぱり日本国民が亡くなっているわけですから、そういうことではやっぱり真相どうなのかということでは、究明、調査というのはやるべきだというふうに思います。これはどこの部署が責任を持ってやっておられるんでしょうか。

○政府参考人(八木毅君) 先ほど浅野副大臣からも御答弁申し上げたところでございますが、国内においては、国内関係当局、海上保安庁等を始めとする関係当局において乗組員に関する聞き取り等を含む調査、捜査が行われているというふうに理解しております。また、ロシア側との関係での事実究明ということでありますれば、これは外務省が外務大臣、総理のレベルを含めてあらゆるレベルでやっているところでございます。

○紙智子君 関係部局といってどこなのかなというふうに思いながら聞いていたんですけど。
 結果として、解明された結果として、武力行使の国際的判決からしても問題があるということで明らかになった場合には、ロシア当局に対して改めて抗議するとか、必要な対応を取る用意はありますか。

○副大臣(浅野勝人君) その内容、結果によっては当然御指摘のようなことを考えてまいります。

○紙智子君 それで、再発防止の上でこの四島周辺海域での日本漁民が安全に操業できるような拡大していくというのも大事な問題だと思います。今、四島周辺は資源が枯渇していると。現実に、周辺の資源は安全操業協定の枠組みなどで両国が活用しているわけですけれども、したがいまして、この共同の資源調査とか、それから資源管理、資源増大を図らなきゃいけないと。そういう中から操業拡大につなげていくというのが大事だと思うんですが、その実現の努力を強めるべきだというふうに思っています。
 外務省は、十月末の協議で、日ロの資源共同調査の話を持ち掛けているということを新聞報道でも見ていますけれども、ロシア側の反応がどういうふうになっているのか、そういう方向に今後努力していくのかどうかということについてお聞きしたいと思います。

○副大臣(浅野勝人君) 委員御指摘のように、北方四島周辺水域での漁業協力の枠組みを定めている北方四島周辺水域操業枠組み協定、これは日ロ両政府が日本漁船の操業、それから生物物資の保全、合理的な利用、更には再生産のために協力することを定めていることは委員御承知のとおりであります。
 御指摘のとおり、十月に政府間協議を行いまして、日ロ双方が、この協定が双方の信頼醸成に大きく貢献しているので、この協定の下での協力を維持発展させていこうと、互恵的な形で発展させていくことが重要だという認識を確認をいたしました。そこで、この協議を受けて日本側からは、現在の操業を単に維持するだけではなく、将来的に協力関係を拡充していくことを柔軟に考えるように求めております。
 政府としては、今後、地元の漁業者や関係省庁など、国内関係者の具体的な関心や要望を踏まえながら、生物資源の保全、それから合理的な利用について具体的にどのような協力がロシア側とできるのかと。今のところ、具体的な内容、回答があって、それをどう発展させていくかという段階には至っておりませんので、引き続きロードマップ作って進めていくことが大事だということで、これまた領土問題と同じように、粘り強くロシア側と話し合ってまいります。

○委員長(黒岩宇洋君) 質疑時間終了しております。

○紙智子君 ちょっと時間がなくなってしまって、水産庁来ていただいていたんですけれども、ちょっと申し訳ないですということを一言申し上げまして、終わります。