<第164回国会 2006年6月8日 農林水産委員会 第12号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 五月三十一日に参考人質疑をやって、六日に旭川での公聴会と、今日午前中、再び参考人質疑をやりました。関係する現場の農業者や、それから農業団体、そして研究者の方々、各方面から本当に率直な意見が聞かれたというふうに思います。本当に出された意見に対して真摯に耳を傾けて、これをやっぱり反映させていくと、政策に反映させていくということが必要だというふうに思いますし、そういう立場で出された意見や法案の問題点について質問をしていきたいというふうに思います。
 まず、担い手の問題です。
 旭川で、品目横断的経営安定対策についての生産者、関係団体、研究者の受け止めということを改めて意見を聞きながら思ったわけですけど、北海道は言わば最も規模拡大ということでいえば全国の中でも先進とも言えるといいますか、農業基本法の問題で言っても、それに基づいて施策を進める上では優等生と言われてきたということがあるわけだけれども、そういう北海道でも今回の政策というのは担い手限定の選別政策だということで、そういう受け止めがそれぞれの公述人の方から出されているわけです。四人共通してやっぱりそういう言い方をされていたわけです。
 これまで、北海道で見ても、この間三分の二くらいの農家が離農しているわけですよね。言わば、そういう多くの農家の人たちが家族経営を含めて離農している。その土地を放して、そういう土地を集積をしながら現在のその大規模な農業経営がつくられてきたと。そういう中で、不十分ではありながらも、一定の価格制度で支えられてきたという経過があるというふうに思うんです。
 彼らはやっぱりより充実したものを、政策を要求してきたわけだけれども、しかし今回の対策の中では期待していたものとやっぱり懸け離れているということも出されているわけですね。その中で、例えば、現在、北海道で言いますと、今度の対策で、特例ということで面積というだけじゃなくて所得の面でも下げて、そこに入る人が増えるようにというようなことでの対策をやっているということなんだけど、それに特例でもって七割対象になるという話も言われているんだけど、しかしと言って旭川の方が言われたのは、稲作中心地帯である旭川では一千八百戸の農家のうち六百戸しか対象にならないと。そのうち認定ということで、未認定という言い方していましたけれども、二百戸が未認定だと。そうすると四百戸なんだと。そうすると、全体の二割にしかならない。だから、対象になれない農家というのは出てくるわけですけれども、そういう農家は集落でやれと言われるけれども、できないんだという話ですよね。やっぱり広大な農地の中で集落というのも簡単じゃないということが生産者の方から出されていたわけです。
 四人が四人ともやっぱりもっと担い手の幅を広げるべきだということをおっしゃっていたわけですけれども、北海道で集落営農でなかなか進んでいかないということについての原因といいますか、なぜそうなのかということについてどのように分析をされているでしょうか。

○国務大臣(中川昭一君) 北海道は、確かに全国平均の一戸当たりの約十倍の耕地面積、十八ヘクタールぐらいあるわけでありますし、とはいいましても、幾ら北海道の食料自給率が一八〇%だといっても、全国の農地の五分の一ぐらいしかないわけでありますから、その中で面積的には米を一番作っているわけであります。また、転作も一杯しているわけであります。
 そういう意味で、先ほどから北海道ですらいろんな農業、農村があるんだということでございまして、特に米作が価格が下がっている、先ほどからも御議論ありますように、あるいは作りたくても作れない、でも生産調整をしないと最終的に困るのは生産者の皆さんですということは私は御理解をいただいているものというふうに理解をしております。
 そういう意味で、集落営農に参加したくてもできないんだ、あるいは期待外れだというふうにおっしゃいますけれども、まだまだこれから予算措置その他で具体的に決めていかなければいけないことがたくさんあるわけでございまして、スタートの十九年度に向けて作業もまだまだ必要でありますし、何よりも生産者の皆さん、現場に御理解をいただいて、規模の問題もあるでしょう、あるいは特例の問題もあるでしょう、あるいは集落営農に参加しにくい、しないということであれば、なぜそういうことなのかということもきちっと意見交換をしてやっていくと。もう今から駄目だ駄目だという話ばっかりされると、その中にはこれからもやっていきたいという農家もあるわけであります。
 それから、そういう農業も大事でありますし、日本の農業というのは大きく分けてそういう地帯、それから都市近郊も約三割の粗生産を挙げておりますし、中山間地域でも立派な生産活動をトータルとしてやっているわけでありますから、そういうところを経営意欲を持って単独であるいは共同でやることが私は質の高い農業経営に資する、そのための法案だというふうに思っておりますので、どうぞそういう観点から御議論をいただければ大変有り難い。
 まだ時間があります。我々がやることはたくさんございますので、御理解いただきたいと思います。

○紙智子君 旭川の公聴会のときに、担い手の位置付けの話ですとか基準ということでの議論もあったんですね。その中で、やっぱり担い手はできるだけ多くの人が農村に残って続けられるようにする対策が必要じゃないのかと。これ当たり前のことなんですけど、やっぱり残っていなきゃいけないと、人口がどんどん減っていくという中で。そういう位置付けが必要だということが言われていたわけですけれども、これ以上人がいなくなっていくと、やっぱり集落そのものが維持できなくなるということだと思うんです。
 やっぱり食料・農業・農村基本法ということの中にも農村というのが入っているぐらいですから、やっぱりそういう集落として形成されていくということを考えるならば、やっぱり今度の対策のように、四人の方が共通して言われたように、限定した政策ということじゃなしに、もっとやっぱり広げていく必要があるんだということだと思うんですけど、これについてはどうでしょうか。

○国務大臣(中川昭一君) 多分、限定したというのは、何回か申し上げております、一定の試算をしますと三割、五割、だからそこに限定して残りは切捨てと、こういう御議論の意味で限定というお言葉を使われているのかもしれませんが、これは今後、先ほどの平成二十七年度に向けたいろんな目標、これには何といっても農業者の皆さんの御理解と協力がなくちゃできないわけでありますけれども、それによってできるだけこの対象者を増やしていきたいというふうに考えております。
 それから、質的な意味の限定という意味で申し上げれば、先ほどから申し上げております特例措置であるとかいろいろな措置も前広に、WTO上黄色であるということも認識をしながらもやっていって、最終的には自給率の向上あるいは耕作放棄地の減少に資する政策になっていくものというふうに理解をしております。

○紙智子君 集落営農をやっていくということ自体、非常に困難であるということが一方で出ていたんですけれども、もう一方で、例えば県などが実際に集落営農で努力されているという中で、じゃ全くやらないということなのかというと、そういう努力とかそういう議論というのは確かにこれからもそういう話合いの中で出ていく可能性はあるし、追求もしていくことも必要かもしれないと。ただし、今のように上から枠を押し付ける形でやられたんではうまくいかないんだと。実際に下から、地域で本当に話し合われて、やっぱり必要なんだと、この地域で農地をしっかり守っていくためには必要なんだということで話合いがなされてやっぱり自主的にそういったものが生まれてきたときに、国がそれに対して支援していくという形でやってもらえれば、もっともっとそういう意味では可能性が出てくるんだと。
 だけど、今のように、こうこうこういう要件があってと、それに当てはめる形で、これで認められればあなたたちは支援が受けられるんだと。だから、支援を受けるために形式的にやるようなことであれば絶対長続きしないし、そうじゃなくて、やっぱり本当に実際の実情に合った形に対して支援をするというような形でのそういう国の支援ということであれば、これは受け入れられるんだという話もされているわけです。私も、それはそのとおりだなと。実際に、こういう政策の方向が出されるということでもって、地元というか現地では、例えば機械集団とか堆肥集団とか、いろいろそういう形というか、つくられているわけですよね、実際には。
 だから、そういう工夫がある中で厳しいやっぱり要件を課してやれということではなくて、そういうものをやっぱり拾い上げて生かしていくような形で対応すべきなんだと、そういう意味ではもっと柔軟にすべきなんだというような意見が出されているんですけれども、この点についてはどうでしょうか。

○政府参考人(井出道雄君) 集落営農組織でございますけれども、上からの押し付けでなくて地域で自発的に考え組織するのが本筋という御意見ですが、これはもちろんそのとおりでございます。
 ただ、今回の対策については、やっぱり政策として打ち出すわけでございますから、政策の方向として私どもがこういう方向で進んでいっていただきたいと、そういう一定の枠組みを示しているわけではございます。
 昨年の十月に大綱を示して以来、各県ブロックで御説明を繰り返してまいりましたけれども、正にその中で、地域の問題として積極的に、自発的にこの集落営農というものを考えてみようと、そういう受け止め方をしていただいて、かなりの進捗を見ている県も出てきているわけでございます。
 北海道の場合には、他の都府県に比べますと、小なりといえども規模が大きくて、なかなか集落営農組織というものになじみがないという点もありまして、なかなか取っ付きが悪いという点はあろうかと思いますが、私たちは決して上から押し付けているということではなくて、そういうものをお示しした中で、米改革のときもそうでありましたけれども、集落の中で徹底的な集落構成員の話合いをしていただく中で、我が村はどっちへ進むかと、我々はどっちへ進むかという、正に理解と納得の上で方向を決めていただくと、こういうことでございます。
 それで、やはり機械利用集団とか転作集団とか、いろいろあるわけでございますけれども、やはり地域の担い手として継続的、安定的に農業をやっていっていただくという点になりますと、やっぱり機械を利用するときだけくっ付いているというだけでは、過去にもそういうものはある程度の期間がたちますと雲散霧消していくと、そういった歴史を経ておりますので、経営主体としての実体があって、将来やはり効率的かつ安定的な農業経営に発展していく可能性のある組織ということで最低ラインの要件をお示ししているわけでございます。
 ですから、経理の一元化など、繰り返しになりますけれども、決して高いハードルを課しているわけではございませんで、入口のところでまず飛び込んでみてくださいという要件になっていると考えているところでございます。

○紙智子君 だから、決して押し付けているわけじゃないというふうにおっしゃるんですけど、やっぱり今の話になってきますと、例えばこの前岩手の花巻の話しましたけど、そういう形はもうできていて、もうすぐなんだけど、なかなか手が挙げられないと。それは、米については、その岩手の例でいいますと、それぞれ自分たちでやっていく、それ以外のものをみんなでやろうということで形はできてきているんだけれども、それに米を入れなければ認められないという中で結局手を挙げられないという話があったということを紹介したんですけど、そこはやっぱり変えないわけでしょう。

○政府参考人(井出道雄君) 特例として、先ほど来申し上げています生産調整を担っている集団に対する特例という形で、規模要件等をかなり緩和をいたしております。ですから、面積要件で転作集団が外れるということは余りないのではないかと思います。ただ、将来方向としては、やはり転作にとどまることなく、稲作の部分についてもやはり協業化、共同化を目指してほしいと。そういうことによってその集団が生産性が上がってくるわけでございますので、そういうことは目指してくださいねということは申し上げております。
 この前、例を挙げて申し上げましたけれども、現実にはやはり全作業が受託で出てくるとか、あるいは一挙に米をやめられて集団に任せるというのはなかなかないわけでありますが、部分的にやはりできない作業からそういう集団にゆだねていくということは現実問題として各地域でも起こっておりますし、私も岩手県へ何度かお邪魔して、紫波とか江刺とか、実際に集落営農のリーダーの方にも何人もお会いして伺いましたけれども、やはり集落営農のリーダーの方はそういう知恵をお持ちで、無理やりはぎ取るんではなくて、皆さんが納得してこちらに任せてくるのを待つと。
 ただ、我々は、スタートラインで最低の要件だけは満たしてスタートしてくださいと、それと、近い将来には米も含めて集落全体で協業化、共同化をしてコストダウンが図られ、また参加してくださった農家にちゃんと還元ができるような組織に育ってほしいと、そういうことの最低ラインの要件をお願いしているということでございます。

○紙智子君 やっぱり柔軟性を持って対応していくということはこれからも続けるということなんでしょうか。
 そして、やっぱり要はその地域に残って続けられるということでなければ、結局は、いろいろ言われたけれども、難しいということで、離れて出ていかなければならないような状況になってはいけないというふうに思うわけですけど、そこはよくこれからも話合いでもって、柔軟性を持って対応できるということなんですか。

○政府参考人(井出道雄君) 私どもの目的としているところは、今その地域で農業に従事されている方が、この高齢化の波と、それからそもそも農業就業人口はどんどん減っていくという中で、この地域の農業をどう守っていくかということを村々の中でよく話合いをしていただいて、納得ずくで農業を守っていくということが基本でございます。
 そういう上で、集落営農組織、あるいは集落営農組織の前哨形態として生産調整集団というものもこの対象に含めるということにしているわけでございますから、一方では、どうも四ヘクタールと二十ヘクタールの影響が強過ぎて、そういう細目にわたってお話が進む前にあきらめてしまうとか、あるいはもう面倒くさくなってしまうとか、そういうことがあるのかもしれないと。これは私どもも反省をして、時間のある限りそういう情報を提供し、具体的なお話をさせていただきたいと思っております。

○紙智子君 前回の参考人質疑、三十一日の日でしたけれども、全中の山田専務さんから出されていて、みんなが言っているということだと思うんですけれども、集落営農や受託組織などを地域ごとにこれまでつくり上げてきた地域の実情に即した担い手が品目横断の経営安定対策の対象になるように努力をしていると。集落営農を位置付けてきたんだけれども、地域ごとに格差が生じているということ、取組の弱いところでは手取りに格差を生じかねないし、混乱が懸念されると言っていると。それから、米価の下落で担い手の所得も落ち込んでいると。担い手の経営を安定させる内容をしっかりさせないと、米価下落の対策、これをやらないと、やっぱり根本的にというか、進んでいかないんだという話もされているんですけれども、これに対してはどのようにお考えでしょうか。

○政府参考人(井出道雄君) 米価の下落については、もちろん基本は生産調整をしっかりやっていただくということが基本なわけでございます。需要に合った生産ということがまず肝心でございますし、これは、生産調整をしっかりやっていただくための支援措置というのは、先ほど総合食料局長から御答弁申し上げたように、様々なシステムが構築されているわけでございます。
 ですから、集落営農組織をつくったり担い手を育てていくという上では、米の流通を担っている農協あるいは全農、その他の流通段階を担っている方々が、私ども全農改革という中で、農家の手取りを増やすべく、全農が委託料として取っていたものを削減するとか、あるいは先ほどの北海道のきららが最近値段が非常に好調であるというのも、それは間に入っていますホクレンがきららの米の売り方を抜本的に変えたと。そういう中で、米の価格維持あるいは復元が図られているわけでございますから、そういったこともさらに外縁部では含めてしっかりやっていくことが必要だと思っております。

○紙智子君 ところで、北海道において担い手になっている農家でも経営が厳しいというふうに言っている理由についてなんですけど、ナラシ対策にしても、これまでの水準を引き上げるどころかますます引き下げることになる、そういう不安があるんだと。米については、今までは稲経とか担い手の経営安定対策があったわけだけれども、これ廃止をしてナラシの方に誘導していくということですよね。そうすると、これまでと同水準ということではなくて、これ年々下がっていくことになるんじゃないかと。価格の下落による、収入の変動による影響を基準収入の差額の九割補てんという仕組みですよね。基準収入の一〇%の減収に対応し得る額、これ、あらかじめ生産者が一で国が三の割合で拠出しなければならないと、こういう仕組みなわけです。
 稲経自身も、前の年が下がったりすれば、今度それの九割ですからまた下がってくると。もしそれよりも下がれば、またそれに合わせて下がっていくと。限りなく下がっていくという、そういう欠陥持っているということは言われたわけですけども、結局こういうふうな仕組みになっているにもかかわらず、拠出する方は、今度は米、麦、大豆を生産している場合には三品分の拠出が求められると。そうすると、今までよりも持ち出しが多くなるんじゃないかと。ならないというような保証があるんでしょうかということなんですけど、いかがでしょう。

○政府参考人(井出道雄君) 従前、ベースになっています稲得は一対一に国が三百円だけ余分に出すと。担い手経営安定対策の乗っかっている部分だけが一対三と。そうしますと、根っこから通算しますと大体一対二というのが相場でございました。これを一対三ということで国の負担割合を今度は引き上げるわけでございます。
 そのことによりまして、まあ試算でございますけれども、十アール当たりで、従来担い手経営安定対策に入っていらっしゃった方を試算をしてみますと、やはり十アール当たり五千四百円ぐらい負担をされていたと。今回はこれが一対三になりますんで、この米の部分が三千百六十円ぐらいになると。そうしますと、米農家で、従来米と大豆についてナラシがあったわけですが、今度はそれに麦が追加されますけれども、麦の分が追加されましても農家の出す拠出金はかなり大幅に軽減されるという見通しでございます。

○紙智子君 麦は今までは拠出なかったんですよね。でも、今度は麦も拠出することになるわけですよね。それでも少なくなるんですか。

○政府参考人(井出道雄君) 私どもの試算では、麦についての農業者の負担額は十アール当たりで三百三十円ぐらいというふうに見込んでおります。米に比べると麦、大豆の農業者の負担額というのは非常に少ないということでございます。

○紙智子君 これはちょっと確認をしたいと思います。
 それから、生産条件の格差是正対策で、これは前回も大臣に質問をいたしまして、それに答弁があったんですけど、それに対してちょっともう一度聞きたいんですけれども、生産条件の格差是正の対策で大臣が答えられたのは、牧草地については、麦、大豆の実績はないわけだけれども、それについては緑の政策以前の、緑の政策とは別の政策で対応するというふうにおっしゃったんです。新たに該当の四品目を作る者については、別の観点からこれに対する品目横断経営安定のための支払がなされるんだというふうに言われたんです。
 これについてちょっともう少し詳しく、意味といいますか、お聞きしたいと思うんですけど。

○政府参考人(井出道雄君) 今度の品目横断経営安定対策では、緑の政策に合致するためには過去実績払いということになっておりますけれども、農地を担い手と認定された方が集約する場合に、その過去実績が乗っていない農地であっても、それを買ったり借りたりすることによって規模拡大を図っていくということは、担い手によります主要食糧の安定供給とかあるいは構造政策の観点からも非常に好ましいことでございますから、そういう場合にはこの過去実績払い、品目横断的経営安定対策とは別に予算措置でそういうことに対応できるようなことを考えたいと思っております。

○紙智子君 ちょっといまいちよく分からないんだけど、それでその後また井出参考人から関連して説明がされたんですけど、過去実績のない農地を取得して、そこで何を作るのかと。野菜を作る場合は制度に乗っていなくても買いたいということになる。また、農地の権利を移動して、それが担い手の規模拡大につながるということであれば、今回の品目横断対策とは別に、今これ言われたことなのかな、政策目的に沿ったものである場合には別の対策として十九年度予算で措置したい、今言われたことですよね。
 ちょっと、これ、新たな対策ということなんですか、今まであったものなんですか、新たな対策なんですか。もう少しちょっと分かりやすく説明いただきたいんですが。

○政府参考人(井出道雄君) 見ようによっては新たな対策ということになると思うんですが、担い手の規模拡大を促進したり新規参入を支援するという観点から、別の事業として予算措置で助成、支援をしていきたいと、こういうふうに考えております。

○紙智子君 要するに、WTO上生産を刺激する政策はできないと。緑の政策で、いうことで表に出すものと分けて対策をするということなんじゃないのかなと思うわけですけれども、現場の農業者は全くと言っていいほどそういうことは知らない、知らされていない、知らないです。問題は、その話というのは、あくまで担い手としてその対象になる人の場合ということなんですけれども、しかし、この後、今、農業交渉をやっている途中なんですけれども、思いどおりに進まないでというか関税率が更に下がっていくと価格が下がり続けるということになると、それこそ、ここで担い手というふうに言われている人さえも経営難に追い込まれるんじゃないかと、そういう心配はないのかなということなんですけど、この点はどうですか。

○国務大臣(中川昭一君) 御承知のように、この四品目については内外の生産格差条件があります、米については高い関税率で守られておりますからこれの生産格差条件の対象にはいたしませんということで、この経営安定対策の考え方でございます。
 交渉につきましては、まさしく今月、来月、いよいよ山場ということでございますんで、何回も申し上げておりますけれども、だとするならば、関税がどんと下げられた場合にはこうこうこういう対策を取りますということをこの国会の場で申し上げるということは、もうすぐにジュネーブやアメリカ等にも伝わることにもなりかねませんので、我々としては、とにかく守るところをきちっと守るべく最大限努力するということで、御支援をよろしくお願いいたします。

○紙智子君 それはそういう面もあるだろうと思いますけれども。
 それで、さらに、これも全中の山田専務が問題提起されていたんですけれども、十九年度産からの生産者と生産者団体が取り組む新たな需給調整システムへの移行についてということで、豊作分等の過剰米の在庫対策の充実がないと簡単には移行できないと。現在、計画生産に参加していないと見られる農家が四十二万人に上っていて、過剰生産が五十万トンを上回るんじゃないかと推測されていると。そうなると、出回りが遅い東北、北海道の主産地の米の在庫が他産地に比べて多く、米価は入札の時期が遅いほど低下する傾向からして、東北や北海道ほど米価の低落に苦しむんじゃないかという懸念が述べられているんですけれども、これらについては何かの対策というのは考えておられるんでしょうか。

○政府参考人(岡島正明君) 豊作による過剰米につきましては、食用米と区分して出荷し市場から隔離する集荷円滑化対策を十六年産から講じております。十七年産については、先ほど小川委員との質疑でも申し上げたとおり、全国作況一〇一、北海道においては一〇九ということでございまして、豊作による過剰米八・六万トンのうち、当初の予定どおり七・六万トンが区分出荷されたところでございます。十九年産からの米の需給調整システムにおいても、集荷円滑化対策を引き続き継続し、豊作による過剰米対策の的確な実施に努めていくこととしております。
 それから、後段で御質問がありましたいわゆる作況が良かった、作が良かった場合、出回りの遅い地域がより米価下落の影響が特に大きいのではないかという御指摘がございましたけれども、十七年産の米の価格動向を見ますと、先ほど小川委員との質疑でもお答え申し上げたとおり、十七年産の北海道産のきららでございますけれども、九月下旬、一回目の上場では六十キログラム当たり一万二千二百円だったものが本年に入りまして上昇しております。直近の五月では、五月の落札価格は六十キログラム当たり一万三千八百五十八円ということでございます。
 もちろん、そのきららが上がった原因、私ども考えておりますのは、先ほど申し上げたとおり、昨年の天候が非常に良くて品質が向上したというようなこと、あるいは集荷円滑化対策をきちっとやっていただいて豊作による過剰米を厳格に区分出荷したということ、当初の値決めが、指し値が値ごろ感のあるものから入ったというようなこと、あるいはふるい下の米が主食用に回らないように産地が厳格に指導したということ、それから道を始め関係者の方々が地産地消のいわゆる食率向上運動に取り組んでおられること、そういったもろもろの要因があるということがございますけれども、いずれにいたしましても、十七年産の米につきましては作が全国的にも良かったという中で、出回りが遅い北海道産のきららについては今価格が上がっていると、そういう状況があることも御承知おきいただければと思います。

○紙智子君 たまたま作況指数が一〇九というようなことで、だけどこれは年によって物すごく変わりますから、そういう意味では、今現在はこうだということだけじゃなくて全体をやっぱり踏まえて対策を考えておく必要があるというふうに思います。
 それから、MA米についてなんですけれども、WTO農業交渉において、現在、上限関税の導入については何としても阻止するということで取り組んでいるわけですけれども、この導入を止められたとしても、例えばMA米が更に拡大されるというふうなことになったとすれば、これは国内の需給に大きな影響を与えるんじゃないのかと。
 これまで一貫して農水省の説明というのは、いや国内には影響を与えないんだというふうに言われているんですけど、実際に、これは何度も多分説明されていると思いますけど、現場の生産者の皆さんはだれ一人としてそのとおりだというふうに思っている人はいないぐらいですよ。今回、旭川の公聴会のときにも、そういうふうに農水省は言っているけれどもそう思うかと言ったら、みんなが全くそうは思えないという話をしていて。
 特に、今までに六百七十八万トン輸入されているわけですよね。その内容について調べた方がいるんですけれども、半分が業者に売られていると。その値段も、この前初めてここで六十キロ当たり一万三千円だというので、おおっとびっくりしたんですけれども。それで、残りの三〇%が海外に出して、あと四分の一、これは四分の一ということは六百七十八万トンですから約百七十万トンぐらいですかね、これは不利用で、在庫として大阪の倉庫に入っていると。これを維持するために相当のコストが掛かっていて、ここにも税金が投入されているんだということで、片方では過剰になることを止めるためにそういうことをやりつつも片方はこういう事態があるということに対しては非常に納得できないという声があるんです。
 これに対して、大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(中川昭一君) 御指摘のように、ウルグアイ・ラウンドの対策の中でMA米は国内生産に影響を与えないという閣議了解がございまして、これは現在も生きているわけでございます。
 ミニマムアクセスですから、義務的輸入ということになりますけれども、これについてもいろんなやりくりをして国内生産に影響を与えない。現に、主食用として販売されたミニマムアクセスは六十四万トンですけれども、百十二万トンの政府米が海外援助に使われているわけでございます。
 御指摘の、そのお金が掛かっていることについてはけしからぬということであれば、これはそういう目的のために当然経費が掛かるということで、これからもその閣議了解を遵守しながら米の運用をしていきたいというふうに考えております。