<第164回国会 2006年5月30日 農林水産委員会 第9号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私は、この法案をめぐって北海道や東北の現地を調査いたしまして、直接現地の農業者の皆さんの声を聞いてまいりました。また先日、さきに行われた衆議院での地方公聴会、この議事録も取り寄せまして、ずっと目を通させていただきました。やっぱり読んでみますと、ここで指摘されている問題点、言っていることというのは、私が現地から聞いていることとも一致する、そういう問題点などもたくさんあります。そういうことについて質問をしたいと思います。
 まず、諸外国との生産条件格差是正対策、これにおける過去の生産実績に基づく支払の問題です。
 これが様々問題になっているんですけれども、衆議院の北海道での地方公聴会でも次のように指摘されているんですね。「緑ゲタが農地と結びついた受給権のような性格を持ってしまうことになりますと、」、省略しますけれども、平成十六年から十八年までの三か年に「品目横断的経営安定対策の対象作物の生産実績を持たない農地の売買、貸借に際して、農地価格の下落や小作料水準の低下などが懸念される」と。「また、過去の生産実績を持たない農地が売りに出された場合、農業委員会があっせんを行いましても、引き受ける担い手があらわれず、あっせん不成立となる事態も想定されるところであります。そうした事態が続いてしまいますと、農地の遊休化にもつながりかねない」、こういう意見ですね。
 これ、私が調査に行ったところでも、やっぱり同じように農家の方から、生産実績のない農地は買えなくなるので、そういった農地は耕作放棄地ということで増えていくんじゃないかと、こういう懸念が出されているんですけれども、まずこの点についてどう受け止めているのかということでお伺いします。

○国務大臣(中川昭一君) 北海道の公聴会というのは多分私の地元でやっていただいたんだろうと思いますけれども、まず、農地の売買というのは需要と供給の接点において価格が決定されるというのが自由主義経済における大原則でございます。売手と買手の間で価格が決定されるというのが大前提でございます。
 そういう中で、今度は経営安定対策付き農地だからとか経営安定対策なし農地だからとかいうことで上がるとか下がるとかいう御指摘でございますけれども、それは私は直接的には大きな問題ではないというふうに理解をしております。
 なぜならば、今までの麦、あるいは大豆、てん菜と、私の地元でいえばそれが該当するわけでありますバレイショの移転についても同じように、今までも過去払いでありますから、同じように付いてきているわけでありますから、むしろ絞られるということについての御議論が今日一杯あったわけでございまして、一般論として今までと全く同じであるというのが大前提だというふうに考えております。

○紙智子君 大きな違いがないというふうに今お答えになっているんですけど、じゃ大臣にお聞きしますけれども、もし大臣が農業者だというふうに考えたときに、今、豆だとか大豆だとか輪作体系で作っているわけですけれども、例えば牧草地といいますか、酪農で離農した人のを買い入れてやる場合に、そこについては例えば畑として開墾してというか耕作をして作物を作ったとしても、これは実績にならないということになった場合、わざわざ買いますか。どうですか。

○国務大臣(中川昭一君) それは今までとも全く同じでございまして、今までは牧草地については今までの制度でもそういう乳価の不足払い制度というものがあったわけでございます。今度それを買う場合には、今の制度であっても麦、大豆云々について実績はないわけでございますけれども、それについてはいわゆる緑の政策以前の、緑の政策とは別の政策でもって対応をするということでございまして、過去払いと先ほど申し上げたのは、過去払いの部分については緑の政策ですということで申し上げたわけでございまして、新たにこの該当四品目を作る者については、WTOのこれは観点から申し上げているわけでありますけれども、別の観点からこれに対しての品目横断経営安定のための支払がなされるわけでございます。

○紙智子君 私、余り難しいことを聞いているんじゃなくて、何払いがどうのこうのというんじゃなくて、もし耕作する側の立場だったら、実績が付かないものをわざわざ買って手間暇掛けてそれをやる気になるかどうかという現場の立場に立って考えたときどうなのかということなんですよ。

○国務大臣(中川昭一君) 該当四品目を新たに作れば、それに対しての安定対策の対象になるということでございます。

○紙智子君 作ったらそれが支払の対象になるっていうふうにおっしゃいました。ならないですよ。(発言する者あり)
 じゃ局長、ちょっと答えてください。

○政府参考人(井出道雄君) 農地について、その過去実績の農地、ない農地が売れなくなるんではないかというお尋ねだったと思うんですが、今回の政策ではその過去の生産実績は一筆ごとの農地の上に乗っているわけではございませんで、農業者単位で設定されます。
 ですから、その農地を売却した人が例えば生産実績のない人だったと、ない農地を売却した場合でも、その農家としてはどこか別の農地で麦、大豆や何かを作っておったと、その過去生産実績をその売りました農地に乗っけて付け替えることは可能でございます。
 この過去の生産実績に基づく支払というのは、農地単位ではなくて農家単位に設定されるということが第一点でございます。過去三年間でございますけれども。
 それから、値段がどうなるかというのは、正に大臣が申されたように、この需給関係で決まるわけでして、農地の、十勝のように割と引き合いの多いところと、水田地帯のように米価が下がりぎみで引き合いがないところでは恐らく違った傾向を示すのではないかと。というのは、かえって過去実績が乗っていますと、引き合いの強いところはその乗っている分だけ高く売れると。逆に、水田地帯などでは逆に乗っていないと今までより下がってしまうと。そういうことで、やはり農地の需給によってその対応が変わってくるんじゃないかなと見ております。
 過去実績に基づく支払の対象にはならないわけ、例えば過去の実績を引き継がなかったり、過去生産実績が全くない人から農地を取得しますと、当然これは過去実績払いの対象にならないわけでありますが、今後その農地で何を作るか、つまり、緑げただとか黄色げたが必要になる土地利用型作物を作るのか、そうでない、例えば野菜を作るのか、それによりましてまた引取り方が違うと思います。野菜を作る農家なんかは、そんなものが乗っていなくても安く手に入るんであればそれを買いたいということになるのではないかと思っております。
 それから、最後に、農地の権利移動をいたしまして、それが担い手の規模拡大につながるというようなことであれば、今回のこの品目横断的対策とは別に、その政策目的に沿ったものである場合には、別途の対策として十九年度予算でも措置をしたいと考えております。

○紙智子君 実際現場で何度も説明を受けて、それでその人たちが、十勝の場合で、大臣の地元の十勝で言っても、結局はその実績にならないのは買わないということになって、実績があるところは買うかもしれないけれどもね、買わないし、実際に買った人がいるわけですよ。既に、この制度が決まる前に、奥さんの実家が高齢化していて、土地を売りたいということで、酪農をやっていたもんですから、牧草地を買ったわけですよ。ところが、買ったんだけど、じゃこれは今度の対策に乗るのかといったら乗らないと、どうするんだという話になっているわけで、そういうのが実際には買われないで放置されることになると、これは耕作放棄地になっていくんじゃないかという心配の声をみんな上げているわけです。
 私は、それを、じゃそのまま放棄地というのはどうするのかなと、どう考えているのかなと思うんです。先ほどもアクセルとブレーキの話があったんですけど、一方では耕作放棄地を増やさないと、増やさないためのいろんな対策すると言いながら、もう一方では、こういうものを放置しておけば今度はこれ耕作放棄地が広がっていくことになるわけで、何か相反するんじゃないですかね。矛盾していませんか。

○国務大臣(中川昭一君) 今日一日、私が何回か申し上げているように、これはいい経営をしてもうかるようにしていただきたいと、これは生産サイドの方の話であります。消費サイドの方もそういうニーズがあるから生産サイドでそういうものが売れるという前提で何回か申し上げているわけであります。ということは、もっと一杯作ろうじゃないかと、もっといい品質のものを作ろうじゃないかと、もっと規模拡大をしようじゃないかというインセンティブが当然働くわけであります。それに対して支援をするというのが今回の目的なんです。
 ですから、さっきから私や局長が言っているのは、過去払いというのは、あくまでも今までの実績だけの話であります。だから、それはWTO上での仕分としては緑の政策として問題ありませんねと。しかし、今局長も最後に申し上げたように、予算措置でもってそういうものは対応しますと、これは率直に言えばWTO上は黄色であります。黄色でありますけれども、そういう規模拡大をする、品質向上をする、それによって収益が上がるというものに対しての施策というものも当然考えていっておりまして、それは予算措置としてWTO上は黄色の、まあWTOの観点からいえばいい方向ではないかもしれませんけども、自給率向上のためには当然そういうことになるわけでありまして、今のお話だけ聞いていると、ただ同じ量だけ作って、同じ面積だけ作って、同じ収量だけ上げてぐるぐるぐるぐる回っているだけだったら、これは何も日本の経営の体質強化、自給率の向上に役立つわけがないわけでございますので、是非ともその辺を御理解いただきたいと思います。

○紙智子君 今の話はいいとしても、予算措置という話があったんですけれども、何で法律に書かないんですか。予算措置でとどめるんですか。

○政府参考人(井出道雄君) 今も申し上げましたように、私どもは、現行のWTO、整合性を高めるという点で緑の政策にできるだけしたいと。そういうことを表に出しているわけでございます。
 残念ながら、自給率向上ですとか規模拡大に何とかしてあげたいと。これは予算措置で講ずると言っておりますが、これを、余り大きな声では言えないんですけれども、表に出して法律に書くということは、WTO上は一体どういうことになるのかという問題もございます。そういうことも考え併せて、黄色ではありますけれども、しっかりとそういう規模拡大意欲等は受け止めてやっていくことが必要ではないかということで、予算要求はしっかりするということにいたしているところでございます。

○紙智子君 規模拡大をしていかなきゃいけないということなんですけれども、もう一つ、私が調査に伺った北海道の空知、今度は空知なんですけれども、空知の方で米と麦で三十四ヘクタールを経営している大規模経営の農家の方なんですけれども、この方からは実は衝撃的な話が出たんですね。今回の生産条件の格差是正対策はがんじがらめで夢がないと言うんです。これではちょっと営農意欲がわかないし、もう離農しようと思っているという話なんですよ。これは過去の生産実績で決められてしまうということを言っているんですね。このことも公聴会でも同じような指摘がされています。
 これも十勝の農民連盟の方ですけれども、平成十九年以降、面積を増やした方に対しての担保がないと。地域としては平均以下の農家だったわけだけれども、今度、息子さんがやることによって平均以上の収入を上げることになったんだけれども、ところが、お父さんのときの低いげた、その中で農業をやっている限りはなかなか努力が報われないと。果たしてそんなことで本当に意欲のある農家が残るんだろうか。あるいは後継者が安心して意欲を持って農業ができることにつながるんだろうか。そのことについても、今回の政策そのものについては大変危惧するんだと、こういう発言をされているわけです。
 大臣、いかがでしょうか。こういう意欲のある農家ほど過去の生産実績でがんじがらめになってしまうような生産条件の格差是正対策で、逆に意欲を失ってしまう事態が生じているということに対してどのように思われますか。

○国務大臣(中川昭一君) 何ががんじがらめかちょっとよく分からない上で質問にお答えいたしますが、私の地元は今、平均耕地面積が四十ヘクタール、売上げが四千万でございます。それに対しての平均というか以下かというお話でございますが、とにかく規模拡大をするメリットがある、あるいはより収益を上げるようにするメリットがある。私のところで申し上げて大変恐縮でございますけれども、農家戸数が半分以下に減って、しかし地域全体の粗収入は五割以上増えている、平均の売上げが三倍近くになっているという状況。しかも、不足払いであるとかあるいはいろいろな交付金がどんどんどんどん減っていながら増えているというところもございます。
 それから、空知のような米中心地帯だったところが、今度は転作大豆とか、あるいは転作でいろんなものを作っていこうということによって意欲を高めていただきたいということでございますから、過去払いだけではなくて、さっきから申し上げているように、プラスここに該当するような作物を作っていただき、しかも経営に工夫を重ねていただくという結果、いい結果が出るということに対する支援をさせていただくというのが法の趣旨でございますから、ただ右から左へ移動して、損した得したというのが今回の法の目的ではないということを是非とも御理解をいただきたいと思います。

○紙智子君 大臣が言われている例というのは、言ってみれば日本の中で最も拡大して大きな規模のところでやっている農家ですよね、言わば。私もいろいろ何度も足も運んで、本当に資産もたくさん持っているし、それはよく知っていますけれども、今挙げたこの空知の方なんかも、言わば優良農家というふうに言われて、それで規模を拡大してきてやってきたところですよ。そういうところ自身がこんな発言をされるわけだから、だから私は非常にショックを受けますし、ともすれば、本州の方から見ると、いや、北海道はいいじゃないかという話をされるんだけれども、実際、足で歩いて、優良農家と言われる北海道の特に規模の大きなところなんかにしても、経営者の意識がどうなっているかというと、こういう現状にあるんだということなんですよ。
 さらに、この生産条件の格差是正対策が北海道の輪作体系ということでも影響を及ぼしかねないということで、みんなが不安の声上げていまして、さっきも話にありましたけれども、酪農家が離農した場合には、その草地を畑作農家が購入しようとしても実績がない農地ということで買うことを控えると。そういう草地というのは耕作放棄地というふうになるとなれば、耕作放棄地が地域の中にこっちにもあっちにもということになれば、地域全体として合理的な輪作体系が形成されなくなるんじゃないかと。
 つまり、確かに今ずっと輪作体系で麦作ったり大豆作ったりということでローテーション組みながら作っているんだけれども、さらに目指しているところは、さっき言ったように、大きくしていこうということなんでしょうけれども、そういう耕作地なんか含めてやれるのかどうかということでは、なかなか輪作体系を土地全体を効率的に利用してやるということにはなりにくいということなんかも出されているわけなんですけれども、これについてはどうですか。

○国務大臣(中川昭一君) まず、空知の米と麦で三十四ヘクタールのお話については、これはもう御承知だと思いますけれども、米については価格変動の対策はございますけれども、条件格差対策の対象ではないということをまず申し上げておかなければならないと思います。
 それから、輪作体系というのは四作あるいは五作で回していくわけでございますから、トータルとしていろんなものを対象にしてやっていくわけでございます。基本形は四作であって、だから麦、豆あるいはバレイショ、てん菜というものが該当するわけでございまして、規模拡大によってその四作なら四作、対象の四作で回していくということであれば、新規の部分については、基本形の部分、つまり緑の部分については対象になりませんけれども、先ほどから申し上げておりますように、WTO上は黄色、つまり生産刺激的なものでございます。しかし、それについてはきちっと予算措置、つまり農家に対しての支払をさせていただくということにしているわけでございます。

○紙智子君 今言った問題と併せて、今、北海道の話でお話をしたんですけれども、これ、こういう形のお話というのは北海道以外でも起こってくるというふうに思うんです。
 これまで、大豆や麦というのは転作作物として生産伸ばしてきたという経過があります。それから、集団で転作をするということで、ブロックローテーションというので転作を地域の農家全体の課題で解決していくということで、圃場をブロックに分けて、毎年、転作を実施するブロックを替えていくということですよね。農家の公平性確保すると、そして転作作物の生産向上にも役立つということで圃場を契機に導入されてくるわけですけれども、主に麦や大豆ですよね。これで利用していって、例えば転作率二五%で四年に一回の回転で実施するとか、四年一巡というんですか、それからもう一つは三年一巡と、こういったシステムを取って地域で取り組んでいるところもあるわけです。
 この中には、地域全体でやっていくということなので、担い手の方もいれば担い手じゃない人もいると。交ざって地域全体でやってきているということなんですけれども、そういったところででも、担い手以外の農業者は、大豆とか麦がこれ生産費を大きく下回る価格にさらされることになりますよね、担い手から外れれば。さらされるわけです。そうすると、生産を維持できなくなるので、このブロックローテーションから離脱しなきゃいけなくなるということも考えられるわけですね。多くの担い手以外の農業者が、これ一人二人だったらまだ何とかもつかもしれないけど、どんどん離脱するということになっていけば、これブロックローテーションシステムを壊すことになってしまうと思うんですよ。地域の営農にも打撃を与えることになるわけで、そうならないというような保証があるのかどうか、この点どうですか。

○国務大臣(中川昭一君) 今この質問が出て、私は正直言ってほっとしております。今までのやり取りは、紙委員と私、つまり北海道だけでやり取りをしているので、この法案は北海道だけのやっぱり法律なのではないかという御指摘を北海道以外の委員の方から受けるのではないかと思っておりました。
 正に、このブロックローテーション、つまり水田の裏作あるいは転作としての麦、大豆の位置付けも大きいわけでございます。だから、全国の中でのこの麦、大豆、その他四品を対象にしているわけでございます。北海道以外においては四ヘクタール以上の認定農家が原則でございますし、それ以外でも集落営農あるいは高収益を上げる農業については対象になるわけでございますから、面積要件だけではなくて、是非とも、いい経営をやり、もっといい経営をこれからしようという意欲のある方に対しては該当するというふうに思っておりますので、ブロックローテーションがこの新しい制度によって壊される、ましてや地域が破壊されるということは私はゆめゆめないというふうに思っております。

○紙智子君 前回、私、質問したときにも、その対象から外される人というのは、今でいえば補てんされているお金がありますからやりくりできるけれども、それこそ二千三百円台ぐらいにぐっと低くなるわけですよね、一俵当たりですか。そうすると、とても再生産できなくなると。そうなったら、今言ったように、そこから外れなきゃいけない事態になるわけですから、そうすると、今はブロックローテーションのそのシステムは崩れないと言うんですけど、崩れないと言える根拠は何なんですか。

○政府参考人(井出道雄君) 都府県において麦、大豆等のブロックローテーションが行われている場合、今多くは、その転作作物を中心とするいわゆる受託集団、その集団組織で転作をしている例が圧倒的に多いわけでございます。今回の対策ではそういった転作集団もこの対策の仲間に入るということで、要件としまして、集落営農で要求しております要件を少し下げまして、現在、転作作物の相当割合を受託しているグループで、近い将来に米の一部についてもそういうものをやっていこうというような集団であれば対象になるということにいたしておりますから、恐らくブロックローテーションを転がすということには当然そういう集団組織が必要でございますので、そういった集団組織が対象者になって入ってくるということが考えられます。
 もちろん、地域全体が集落営農として組織化されるということが望ましいわけでありますが、次善の策として、そういう転作集団でもよいという扱いをいたしております。また、地域によってはこの転作作物だけを集めて営農されている農家がございまして、その集団化ができないときはそういった専ら転作作物を受託している担い手に集積をすると、そういう手段もあろうかと思います。
 いずれにせよ、その地域の実態に合わせて、ブロックローテーションが壊れないように、今どういう形を選択するかということをそれぞれの地域でお話合いをしていただいているということでございまして、決して道がないわけではないということでございます。

○紙智子君 今いろいろと考えてやっているところだから道がないということなんですけど、非常にそういう意味では不安も出されている中で、これに対してのやっぱりきちんとした回答というか、そういうのをやっぱり用意すべきだというふうに思います。
 それから、現地調査の中で出された問題でもう一つあるんですけれども、集落のとらえ方なんですね。農林水産省としては、二〇〇〇年のセンサスで、この集落、整理するというふうになっているんですけれども、市町村合併などの中で実際の集落を反映したものになっていないという声が出ているんです。北海道の空知でいいますと、農事組合が実際の集落で農事組合ベースの集落の整理でやってきていたんだけれども、これが変わってしまうということなんですね。二〇〇〇年センサスの集落の取り方が実際の実情に合っていないということなんですよ。
 具体的に言いますと、例えば旧岩見沢市というところでは、集落は町内会単位になっていたんだけれども、合併する前ですよね、その前の、その近くにある北村という村とか、峰延とかあるんですけれども、ここでは農事組合単位になっていると、ちょっとローカルな話ですけれども。そういうそれぞれによって集落ということで成り立っていたんだけれども、今度それが合併するということで、片方はこの二〇〇〇年センサスに合わせて集落ということでみなされたときに外れてしまう、片方は外れないと、こういう事態が起こっていて、これもうちょっと実情をよく調べて実態に合うようにやってもらいたいという声が出ているんですけど、これいかがですか。

○政府参考人(井出道雄君) センサスで言う集落の範囲につきましては、基本的には市町村長が、国の出先、いわゆる統計センターでございますが、それと協議した上で原案を策定しまして都道府県知事が認定をするという手続で、その地域の実態を十分踏まえて設定することといたしております。
 しかしながら、岩見沢市の例をおっしゃられましたけれども、その例につきましては、岩見沢市から一部の農業集落の設定範囲が農林業センサスの定義に即して見直しをしたいという申出が北海道庁にあったというふうに聞いております。これについては、今二〇〇〇年センサスとおっしゃられましたが、二〇〇五年センサスが出ましたので、今その結果の確定作業をいたしております。確定すれば、この二〇〇五年センサスのデータを使いたいと思っているわけでございますが、そのために今、集落の耕地面積の精査をやっております。精査の過程でこういった申出がありましたら、このセンサスの定義と地域の実態に基づいて適切に判断をして確定をしたいというふうに考えております。

○紙智子君 分かりました。
 じゃ次に、東北の調査で明らかになった問題なんですけれども、日本でも一番集落営農が進んでいるというふうに言われている岩手県の花巻市に調査に入りました。そこでも今回の法案が極めて評判が良くないんです。ここは百五十五の集落営農ビジョンを作っているところなんですけれども、この集落営農ビジョンを推進してきた中心的なリーダーの方は、稲作の組織化に戸惑いとハードルを感じているというふうにおっしゃっているんですね。初年度で米を含めてやれるのは十に満たないと言っているんです。
 それはどうしてなんですかということで聞きますと、東北の農家というのは、自分で自分の土地を耕したいと、農家は皆農業用の機械を持っていて、それが動くうちは水田を維持したいと思っていると。極めてその考え方は強い考え方なわけですね。その背景には、やはり土地というのは先祖代々のものという考え方、営々とした考え方があるわけです。ですから、この集落営農ビジョンを推進してきたリーダーの方も、この花巻の地域の集落営農の中心的役割である転作受託、この転作受託で品目横断を認めてもらったら大変助かるということで、農林水産省に対してもそんな声を上げたらしいんですけれども、頑として認めてくれなかったという話なんかも出されているわけです。
 農水省として、こういう実態に対してどのように受け止めているのか、どのように対応をしようとされているんでしょうか。

○政府参考人(井出道雄君) 集落営農をなさっているリーダーの方にお聞きいたしますと、やはり今委員おっしゃられましたように、米についてはなかなか思いがあると。ただ、高齢化が進み、大型の機械をなかなか動かしにくくなり、かつ最初に大体コンバインが壊れるんだそうでございまして、部分的に、ですから収穫作業はもう自分ではできないのでそういう組合に任せますと、次に田植機が壊れて田植もできないので任せますと、最後にトラクターが壊れて全面作業受託になるという話を聞きました。
 ですから、我々は、最初から一〇〇%を目指していただくのは結構なんですが、集落の中を全部一〇〇%やらないと要件に当たらないということではないということでございますし、先ほどの生産調整組織の場合の特例で面積要件なりハードルは下げているわけでございます。ですから、米の部分も一部はやっていただきたいわけですが、それは来年から即やってくれとは生産調整組織特例の場合も言っていないわけでございますので、もしもまだまだ地域においてこの制度について十分な御理解がいっていない、あるいは誤解があるということであれば、せっかく委員の御指摘でございますから、私たちも、例えば岩手の花巻なんというのは非常に頼りにしているところなので、そういうところでそういう声があるというのであれば、早速岩手県庁ともお話をしてしっかりやっていきたいと思っております。

○紙智子君 それじゃ、日本で一番目に特定農業団体に指定された胆沢町の集落営農のリーダーの方にも話を聞いたんですけれども、主たる従事者に集積する点について、息子が将来、定年後、農業やりたいというふうに言っているので集積に乗れないと。特定の人だけでいい思いをするということにもなりかねなくて合意が取れないんだ、主たる従事者にも後継者がいない、その主たる従事者が倒れた場合は集落営農が大変になることになると。こういうふうなことなどの問題もあって、結局ここも品目横断には乗らないというふうになっているんですね。
 これは胆沢町だけの問題ではないわけですよね。むしろ、やっぱり特定農業団体に早くから取り組んでいた地域でもこういう実態があるということが私は重要だなというふうに思うんですけれども、大臣だったらどうお答えになるでしょうか。

○国務大臣(中川昭一君) 紙委員のいろいろなところで調査されたお話を伺っておりまして、とにかく今、井出局長もすぐ花巻に飛んでいくというふうに申しておりましたけれども、是非、まずこれ義務じゃございませんから、自分は今回の対象にならなくても農業をやっていいという選択は当然あり得るんだろうと思います。しかし、こういう対象になりたい、なってもっといい経営をやりたい、いいものを作って食べてもらいたいという人たちに対しては是非ともこの制度に参加をしていただきたいというのが我々の切なる願いでございます。
 この法案の審議を本日から始めていただきまして、今日の審議がまたいろんな形で、先ほどツルネン委員でしたか、マスコミ等をもっと利用しろという御指摘がありました。我々、こんなに大事なことをやっているんですけど、なかなか一般的なマスコミが取り上げていただけられないと。ほかの法案等の方になっているというのはある意味では私どもとしては大変残念でございますけれども、その分、我々、足で、そしてまた直接お会いをしてこの制度について御理解をいただきながら、是非とも、息子さんが帰ってきて、やりたいと、一生懸命やりたいと、きちっとした経営をやりたい、いい経営をやりたいというような頼もしい農業者に対しては、是非とも我々としても必要であればいろんな施策を取らしていただきたいというふうに思っている次第でございます。

○紙智子君 じゃ、もう時間なくなりましたので、実際に大臣も足を運んでいただいて、現地の皆さんの声を聞いていただきたいと思います。
 それで、今ある集落営農の多くは、やっぱり小さな農家を守りつつ、集落を維持することを第一にして、関係者の本当に大変な努力でつくられてきていると思うんですね。活動内容や組織形態も、機械の共同利用や農地の利用の調整なんかも含めて非常に多様なわけで、米だけは作りたいという人もいれば、集落営農で担って、水田転作だけというふうに役割分担しているところもあれば、いろいろなこの実態があるわけで、そういう人たちの思いを無視して一律にやるということはやっぱりやらないでいただきたいということを最後にちょっと申し上げまして、残りまだ一杯あったんですけど、続きはこの次にということで質問を終わります。