<第164回国会 2006年4月18日 農林水産委員会 第7号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今度の国会の最大の目玉になっています品目横断的経営安定対策の問題で質問いたします。
 最大の問題はこれまでの品目別の価格制度を廃止をするということです。政府が限定して政策を集中しようとする対象というのは、個別経営と法人経営を含む認定農業者と一定条件を得た集落営農ということになっています。
 では、この育成確保を目指している農業の担い手というのは今の時点でどれぐらい確保される見通しなんでしょうか。

○政府参考人(井出道雄君) 本対策の対象者の要件でございますが、今、委員御指摘のとおり、認定農業者又は特定農業団体その他の一定の要件を満たす農作業受託組織であって、一定の面積以上のものを基本といたしております。
 本対策の要件を満たす対象の割合につきましては、本来、対象者となり得る農業者あるいは営農組織の実態、意向等を積み上げる必要があるわけでございますけれども、これは現時点ではできませんので、仮に、個別経営につきまして、農林業センサスに基づきます経営耕地が都府県で四ヘクタール、北海道で十ヘクタール以上の経営体、また集落営農につきましては、集落営農実態調査に基づきまして現在存在するとされている一万組織、この二つのカテゴリーがそれぞれ認定農業者又は特定農業団体等が一定の要件を満たすように構造改革のための努力を行ったという前提を置いた場合には、現時点で、これらの経営体の経営耕地総面積に対する割合は五割程度、それから全販売農家に対する農家の割合は三割程度というふうに試算されます。
 ただ、これに加えまして、今回の対策では、面積は小さくても、複合経営などによりまして相当の所得を確保している場合等につきましては、面積要件に達していなくても、国が別途の基準を設けて対象とすることができるようにしておるわけですが、これについては試算することは困難でございます。
 現時点での見込みは以上でございます。

○紙智子君 今、現時点の見込みということでお聞きした中で、販売農家でいうと三割、農地カバー率ということでいうと大体五割ということなわけで、そうすると、今の時点でいうと三割を除く七割というのが対象から外れると。それから、五割、カバー率五割ということは、これ大きく見積もっているんじゃないかと思いますけれども、対象から外れるということになるわけですよね。
 政府は、現行の麦作経営安定資金、それから大豆の経営安定対策を廃止をすると、これに代わって品目横断の経営安定対策でやろうとしているわけですけれども、この品目横断の対象から外れた場合にはどうなるのか。麦と大豆について、生産費そして収入の関係ですね。生産者の立場からとってみたときにどうなるのか。十アール当たり、また六十キロ当たりということでお聞きしたいと思います。

○政府参考人(岡島正明君) それでは、私の方からまず小麦について御説明させていただきます。続いて生産局長の方から大豆について御説明させていただきます。
 今回の品目横断的経営安定対策におきます生産条件に関する不利を補正する交付金の単価水準につきましては、対象農産物の生産に要する標準的な費用の額と販売による標準的な収入の額との差額の補てんを図ることを旨とすることといたしております。
 この補てんの単価水準の具体的なイメージを明らかにするため、昨年十月に農林水産省が決定、公表した経営所得安定対策等大綱におきまして、その時点におけるデータに基づく試算結果として、小麦につきましては十アール当たり四万二百円を示したところでございます。
 対策の対象から外れた農家の十アール当たり収入につきましては、基本的には小麦の販売金額、昨年十月の時点での試算では十アール当たり一万八千三百九十八円だけになり、不利補正交付金の分の収入が減ることになります。

○政府参考人(西川孝一君) 大豆について私の方からお答えしたいと思います。
 小麦については今、総合食料局長から説明があったわけでございますけれども、大豆につきましても同様に、昨年十月に経営所得安定対策大綱において支援水準、これを試算しております。
 これによりますと、対策の対象から外れました農家の十アール当たり収入については、基本的には大豆の販売金額、その時点の試算では十アール当たりで二万三千九百九十二円ということになり、不利補正交付金、これが三万二百円と試算しておりますけれども、その分が減るということになるということでございます。

○紙智子君 麦はあれですよね、六十キロ当たりにすると、今までだったら九千二百円だったのが二千三百円になりますよね。今大豆の話もあったわけですけれども、これだと再生産できないですよね。

○政府参考人(岡島正明君) 御指摘のとおり、今の私どもの生産費とそれから販売金額との間に大幅なギャップがあることは事実だと思います。

○紙智子君 もう一度続けて、再生産することはできないですよね。それは困難になりますよね、それだけでいくと。

○政府参考人(岡島正明君) 更に詳しく見ますと、物財費部分と労働費部分がありますので直接今お答えすることはちょっと難しいかと思いますけれども、いずれにいたしましても、生産コストと販売金額の間に差があることは事実でございます。

○紙智子君 差があることは事実だということは、やっぱり非常に困難だということを答えているに等しいというふうに思うんですよ。これは重大だというふうに思うんですね。
 じゃ、再生産できないと。今の時点で農地のカバー率で五割ということですし、それ以外は外れると。それから、農家の戸数でいうと販売農家で七割は外れると。そういうところが再生産できないということになるということで、本当にそれでいいんですか。そういうことだと思うんです。いいんですか、それで。

○政府参考人(井出道雄君) 今回の対策は、将来の効率的かつ安定的な農業経営に到達可能な農業者を育成しようということに出ております。
 申し上げた先ほどの五割、三割と申しますのは、正に現時点といいますか、での集落営農が一万組織あるとか、四ヘクタール、十ヘクタール以上の経営体が現時点で幾らあるということで申し上げましたし、先ほど付け加えましたように、面積は小さくても、例えば野菜とか果樹とか畜産などの複合経営で、複合経営というか、そちらの方で相当の所得を確保されているという方が規模は小さいけれども水田農業もやっておられるという場合は、これは所得特例ということで対象になりますので、その五割、三割に限定されるものではないと考えていますし、集落営農組織なるものは、今回要件もそれほど高いハードルを課しているわけではございませんので、現在各地域においてその取組を続けていただいていると。また、私どもも、地方公共団体、農業団体等合わせてその組織化に努力をしている、そういう中での政策であるというふうに御理解をいただきたいと思います。

○紙智子君 違うんですよね。
 麦にしても大豆にしても作って赤字になると、これは採算が合わないということになったら、これ作らないんじゃないですか。やめて米にシフトしようということになるんじゃないですか。現場ではそういう心配の声が出ているわけです。そうすると、米の需給調整が崩れることになるんじゃないですか。これ、どうするつもりなんですか。

○政府参考人(岡島正明君) まず、麦について御説明させていただきますけれども、我が国の小麦の生産量のうち過半が畑作麦でございまして、四十六万四千トンでございます。そのうち四十四万五千トンが北海道のいわゆる大規模畑作経営によって担われておるということでございまして、私ども、麦につきましては、北海道で一戸当たりの経営規模が大きいこと、あるいは輪作体系の中の作物として小麦が重要な位置付けになっていることから、品目横断的経営安定対策の導入以降も引き続き担い手が主体となった生産が続けられていくものと考えられております。
 それからもう一方、水田におきましては、いわゆる転作において作られている部分と裏作において作られている部分ございますけれども、それが合わせて四十一万一千トンということでございますけれども、これまでも転作につきましては、いわゆる生産性の高い水田農業の確立、食料自給率の向上といった観点から、作付けの団地化でございますとか担い手に対する農地、作業の集積などを積極的に推進してきたところでございます。
 こういったことを進めながら、今御指摘の点につきましては、できるだけ担い手になっていただくそういう方々のところに作付面積を集約化していくということで、御懸念の点は当たらないというふうに考えております。

○紙智子君 現場では、そうなったらやっぱり米にシフトする人が出るんじゃないかと、赤字になることが分かっているということでの声が出ているわけですよ。実際にやはり、その懸念は当たらないと言うんですけれども、そういう懸念が非常に大きくあるわけです。今、北海道の例出されたんですけれども、本州、東北とかこういうところを回ってもそういう声は出ていますし、実際に米の需給調整ということで、生産者が過剰米に対しては作況指数超えたらそれはもう出さないようにということもやってきたわけですけれども、そうやってもなおかつ崩れると、これ価格は下がっていくということになりますからね、大変な大きな影響が出るというふうに思うんですよ。
 それと、担い手以外から外れたところは集落という話があるわけですけれども、集落営農の現場にしても、これは今ハードルが低いと言いましたけれども、ハードルが高くて混乱しているという実態があるわけです。
 例えば、集落営農の取組で先進的というふうに言われていた岩手ですね、ここは実は花巻市にも調査に行ってきたんですけれども、集落水田のビジョン、これは早くから手掛けてやってきているわけです。対策の対象をリストアップして個別経営体の認定農業者に誘導するとか、対策の加入に向けて集落組織の見直しをして一元化経営の指導をするとか、いろいろやってはいるわけです。しかし、集落営農への具体的な取組が実際動いているというのは少しなんですね。今挙がっている対象リストの中でいうと四分の一にすぎないわけですよ。
 いろいろ聞いてみると、転作の受託組織として機能していたのが、水田をこれに乗せるというふうになるとこれなかなかできないんだと。東北のように水田にやはり思い入れが強い地域で、水田まで入れたものは受け入れられないんだと、こういうふうになっているわけです。先進というふうに言われている岩手全体でもこうした現状になっていて、ほかの県ずっと見てきますと、例えば岡山県なんかは、知事さん自身が、我が県では対象となる集落営農はない、これからもできないと、難しいというふうに言っているわけです。
 つまり、今の日本の農業の現状にこれ合っていないんじゃないかと。こういう現状、実態に対して一体どういうふうに思われているのか、大臣、御認識をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(中川昭一君) 今回の現在衆議院で御議論いただいておりますこの法律案というものは、やはり国際化の中で消費者あるいは食品産業等の御理解もいただきながらいい経営をやっていく、経営そのものあるいはいい農産物を供給していくということに対してWTO上の問題も頭に入れながらやっていくということでありますから、全部がカバーできない、全部がカバーできないといって、まるで全部をカバーするような対策を取っていけば、これは改革でもなければ農家に対するインセンティブでもなくなっていくということになりますので、やる気と能力のある農家の皆さんには更にその結果が報われるようにしていこうということでございますので、どうも今、紙委員のお話聞いておりますと、どうも出発点が全然逆の方から御議論をされているということでございまして、我々の法の趣旨は先ほど述べたことが前提にあるということで御理解いただきたいと思います。

○紙智子君 全部をカバーしなきゃならないかのようなという話をするんですけれども、これでもって実際にカバーしていくといいますか、それはむしろごく一部ですよ。多くのところが外れていくという、そういう形になっていかざるを得ないというのが今の現状だというふうに思いますよ。
 集落営農で最初のうちは担い手をつくってという話で、そこから入れなかったところどうするんだという話になったときに、じゃ集落営農で受け止めるから大丈夫だという話をずっとされてきたわけですけれども、いろいろなところで聞いてみますと、これはもう農水省の机上のプランだという声が出てくるわけですよ。
 例えば茨城県に行きましたときには、集落で、今でさえ赤字経営だと、こういう中で、二十ヘクタール以上が要件だということで、とにかく地域でそろってやらなきゃいけないというんで無理して参加するわけだけれども、もしこれ赤字になったときにだれが一体どう責任取って処理したりしなきゃいけないのかということについては、そういうもしこういう赤字になった場合ということを想定して話というのはだれも考えていないと、責任持っていないと。
 それとか、集落に土地を二十ヘクタール以上ということなんで出すと、そういう場合に、出してやっていった場合には、例えば息子さんが今働きに行っているんだけれども戻ってくると、その場合に、後を本人も継ぐ気があるし継ぎたいと言っているけれども、いったんもう出してしまった後をどうするかということを考えると二の足を踏むとか、それから経理一元という話があるんだけれども、それぞれの農家の資産状況がさらされる、これはもうさらさなきゃいけないと、それについてはちょっと待ったということで話がそこでとんざしてしまうとか、あるいはこの認定農業者は単独で、品目横断の対策の対象になれるということもあって集落を抜けて単独でやるということになったときには、集落営農では地域の農用地の三分の二以上の利用集積をクリアしなきゃいけないと、これがクリアできなくなってしまう。こういう様々な問題が地域の中では出てきていて、もう混乱をしているわけですよ。
 こういう混乱をつくり出していることに対してどのように考えておられるのか、いかがですか。

○政府参考人(井出道雄君) 今、委員の方から各地の実態という話がありましたけれども、今お聞きしていて、非常にこの制度についての誤解がまだあるなと思っております。
 例えば、経理の一元化について、個々の農家の家計をさらすなんということは決して必要ではございませんし、そういうことも要求もいたしておりません。私どもがお願いしておりますのは、集落営農組織名義の口座をつくって、その対象作物になっています米とか麦とか大豆、その農産物の販売名義を集落営農組織にして、その代金をその集落営農組織の口座に入れていただくということを申し上げているわけでして、例えば安定兼業に就かれておって、サラリーマンの方で所得が幾らあるとか、そういうことについてまで調べなければ集落営農組織に参加できないということは決して言っておりませんし、先ほどの農地の利用集積目標につきましても、私どもは、生産調整をしっかりやっていただくためにブロックローテーションを組んだり麦の生産組合をつくったりされていると、そういった努力をされている人たちには、十九年から当分の間でございますけれども、地域の生産調整面積の過半を受託している組織であれば、その地域の農用地の三分の二以上を集積するという目標を二分の一以上でよいというふうに緩和するというようなことで、地域地域からいろいろ御意見いただいたものを踏まえて、地域実態に合った形、かつ、もう一押しすれば対象になれますよということで、地域で考えていただけるようなところにハードルを設定しているということで、冒頭、ハードルはそんなに高くないと申し上げましたのは、それぞれの要件について地域の実情を踏まえてかなり工夫をしてきていると。
 もし、そういうことがまだ集落段階で誤解を受けているとすれば、我々の周知徹底の作業がまだ不十分であるということでございまして、これはしっかり受け止めて頑張らせていただきます。

○紙智子君 そういうふうに幾ら説明しても、現場では理解できないと、聞いているけれどもよく分からないという声が出てきますし、それからこれ、今、品目横断の安定対策のポイント、ナンバー七ですか、もう一から始まって次々とこう変わっていくと、説明聞くたびに中身が変わるというようなことも含めて、そもそも、だから出した時点でこれは非常に矛盾があるし、実態に合っていないということの表れじゃないかというふうに思うんですよ。そんなに何回も何回も繰り返し説明しなきゃならないくらいのものなのであれば、そもそもやっぱりこれやめるべきじゃないかというふうに思うんですよ。もう一回ちゃんと分かりやすく、本当に地元の人たちが望んでいる方向でやるべきだというふうに思うんです。
 経営安定対策の対象となるところのこれまでの話の中でも、農地のカバー率でも大体五〇%程度だと。対象から外れたところについては、生産、再生産ということでは困難になると。それから集落営農も、今の時点で、今の、さっきの数字というのは予測ですから、本当にそのとおりになるかどうかということも分からないと。麦や大豆などの生産量が、これ半減する心配もあると。これでどうして自給率が上がるというふうに言えるのかというふうに思うんです。
 大臣、これ下がるんじゃないですか、自給率は。

○国務大臣(中川昭一君) 下がりませんよ。一生懸命やって、そして消費者に好まれるものを作っていこうと。一時期、プロ的農家あるいは経営体を育成しようと言っていた時期がございますけど、正に経営体、集団でやろうが個人でやろうが、もうかる農業をやりやすいようにしていくための今回の法制度でございますから、これはもう将来的に自給率向上のために、努力をすれば報われるという観点からも大きく貢献をしていくというふうに私は思っております。

○紙智子君 いや、下がらないと言うんですけれども、一応その基準年で、二〇〇三年、米でいえば九五%から目標年の二〇一五年には九六%にするとか、あるいは麦類でいうと一二%から一四%にするとか、大豆は四%から六%にするとか、そういうのを決めているわけですけど、これ絶対に下がらないですか。上げられるんですか。
 私は、今のこの現状から見たときに、この対策をやってとても上がるとは思えないと。だって、実際には生産量下がっていくわけだし。それで上げられるんでしょうか。

○国務大臣(中川昭一君) 民主党からも案が出ておりますけれども、その民主党の設定されている数字に比べれば低いわけでございますが、しかし、これはあくまでも食料・農業・農村基本法に基づいた制度改正であり、法整備であるわけでございまして、食料・農業・農村基本法には自給率向上ということが大きな目標になっているわけであります。国内生産を基本とし、そして備蓄と輸入を組み合わせながらということであります。
 ただ、御承知のように、短期的には自然条件の問題であるとか平成五年のあの大冷害のようなこともございますから、でも、あのときだって二百六十万トン米輸入して量的に確保しましたと言いましたけれども、行政の側にもいろいろな問題はございましたけれども、それにいたしましても米が大量に余ってしまうということでございますから、やっぱり食というのは国民にとって極めて関心の深い、ある意味ではデリケートなものでございますから、消費者に好まれるような売れる農業をつくっていこうという、あの基本法に基づく第二段階に来ているというふうに思っておりますので、何も生産サイドだけの仕組みだけで私は黙って自給率が上がるというふうには思っておりません。消費者の皆さんの御努力あるいは食育等を通じたお子さん方の御理解等々も含めてみんなでこれ努力しなければいけないということで、何も農林水産省、農林大臣だけが自給の向上の責任を負っているわけではございませんで、みんなで自給率向上をしていきましょうと、このままでは将来不安ですねというコンセンサスがあるわけでありますから、それに基づいて努力をしていきたいと考えております。

○紙智子君 農水大臣だけの責任ではなく、国民みんなでというお話なんですけれども、やっぱり政府としての責任というのは大きいわけです。
 食料・農業基本法に基づいてという話ありましたけど、食料・農業・農村基本法、これを議論した一九九九年当時というのは、この九九年当時もこの法律で果たして自給率が上がるかどうかということが議論になったと思うんですよ。当時の大臣の、中川農水大臣だったわけで、そのとき大臣は、当時の議論で、カロリーベースで四一%まで下がったということで、このことに対しても非常に危機感を持って、やっぱりこれは引き上げなきゃならないという方向で議論をされていたというふうに思うんです。
 ところが、その趣旨の発言をしてから七年たって、現実には更に下がって四〇%だと。ですから、このこと自身の責任もどうなのかということが問われるわけですけれども、にもかかわらず、更にこの方向で行けば下がるということをやろうとしているんじゃないですか。

○国務大臣(中川昭一君) まず、カロリーベースで上げていこうということ、これはもうコンセンサスであります。ただ、カロリーベースで米、麦、大豆、その他主要食糧といっても、消費者の皆さんの方の嗜好といいましょうか、ニーズというものもあるわけであります。そういった面で、我々としては、カロリーベースというのも一つの指標でしょうし、潜在自給力という考え方もあるわけでありますし、また金額ベースという考え方もあって、本当に最悪の場合には、農林水産省のシミュレーションといたしましては、米とサツマイモ、ジャガイモを中心に、時々魚と野菜で何とかやっていけるというシミュレーションはございますけれども、これは果たして消費者の皆さんが受け入れていただけるかどうか、これまた別問題なわけでございます。また、健康ブーム、ダイエットブームということで、なかなかカロリーベースだけでは非常に難しいという点もございますけれども、とにかく我々としてはやる気と能力のある経営体が知恵を絞っていけばそれだけもうかるという話でございます。
 そういう意味で、何か途中から生産サイドの話と自給率の話とがちょっと話がこんがらかってきちゃっておりますけれども、とにかくもうかる農業をつくる。その中には確かに野菜とかそういうものが入っておりますから、それで直接カロリーベースで数字がぽんと上がるかというと、これは上がっていく方向にはならないでしょう。
 ですから、いろんな指標の取り方がありますけれども、とにかく消費者が喜ばれるものを作っていくというのが今回の法案であって、その根っこには、一つの大きな柱として自給率の向上というものが法律あるいは基本計画に基づいて決められているわけでありまして、その目標を達成するために今回の改正、新しい経営安定対策が必要であるということで今後参議院でも御審議いただければというふうに思っているところでございます。

○紙智子君 あの九九年当時の議事録を読んでみましたけど、そのときから一貫して、やっぱりなぜ自給率が上がっていかないで下がってきたのかということに対する反省ということがないと思うんですよ。そのときからもやっぱり消費者の食べ方が変わったと、それから生産者のニーズに合ってないんだということを繰り返し言われているんだけれども、やっぱり肝心の国として政策がどうだったのかと。輸入自由化ということでもってやってくる中で価格がどんどん下がって、生産をしていくということなんかも含めて非常に困難をもたらした面ですとか、そういう政策に対する見直しということが全然出てこないというのは私は問題だなというふうに思うんです。
 そして、目標、自給率を上げていくと言うんだけれども、実際に農地カバー率で五割と、生産量も減っていくと。自給率がそれで上がるというのは、これだれが聞いても説得力もないし理解できないですよ。こういう法案では自給率が上がらないというのははっきりしていると。だから、こういうのはごまかしじゃないかというふうに思いますし、やっぱり自給率を高めるためにやるべきことというのは、大規模な農家にとってもそれから小規模な農家にとっても農産物の価格が安定するというのがまず第一に大事だと思いますし、止めどない輸入拡大ということに対しても歯止めを行うことだと思います。そして、やっぱり担い手を限定するんじゃなくて、大規模も小規模も意欲を持って農業をやる。だれもまじめにやってないというか、能力がない、意欲がないというわけじゃないと思うんですよ、みんなやりたいと言ってるわけですから。そういう意欲を持って農業をやろうとする多様な担い手をやはり支援して育てていくということが何よりも今後のやっぱり自給率向上に結び付けていくということでは大事なことだというふうに思います。
 この問題は、これからの参議院の議論でも本格的な議論にも入っていくと思いますので、更に突っ込んでやっていきたいと思います。
 以上で終わります