<第164回国会 2006年3月23日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、領土問題の解決に向けた取組についてお聞きしたいと思います。
 根室市など北方領土隣接地域振興対策連絡協議会が、先月、北方領土問題の解決に向けた取り組み、再構築提言書をまとめました。これ、御存じだと思いますけれども。政府にも対応を求めているというふうに思うんです。
 昨年、プーチン大統領訪日で、この領土返還への期待が今度こそということで高まっていたわけですけれども、日ロ首脳会談でも具体的な進展が見られないという中で、地元は本当に落胆、で、いつまでもこの解決できないのかということでの怒りがやはり渦巻いているというふうに思います。
 そういう中で、地域の疲弊や高齢者、高齢化という現状を直視して、返還運動についても一から見直してやっぱり腰据えてやっていこうじゃないかということで、やはりこの意気込みを持って取り組んで作ったのが今度のこの再構築の提言書だというふうに思うんです。
 それで、今年の二月七日に北方領土の集会があって、小池大臣もそこに出席をされてごあいさつされて、私もあの同じ会場にいましてお聞きしていましたけれども、大臣はこの提言書を要望している地域の思い、現状などをどのように受け止められているのか、まずお聞きしたいと思います。
○国務大臣(小池百合子君) 今お示しになりましたのは、根室管内の一市四町が取りまとめられた再構築提言書ということでございます。北方領土への取組について、北方領土隣接地域の思いを反映させて未来に希望の持てる取組としてまとめられたと、このように認識をいたしております。
 昨年の日ロ首脳会談の結果、そしてまた島民の皆様方がどんどん高齢化しているという現状を受けて、北方領土返還に向けた戦略的な環境づくりなど、内閣府、そして外務省ほか関係の府省、それから北海道の方に御要請をされたものでございます。
 具体的内容には、北方領土返還に向けました国民世論の一層の喚起であるとか、ポスト四島交流の具体的な事業内容、それから北方領土問題が未解決であるがための地域の疲弊している問題の解消といったような中長期的な視野も含めた様々な観点からの要望が含まれております。北方領土問題の解決の促進という観点からも、関係府省と連携取りながら取り入れられるものについては対応をしてまいりたいと、このように考えております。
○紙智子君 それで、私もこの提言書から幾つか要望をしたいというふうに思うんですけれども、まず、北方四島在住のロシア人への医療支援ということで人道支援という形でこれまでも行われてきているんですけれども、四島の医療水準が非常に低いということで、根室市の市立病院が中心になって患者受入れをやってきているわけですね。根室市だけじゃなくて札幌にも運んだりもしていますけれども。四島住民にも非常に喜ばれている事業なんですけれども、これについて今後拡充していくお考えがありますか。
○政府参考人(八木毅君) 医療支援につきましては、北方四島住民支援の一環といたしまして、平和条約締結交渉の促進に向けた環境整備に資するものというふうに考えております。今後ともこのような意義のある支援を継続していくというふうに考えております。
 再構築提言書においても言及されております患者受入れ事業でございますが、昨年度、十六年度は六名、本年度は十名の患者を受け入れてきているところでございます。四島側からも強い希望ございますし、再構築提言書でもいろいろ御提言いただいたところでございます。四島のニーズ等を踏まえて、外務省といたしましてできる限り受入れ事業の充実改善に努めてまいりたいというふうに考えております。
○紙智子君 地元の根室も市立病院の受入れを拡充したいと、アフターケアのための遠隔地診療もできるような機材もそろえたいということを要望しているわけですけど、この医療機器ということでいいますと、北特法に基づく北方基金の果実で補助できることになっているわけですよね。ところが、御承知のような、基金が目減りしているという中でなかなか思うに任せないということもあるわけですけれども、これに対しての支援を何とかしていただけないかという要望も上がっているんですけれども、これ、いかがでしょう。国土交通省かね。
○委員長(高橋千秋君) どなたですか。どなたですか。どなた。答弁はどなたにしていただきますか。内閣府北方対策本部東審議官。
○政府参考人(東清君) ただいまの御質問の件、国土交通省の所管ではございますけれども、若干付言して御説明させていただきます。
○紙智子君 まあ、基金の目減り問題ですから。
○政府参考人(東清君) はい。
 基金の方は、最近の金利の低下によって益金が減っているという状況にございます。それをそのまま積立金を増すというふうなことは、財政状況の中でなかなかできないということもございます。一方で、国土交通省の方では、北方領土隣接地域振興等事業推進費補助金を、これを平成十六年に創設したというふうに聞いております。そしてまた、私ども内閣府の方では、啓発補助金というものを設けまして、それを基金の目減りによる事業の減少を補えるような形で何とかできないかというふうな工夫も行ってきております。
 そういうような形で、私ども、なるべく工夫しながらやっていきたいというふうに考えております。
○紙智子君 やはりその一億の予算なんかも組まれて、これ自体は非常に歓迎もされているというふうに思うんですけれども、やっぱり全体の中でいうと非常に大変なわけで、更なる検討をしていただきたいというふうに思います。
 それから、北方領土隣接地域振興のための連絡協議会が国と道と自治体を含んで初めて設置をされるわけですけれども、こうした協議会でも、積極的にやはり予算の実質的な実になるようなというか、そういう充実されるように検討をしていただきたいというふうに要望も出されています。それはそういうことなんですけれども。
 次に、北方領土への地震計の設置についてお聞きしたいんです。
 北海道の東部と連なるこの北方領土、ここは地震の巣ということで、実際に九四年には北海道東方沖地震ということで大変大きな被害が出ました。今、北海道大学とロシア科学アカデミーが、日本の機器を設置して、初の地震共同観測に乗り出そうということで協議が始まっているわけです。
 これに対しての政府の認識を伺いたいと思います。
○政府参考人(八木毅君) 地震の分野におきましては、四島交流の枠組みの下で、本年度、地震専門家の方々が既に北方四島を訪問されておられます。具体的には、昨年八月二名、それから九月に五名の方々、北海道大学の先生方でございますけれども、北方四島を訪問されまして、現地施設の視察等を行っておられるということでございます。来年度、十八年度においても引き続いて専門家の方々が四島への訪問を計画しているというふうに承知しております。
 まだ外務省として訪問計画の詳細を伺っているわけではございませんけれども、外務省といたしましては、四島交流の枠組みの下でこのような訪問事業が実施され、これが領土問題解決に向けた環境整備の一助となることを期待しておるところでございます。
○紙智子君 是非積極的にこれはやるべきではないかというふうに思います。
 それで、共同観測ということ、共同ということでいいますと、もう一つ共同事業として、北方四島周辺海域での水産資源の増大に向けた共同調査研究、これも是非実現に向けていくべきじゃないかというふうに思うんです。やっぱりロシア側が賛成するようにどう交渉していくのかということでは、これ、水産庁、外務省、それぞれどういうスタンスでやろうとするのかということについてお話しをいただきたいと思います。
○政府参考人(八木毅君) 北方領土問題に関しましては、日ロ双方の立場が隔たっている現状を打破する必要があると。両国の間に真の信頼関係を構築すべくしっかり話し合っていく必要があるということは外務大臣からも申し上げているところでございます。
 北方四島におけるいわゆる共同開発に関しましては、これは一般論になって恐縮でございますけれども、北方四島に関する我が国の法的立場を害することのないよう慎重に検討する必要があるというふうに考えております。
○政府参考人(井貫晴介君) 現在、ロシアとの間におきましては、日ソ地先沖合協定及び日ソ漁業協力協定の枠組みの下で漁業に関する協力計画が毎年合意されておりますが、その中で、日本海におけるスルメイカについての共同調査の例はございますけれども、多くの資源につきましては情報交換にとどまっているところであります。他方、北方四島周辺につきましては、北方四島枠組み協定の下で我が国漁業者がスケトウダラ、ホッケ、タコなどを漁獲しております。
 我が方といたしましては、これらの資源を持続的かつ有効に活用する観点から、困難な問題はありますけれども、資源調査自体は重要と認識しております。
 今後とも、北方四島周辺の資源状況の情報収集に努めながら、毎年の日ロ漁業専門家・科学者会議等の場を通じまして、まずは全般的な資源調査や資源状況に関する情報交換の拡大につき努力してまいりたいと考えております。
○紙智子君 ほかの国との関係ではそういう実際に共同でやっているという例もあるわけで、やっぱり前進さしていくという必要があるというふうに思います。
 それから、あわせて、漁業協力金の支払の問題についてなんですけれども、これ、去年も小池大臣にお聞きしたんですね。元々日本の領海だと、ところが、自分たちの漁場がすぐ目の前にあるのに、そこで漁をするためには年間一億二千万円もの入漁料を支払わなきゃいけないと。去年も根室市長さんがここに来られて、一隻当たりの水揚げで例えば約百八十二万円の水揚げがあったら、そのうち採取料としては四十万円払わなきゃならないんだというような話もされていたわけですけど、正にこの括弧付きの領土、まあ国境ですね、国境ということのために本当に不合理にのし掛かる負担をさせられて耐えなければならないということで、非常に漁業者の皆さんは本当に悔しい思いをしながらやってきているということでもあって、是非何らかのそこに対する助成という話もしてきたわけです。
 去年は、ちょうど日ロ交渉の前ということもあって、本筋ということでその根本問題を解決するというところに力を注ぐという答弁をされているんですけれども、今の段階ということではまたちょっと状況が違ってきている中で、やっぱり国として、まあ小池大臣は、昆布漁で本当に苦労されている、その気持ちは重々理解しているということを言われたんですけれども、やっぱりそれであれば、今の段階で何か励みになる、そういう心を砕いたというか、そういう対策というのをしていただけないものだろうかということで、もう一度御答弁いただきたいと思います。
○国務大臣(小池百合子君) 紙委員からは同様の質問を昨年もちょうだいしたかと思います。
 私も根室管内訪問しました際に、地元の関係者の皆様方、そして元島民の方々から、そして去年の四月にも、地元漁業関係者の方々からもこの件について直接お話を伺っております。
 当然のことながら、皆様の四島返還への切実な思いであるとか願い、そして隣接地域の厳しい現状ということについては私も重々承知をしておりますし、また貝殻島の昆布漁の漁業者の御苦労が多いということも承知をいたしております。
 今、内閣府の北方対策のホームページからすぐにこの島が、北方領土が望めるようにカメラの設置もいたしておりまして、プレセットのところで貝殻島というのにセットしていただくと、すぐががががっと迫って、天気次第ですけれども、よく見えるわけで、もう本当に目の前なんですね。
 その意味でも、御指摘のように、この貝殻島の昆布漁に関して、毎年、民間の取決めではございますが、ロシアに対して採取料を払うという不利益、不合理、不条理というのがありますが、一方で、国として貝殻島周辺海域の昆布の育成環境の整備であるとか昆布漁場の拡大のための助成も行われているというふうに聞いております。
 また、状況が変わったとおっしゃいますが、むしろ状況は何もある意味で変わってないわけでございますので、一番の根本問題であります北方領土の一日も早い返還に努めてまいるというのが最大のポイントではないかと、このように思っております。
○委員長(高橋千秋君) 時間が参りました。
○紙智子君 一言。
○委員長(高橋千秋君) はい。
○紙智子君 状況変わってないと言うんですけれども、長期化するという見通しの下で、やっぱり本当に耐えている人たちに対する温かい御支持、御支援を考えていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。