<第164回国会 2006年3月22日 農林水産委員会 第4号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず最初に、このお配りした資料の図を見ていただきたいと思います。
 これ、私の地元、北海道のずっと北の方ですね、北部です。で、太い線が天塩川で、その上流に名寄から分かれた名寄川、さらにその支流にサンル川があって、ここにダムの建設が計画をされています。ここは天然のサクラマスが上る貴重な川です。私もこの上流の産卵のところまで調査に行ったんですけれども、本当にすばらしい、清流というふうに言えるすばらしいところなんです。川を下った日本海沿岸ではサクラマスの漁をやっています。
 初めに水産庁にお聞きしますけれども、日本海の沿岸漁業でのこのサクラマスの重要性と、その生息地である河川環境を守ることについての御認識をお聞きしたいと思います。
○政府参考人(小林芳雄君) サクラマスでございます。ちょうど春先を中心に日本海の沿岸各地、それから北海道周辺、さらには三陸沿岸、こういったところで定置漁業でありますとか、はえ縄漁業などによりまして漁獲されております。非常に美味なお魚でありまして、比較的高い価格で取引されます。沿岸漁業の振興を図る上で重要な魚種の一つというふうに考えております。
 一方で、このサクラマスにつきましては、ふ化から海に出るまでの河川生活期、これは一年から二年と長いわけでありまして、そういう意味ではふ化放流が難しい魚種であります。そういう意味で、国といたしましても従来から強い水産業づくり交付金の交付などを通じまして関係道県でのふ化放流技術の開発などを促進してきておりまして、十八年度予算案におきましても民間におけるふ化放流事業の取組を支援してまいりたいと考えているところでございます。
○紙智子君 ありがとうございました。
 北海道の水産白書の中でも、今後は河川での生き残りを高めていくためのこの河川環境の保全なども含めた総合的な対策が必要だというふうに指摘をしています。地元からは、このサクラマスについては細々と続けてきたふ化事業を断念せざるを得ない状況になっていて、自然産卵に頼らざるを得なくなってきていると。河畔林の保全等の河川環境の改修、復元を望むという意見が寄せられているわけです。特に、漁協の皆さんがとっても懸念をされているということなんですね。
 サンルダムの予定地にある自然産卵でふ化したサクラマスの稚魚は、今お話もあったんですけど、一年、二年かけてずっとこの上流で過ごして、やがて、ここは日本最長ということなんですけれども、河口まで二百キロを下って、そして一、二年後に成長してまた産卵のために戻ってくると、こういう自然のサイクルを繰り返しているわけです。そういう自然のサイクルの中に、今、高さ四十六メートルのダムができて、河川を分断して、環境が激変するということになると、これサクラマスが上り下りすることに大きな影響を与えるんじゃないかと、そうならない根拠があるのかということで、次、北海道局ですね、聞きたいと思います。
○政府参考人(吉田義一君) 天塩川流域におきましては、御指摘のように、サンル川の流域を始め広い範囲でサクラマスが生息していることが確認されております。このうち、サンル川の流域は、流域面積につきましては天塩川全体の約四%でございますけれども、既存資料及び現地踏査から特にサクラマスの産卵所が広い範囲で確認されております。
 このため、サンル川に建設が予定されておりますサンルダムにつきましては、魚道を設置するなど、そういう対策を実施することとし、現在その設計及び影響軽減効果の検証を行っております。
○紙智子君 魚道を造ればそんなに影響は出ないというような形で進めようということでやってきているわけですけど、開発局の調査で分かったのは、例えば二風谷ダムの魚道、これはサクラマスが平成八年から十六年までに年間で四匹から十三匹遡上する、二匹から百六匹下降したと。八年間の調査の中でそういうことが出されているだけです。しかも、二風谷ダムでいいますと、年間ここは百回以上水が入れ替わる。流れダムというふうに言うわけですけど、というふうになっているんだけれども、サンルダムの場合はわずか三・二回しか水が入れ替わらないと。止まりダムというふうに言われているわけですよね。このダムによるせき止めのために流れがないダム湖ができて、稚魚が下れないということがむしろ問題だと。サンルダムではこの二風谷以上にダムで上り下りが遮られるんじゃないかと。
 いつもいろいろ資料とかも要求したりするわけですけど、言われるのは、ダムを造っても影響のない例として、これまで来てもらって話を聞いたんですけれども、米国の例えばコロンビア川に建設されたダムの魚道を上るサケの数を、これだけたくさん上っているということで出してくるわけですけど、ここも上流でふ化してもダムが障害になって川を下れないということで、陸軍の工兵隊が上流でサケの稚魚をドラム缶に入れて毎年下流に大移送作戦をやっているわけです。それでもサケが激減したということが米国の内務省の調査で今明らかになっているんですね。
 サクラマスの影響について、そういう意味では流域委員会、今やられてますけれども、その流域委員会にサクラマスの生態ですとか実際にこのアメリカのコロンビア川で起こったようなことですとか、こういうことなんかも証言できる専門家も呼んで本当に科学的なデータをしっかり出して議論をする、そして漁協や住民団体の皆さんとももっともっとよく話し合うべきじゃないかというふうに思うんですけど、その用意はありますか。
○政府参考人(吉田義一君) 魚道につきましてでございますけれども、北海道開発局では、現在、今先生のお話にありましたような二風谷ダム、これ日高管内です。そのほかにも檜山管内の美利河ダム、魚道を付けておりまして、その効果等も検証しておりまして、例えば二風谷ダムでは、そのダムの上流に生息するサクラマスの数についてもダムの前後でそんなに大きく変化してないというような調査結果もございます。
 いずれにしても、そういう調査結果等を基にしまして、このサンルダムにおきましてもそういう魚道の設計を進めてまいりたいと。また、そういう設計が進んだ段階で漁業関係者の方につきましてもいろいろお話もさせていただきたいと思っております。
○紙智子君 だから、そんなに大した変化がないという、そういうやっぱり本当にいい加減な調査だけで中途半端な結論を出して進めてほしくないわけですよ。もっとやっぱり厳密にそういう調査も行うとか、いろんな幅広い専門家の人たちも含めた意見を聴取するとか、やっていただきたいと思うんです。そして、やっぱりよく議論もして、たくさんみんな疑問を持っているわけですよね。そういうのがやっぱり解決されていくという方向で努力すべきだと思いますけど、その努力はされるんですか。
○政府参考人(吉田義一君) そういうような御懸念があるということも伺っておりまして、私どもとしては、そういう関係者の方々といろいろお話合いを進めながら、この事業を進めてまいりたいと思います。
○紙智子君 やっぱり、流域委員会ももちろんそういう議論するんですけど、それだけじゃ駄目です。やっぱり地域住民の皆さんや専門家も含めてやるべきだと思いますし、いろんな角度から慎重にやっぱり明らかにしていくと。やっぱりダム造って、その結果サクラマスが激減してしまったということになったら、本当に責任取りようがないわけですから、そこはきっちりとやっていただきたいというふうに思います。
 次に、ダム建設の前提となっているデータについてお聞きしたいんですけれども、開発局は今年になってサンルダムによってどれだけ水位が下がるのかということで、名寄川のサンル川の合流地点から天塩川の合流地点の間で四十センチから百十センチ、それから天塩川の誉平というところから名寄川の合流地点までの区間で二十センチから八十センチ水位が下がるんだという図を出しているんですけれども、この根拠となっているデータを流域委員会や住民団体に公開していますか。
○政府参考人(吉田義一君) 河川整備計画の策定に当たりましては、河川法第十六条の二の三項に基づきまして、河川に関し学識経験を有する方の意見を聴くこととされておりまして、このような意見を聴くために天塩川流域委員会を設置しております。
 天塩川のこの河川整備計画の原案につきましては、現在、天塩川流域委員会において学識経験者等の意見を聴く手続を進めております。流域委員会は公開で開催されておりまして、その議事概要及び資料もすべて北海道開発局旭川開発建設部のホームページで公開しております。この天塩川河川整備計画の原案につきましては、各種団体に加え、多数の一般の方々から様々な御意見が寄せられております。これまでに寄せられた御意見につきましては、流域委員会に報告するとともに、すべて公開しております。これらの意見等につきましては、流域委員会の審議テーマに沿う形で必要な資料を用いて説明してきているところでございます。
 御質問の水位低減効果につきましては、流域委員会の中で、天塩川につきましては二十センチメートルから八十センチメートル、名寄川につきましては四十センチメートルから百十センチメーターと説明しておりまして、その根拠となる数値につきましては、河川の距離標ごとの水位計算結果として天塩川流域委員会で説明するとともに、旭川開発建設部のホームページでも公開しておるところでございます。
○紙智子君 今いろいろおっしゃったんですけれども、結局概要ですよね。概要と資料を出しているという話と、その整備計画についても出しているということなんですけど、結局出してきているものは一部なんですよ。ですから、どういう根拠でそういう数値になっているのかと、で、どういうふうな手法でそれが出ているのかということが具体的には示されていませんよね。示してますか。
○政府参考人(吉田義一君) ただいまお答えさせていただいたような形で皆さんに御説明し、また公開しているところでございます。
 更にの御質問でございますけれども、このサンルダムの水位低減効果を算出するための水位計算につきましては、市販されております「河道計画検討の手引き」に示されております一般的な手法により試算を行っているところでございます。
 なお、天塩川流域委員会につきましては公開の場で行われておりますので、計算過程につきましても必要に応じて説明するとともに、旭川開発建設部のホームページでも公開してまいりたいと思います。
○紙智子君 全然説明なんかしてないですよ。出してないですよ、そもそも。私だって何度も要求しているけど、全然出してこなかったんですよ、資料を。
 それで、具体的に示されてないと。だから、結論だけは出すわけですよ、それで。これが結論ですといって図とか数字とか出してくるんだけれども、第三者がそれを検証することができないんですよ、もう部分的で、ばらばらで出してくるから。これが私は本当に大きな問題だというふうに思うんですよ。
 例えば、河道断面図なんかも、真勲別というところは非常に大事な基点になるところですけれども、ここの基準点そのものが出ていないということですとか、その前後だけは出しているけれども肝心のところが出ていないですとか、それから水量と水位、どれだけの量が降ったらどれだけの水位が上がってということで、そういうことを示すデータも、それから堤防の高さも全面的に出してないんですよ。
 なぜこのデータの根拠が必要かとみんなが言うかっていうと、以前、開発局のこのサンルダムの建設事務所は、ダムの水位を下げる効果は真勲別で二十センチですと、誉平では十センチですと、はっきり回答しているからなんですね。それが今違うふうになっているわけですよ。このデータの違いがどれだけ、ダムが必要なのかどうかというその根本問題になる重要な問題なんですよ、判断していく上で。かつてここまで水位を下げる効果があるということで示してきた内容が、今出してきたのと違うと。その根拠のデータ、計算のプロセスも含めて分かるように地域住民の人たちにも説明すべきじゃないんですか、どうですか。
○政府参考人(吉田義一君) 御指摘の河川整備計画で想定しております目標流量につきましては、ダムのような洪水調節施設と河道の改修による流量の分担を示すために、天塩川流域委員会におきまして、現況の流下能力と併せて天塩川本川、名寄川について、流下能力模式図で縦断的に示しております。さらに、想定しています目標流量の時間的変化、まあハイドログラフといいますけれども、これにつきましては、流量を代表する基準地点であります誉平につきましてこのデータを公開しているところでございます。
○紙智子君 縦断的に示してるって言うんですけど、実際には示されてないから地域住民の人たちがやっぱりいろいろ問題にしているわけですよ。
 今回のこの治水計画では、取りあえず当面の目標として昭和五十六年洪水ですか、このときが一番大変だったってことなんですけど、その規模に対処しようということなんですけれども、五十六年洪水のときに真勲別では流量が毎秒六百立米だったんですね。それが今回の目標流量というのはいきなり千五百と、二・五倍の設定になっているわけですよ。だから、その根拠も示されてないんですね。だから、これ過大じゃないのかという疑問を持つ人もいるわけです。本当にダムが必要なのかどうか疑問を持つ人たちがたくさんいるわけで、住民から求められている基本的なデータをちゃんと出して、課題ごとに、やっぱり専門部会を設置して徹底して審議するとか、住民の疑問に答えていくということが非常に重要だというように思うんです。
 私は、例えば淀川水系流域委員会ってありますよね。ここなんかは、本当に治水、利水、環境ということで、幾つもの部会やワーキンググループを作って議事録をすべて公開してやっているわけですよね。こういう取組を、やっぱりこれからの時代はそうだと思いますけれども、ちゃんとやるべきじゃないんですか、いかがでしょう。
○政府参考人(吉田義一君) 先ほど申しましたように、この天塩川流域委員会につきましては、すべて公開で実施しておりまして、また住民の方、いろんな方々から出た意見等につきましてもそこで議論していただき、またそういう内容については、事業を実施しております北海道開発局の旭川開発建設部のホームページ、そこでも公表しているところでございます。
○紙智子君 私も資料を要求したときに、いや、ホームページに載ってますからというふうにいって、開いて見たところが出てなかったりとかあるんですよ。本当に、そういう意味では誠実に対応してもらわないと納得できないですよね。
 ちょっと最後に、大臣にお聞きしたいんです。
 今のやり取りをお聞きになっておられてどう感じられたかってことなんですけれども、やっぱりダムが必要なのかどうなのかということで判断できる資料というかデータ出さないで、まだたくさんの疑問が残っている中で、そのままでダムがどんどん進められていくと、建設が進められていくと、その結果、サクラマスの漁にも大きな影響が出てきてはならないというように思うわけですけれども、本当に水産資源や河川環境ということで守っていかなきゃならないというふうに考えますと、農林水産大臣としてのお立場から一言伺いたいと思います。
○国務大臣(中川昭一君) 私も北海道ですけど、ここには行ったことはございません。多分すばらしい自然、そしてその自然に基づいてサクラマスが、さっき水産庁長官は美味と言っておりましたけれども、私も大好きでございます。一方、このダムにつきましては、利水、治水、発電等々という目的、公益的な目的もあるわけでありますけれども、やはり自然とうまく調和をしていくことが、あるいは環境に十分配慮することが大前提でありますし、関係者の皆様、地元の皆様によく情報を御説明をしながら、一歩一歩着実に前に進んでいくということだろうと思います。
 北海道局長は全部公開していると。紙委員は全然公開してないと。これは、聞いててどういうことなのか、私にはちょっと理解がしかねるということでございます。
○紙智子君 大臣、今いろいろお答えいただいたんですけれども、やっぱり公開してる、してると言いながら、実際にはやっぱり明らかになっていないし、納得するというか、疑問を残したまま進めてはならないというふうに思いますので、そこのところは最後に再度申し上げて、質問を終わらしていただきたいと思います。