<第164回国会 2006年3月16日 農林水産委員会 第3号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、BSEの問題についてお聞きします。
 三月十三日に香港でもアメリカ産牛肉から除去すべき部位が混入している牛肉が見付かって輸入停止になりました。当然、輸出証明書も書かれていたんでしょうし、また検査官のサインもされていたんだというふうに思うんですけれども、それが実際にはこういう形になったということでは、一体どういうふうになっていたのかなというふうに思うんですけれども、まずこの点について聞かれていますでしょうか。なぜこういうふうになっているのかということについてお話いただきたいと思います。
○政府参考人(中川坦君) アメリカから香港に輸出された牛肉につきまして、骨が入っていたということで三月十一日に香港政府がその輸入を停止をしたということは承知しております。
 私ども、先ほどもちょっとお答え申し上げましたが、この件につきましては、アメリカ政府それから香港両方に詳細な情報提供を直ちに要請をいたしましたけれども、今日ただいま現在、まだ具体的な情報は入手できない状況でございます。
○紙智子君 十三日は米国で三頭目のBSEが発生確認されました。十四日にOIG報告書にかかわる米国への日本からの照会事項に対する回答があって、その中でSRM除去の遵守状況ですね、不適切な事例の調査の後、調査対象となった十二の施設のうち三施設が日本向けの輸出証明プログラムの認定施設になっていたという事実も判明しました。これらの事実は、米国がこの間特異な例だと、事例だというふうに言っても、やはりとてもうのみにできないそういう重い事実だというふうに思うんですけれども、大臣はこの点どう思われていますか。
○国務大臣(中川昭一君) OIGレポートは、たまたま一月二十日以降、たしか二月の二日かな、に公表されたわけでありますけれども、あのレポート自体はOIGという独立した農務省の中の調査機関がおととしから去年までの一定期間についてチェックをしたことの結果でございまして、その間食品安全委員会がリスク評価をして、そして一定の要件を満たせばリスクが非常に小さいということでございますので、しかもこれは改善されているということでございますから、まず時系列的な問題、それからその処理の終わったこと等を考えれば、これはこれでない方がそれはよかったに決まっておりますけれども、それはそれでリスク評価をする食品安全委員会の御判断には影響がなかったというふうに理解をしております。
○紙智子君 先日、予算委員会で大臣に対しても私質問しましたけど、米国食品安全検査局が出したいわゆるノンコンプライアンスレコードですか、このBSE違反記録ですね、これによっても是正されたということを言っているんですけれども、中身を見てみると、繰り返されているというのがあるわけですよ。だから、幾ら是正されているんだというふうに言われたとしても、今まで指摘されてまた繰り返すと。これを繰り返しているところが、じゃこの後は一切そういうことが起こらないのかということについては、これは保証がないというふうに思うわけですよね。
 ですから、そのことを含めて、これは常習的な違反行為があるということはこのことによって提起されているじゃないかというふうにも申したわけですけれども、今回の事態も私はそれを裏付ける中身じゃないかというふうに思うわけです。
 香港に牛肉を送ったスイフト社というのは米国でも大手ですよね。そして、日本向けの認定施設でもあるわけです。農水省と厚生労働省が査察に行って、これは問題ないということで言っているところでもあるわけです。そうなりますと、日本の査察の信頼性そのものもこれは揺らいでいることになってしまうわけなんですけれども、大臣も点から線へという話をしているんですけれども、これ、やっぱりアメリカのBSE対策に対しての構造的な欠陥があるというふうに見た方がいいんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(中川昭一君) 香港とアメリカとの間の輸出プログラムは日本と違います、もう御承知のことだろうと思いますから繰り返しませんけれども。
 ですから、あくまでも今回の日本のEVプログラム、まあ家畜衛生条件ですか、に違反をしたということで今ストップをし、解明、原因究明ということで今報告書に対する疑問点等を先方に出し、回答を待っているという状況でございます。
○紙智子君 今度の香港の問題も今いろいろ聞き取っている途中ということでもありますので、いずれにしても、正確な認識を得られるようにしっかり調査をしていただいて、やっぱり報告すべきだし、非常に大事な問題なんで、やっぱり繰り返しこの委員会でも取り上げて審議していただけるように委員長にもお願いをしておきたいと思います。
 次に、WTOの農業交渉問題についてお聞きしたいと思います。
 衆議院の方の予算委員会で我が党の高橋千鶴子議員も質問したんですけれども、実はWTOの香港の閣僚会議に私も高橋千鶴子さんと一緒に現地に行っていまして、その会議の動向を見守っておりました。いろいろじかに行ってみなければ分からない様子といいますか雰囲気とかいうのも含めて実感したわけですけれども、二〇〇六年四月末までにモダリティー、いわゆる各国共通のルールの決定がスケジュール化されているわけですけれども、これも市場アクセスを中心に、非常に各国が激しくというか厳しくせめぎ合っているということだと思うんです。
 それで、予断を許さない状況だろうというふうに思いますけれども、まず見通しについて、大臣もこの間会議にも行かれているので、簡潔にこの後の見通しということでお話ししていただきたいと思います。
○国務大臣(中川昭一君) むしろマーケットアクセスが日本にとって一番の責められるといいましょうか、ところでございますけれども、現時点ではマーケットアクセスの議論が一番静かだというのが私の印象であります。そろそろマーケットアクセスについて、ああでもない、こうでもないという激しい議論が起こってもいいのかなと思ったんですけれども、EUの輸出競争あるいはアメリカの国内支持削減の話の方がつい先日のロンドンでもかなり白熱をしておりましたし、いわゆるNAMA、非農産品マーケットアクセスの議論も非常に激しかったというふうに理解をしております。
 香港では専ら開発ラウンドということで開発について日本からも提案をし、二〇〇八年には日本もタリフラインで九八・一%、貿易金額で九九・九%まで無税無枠をLDCにお約束しますということを出して、これは非常に評価をされているというふうに理解をしております。私も昨日フーデックス見てまいりましたけれども、アフリカ諸国が大変熱心に参加をして、懇談もしてまいりました。
 そういう意味で、これから本当に、四月末、七月末、十二月末に向かって本当に時間がないんでありますけれども、まだ本当の意味のぎりぎりの交渉の状況にまだないということは、大変我々としては、いつからマーケットアクセスについてG10や日本に対して輸出国との激しい議論が起こるのかと。まあ半ば楽しみにし、できれば避けたいという気持ちもございますけれども、いずれにいたしましても、日本としては、G6としては四月末のモダリティーの確立というコンセンサスは依然崩しておりませんので、鋭意またジュネーブベースで、また必要に応じて電話なり会談なり、日本の立場を強く主張しながら、ぎりぎりのところを守っていきたいというふうに考えております。
○紙智子君 これからそういう議論にもなるだろうということなんですけれども、一つ焦点になるのが重要品目のミニマムアクセスの問題で、この問題は高橋議員も衆議院で取り上げているんですけれども、ちょっと角度を変えて聞きたいんですが、まず米のミニマムアクセスの問題です。
 現在、ミニマムアクセス米の在庫数量は百七十万トンになっています。アクセス数量で見ますと二・二年分ということで、それに相当する在庫量なわけです。それも、毎年二十万トン程度この在庫が積み上がっていっている状況になっています。あと六年で恐らく在庫数量は三百万トンになりかねない状況だと思うんです。これに伴う食管会計の赤字というのが非常にこれもたまっていまして、累積で幾らかというと、一千三百七十四億円です。輸入すればするほどこの在庫が積み上がって、食管会計の赤字が積み上がっていると。国民の負担になっているわけですね。
 今の政府のミニマムアクセス米の取扱いというのはそういう意味でいえば行き詰まっている状態じゃないかというふうに思うんですけれども、これについていかがでしょうか。
○政府参考人(岡島正明君) これまでのミニマムアクセス米の販売につきましては、国産米では対応し難い加工用の需要を中心に販売を行い、販売されなかった数量については在庫として保有しておりまして、委員挙げられましたとおり、平成十七年十月末現在の在庫量は百七十万トンとなっております。
 この在庫の処理に当たりましては、ミニマムアクセス米導入に伴う転作の強化を行わないとの平成五年の閣議了解に即しまして、引き続き粘り強く加工用への販売に努めてまいる必要があると考えております。
○紙智子君 私どもは、以前からこのミニマムアクセスというのは最低輸入機会の提供だと、だから輸入義務ではないということを主張してきました。たとえ民間貿易であっても、それから国家貿易であっても同様だと。WTO協定のどこを読んでも義務だというようには書いてないわけですよね。
 それで、ミニマムアクセス米の国別の輸入数量を見てみたんですけれども、オーストラリアは、二〇〇四年度には、それまで十万トン前後輸入していたわけですけれども、これが一万八千トンに輸入量が落ち込んでいるんですね。それで、なぜなんですかということで理由を聞きますと、これ不作だったと、天候不良というようなことで不作だったと。不作で輸出余力がなくなれば当然輸入量全体が落ちるというのは当たり前で、そういうふうになった場合にアクセス数量を下回ることがあることは協定でも認められていると思うんですね。
 ところが、見てみると、二〇〇四年のトータルのミニマムアクセス米の輸入量はやっぱり七十七万トンベースというふうになっているんですよ。本来であれば、八万トン輸入量が減っても何の問題もないんですけれども、それをやらないで、何としてもとにかく七十七万トンは確保するというようなことで確保しているわけですね。これ、私、異常じゃないかなと思うんですけれども、いかがですか。
○政府参考人(岡島正明君) 私ども、いわゆるミニマムアクセス数量につきまして、国別に割り当てるとか、そういうことをやらずに、全体としてすべての輸出国からの輸入機会を提供するということでございますので、今御指摘のように、一国、オーストラリアが不作であるからということでミニマムアクセス数量を減ずるという考えは取っておらないところでございます。
○紙智子君 いや、そういうことを聞いたんじゃないんですよ。こうやって実際の天候不良で不作だということで減ったということについて、減ったから増やさなきゃならないというふうなことは何もないのに、わざわざ一方では国内で豊作で米余ったといって減らせというようなことをやりながら、もう一方でそういう形で減っているものをわざわざ上乗せしてまた入れているということがおかしいんじゃないかということを言ったわけですよ。国家貿易だからアクセス数量を守らなきゃならないという論理というのは実際にはないというふうに思うんです。
 農林水産省がこの間出している予算要求の資料を見てみたんですけれども、この中で紹介している例えば韓国にしても、アクセス数の約束数量に対して実際に輸入量というのは数的には相当低かったりしているわけですよ。そういうことを見ますと、やはりわざわざ無理して七十七万トンきっちりやらなきゃならないという理由がないわけですから、ここは柔軟にやっぱり対応すべきじゃないかと思いますけれども、どうですか。
○政府参考人(岡島正明君) 答弁の繰り返しになりますけれども、私どもとしては、やはり最低輸入機会を与える、その中で、国家貿易という観点からいたしますと、その機会をきちっと与え、その数量を購入するという立場に立っているところでございます。
○紙智子君 国家貿易だというふうにすぐおっしゃるんだけれども、そういう国家貿易だからといって、絶対七十七万トン日本はやらなかったら駄目だというふうにはなってないと思うんですよ。いかがですか。
○政府参考人(岡島正明君) 譲許表を提出するに当たって、当時の議長、議長だったと、ちょっと申し訳ございませんけれども、ミニマムアクセス数量についての考え方はかくかくしかじかであるということが出されておりまして、それに基づいて私ども譲許表に数量を明記していると、そういうことでございます。
○紙智子君 だから、各国の状況を見ると、きっちりと約束数量に対して守ってなくても別にどうこう問題になってないわけですよ。日本だけはいつもきっちりとその部分やっていると。私はそこまでやる必要ないんだと思うんですよ。
 ミニマムアクセス米の在庫数量の国別の内訳を見てみますと、圧倒的に実は米国産米が占めているんです、つまり売れてないということなんですけれどもね。入札でやるわけですけれども、市場の動向を一番反映するということで、SBSですね、これやっているわけですが、これ見ても、一九九九年には二万三千トン契約していた米国産米が今九千トンまで下がってきているわけですよね。二〇〇五年度では六万五千八百四十トンが実は中国米の方が入ってきている、たくさん入ってきているけれども、売れているわけですよね。だから、米国産米についていえば、非常に割合としては、SBSの取引全体に占める割合は一一・五%にしかなってないわけですけれども、結局、市場の評価は低いということだと思うんですよ。
 ところが、その米国産の米については、九八年から二〇〇四年まで、毎年毎年三十万トン以上を必ず入れているわけですね。ですから、このミニマムアクセスの全体の輸入量の五〇%を占めているのがこのアメリカ産の米になっているわけですよ。で、在庫になって残っていると。それも財政負担になっていると。こういうばかなことはないんじゃないかというように思うわけです。
 政府は、何があろうともこの米国産の米を毎年三十万トン以上購入するということで、約束でもあるんですか。
○政府参考人(岡島正明君) 正に国内の需要に応じたものを入れるということとともに、各国の米の特性などを勘案しながらミニマムアクセスの機会を提供しているところでございます。
○紙智子君 だから、需要に応じてと言うんですけれども、売れてないというか、評価は低いわけだから。アメリカ産の米を入れ続けて、売れないのに残して、それがだんだん積み重なっていって財政的な負担にもなっているということだから、これやっぱり削減する方がいいんじゃないですか。そのおつもりありますか。私、大臣にちょっとここのところ聞きたいと思うんですけれども。
○国務大臣(中川昭一君) 九三年の十二月、たまたま紙委員と私とは野党でございましたけれども、あのときに、まあ苦渋の選択ということでこういうミニマムアクセスを受け入れたわけです。
 しかし、私が農林大臣に九九年になってから、このままではもう在庫が膨らんでたまらないからということで、一粒たりとも入れないといって渋々のんだミニマムアクセスの関税率を四から八に上げるというところを、最後の二年間はもう関税化しますから量を増やさないと、もう固定して今七・二%になっているわけでございます。
 そういう七・二について、先ほども議論がありましたけれども、重要品目に指定するか指定しないかは別にして、極めて大事なお米でございますから、これについてのTRQをどうするかというのが、さっきも申し上げたように、これから大議論になっていくんだろうと思います。
 しかし、はっきり申し上げて、増える議論は、どのぐらい増やすかという議論はありますけれども、減らすとかなくすとかいう交渉は、率直に申し上げて、極めて厳しい交渉だというふうに考えております。
○紙智子君 その九九年のときというのは私はまだ議員じゃありませんでしたので、大臣は大臣おやりになっていたと思いますけれども、まだ私は国会に来ていませんでしたけれども。ただ……
○国務大臣(中川昭一君) 党として。
○紙智子君 党としてね。その当時、我が党としてはやっぱり論戦で大いにやっていたと思いますけど、いずれにしても、やっぱりミニマムアクセスという形、そもそも関税化という方向に踏み切ったということ自体が、これ限りなくゼロの方に近付けていくということではありますから、当然日本の国内に非常に大きな多大な影響を与えるということで、我が党はその当時も反対をしていました。
 ミニマムアクセスについて言えば、これ最初は政府は義務だ義務だという形で、これは守らなかったら大変なことになるんだといって無理やりやってきたわけだけれども、実際はそうじゃなかったということが分かってきて、各国のも調べてみたら柔軟にやっていると、その国の状況に合わせていろいろ調整してやっているということであれば、やっぱり非常に不合理な形でこういうことが行われているのであれば、今回この事実も明らかになっているわけですから、約束もしているわけではないんであれば、これは米国産の輸入にこだわらずに、こうした事態に対しては削減するとか判断すべきじゃないかと思いますけれども、もう一度、大臣、いかがですか。
○国務大臣(中川昭一君) 義務なんですよ。この前も乳価のときに紙委員と議論しましたけど……
○紙智子君 義務じゃないと言いましたよ。
○国務大臣(中川昭一君) いやいやいや、カレントアクセスは義務ではない。カレントアクセスは義務ではないけれども、国家貿易になると、これは国家としての約束だから、その約束を果たさなければいけない。
 今、局長も答えたとおり、WTOに譲許しているわけですから、ですから、もちろんこれが在庫として積み上がっているから、じゃ、はっきり言ってルールどおりにやらずにストップするかと。我々は今大事な非常にデリケートな交渉をしているときに、今までルールを守っていなかった国、けしからぬですけれども、じゃ今から日本もルールを守らないで、さあ交渉をやりましょうか、ルール作りのときにルールを破る行為を日本がやりましょうか、それは交渉をやる上では余りいい方法ではないというふうに思いますので、とにかく、今も国内生産に影響を与えないようにということで最大限努力をしておりますけれども、厳しい交渉ではございます、予想されますけれども、全力を挙げてぎりぎりのところ、日本の立場を守る交渉をしていきたいというふうに考えております。
○紙智子君 確かにそのカレントアクセスとこれとは違いますよね。乳価とは違うわけだけれども、しかし、WTOの協定上は義務だというふうに書いてないと、国家貿易なんだと言うんですけれども、そこは、条約上は書いてないということでは、やっぱり日本は日本の実情に立って物事必要なことは主張すべきだというふうに思うんです。
 で、やっぱり生産者の皆さん、あるいは消費者の皆さんという立場から見たときに、去年北海道は御承知のように作況指数が一〇九になったと。それで大体九万トンぐらいですかね、豊作の部分については市場に出すなということで、結局一俵の価格、米の値段にして北海道の米で大体一万二千円とかそのぐらいですけれども、それが更に三千プラス三千で六千円ですか、物すごく安く抑えられるという形になって、非常にそういう意味では農家の生産者の皆さんは苦労して何とかこうやったわけだけれども、普通だったら豊作だって喜ぶところだけれども、それがこういう形で抑えられていると。
 そのとき私、質問しましたけれども、九万ぐらいのちょっとこう出たところについては買い取ったらどうかという話もしたわけだけれども、それはもうルールとして決まっているから駄目だというふうに言うわけですけど、しかし、その九万トンという、こういうやっぱり生産者から見るとそれでも大変な、経営にとっては大変な打撃なわけですけれども、そういうつらい思いをしている一方で、これだけ百七十万トンにも及ぶような一方ではミニマムアクセス米という形で、売れないのに、しかも財政のこの大きな負担になっているのに入れ続けていると。これはやっぱりどう考えたって理解できないわけですよ。
 そういう問題をしっかりとこう受け止めて、もっとやっぱり抜本的な改善策ということで考えるべきじゃないかということを申し上げておきたいというように思うんです。
 まあ、時間になりましたけれども。
○委員長(岩城光英君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。