<第164回国会 2006年3月8日 予算委員会 第7号>


○委員長(小野清子君) 次に、紙智子君の質疑を行います。紙智子君。
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私は、BSEの調査で先ごろ米国に行ってまいりました。米農務省と会談し、そして関係者、関係団体との聞き取り、そして日本に問題となった危険部位を輸出してきたニューヨークにありますアトランティック社にも行ってまいりました。この中で、米国農務省の食品安全局のBSEの違反記録というのを入手いたしました。それがここに今日積んでありますものです。
 それで、お聞きしますけれども、川崎厚生大臣、そして中川農水両大臣は、この文書について御存じでしょうか。
○国務大臣(川崎二郎君) ノンコンプライアンスレコードというやつでよろしゅうございますか。
○紙智子君 はい。
○国務大臣(川崎二郎君) 米国政府によると、屠畜場等の施設に常駐する農務省食品安全検査局の検査官が施設の衛生管理を検証し、連邦規則に適合していない事例を発見した場合には、施設側に対し問題を指摘し必要な処置を講ずることを指示した上で違反内容の改善処置の検証を行っており、これらの内容を文書として保管をしている、それがノンコンプライアンスレコードだと承知しております。
 このノンコンプライアンスレコードについては、昨年米国側に確認したところであり、二〇〇四年一月から二〇〇五年五月までの間に、六千か所の屠畜場や食肉処理施設場において累計千三十六件のBSE関係規制への不適合の指摘がなされ、指摘を受けた施設等では改善処置が適切にとられたと考えておりますし、六施設が取消しになったと承知しております。
○国務大臣(中川昭一君) 私は、既に国会で何回も答弁を申し上げておりますが、このレポートについては承知をしております。中身は、今厚労大臣の認識と同じでございます。
○紙智子君 これは八月に出されているものなわけですけれども、これを日本はいつ米国から入手をされているのか、そして食品安全委員会にはその原本を提示して議論はされたんでしょうか。
○国務大臣(川崎二郎君) 今のノンコンプライアンスレコードは、昨年の八月十七日に米国農務省がその概要を公表いたしました。私ども厚生労働省においては、翌八月十八日に在京米国大使館を通じて概要を入手、八月二十三日に外務省を通じて個票を入手いたしました。
 食品安全委員会に対しては、昨年八月二十四日に開催されたプリオン専門調査会において、米国農務省が公表した概要に基づき、違反の確認から改善処置がとられるまでの記録であるというノンコンプライアンスレコードの性格や一千三十六件の内容を説明いたしました。個票に基づき、個票を全部お示ししたわけではありませんけれども、個票に基づきながら千三十六件の具体的な内容について御説明申し上げました。
○紙智子君 議論はされましたか。
○政府参考人(寺田雅昭君) 今大臣がおっしゃいましたように、このノンコンプライアンスレコードにつきましては、八月二十四日のプリオン専門調査会で厚生労働省からその概要につきまして報告を受けまして、そのこと、内容自身につきましては議論はしておりません。
 九月の、その次のプリオン専門調査会には、私ども更に資料を管理機関を通じまして米国に要求をいたしまして、そのときにより詳しい、そんな詳しいものじゃございませんけれども、詳しい資料と説明を受けました。その場合も審議をいたしませんでしたが、米国における管理状況全般に関しましてこの資料も含めまして議論をいたしまして、その結果につきましては評価報告書の中にもこの数も含めましてきちっと書いてございます。
 以上です。
○紙智子君 なぜ議論をされなかったのかと思うわけですけれども、つまりその概要は報告をされていると。しかし、原本は示されていないので、実際にはリアルなこのアメリカの食肉処理の実態が、皆さんちゃんと把握されていたんでしょうか。
○政府参考人(寺田雅昭君) この資料だけじゃございませんで、膨大な資料、その場で直接議論はしなくても、それぞれ持って帰ってそれを読んで、疑問点は次のプリオン専門調査会で質問するとか、そういう形で議論を進めていますので、このこと自体に関して審議をしなかったからといってアメリカの管理情勢をきちっと把握していないということにはならないと思いますし、今大臣がおっしゃいましたように、この千三十六の違反事項に関しましては、これは管理機関から通じてお聞きしたことでございますけれども、是正をしたということであります。
 以上です。
○紙智子君 これは、御本人はお読みになられていますか。それから、これは厚生大臣、農水大臣、中身はお読みになっていますか、原本は。
○政府参考人(寺田雅昭君) 原本は読んでおりません。私どもに手に入りました資料は、最初のファクトシートみたいな一枚のものと、それから、その後アメリカの農務省から出ました概要四ページのものだったと思います。
 以上です。
○国務大臣(川崎二郎君) あの概要については見させていただいております。
 千三十六件の不適合事例、カット施設においてHACCPプランどおりに実施されていないもの四百五件、SRMを取り扱ったナイフの洗浄や従事者の手洗い、脊髄の除去が不十分なもの四百六十七件、SRM除去や研修などに関する記録の不備など記録の保存に関するもの百六十四件。いずれにせよ、これは不適合を指摘し改善等の措置がとられた記録であり、この結果、BSE関係規制が適切に遵守され、食品の安全性は、アメリカにおいては、アメリカのルールですね、アメリカのルールとしては確保されているものと考えております。
○国務大臣(中川昭一君) 六千か所の全文、今初めて今遠くから拝見をしておりまして、膨大な資料だと思います。概要については報告を受けております。
○紙智子君 私は、なぜこれ自体のことが議論にならなかったのかというのが非常に不思議なわけです。実は、こんな重要な資料をちゃんとこう原本として出さなかったというのはこれはなぜなのかなと思うんですよ。
 今日、皆さんにお配りしている資料は、実はこの中のごく一部、それも日本に向けた工場、日本に出す工場ということで、五つの工場をピックアップしてこれは訳したものなんです。これ読んで、非常に私は驚きました。
 大臣は、前回の農水委員会のときにも、日本向けのプログラムさえ守られていれば、ほかの工場がどうでも構わないというようなことをおっしゃっていたわけですけれども、その日本向けの指定食肉処理場においても、何度も何度もこれ同様のBSE違反が行われているわけです。
 それで、ちょっとパネルにしましたけれども、ごらんいただきたいんですけれども、(資料提示)このように、上はカーギル・ミート・ソリューションというところですね。違反のあった日が六回ですよ。結局、これは危険部位を除去しなければならない三十か月齢以上の年齢確認がされないまま処理されている事例がこのうち五件あるわけです。一度間違ったら二度間違えないということが担保されてないということなんですね。是正されないで繰り返されているということを示すものなんです。
 この下のネブラスカ・ビーフ、ここは危険部位の脊髄の除去不徹底で何度も違反が繰り返されていると。このお配りした資料の最後の方にも書いてあるんですけれども、この記録においても、同種の違反が、途中抜きますけれども、過去に記録されていると。同社の以前の防止対策及び是正対策は、違反の再発を防止するために適切に実施されておらず、非効果的、また不適切であると、そういうふうに書かれているわけですね。
 ですから、その場その場で是正されても同じ間違いを繰り返していると。このような言わば常習的な違反行為を行っている企業が日本向け指定食肉処理として指定をされているということなんですよ。
 中川大臣、御存じでしたか。
○国務大臣(中川昭一君) その六千件のうち千三十六件ですか、の指摘があったということは、先ほど申し上げたように報告を受けております。そしてまた、それらについては是正措置が取られた。今、紙委員からいただいた資料にもそういうふうに書いてあるわけでございます。
 我々は、あくまでもリスク評価に基づいたリスク管理機関として、EVプログラム違反にならないということを前提にリスク管理行政を行っているところでございます。
○紙智子君 これのどこが是正されたって言えるんですか。繰り返されているんですよ。
○国務大臣(川崎二郎君) 今回のこの千三十六件、対日輸出認定施設に係る発行状況、整理中でありますけれども、最大でありましたのが十二件、最小で零件、ゼロ件となっております。
 御指摘の違反発見は、三十か月齢以上の牛の頭部の不適切な取扱い、繰り返し六件、背割りのこぎりの洗浄が不十分なもの一件、SRMのレンダリングが不適切なものが一件と承知しております。
 なお、これは、二〇〇四年に何回も指摘を受けて、二〇〇五年以降は適正に運営されておるというふうに私ども承知しております。
○紙智子君 プリオン専門委員会でも、検討する資料がまだまだ少ないという意見が出てたわけです。そこにきちっとこういうリアルな中身で報告もされて提出されていたら、当然議論になっていたし、これ出た結論も違っていたんじゃないかと。そうじゃありませんか。
○政府参考人(寺田雅昭君) まあ、仮定の問題でございますけれども、私ども結論のところに書いてありますように、科学的にはきちっとした評価はできないということ、そういうことを含めて言ってあるわけでありまして、前提条件としてEVプログラムがきちっと行われれば差は非常に少ないと。
 だから、それを含めての話でございまして、今先生がおっしゃったようなこと、たとえあったとしても、あの結論には変わりはなかったと思っております。
○紙智子君 私は、こんな重大なことを概要だけで、リアルな全貌も示さないで、それでこういう形で輸入再開を急いだ政府の責任というのは非常に大きいと思いますよ。
 やっぱり私はこれ、輸入の再開を判断したということ自体が誤りだったんじゃないかと。違いますか、農水大臣。
○国務大臣(中川昭一君) 十二月の八日、昨年、食品安全委員会からのリスク評価の答申をいただいた上で、厚生労働大臣、川崎大臣と輸出再開を決定したところでございます。
○紙智子君 非常にそっけない返答なんですけれども、なかなかお認めにならないようですけれども。
 大臣自身が、今回の米国の報告を受けて、特異な例というふうに思わない方がいいというふうに言われているようですけれども、そのとおりなんですよ。この違反記録は、二月に米国農務省の監査局が発表している監査報告書、オーディットレポートってありますよね、これとも内容が共通しています。それから、その前に食品検査支部全国評議会の議長が告発をしている、これとも、その中身を裏付けるものでもあるわけです。つまり、流れは一緒なんですね。
 ですから、違反行為が常習的に繰り返されているということが、これ浮き彫りにするものじゃないですか、そう思いませんか。
○国務大臣(中川昭一君) 私が特異な例とは思わないというふうに申し上げたのは、アメリカ側が、報告書の中に書いてありますように、こういうふうに検査官もあるいは処理業者も知らなかった、だから特異な例だという指摘が、発言がアメリカ側からあったわけでございますけれども、私としては、特異か特異でないかというのはアメリカ側の判断かもしれませんけれども、現にEVプログラム違反がはっきりしていたということについては、特異も特異じゃないもなく、これは違反であるという意味で申し上げたわけであります。
○紙智子君 まだ、実はこれだけじゃないんですね。
 違反が起きないように歯止めになるべき米国食品安全検査局、検査官ですね、これが十分な事実確認をしないまま署名をする事例が少なからずあるという実態もあるわけです。
 それで、今日お配りしている資料に付いていますニューズウイークでも報道されています。これは、大臣、御存じですか。
○国務大臣(中川昭一君) 私は、たまたまニューズウイーク日本版を毎週読んでおりますので、ここのところ何回かこれに関する報道があったことは、一購読者としてもまず知ったわけであります。
○紙智子君 今回、米国で私は直接、この中に登場してまいります全米連邦獣医官協会の法律顧問ウィリアム・ヒューズさんから直接証言をいただいたんです。
 それで、彼は、これまで輸出証明書の署名に必要な条件を満たしていないと拒否したことが理由になって処分をされた何人かの獣医官を弁護しています。彼の証言というのは、問題は、中には、検査官が回ってきた文書について、批判的にチェックして点検するというんじゃなくて機械的に署名すればいいというところもあるという問題があると。ちょっと途中省きますけれども、時には、署名する文書が余りにも多くて獣医官は自分では要件を確認できない、他人が作成した輸出証明書その他の文書に署名せざるを得ないと、農務省は職員のすべてにこのことを知らせる必要があるんだというふうに彼は言っているわけですね。
 今回のジョハンズ長官が出した報告書、この報告書の中を見ても同じようなことが言われているわけですよ。公衆衛生獣医務官の裏付ける証言がある。つまり、現場を見ないで、商品を見ないでこれはサインをしていると。検査官の署名の信頼性そのものが問われる事態だというふうに思いますよ。これで本当に安全な確保ができるんでしょうか。いかがですか。
○国務大臣(川崎二郎君) このレポートに、ノンコンプライアンスレコードにつきまして、私ども、十一施設、昨年十二月十三日から二十四日まで視察に行っております。そのときに、対日輸出施設の監督状況、輸出証明プログラムが規定する品質管理プログラムの文書化の状況、特定危険部位の除去の実施状況、二十か月月齢以下の月齢証明書の遵守状況、あわせて、直近のこのノンコンプライアンスレコードについて出されたか、そしてきちっと改善をされたのかということに基づいて聞かしていただいて、その問題をクリアをして報告をさせていただいております。
 なお、食の輸入に当たって、食品衛生法第九条二項の規定に基づき、輸出国の政府機関が発行する証明書の添付を義務付けております。この証明書の記載事項については、特段の規定は設けておりません。あくまで輸出国政府の責任においてなされるものと、こう考えております。
○紙智子君 とにかく、やはりまともにこの問題をきちっと議論もしない。そして、米国がクリアされたと言えばそのとおり信じて、きちっと調べもしない。そういう中で輸入再開をやってきたという日本政府のやっぱりずさんさに対しては、私は本当に責任を問うてこの質問を終わらせていただきます。
○委員長(小野清子君) 以上で紙智子君の質疑は終了いたしました。(拍手)