<第163回国会 2005年10月25日 農林水産委員会 第2号>


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 先日、私、北海道に原油価格の問題で調査に入りました。日高地方の漁協や、あるいはこの熱供給公社や、あるいはクリーニング協会、それからトラック協会、それから大衆浴場ですね、生協連などを含めて回ってきたんですけれども、どこに行っても、やっぱりこの価格の高騰を何とかしてほしいと、共通した声として寄せられたわけです。この問題というのは、やはり国際的に価格の高くなっている状態に対して引き下げると、騰貴を抑えるとか、やっぱり国際的な協力の下でそれをやるということが不可欠だと思うんです。同時に、国内的にも価格を引き下げていくことというのが求められているというふうに思うんですね。
 そこで、経済産業省にお聞きしますけれども、現在の制度では不足の事態以外はその備蓄を放出しないということになっているというふうに言われるわけですけど、今のように燃油が高くなって使えないような状況って、これ非常事態だというふうに思うんですけれども、こういうときにもやっぱり原油を安く放出するとか、あるいはこの需給を緩めるとか備蓄を活用すると、こういうふうにできるようにするべきじゃないかと思うんです。でも、それができない制度になっているというんだったら、そういう制度自体の見直しも含めて対策をするべきじゃないかと思いますけど、いかがでしょうか。

○政府参考人(近藤賢二君) お答えを申し上げます。
 今、先生御指摘のように、現在の原油価格は、中国を始めといたしまして世界の需要が非常に伸びてきております。一方で、OPECを始めとする供給国側の原油の生産余力が下がっている、さらにはアメリカを中心とした精製能力が足りないと、こういったような構造的な要因に自然災害とか投機的な動きが加わって、高い水準で推移しているわけでございます。
 今御指摘の例えば備蓄を放出できないかと、こういう御指摘でございますが、仮に我が国単独で石油の備蓄の放出を行いましてもその効果は限定的なものにとどまりまして、長続きをしないというように考えているわけでございます。
 例えば、今年の九月に行いました、世界で協調して出しましたIEAの協調備蓄放出がございます。仮にこれと同じ量を出すということで例えば試算をいたしますと、我が国の放出分担量が一日約二十四万バーレル・パー・デーの分担量でございました。これは世界の原油需要の〇・三%にすぎないわけでございます。こういうような状況の中では、仮にこういう形を行いましてもなかなか対応が難しいと、価格を下げることは難しいのではないかと思っておる次第でございます。
 また、今御指摘のように、法律上も備蓄の取崩しは我が国の石油の供給が不足する場合ないしはそういうおそれがある場合ということにされておるところでございます。それから、諸外国におきましても同じような考え方でございますし、IEAでも同じような考え方を取っているわけでございます。
 一方、今、先生が冒頭におっしゃられました、国際的にも下げていく努力が必要だというのは誠におっしゃるとおりでございまして、私自身も先月末に中東各国回りまして、産油国の方はしっかり増産をしてくれということをいろいろと申してまいりました。また、消費国側は省エネを中心としていろいろな施策を講じようということを呼び掛けているわけでございまして、そういったものを、例えば先週ございましたAPECのエネルギー大臣会合、それからIEAの理事会、それからOPECへの働き掛け、さらには産油国と消費国の対話といったことを通じて何とか石油価格を安定させる方向に持っていきたいと、こんなふうに考えて今努力をしているところでございます。

○紙智子君 国内的にやったとしても余り効果はないということをおっしゃられるんですけれども、しかし四年前のときに経済産業委員会で議論になったときには、当時の平沼元経産大臣もこの備蓄の放出ということで価格に影響があるということは認める発言も、答弁もされているわけですよね。
 ここにありますこの総合資源エネルギー調査会石油審議会のこの報告書出されているわけですけれども、この中を見ましても、「諸情勢の変化を踏まえた石油備蓄制度のあり方について」ということの中で、石油備蓄政策というのは不断の見直しを行う必要があるんだと。やっぱり情勢変化するし、それを絶えず反映させながら、絶えずやっぱり見直しが必要なんだということを報告でまとめておられるわけですから、是非そういう形で、絶対にどうにもならないという形じゃなくて、見直しを行ってほしいというふうに思うんです。
 しかも、この石油元売会社だけ利益を増やしているという事態があって、ちょっと今日用意してきたんですけれども、これを見ていただきたいんですけど、(資料提示)これは石油の元売各社ですよね。それで、二〇〇二年と三年と四年と、黄色いのが、この白っぽいのが四年のグラフなんですけど、これ、利益をこういう形で伸ばしてきていると。各社みんなそうですよ。二〇〇四年で見てもそうですし、それから、これ、裏を返しますと、これは第一次四半期の決算から出したものですけども、これも見ますと、この赤い棒グラフというのが一番新しい直近のですよ。この紫色のが去年の同時期なんですよ。
 ですから、これ明らかに、どこから見てもやっぱり利益上げてきているということですから、ひとつ、やっぱり引き上がることを抑える、値上げを抑えるということと同時に、こうした利益の還元についても指導すべきじゃないかと思うんですけど、そういうお気持ちはありますか。

○政府参考人(近藤賢二君) まず、世界全体で原油価格を落ち着かせていくことが私は極めて大事だと思っておるんです。
 で、中東産油国の方も、必ずしも今の高油価であればあるほどいいんだと言っているわけではございません。むしろ、ある程度価格を安定させていくことが世界経済のためにも自分たちのためにもいいんだということを、特に大きい産油国でございますサウジアラビアとかOPECの議長国のクウェートといったところはそういう話をしております。
 私はそういう国々に、OPEC全体での生産の拡大の計画のようなものを、アクションプログラムのようなものをしっかり出していってほしいと、こんなお話もしておるわけでございます。そういう意味でも、この価格、備蓄に関しましても世界で協調をしていくということが非常に重要だろうと思っておる次第でございます。
 また、今、石油の元売会社の評価の、利益のお話がございました。私、ちょっと事実関係だけお話をさしていただきますと、全体で相当利益が上がっていることは確かでございます。ただ、その利益のうちの約三分の一はまず石油会社が持っている油の評価益でございまして、持っている油のトータルの評価が上がりますと上がります。ですから、これは決してその分丸々もうかるわけではなくて、価格が下がる動向のときは評価損が出るわけでございます。それが約三分の一。それから、もう三分の一は、石油化学とか石油開発という、石油本業でない、元売会社のその本業でないところの利益が三分の一でございます。あと三分の一のところは、その三分の一を上回るリストラを相当やっておりまして、数年前に比べまして、約十年前に比べまして石油元売各社の従業員数は約半分になっております。そういったリストラの効果も相まって出てきていると理解をしております。
 それから、実際に価格転嫁の段階でも、石油会社の方も一〇〇%転嫁できているわけではない点も御理解をいただきたいと思います。ちょっとそこ、事実関係だけ御報告を申し上げたいと思います。

○紙智子君 今いろいろとその評価益の問題があるという話もあって、それはそういうふうにも私も知っていますけれども、それにしても利益は上がってきているというのは事実だというふうに思うんですね。
 それで、実際に新日本石油などの六社についていえば、国際エネルギー機関の備蓄放出要請を受けて米国へのガソリンの輸出を決めたわけですよね。これは当初在庫量が少ないということで渋っていたわけですけど、やっぱり行政指導ということで、政府の指導によって放出に応じたという経過があると思うんですよ。アメリカのためにそういう形でやっているわけだから、やっぱり日本の国の状況に応じて、日本の国民のためにもそういう指導をやれるはずだというふうに思うんです。
 私、岩永大臣にお聞きしたいんですけれども、やっぱり一番この問題で打撃を受けているのが農業、漁業の分野だと。その打撃の大きい担当の大臣ということでは、やっぱり岩永大臣が政府部内での国内的な価格の引下げということを強く要求していただきたいと思うんですけれども。

○国務大臣(岩永峯一君) 燃油の価格というのは民間ベースの取引によって決まっているわけですね。それで、引下げに直接関与することは大変困難でございます。
 それで、先ほども御答弁申し上げましたように、例えば一般、近郊漁業者で年間七百万、そして遠洋漁業、マグロ辺りで三千三百万というような大きな高騰をしておりますので、そのことは全部今の魚価に転嫁できないので赤字だと、こういう状況になってきているわけですね。そして、燃油の一番大きな比率を持つのはこの漁業で、一三・二%でしたかね、そのぐらいの比率が魚価の割合から出てくるというようなことになりますと、本当に漁業者にとりましてはもう大変なことでございますので、私が、政府全体にこのことに対する対応をお願いしたいと、こういうことで閣議で発言して、そして総理から、この問題は真剣に考えてみようということで、経産大臣や財務大臣、皆さん方の御賛同を得て原油問題関係閣僚会議というのを実は持っていただいたわけでございます。そして、十月四日の日に関係閣僚による打合せをいたしまして、そしてエネルギー消費削減努力に対する支援、それから石油以外のエネルギーへの転換努力、そして中小企業等への対応、そして後々具体的な部分をどうしていくかというようなことでございまして、農林水産分野ではこれまでも省エネの徹底とその支援を行っているところでございますが、今後この部分について積極的に対応していきたいというようなことで、いろいろと施策を出しているところでございます。
 具体的な話しましょうか。

○紙智子君 いや、時間がありませんから。
 やっぱり、大臣自身が強く言わないと、ほかはだれも言う人はいないというふうに思いますので、そういうことと、もう一つ、今言われました漁業、水産の具体策の中で緊急対策ということを出されているんですけれども、やっぱり融資じゃ乗り切れないというのが現実なわけですよね。確かに、省エネ対策だとかいろいろやっているんだけれども、実際には借りられないという人たちもたくさんいるわけですよ。
 だから、やっぱり私は、例えば水産調整保管事業なんかも真の魚価対策にはなりませんし、共済制度にしても、こういう経費がどんどん高くなっていくというときにはそれを補うようなものになっていないわけで、そういった改善も含めて、やっぱり抜本的な経営安定対策といいますか、そこのところを是非やっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(岩永峯一君) 直接補助ができないということでございますので、漁協に対して、仕入れだとか、いろいろな状況の中では、流通だとか、そういう部分で削減できる部分については金を出していこう、そして漁業者には経営安定の融資をしていこうと。
 それと、大事なのは省エネの取組で、青色発光ダイオードなんかですと、もう半分ぐらいの燃料経費になるわけですね。だから、新たに省エネ対策に対する開発なんかをもう来年十分やっていこうということと、それから水揚げ金額の減少による損失を補てんするための漁業災害補償制度、これなんかも早急に見直して、そしてどういうような対応ができるかというような検討会を開催していく。それから、今もお話ありましたように、水産物調整保管事業による価格変動の緩和を図っていくためにこれをどう積極的に活用していくかということ。それからもう一つは、こういう事態になりましたので水産基本計画の見直しに向けて早急にやっぱり対応をしていかなきゃならぬということで、それを進めていく漁業を今しているところでございます。

○紙智子君 非常に大事な問題だし、急いでこれ、経営安定対策という形で魚価対策含めたものをやっていただきたいというふうに思うんです。
 それと、最後になりますけれども、価格を、もう市場だから仕方ないという形で、結局、政府として責任を持とうとしないと。この姿勢というのは米の問題でも私、表れているというふうに思いまして、今年、北海道は米の作況指数が一〇九というふうに言われていて、その中で過剰米対策の集荷円滑化対策の発動をするわけですね。過剰分が六十キロ当たり短期融資で三千円でこれは引き渡されると。農家は豊作、喜べないというふうに悲鳴を上げているわけですね。
 全国的に作況指数で一〇〇を超える米というのは大体十五万トンぐらいというふうに言われているわけです。これを政府が適正な価格で買い上げることを要求したいと思うんですね。政府の備蓄というのは今八十四万トンだと。それで、そのうちの四十五万トンは七年前からの超古米なわけですよね。ですから、この四十五万トンの超古米のところを他の用途に使って、市場から外して、通常の政府買上げと合わせてこの過剰分を買い上げて備蓄に回したとしても、政府がこれまで言ってきた適正の百万トンまでもまだ届かないということなわけです。ただ同然の値段で安売りするということを避けるためにもそれやっていただきたい、やれるんじゃないかということなんですけれども、どうでしょうか。

○国務大臣(岩永峯一君) 九月十五日に発表しました作況では一〇二なんですね。それで、豊作による過剰米を市場から隔離する集荷円滑化対策の発動が実は見込まれております。
 それで、需要に応じた生産を推進する米政策改革の下で、主食用の米の需要を超える豊作による過剰米は生産者の主体的な取組によって市場から隔離することが需給の安定のために必要でございます。政府もこのような取組への支援を今行っているところでございます。
 仮に、豊作による過剰米を政府が買入れすると、こういうことにしますと、備蓄という役割を超えて政府米の買入れ数量、それが在庫が無制限に増大するということになるわけですね。それで、ひいてはこれが将来の主食用米の売渡し期待による価格低下圧力の要因となるということでございますので、豊作による過剰米は集荷円滑化対策の的確な実施によって対処をすると、こういう必要を認めているところでございます。

○委員長(岩城光英君) 時間が参っております。手短にお願いします。

○紙智子君 その制度を決めた農水省の側からいえばそういう理屈なんでしょうけれども、しかし農家の皆さんは天気で左右されるわけですよね。いや、去年も台風が来て駄目になったと、その前は凶作だったと、ようやっと今年は台風も来なかったと、ほっと胸をなで下ろして、さあ収穫だと思ったら、今度はもうただのような安い値段で出さなきゃいけないと。豊作だといっても全然喜べないという事態ですから、やっぱりそういう作る者の立場に立って考えていただきたいということを最後に申し上げて、質問を終わります。