<第162回国会 2005年4月5日 参議院農林水産委員会 第8号>


平成十七年四月五日(火曜日)
   午前十時開会

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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○森林組合法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 京都議定書達成のためにこの森林の二酸化炭素吸収目標で三・九%掲げられると。森林環境保全がかつてなく重要な課題になっているわけですけれども、しかし、その重要な役割を担っている現場の体制は非常に脆弱で、施業も進みにくい実態があります。
 例えば、市町村に森林整備計画策定など権限移譲がどんどん進んでいるわけですけれども、自治体はどこも人員削減で、林業専任ではなくて農業や商工業の担当と兼任で対応に当たらなければならないと。現場の森林組合にとっては担当者が必ずしも林業に詳しいわけではないということで、作業の流れがスムーズにいかないというような声も聞かれて、寄せられているわけです。こうした市町村の実態に林野庁として現場の研修強化にどのように対応しているのか、まずお答えください。
○政府参考人(前田直登君) 確かに市町村の林務行政の体制、必ずしも万全でないという状況にあることは承知いたしておりますが、一方では、こういった森林の持っています多面的な機能、これを高度に発揮させていくというためには、特に地域に密着した行政機関であります市町村、この役割というのは大変重要であるというように認識いたしております。
 ちなみに、例えば森林計画制度におきましても、地域のマスタープランであります市町村森林整備計画、こういったものの策定、これが市町村に行われているわけでありますし、またこういった森林所有者の作成する森林施業計画、これを認定し、その達成に向けて普及指導を行うという重要な役割を担っているわけであります。
 そういった状況の下で、林野庁といたしましても、市町村森林整備計画制度のパンフレット、あるいはその担当者のための手引書、こういったものを作成いたしまして、市町村の担当者に対しまして制度の普及に努めているところでございますし、また、都道府県におきましても実務的なマニュアルの作成あるいは研修の実施、こういったことを通じまして市町村の担当者に対する指導あるいは能力向上、こういったことに努めているところでございます。今後ともこれらの一層の推進に努めてまいりたいというように考えている次第でございます。
○紙智子君 北海道では市町村の指導に当たる林業改良指導員は年々減っていまして、二〇〇〇年に百五十九人だったのが、二〇〇四年には百四十五人と。だから、五年間で十四人減っているわけです。国が研修強化の掛け声を掛けても、現場の指導も手薄にならざるを得ない状況にあるわけです。
 さらに、今、三位一体改革ということで、この指導員の人件費の一般財源化が懸念されていると。ここはやはり国庫負担を堅持すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 御案内のように、林業普及指導事業につきましては、従来より交付金、こういったものを通じて進めてきたわけでありますが、昨年、十六年でありますが、十一月二十六日の政府・与党合意、いわゆる「三位一体の改革について」でありますが、これに基づきまして、平成十八年度からは林業普及指導員の人件費につきまして一部を残して税源移譲するということにされたところでございます。
 ただ、しかしながら、こういった形で一般財源化が行われましても、一つには森林法に基づきます林業普及指導員の必置規制、これは残していただいているわけでございまして、必要な事業の実施、これが法制度上は一定程度担保されていると。また、人件費につきまして、その時々の事情ですとか政策ニーズ、こういったものに対応して国として判断によって配分していく部分、こういったものにつきましては残すことといたしておりまして、さらに活動費については従前どおり国からの交付金という形で残ることになっているところでございます。
 今後とも、国と地方の連携の下で必要な事業の推進、これが図られるように努めていきたいというように考えている次第であります。
○紙智子君 地元で聞きますと、林業を本当に町づくりの柱に据えようといって森林組合から商工会から町からもう一体になって、一丸となって努力をして、例えば間伐材の活用の工夫だとか地産地消で積極的な取組を行っているところでも、今年度の造林事業費というのは、昨年台風が軒並み来たというのもありまして、風倒木の処理に回る額が相当やっぱり多くて、通常の植林や下刈りや除間伐などのこの一連の保育や間伐事業に回る額というのは逆に減っているという実態にあるわけですよね。組合への委託事業費も昨年から今年にかけて二割以上減額されていると。その前年も減少だったんで、もうこの三年間、大きく減少している、減額しているんだということなんですね。
 木材の価格は低迷していて採算性も悪くなっている中で、この森林整備事業は、施業受託を柱とする造林の補助金に辛うじて支えられているというのが実態なわけです。自助努力を続けてはいるんだけれども、やっぱりもっと国としても力を入れてほしいと、予算を抜本的に増やしてほしいというのが地元の関係者の声です。是非、この声を聞いて、増額すべきだということを指摘しておきたいというふうに思います。
 それから、この点で抜本的な見直しが必要だというふうに思うのは、やっぱり大規模林道の問題なんですね。前回も質問したことがありましたけれども、それで今日は地図も配付しています。北海道でも滝雄・厚和線、それから平取・えりも線、置戸・阿寒線の三つの路線が事業の必要性を問われているわけですけれども、今日はそのうちの平取・えりも線のうちのこの様似―えりも区間についてお聞きしたいと思います。
 ここは二〇〇一年から建設を着工しているわけです。様似―えりも区間ですね。これは大規模林道事業の見直しの一環として事業評価システムで見直しをして、期中評価が二〇〇三年に行われて、事業継続が適当というふうになっているわけです。
 まず、この区間の総事業費と進捗率がどうなっているかということを伺います。
○政府参考人(前田直登君) 大規模林道、今現在、緑資源幹線林道ということで正式名称になっているわけでありますが、これの平取・えりも線の様似―えりも区間でございますが、ここにおきます十六年度末の進捗状況でありますが、延長にいたしまして計画延長十四・一キロ、これに対しまして完成延長が一・〇キロメートルで、進捗率は七%であります。また、事業費の方でございますが、計画事業費九十二億一千五百万円に対しまして実績事業費六億三千五百万円ということで、これも同様、計画事業費の七%となる見込みでございます。
 このような進捗率になっておりますのは、今お話もございましたけれども、平成八年度に事業を着手したものの、環境保全調査、これを実施いたしますとともに、事業の再評価結果を踏まえまして計画路線の大幅な変更、こういったことがありまして、環境保全に配慮して慎重に事業を進めてきた、そういった結果によるところが大きいというように考えている次第でございます。
○紙智子君 今、進捗率七%で距離は一キロということです。
 地元に聞きますと、昨年一年間の進捗率、進捗状況は三百メートルぐらいということだったわけです。まだ着手したばかりで、二十年掛かってできるかどうか分からないと、もしかするともっとずれ込むかもしれないというふうにも言われているわけです。しかも、事業目的は林業を中心とした地域振興というふうになっているわけですけれども、この様似―えりも区間の周辺というのは道有林なんですね。北海道は、二〇〇二年の条例でこの道有林については木材生産自体をやめているわけですね。大規模林道そのものがこれ必要ないんじゃないでしょうか。
○政府参考人(前田直登君) 大規模林道、いわゆる幹線林道でありますが、この作設につきましては地元からも強い要望を受け、また今お話がございました道庁の方からも強い要望を受け、そういった中で実施しているものでございまして、確かに北海道の道有林、かなり公益林の方にシフトということにはなっているわけでありますが、そういった中でもやはり必要な間伐なり保育、手入れ、こういったものはやっていく必要があるわけでございまして、大規模林道の必要性がなくなったということではないというように理解いたしております。
○紙智子君 強い要望がって言うんだけれども、どこから上がっているのかなというふうに思うわけですけれども、何も大規模林道でなくても一般林道で十分なわけですよ。この地図を配らしていただきましたけれども、ここに、この国道に沿って造られようとしていて、平取区間というのは既に台風十号のときにはもう各所で崩れてしまって、また直さなきゃいけないという状況になったわけですよね。
 それで、林野庁は林業の振興のためだと言うんですけれども、えりもの住民の皆さんはこの区間については林業のためだという認識はなくて、専らこの台風とか大雨とかそれから強風に弱い太平洋側のところというのは黄金道路と言うわけですけれども、ここのところが非常に危ないということで、災害時の迂回道路ということで何とかしたいというのがあったわけですよ。
 しかし、これも状況が大きく変化していまして、資料の地図で見ますと、今年二月に国道の三百三十六号線、目黒―庶野間に二つトンネルができたんです。それからその北部に一つ造られて、合計で三つの新しいトンネルが全線二車線で完成をしたわけですね。波をしょっちゅうこの道路かぶるということだったんだけれども、越波対策も取られたということで、大雨や高潮の影響はかなり回避できるようになったと。で、広尾に行けるルートが確保されたということで言っているわけですね。だから、本当に切実だったトンネルができたことで、住民はもう迂回路は必要ないというふうに言っているわけです。
 これ以外に、その図で見てもらったら分かるように、これにちょうど並行して黒い線で書いてあるわけですけれども、これ国道三百三十六号線と並行に内陸部を走って、道がやっている森林基幹道えりも線なんですね。これも完成が間近で、内陸部あと四百八十メートルばかり残すだけになっていて、北海道としては、平成十九年の完成なんだけれども、もっと早めてやるというふうに言っているわけです。これも林業と生活の活用に使うということで、この上まだ必要なのかということなんですけれども、いかがですか。
○政府参考人(前田直登君) 最初にちょっとお話し申し上げておかなきゃいけないんですが、この様似―えりも区間、この大規模林道といいますか幹線林道、一般的には七メートル、全幅七メートル完全舗装ということなんでありますけれども、この区間につきましては、いろいろ自然環境上の問題等々もこれあり、そういった中で再評価の意見等も受けまして、五メートルということでやっているわけでございまして、そういう意味では、一般の林道と極端に大規模になっているというものではございません。
 また、確かに御指摘のように、広域基幹林道、お話にありましたのは広域基幹林道だと思いますが、こういった広域基幹林道で代替するという性格ではなくて、この幹線林道、大規模林道でありますが、それとこの広域基幹林道がまたつながれていく、そういったことによりまして、地域としての路網のネットワーク、こういったものの形成が図られていくというものであろうというふうに理解いたしております。
 それともう一点、確かによく波浪等によりましてここのところが通行不能になるという話があったわけでありますが、何もその避難といいますか、退避だけのためにこういった道路をやっているわけじゃなくて……
○委員長(中川義雄君) 時間が来ておりますので、端的にお答えください。
○政府参考人(前田直登君) 全般的にそういった林業の振興、地域振興、併せてそういったものにも資するということでやっているものでございます。
○委員長(中川義雄君) 時間ですよ。
○紙智子君 あともう一点、大臣に聞かなくちゃいけないんですけれども。
○委員長(中川義雄君) 時間ですから、これで終わらせていただきたいと思います。
 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 森林組合法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(中川義雄君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(中川義雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十二分散会